はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

還暦のクラス会

2009-11-26 18:22:48 | はがき随筆
 県外からの参加も含め、総勢21人の還暦クラス会。白髪のおじさんとおばさんが、瞬く間に少年少女に早変わり。
 42年ぶりの友は、何を話しても新鮮に聴いてくれる。T子の舞踊には、ホテルを揺する万雷の拍手。K男のひょっとこ踊りには、大爆笑とやんやの喝采。霧島の夜を焦がすほどに、盛大な宴会が終わった。
 翌日は、標高I000㍍の恩師の別荘で2次会。皆がカラオケに興じる間に、恩師と碁盤を囲む。目くるめく夢のような感激に浸る。私の至福の一時。
 古希クラス会を楽しみに、霧島を後にした。
  出水市 道田道範(60) 2009/11/26 毎日新聞鹿児島版掲載


内視鏡検査

2009-11-25 19:02:18 | はがき随筆
 数年前のぼうこう検査。生涯忘れられない激痛だった。先日朝、小便がピンク色。過去の検査が頭をよぎる。泌尿器科へ。温かく迎えてくださる。「痛くないですよ」の言葉も上の空。全身を硬くして麻酔注射。少しチクリとした。しばらくして「始めますよ」。まだかまだかと身を構える。痛くもかゆくもない。あぜんとしていると「更に1力月後にしてみましょう」と。全身の力が一挙に抜ける感じ。し
ばらくして小便は正常に。戦々恐々としていた検査は気楽に受けられそう。ほとんど無痛と言ってよい。医学の進歩、頭の下がる思い。安心、感謝。
  薩摩川内市 新開譲(83) 2009/11/25 毎日新聞鹿児島版掲載

千生りほおずき

2009-11-24 18:35:51 | はがき随筆
 小学生のころ、暑い夏の日にサツマイモの草取りをしていた時、畝に自生していた千生りほおずき。畑から消えてずいぶんたったころ、車で20分くらいの山の中腹にある牧場でそれを見つけた。この夏、久しぶりに行ってみた。朽ちかけた棚の外には何もなかった。
 そしてこの秋、いとこの出水の畑で枝豆ちぎりの時、土手の周囲にうっそうと繁っているほおずきを目にした。私の中で「絶滅品種」になりかけていたそれがひっそりと息づいていた。2、3㌢の小さな実をつけて。
 3株程もらい、わが家の雑草園の仲間入りをした。
  薩摩川内市 馬場園征子(68) 2009/11/24 毎日新聞鹿児島版掲載
画像は馬場園さん提供

狭いながらも

2009-11-24 16:33:02 | はがき随筆
 わが家は長い間借家住まいだった。小学生の長女次女がいつも紙で家を作って遊ぶ。「お父さん小さい家でもいいからお家が欲しいネ」と言っていた。
 小さい家欲しいネー子供たちの教訓で発奮、多くの人様のお知恵と資金を拝借。新築落成の時は家族皆で大喜び。その後は紙の家作り遊びは止めたようだ。親たち同様どんなにお家が欲しかったか。
 私38歳だった。今は娘たちそれぞれ3人ずつの子供と家ももうけている。時折孫たちでわが家はパンクしそう。じい、ばあは目を細め幸せ味わい、狭いながらも楽しいわが家である。
  伊佐市 宮園続(78) 2009/11/23 毎日新聞鹿児島版掲載

終わらない夢

2009-11-22 17:44:52 | 女の気持ち/男の気持ち
 昨年10月、私の還暦を祝って子供たちが2泊3日の家族旅行を計画してくれた。88歳の義母は施設のショートステイに行ってもらい、細々と続けている店も「臨時休業」の張り紙をして、準備万端整えた。
 「行き先はヒミツ。その方が楽しみだからね」
 すべてを娘に委ね、夕方出発した。
 名古屋で1泊し、翌朝、浜松に住む息子がレンタカーで迎えに来てくれた。「お母さん、上高地へ行くよ」と娘。中学の時に教科書で読んだエッセー「梓川」。焼岳の噴火でできた大正池の神秘的な風景の描写に魅せられ、いつかその地を訪れたいと、それが私の夢だった。
 安曇野のそば屋で北アルプスの峰々を眺めながらの昼食。心もおなかも満たされ、「さあ出発」という時、夫の携帯が鳴った。
 「義母の具合が悪くなり、救急車で病院に連れていく」という施設からの連絡だった。宿をキャンセルして来た道を折り返し、病院に着いたのは夜9時を回っていた。酸素吸入をして肩で息をしながらも、意識ははっきりしていた。
 入院して4ヵ月、一度持ち直した義母は肺炎を患い、立春の日に旅立った。
 旅行を中断して帰って数日後、友達からメールが届いた。「夢が終わったらいけないと、神様が行かせてくれなかったのかもね。でも夢は持ち続けましょう」と。夢に出会って四十数年。夢はまだ続いている。
  山口県下関市 田村好子・60歳 2009/11/17 毎日新聞の気持ち掲載

