はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

秋…桜が咲いた

2014-11-29 12:11:07 | はがき随筆






 10月末、公民館を取り囲む桜並木の横を通りかかったところ、ピンクの花をいっぱい咲かせていた。桜は春に咲くものと決め込んでいる私にとっては、狂い咲きともとれる光景だ。
 そこでネットで検索したところ「桜は本来秋に咲く植物だった」とあった。そして10月桜という品種まであったのだ。
 さらに、夏に葉を落とされると、秋の涼しさを冬と間違え、その後再び気温が高くなると、春が来たと勘違いして花を咲かせることがあるという。思い当たったのは台風18号だ。
 思いがけぬところで、桜についての勉強をさせてもらった。
  西之表市 武田静瞭 2011/11/29 毎日新聞鹿児島版掲載

また親友で……

2014-11-29 12:04:24 | はがき随筆
 やくざ映画が好きで「健さん命」。相手が正しくなければ、食ってかかった。歌は演歌一辺倒。酔うと私の肩を抱き、さぶちゃんの「兄弟仁義」を気持ちよさそうに歌う。色覚異常のため、工業高校への進学を絶たれた時は大泣きした。大学受験間近の私が入院すると、毎日学校帰りに隣町の病院まで見舞ってくれた。社会人にも、新郎にも、父親にも全て私より先になった。私宛のヤツの最期の手紙がある。難病のALSを患い、震える手でやっと書いたものだ。「44年間ありがとう。生まれ変わってもまた親友で…」。そう結んでヤツは逝った。
  霧島市 久野茂樹 2014/11/28 毎日新聞鹿児島版掲載

大義はどこに

2014-11-27 20:24:23 | ペン&ぺん


 任期はまだ2年もあるのに、衆院解散で世間は総選挙モード。安倍晋三首相は記者会見で「アベノミクス解散」と述べた。皆さんもさまざまな意見をお持ちだろうが、私は首相が言う解散の大義に納得できなかった。
 2年前、私たちの清き貴重な1票を投じての国の行方を託したのだから、4年間は腰を据え、みっちりやってほしかった。首相の胸一つで、いとも簡単に解散だなんて、私たちの1票がいかに軽いか、思い知らされた。 
 原発を所管する経済産業相は小渕優子氏から宮沢洋一氏に交代したが、国家最上級レベルの問題なはずなのに選挙後、経産相の人事はどうなる。東日本大震災の被災地復興よりも、なぜ衆院選が先なのか。総選挙にかかる国の経費は約7兆円という。東北の冬はとても厳しい。震災復興に700億円を充てる考えはなかったのか。
 北朝鮮による拉致事件の解決もしばらく空白期間が続くのか。私にも娘2人がいて、横田めぐみさんの母早紀江さんらをテレビで見ると、いたたまれない。「安倍政権は本当に解決する気があるのか」と疑ってしまう。鹿屋市には、拉致された市川修一さんの兄健一さんがおられる。拉致被害者の家族はいずれも高齢者。多くの方が「北朝鮮との交渉はどうなった。選挙をやっている場合か」と思っているはずだ。 
 師走の総選挙でかき入れ時の飲食業界の皆さんから、ため息が聞こえる。選挙絡みで「飲ませ、食わせしているのでは」とあらぬ疑いをかけられないようにと忘年会や宴席を自粛する業界、団体があるという。予約の入りもいま一つらしい。
 アベノミクスの地方への効果の検証や原発、拉致、憲法改正、経済再生など鹿児島の私たちにも選挙の争点と直結する課題が山積する。候補予定者の声に耳を傾けたい。
  鹿児島支局長 三嶋祐一郎 2014/11/27 鹿児島版掲載

枯れる

2014-11-27 20:18:26 | はがき随筆
 「空腹であれば、粗末な物でもおいしい」と含蓄のある言葉。102歳のMさんが畑仕事を終えて、一服のひととき。住まいは簡素で清潔。台所は背丈に合わせコンパクトな作りで炊事も全て1人で。驚いたのは台風接近の日、木の雨戸8枚の開け閉めを難なくなされること。二つに折れて、痛みもあるその体で。
 読書、手芸を趣味とされ、さの作品は刺しゅうから小物まで見事だ。仏壇には〝辞世の句〟が詠まれており、ハッとする。人生を達観されていて、その生きざまに畏敬の念を抱く。深まる秋に黄葉は枯れてなお輝き、人の心に感動を呼ぶように。
  出水市 伊尻清子 2014/11/27 毎日新聞鹿児島版掲載

うそのお返し

2014-11-27 20:11:14 | はがき随筆
 随分前から「早くあの世へ行きたい」と言う母(84)は、グループホームで生活している。
 「お母さんのように暗い人は閻魔さまも来てほしくないとおっしゃってるよ」と言うと、少しだけ笑って「そうだね」と言う。26歳の頃の私は、弱視の父と病気がちの母を一生独身でみとろうと思っていた。5歳年下の妹が恋愛中の彼氏といつまでも結婚できないから「さっさとお見合いをして結婚しなさい」といわれ、母がもってきた見合い話の相手と結婚した。あれから、もう28年になる。
 母には少しでも明るく楽しい生活を味わってもらいたい。
 鹿児島市 内田英子 2014/11/26 毎日新聞鹿児島版掲載

