はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

革のゆるりノート

2013-05-31 21:30:28 | はがき随筆
 偶数月に開かれている「製本ワークショップ」に参加。今月は、革の表紙で本文の用紙を包み革ひもでとじる、手のひらサイズのノート作り。名付けて「革のゆるりノート」。「製本は本来1㍉に気を配りますが、今日はおおざっぱにいきます」と、講師の馬頭洋子先生。
 表紙の革、とじ糸や用紙類など製本用キットが配られ、先生の説明に習って製本に取り掛かった。革の穴あけ場所や糸を通す手順などを、9人の生徒同士で教え合いながらの作業。予定の1時間を30分ほど超えて、コンパクトながら風格を持ったオリジナル革ノートが完成した。 
  鹿児島市 高橋誠 2013/5/31 毎日新聞鹿児島版掲載

「ほのぼのと」

2013-05-30 22:05:30 | 岩国エッセイサロンより
2013年5月30日 (木)

     岩国市  会 員   横山 恵子

嫁から「母の日にKが幼稚園で描いた似顔をくれました。うれしいものですね」という喜びのメール。「宝物が増えたね」と返信した。
 めい夫婦の2歳になる一人息子は、母の日にパパと一緒に買い物をした。気に入ったのは、ミニバラに似た、まだつぼみの花。ママに渡す時、パパが「お花、まだ寝てるのかな?」と言うと、息子は両手を口にあて「みんなー起きてー」と声を張り上げたという。
 遠く去った子育てを懐かしく思い出したわ。成長を見守れたことは幸せなこと、と今ごろになって思うのよ。
   (2013.05.30 毎日新聞「はがき随筆」掲載)岩国エッセイサロンより転載

けが防止怠らず剪定

2013-05-30 22:02:41 | 岩国エッセイサロンより
2013年5月29日 (水)

   岩国市  会 員   片山清勝

 今月中旬の広場欄。入院中のリハビリヘの感謝の気持ちが掲載されていた。投稿者は元上司だった。問い合わせると、庭木の剪定中にけがをされたそうだ。
 私は毎年、梅雨入りまでに庭木の枝切りを済ませる。四十数年続け、年数は長いが、満足する枝ぶりはあまり経験していない。
 還暦を過ぎてからは、仕上がりよりもけがをしないことに意を注いでいる。今年は元上司のこともあり、例年以上に気を使った。
 特に、脚立の転倒防止には気を使い、脚立を移動するたびにしっかり固定を確認する。また、不安定な姿勢にならないよう気を配り、枝切りをした。
 しかし、アクシデントは起きるものだ。突然、大きなハチが顔の前に現れた。とっさに、かぶっていた麦わら帽子を手にして追い払つていた。
 2㍍ほどの脚立の上のこと、転倒しなかったことにほっとした。あのハチが、安全への心構えの大切さを再認識させてくれた、剪定ばさみを持ち直しながらそう思った。 

   (2013.05.29 中国新聞「広場」掲載)岩国エッセイサロンより転載

銀婚式

2013-05-30 22:00:14 | はがき随筆
2013年5月28日 (火)
 
  岩国市  会 員   樽本 久美

 私たち夫婦は今春、銀婚式を迎えました。それを祝って「おめでとうございます」と書かれた絵手紙が届きました。 

 差出人は岩国市内に住む41歳の女性で、私が中学生の塾の講師をしていた頃の教え子です。当時、中学校の国語教師だった夫も彼女を教えていたという縁もあって毎年、年賀状を交換する付き合いを続けています。

 彼女は高校受験で苦労していましたが、今では立派な主婦になり、手紙の文面でも成長が感じられます。絵手紙には銀婚式にちなんだ銀のスプーンが上手に描かれ、感心しました。

 そんな彼女に刺激を受け、私もしばらく休んでいた書道の活動を再開しました。全国規模の書道展入選を目標に新たな意欲を燃やしています。
  (2013.05.28 読売新聞「気流」掲載)岩国エッセイサロンより転載