あこがれの人

2009-11-22 17:33:41 | はがき随筆
 「あっ、Hさんだ」
 14日の土曜日、MBCラジオ「朝のとっておき」でHさんのエッセーが紹介された。Hさんは、私のあこがれの人だ。
 Hさんは、子育てと介護をされているのに毎月、新聞やラジオに投稿している。ものすごく心の余裕があってパワーがあり、そして色・音・風景が思い浮かぶ。私のまだまだ学びたりない書き方が、Hさんにある。
 あこがれの道に一歩近づくには、引きこもりがちの心と体を外に出して、多くの人と出会いたい。人が怖いこと、自分の思いを□に出せないことも、克服したい。
  いちき串木野市 森みゆき(23) 2009/11/22 毎日新聞鹿児島版掲載

常連

2009-11-22 17:16:08 | はがき随筆
 初夏のころ、湯船につかってふと見上げた窓ガラスに、I匹のヤモリがぴたりと白い腹、手足を広げて張り付いていた。それ以来、毎夜同じ場所に見る。
 内側からこんこんとガラスをたたくと「興味はないよ」と言わんばかりにのろのろと降りていく。明かりに虫が寄ってくるのを待ち伏せてのことだろう。
 秋風が吹くころふっと来なくなる。もう3年は繰り返す。
 今、菜園に美しいジョウビタキが飛び交う。去年縄張りにしていたあの小鳥かもしれない。庭のサザンカが咲き始めた。
 常連の虫や小鳥に、巡る季節をいとおしんでいる。
  出水市 年神貞子(73) 2009/11/21 毎日新聞鹿児島版掲載



スズメおどし

2009-11-22 17:08:05 | はがき随筆
 スズメおどしの定番は、昔からかかしだった。今はコンクール化してにぎわっている。
 わが家では、防鳥テープを使った。
 ところが、テープを乗り越えて稲穂をついばんだのだろう。こうべを垂れるはずの稲穂が、白くまっすぐ立っていた。スズメ軍団にしてやられたのだ。
 すぐにテープを縦横無尽に張った。
 効果があったのか、電線にいたスズメに訪ねてみた。
 チュンチュンと鳴いた。多分「こわい、こわい」と鳴いたのだろう。
 ごめんね。ありがとう。
  出水市 畠中大喜(72) 2009/11/20 毎日新聞鹿児島版掲載
写真はまる・ライアンさん

コスモス満開

2009-11-19 17:04:33 | はがき随筆
 11月初旬の日曜日、コスモス鑑賞に出かけた。道の両側にコスモス畑が広がる。辺りを一周する家族連れ、子どもたちを花の中に立たせてカメラを向けるパパ、腰を落としてじっくり魅入る老夫婦……。みんな「すごい、きれい」を連発している。
 カミさんの友人に会った。
 「あら、あなたたちも来たの? アタシは昨日も来たんだけど、また来ちゃった。去年より少し広くなっているわよ」
 リピーターのでるほどの人気である。コシラサギも舞い降りてきた。カミさんはコシラサギとコスモスをバックに、Vサインしてカメラに収まった。
  西之表市 武田静瞭(73) 2009/11/18 毎日新聞鹿児島版掲載
写真は武田さん提供

鹿屋市読書振興大会

2009-11-19 07:10:04 | アカショウビンのつぶやき












 10月30日、文部科学省委託事業、子ども読書地域ボランティアの育成事業として、鹿屋市読書振興大会が開催された。
この中で鹿屋市図書館エッセイコンテスト・入賞者の表彰式があったので、今年も私のかかわっている、FMかのやの番組「心のメモ帖」に出演依頼のため参加させていただいた。

 小学校、中学校、高校、一般、あわせて31名の入選者は壇上にならび、晴れの表彰式に臨んだ。特選作品は本人が朗読したが、小学校低学年とは思えないような素晴らしい内容に、みなが大きな拍手で祝福。是非とも番組に出演して頂きたいと、保護者の方々に出演依頼のチラシを渡しながらお願いする。

 表彰式の後は、児童文学者 宮下すずか氏の「本に向かっていちもくさん」と題する楽しい講演。宮下氏は、現在学術専門編集者として活躍中だが、2004年『い、ち、も、く、さ、ん』で第21回小さな童話大賞を受賞、さらに2009年度『ひらがなだいぼうけん』で第19回椋鳩十児童文学賞を受賞された。