ヒメシャラ

2013-05-30 16:09:56 | はがき随筆

 毎日眺めようと植えたヤマザクラの赤紫色の木肌──いつ見ても心に染みる。近くに置いたシラカバのマルタは広島からもらってきたものだ。我が家のシラカバが枯れた時だから、もう何年になるだろう。こっちでも育たんかなあ。また植えてみたい。
 初めて行った屋久島の森はコケのもりだった。ひときわ輝く黄色の木肌のヒメシャラを見つけた。てっぺんまでコケが生えず、正に全裸といってよかった。
 出会う度に先を争って抱きついて、みんなで笑ったんだった。その肌はヒンヤリとしてここちよかった。そう、我が家のヒメシャラ、もう開花するぞ。
  出水市 中島征士 2013/5/30 毎日新聞鹿児島版掲載

ひとりごと

2013-05-30 15:49:33 | はがき随筆
 毎日眺めようと植えたヤマザクラの赤紫色の木肌──いつ見ても心に染みる。近くに置いたシラカバの丸太は広島からもらってきたものだ。我が家のシラカバが枯れた時だから、もう何年になるだろう。こっちでも育たんかなあ。また植えてみたい。
 初めて行った屋久島の森はコケの森だった。ひときわ輝く黄色の木肌のヒメシャラを見つけた。てっぺんまでコケが生えず、まさに全裸といってよかった。
 出会う度に先を争って抱きついて、みんなで笑ったんだった。その肌はヒンヤリとして心地よかった。そう、我が家のヒメシャラ、もう開花するぞ。
 出水市 中島征士 2013/5/30 毎日新聞鹿児島版掲載

「まさか」と思わずに

2013-05-29 19:33:21 | ペン&ぺん

 既に梅雨入りしていた奄美に加え、九州、中国、四国地方も梅雨入りした。日本気象協会九州支社(福岡市)によると、6月の降雨量は例年比で120%を超す傾向という。皆さん、備えは大丈夫ですか。
 私が鹿屋通信部に赴任したのは1994年。県内が甚大な被害に見舞われた93年の「8・6水害」の翌年だった。大隅半島も至る所で土砂崩れや道路陥没など豪雨の爪痕が残っていた。死者・行方不明者49人。今も、危機一髪で難を逃れた人たちのドラマがテレビで再現されたり、当時の惨状が新聞やテレビで報道されたりする。それらを見るとやはり、すさまじかったのだ。
 仕事柄、大事件や大事故が発生すると、我々は多くの記者を現場に向かわせ、あらゆる手段を使って、最新で正確な情報を集めて紙面ほ作る。「押っ取り刀」で現場に向かうが、最初に入ってきた一報と異なり「大したこと」でない場合も多い。そんな時は撤収すればいいだけ。「おや!」「えっ~!」という情報が入ってきたら、先輩たちから「大騒ぎをしろ」と教えられてきた。
 私たちは東日本大震災で、想像をはるかに超えた大津波や「安全」だったはずの原発の事故を目の当たりにした。3・11で、もう「想定外」という言葉は使えないことを学習した。いや、鹿児島の皆さんの方が20年前に学んでいるのだ。「自分(我が家)は大丈夫だ」「たいしたことはないだろう」と根拠のない考えは持ってはならない。
 15年ぶりの鹿児島勤務で私は初めて「空振」を体感した。「ドーン」という音は驚異だった。鹿児島にいる私たちは豪雨も桜島も、避けて暮らせない。鹿児島地方気象台の情報に耳を傾け、もう一度、避難場所を確認したい。「ここは大丈夫」「まさか」と思わず、自然災害は「何でもあり」の構えで命を守りたい。
  鹿児島支局長 三嶋祐一郎

ツバメの知恵

2013-05-29 19:15:36 | はがき随筆

 近所のガレージにツバメの巣がある。親鳥が戻ってくる度にヒナたちのにぎやかな声が聞こえる。休む間もなく手当たり次第に虫を捕っているのだろう。
 ところが、思白い光景を目にした。トンボをくわえたツバメが3.4メートルの高さに上がり、パッとトンボを落とした次の瞬間、地面に届く前にまたキャッチ。そしてもう一度上空で口を開き、地面に落したトンボをつかの間眺めた後、飛び去った。トンボは元々死んでいたのか、ちょっと干からびている。
 虫が生きているかどうか試す姿を初めて見た。我が子のため念には念を入れる親心に脱帽。
  鹿児島市 種子田真理 2013/5/29 毎日新聞鹿児島版掲載

観音様と孫娘

2013-05-29 19:02:17 | はがき随筆

 姶良市に住む5年生になる一人っ子の孫娘は、時々泊まりがけで遊びに来る。今回の目的は毎年4月に行われる釈迦祭りに行き、いとこたちと遊ぶことでもあるが、我が家に来るもう一つの楽しみは、広い境内で思い切り遊べることでもある。
 祭りの前日のこと。遊んでいた孫娘が、観音様を見上げて「じいちゃん、観音様はどうして目を閉じているの」と聞く。とっさのことで思いつくまま「観音様は目を閉じて、みんなの幸せを願っているんだよ」と答えると、「私のことも考えてくれてるのかな……」とつぶやいていた。
  志布志市 一木法明 2013/5/28 毎日新聞鹿児島版掲載
写真はことだま日記より

母の情愛

2013-05-29 16:18:20 | はがき随筆
 大阪にいた頃、故郷・垂水の母からよく贈り物が届いた。春には自分で作った大きいジャガイモ、バンビメロンの頃には甘くて大きいメロンを。暮れには餅や里芋。正月過ぎには大きいポンカン。他に、みそやかるかんなど。いつだったか、紬の着物まで。なんでも惜しげもなく次から次へ。母一人の生活もやっとだっただろうに。
 宅配便はまだなくて、何日もかかって届いた。餅などはカビが生えていた。今、ありがたいことに関西には翌日には届く。亡母に感謝しつつ、今は私が娘たちにせっせと無農薬のミカンや野菜などを送っている。
  霧島市 秋峯いくよ 2013/5/24 毎日新聞鹿児島版掲載

生まれる

2013-05-27 16:37:19 | はがき随筆
 教室に入いると、子供たちが丸くなってじっと見入っている。
 「ダンゴムシの赤ちゃんが生まれているよ」
 ダンゴムシのお母さんがひっくり返って、赤ちゃんを産んでいる。ダンゴムシのお母さんのおなかから生まれる白い白い小さな点々の粒々のような赤ちゃん。
 「お母さんが苦しそう」「頑張れ、頑張れ、ダンゴムシのお母さん」
 ダンゴムシのお母さんの出産に立ち会った子供たち。小さな小さな命の誕生を喜び合った。ようこそここへ、おめでとう。
  屋久島町 山岡淳子 2013/5/27 毎日新聞鹿児島版掲載

桜島ドカーン

2013-05-26 06:35:59 | はがき随筆

 転勤族の我が家。この春、四国は愛媛県今治市から鹿児島市に引っ越してきた。長男(3)にとっては初の引越し。最初は精神的に不安定だったが、1カ月が過ぎ、少しずつ落ち着いてきた。
 最近の長男のお気に入りは、桜島。煙を吐いたり、白いもやに隠れてしまったりと、日々違った表情を見せるのが面白いようだ。毎日ベランダから確認しては「桜島、ドカーンしてる」などと教えてくれる。
 砂場で桜島を作ってみたり……。鹿児島の子供たちはこんな風に育つのかな、と思いながら様子を眺めている。
  鹿児島市 津島友子 2013/5/26 毎日新聞鹿児島版掲載

母ちゃん

2013-05-26 05:51:44 | はがき随筆
 水泳を始めて2年余り。体重も基礎代謝量も体脂肪も変化なく……。ところが4月、親しみやすい母に似た方がいらした。思わず「母ちゃん」と呼びたくなった。スポーツマンだったから、水着姿なら、こんなだったろうなと思うと、なおさら親しみを覚えたが、まだ声をかけられず思い出に浸っている。
 ご高齢だからか、回数も少なく、会えるのは少ないが、母の面影を重ねるために拍車がかかる。
 没5年。やっと涙なしで母を思い出す期が来た感じです。どうぞ元気でいつまで心の母ちゃんでいてください。
  阿久根市 的場豊子 2013/5/25 毎日新聞鹿児島版掲載

ツバメ騒動

2013-05-25 22:01:08 | 岩国エッセイサロンより
2013年5月25日 (土)