 講演は、自分の本を作りたいという夢を追い続けたご自身の歩みを、〈本を読む立場〉〈書く立場〉〈作る立場〉からお話され、子どもにも大人にもわかる楽しい内容だった。

 最後に読書ボランティアグループの、大型紙芝居や、口演民話、ペープサートなど、久々に童心に返り楽しいひとときを過ごしました。

 肝心の番組出演依頼の方は、イマイチですが、先日取材させていただいたのは「弁当騒動記」と言う、とっても楽しいエッセイでした。
お書きになられたのは小学校の男の先生。見事なお手並みで運動会の弁当を一人でお作りになった去年の運動会の出来事を紹介してくださいました。

誕生プレゼント

2009-11-18 17:29:19 | はがき随筆
 一昨年の11月度以来2度目の月間賞をいただきMBCラジオに出演したのは幸運だった。11月5日の私の誕生日に愛犬ひかりからの誕生日プレゼント。退院するまでのひと月は歩行器で歩き、病院の玄関前で朝夕面会。5月から闘病中の私はひかりに慰められた。犬と暮らす生活は私にはごく自然なこと。生家は農家のため、物心ついたころから農耕馬、牛、豚、鶏……と動物は常にいた。犬は4匹目。すっかり弱くなった体で犬を飼えるのもこれで最後かも。たかが犬といえども5歳のひかりに癒やされる日々。良人とひかりとの穏やかな暮らしは続く。  
  鹿屋市 田中京子(59) 2009/11/18 毎日新聞鹿児島版掲載

出水平野

2009-11-18 17:26:35 | はがき随筆
 秋の取り入れが終わり、出水平野の田んぼは寂しくなった。いまはまだ、カラスやスズメが落ち穂をついばんでいるが、やがてそれもいなくなる。
 以前は、夜はねぐらに帰るが、昼間はツルの家族が3羽か4羽ずつあちこちで見られた。皮肉にも、クレインパークなど箱物が建ち始めてから、人や車の往来が激しくなり、姿を見せなくなった。
 裏作はソラマメや麦など、一部の田んぼで作られるだけで大半は稲が刈り取られたままである。
 来年の春までおよそ半年間、田んぼは眠りにつく。
  出水市 田頭行堂(77) 2009/11/17 毎日新聞鹿児島版掲載
写真はmunboさん

自然治癒力

2009-11-18 17:16:48 | はがき随筆
 夏に日照りが続き藺牟田池も枯渇寸前だった。やっと5、6日雨が降ったが焼け石に水だ。
 秋に入り近くの公園を歩いていた私は、草の青さに目を奪われた。この時期、例年に見られない草の伸び方だ。まるで春の新緑の到来のようだった。
 たった数日の雨だったのに、草たちはその水分を一滴も逃さじと懸命に吸収したのだろう。冬が訪れる前に、早く成長し力を取り戻し、立派な種子を残さなければならないのだ。
 自然の摂理をまざまざと見せつけられた私はその晩、机の上に並べたサプリメントを前に考え込んだものだった。
  鹿児島市 高野幸祐(76) 2009/11/16 毎日新聞鹿児島版掲載

ことりと会話

2009-11-18 17:13:10 | はがき随筆
 晴れた朝のこと。チッチーチッチーとないて「来たよ、おはよう」とばかり、お隣のTVアンテナからしきりに合図するジョウビタキ。2階から呼応するとしばらく鳴くのをやめてこちらをじっと見ている。「おはよう、よく来たね」と話しかけると、ル、ル、ルール、ル、ルル-とおしゃべりを始めた。「お話出来るの、すばらしい。今まで知らなかった」と言うとまたルリルル、ルルルーとさえずる。私はジョウビタキと話した。何羽か飛来するジョウビタキを見分けるのにルールリ、ルルルーと話す黒い服がこの冬のジョウビタキよと目印にする。
  鹿児島市 東郷久子(75) 2009/11/15 毎日新聞鹿児島版掲載
写真はmakotoさん

飢餓の川

2009-11-14 19:27:17 | はがき随筆
 川に魅せられ、川をたずね、ついに私は大淀川の源流にたどり着いた。8月18日である。
 時に、川は人に似ている。
 川内川の水源は石が多く、荒涼として何かを訴えるようだった。球磨川の源は、ツガや下草が繋る豊かな表情をし、大淀川の源流は、穏やかで優しい。
 ところが、私は川に少しも似ていない。川は何事にも執着せず流れ行く先を知っているが、私は何にでも執着し、行く先を知らない。川は多くの生物を潤すが、私は私の思わぬところで人を傷つけながら生きている。
 私に川の名をつけたら「飢餓の川」が、ぴったりか。
  出水市 小村忍(66) 2009/11//14 毎日新聞鹿児島版掲載