岩国市  会 員   中村 美奈恵

洗濯物を干していると、玄関先で夫が呼ぶ。

「ツバメが巣を作ろうと狙っているぞ」 

やれやれ今年もかと思いながらリビングに入ると、開けっ放しの窓からツバメが2羽入っていた。 

キャー。 

慌てる私をおいて「もう時間ないから」と夫が仕事に行った。一人でどうすりゃあいいの。モップを振り回すが効果なし。私だって、もう時間がないよ~。  

8時を過ぎてもまだ出て行ってくれない。それどころか、手の届かない所に止まったままだ。仕事に行く時間が迫る。このままおいて行くわけにもいかない。仕方なく「すみません。ツバメを追い出し次第行きます」と職場に連絡した。 

あっ、1羽下りてきた。出口はあっち。台所には行かないで~。逃げ惑うツバメ。当てないように振り回すと、何とか出て行ってくれた。残りI羽。 

椅子に上がり背伸びすると、モップが届いた。左右に振る。お願い、下りてきて~。ぐるぐる回るツバメ。出て行ってくれなきゃあ仕事に行けない。わぁ、壁に当たって落ちた。どうしよう。再びバタバダ。こっちに来るな。あっち、あっち。必死で追うと、ようやく出口を分かってくれた。 

急いで窓を閉める。まだ、床や壁に落としたフンを拭かなくちゃあいけない。 

格闘すること約1時間。今日1日のエネルギーの大半を使い果たし疲れた。おまけに30分の遅刻。
  (2013.05.25 毎日新聞「女の気持ち」掲載)岩国エッセイサロンより転載

はがき随筆4月度・月間賞に若宮さん

2013-05-23 11:30:47 | 受賞作品
 はがき随筆4月度の入賞者は次の皆さんです。

【月間賞】5日「今年の桜」若宮庸成(73)=志布志市有明町
【佳作】4日「発表の朝」竹之内美知子(79)=鹿児島市城山
▽16日「ここだけの話」田中健一郎(75)鹿児島市東谷山


 今年の桜 早春の喜びのために植えた早咲きの河津桜が、今年は何処よりも美しく咲いたのを、ご夫婦で満喫している様子が書かれています。「我雪と思えば軽し傘の上」という、宝井其角の句がありますが、何事も自分のものは素晴らしいものですね。落花に戯れる奥さまを童女と見立てる愛情も素晴らしい。
 発表の朝 お孫さんの高校合格の喜びが、素直に表現されています。発表の時間、電話の遅れ、不安、そして合格の知らせ、喜びが緊迫した時間の中で描かれています。庭に出ると、椿の花も祝福してくれているようだったという、緩急をつけた文章の呼吸が優れた表現になっています。
 ここだけの話 品格のある講演を聞きに行った帰りに、友人たちと立ち寄った喫茶店でのエピソードです。品格とはおよそ縁のない自分たちの失敗談ばかり、それらをからかう友人もやがて失敗、年齢のせいにして秘密にすることにしたという、明るく、読む人の気持ちを和ませてくれる文章です。
 この他に3編を紹介します。
 井尻清子さんの「ブリン」は、愛犬への賛歌です。ご主人の亡くなられた頃に生まれたせいか、仏壇の前の座布団がお気に入り。賢い犬で、人の気配を察知してくれるし、何よりもお孫さんたちを集めてくれる。寂しさを癒してくれるペットが家族だということがよく分かる文章です。
 本山るみ子さんの「定年を迎えて」は表題通りの定年所感です。短期で勤めたはずの職場に37年、そのうえ再雇用もできて、さて最後のご奉公をという、飾らない、人生への感謝の気持ちが表れていて、清々しい気持ちで読める文章です。
 高橋誠さんの「マコトがいっぱい」は、ご自分と隣人と、娘婿と、同名が3人も集まって混乱しているという内容です。婿が村上春樹に似ているので、混乱を避けてハルキと呼ぼうと提案したが、一蹴されたということが、何ともいえぬおかしみを醸しています。こういう場合は、ご自分から率先して名前を変えることを提案します。
 (鹿児島大学名誉教授・石田忠彦)