紅 葉

2014-11-27 19:31:33 | 岩国エッセイサロンより
2014年11月27日 (木)


岩国市  会 員   上田 孝

山口と広島の県境を流れる小瀬川を遡ってもみのき森林公園に行った。紅や黄に色づいた木々が11月の快晴に映えて期待通りの美しさであった。思えば 若い頃は紅葉には目もくれず、もっぱら桜であった。職場の仲間とのにぎやかな花見から、家族での穏やかな花見、やがて夫婦だけの静かな花見と時を経て変遷するとともに、桜よりも紅葉派になってきたように思う。このごろでは散りゆく紅葉の方が心の深いところに染みると感じるのも、人生の坂を順調に下っている証しか。そこで歌の一旬でも詠める素養でもあればもっと深いものになるのだが。

 (2014.11.27 毎日新聞「はがき随筆」掲載 岩国エッセイサロンより転載

味覚の秋

2014-11-25 23:08:57 | アカショウビンのつぶやき




我が家自慢の果物「フェイジョア」の収穫が終わりました。
でも、たまに拾い忘れた実があるらしく、
隣のモモちゃん(ペット兎)が、見つけて食べてくれます。

今年は度重なる台風で、かなり落とされました。
でも、ご近所さんにお裾分けするくらいは採れました。

次はキウイフルーツの収穫です。
こちらも、ぱらぱらですが、完熟ですから、とっても美味しいのです。

鹿児島県おかあさんコーラス合唱祭

2014-11-25 15:09:28 | アカショウビンのつぶやき


アップがだいぶ遅れましたが、
10月24日、鹿児島市の宝山ホールで開催されました。

信愛コーラスは、15人で参加。少人数ながら頑張りました。
 
曲は、マザー・テレサ 「愛のことば」から2曲。
今回も少々難易度の高い曲だった(アカショウビンにとっては…)
ので、練習にも力がはいりました。




反省会も終わりました。
持ち寄りの品々でお腹は大満足。

さあ、次はクリスマスです。
鹿屋キリスト教会で、モーツアルトのグローリアを歌います。

はがき随筆 10月度

2014-11-25 14:36:46 | 受賞作品
はがき随筆10月度の入賞者は次の皆さんです。(敬称略)

【月間賞】8日「ささ舟」宮路量温(68)=出水市中央町
【佳作】5日「昭和」若宮庸成(75)=志布志市有明町野井倉
▽9日「愛犬は17歳」的場豊子(68)=阿久根市大川


月間賞に宮路さん(出水市)
  佳作には若宮さん(志布志市)、的場さん(阿久根市)

 ささ舟 美しい文章です。心洗われる一枚の絵画のような、懐かしい映画の一こまのような、静かで快い読後感の残る文章です。ささ舟の作り方を教えてもらって、小川で流して遊んだ思い出は、恐らく大事な心の糧としてお孫さんに残ることでしょう。
 昭和 過ぎ去った昭和という時代への追憶と賛歌です。戦争の時代、困窮の時代、しかしそれらを克服しての平和の時代。時代が大きく転換しようとしている現在、確かに昭和から得た教訓は将来に生かしたいものです。このような発言は貴重だと思います。
 愛犬は17歳 長年飼っていた番犬が、すっかり老いてしまった。白内障と難聴になり、餌を狙うカラスにも雷にも反応しなくなった。無我の境地のような老境をみると、亡母の認知症が連想されて悲しい。犬をほとんど人と同じに扱われた文章に愛情があふれています。
 この他に3編を紹介します。
 小村忍さんの「スイフヨウ」は、1日に3度もその色合いを変えるが、1日しか保たないスイフヨウの魅力が描かれています。石川啄木に「友がみなわれよりえらく見ゆる日よ花を買い来て妻としたしむ」という歌がありますが、上の句はともかく、スイフヨウが老夫婦に与える平穏な時間が描かれています。ご夫婦で焼酎で紅くなってはいかがですか。
 高橋誠さんの「黒いダンゴ」は、祖母の作っていた豆炭の思い出です。祖母の作るのは真似できないほどきれいな球形であった。独特の臭いはしますが、温かい。現在では豆炭を知っている人も少なくなったことでしょう。野球のボールくらいの少し異なるタドン(炭団)というのもありました。
 武田静瞭さんの「月下美人再び」は、夜ひっそり咲く月下美人が今年は2度も咲いたという驚きと喜びが内容になっています。奥さんの言われる「不時現象」という言葉をネットで検索したり、種子島の鉄砲館の学芸員に確かめに行ったり、月下美人の2度咲きが、ご夫婦にとっては楽しい事件でした。
  (鹿児島大学名誉教授 石田忠彦)

超人

2014-11-25 14:26:27 | はがき随筆
 県マスターズ陸上の記録会で注目の的は、90歳で3000㍍走に出場する鹿児島市の宮内さん。彼は中・長距離走で三つの世界記録を持つ超人である。
 小柄だが、力強い走りに観衆は拍手喝采だ。壮年並みのラストスパートに会場が沸いた。
 「タイムは16分台で、90歳代の世界記録を2分近く縮めた」との速報に大歓声が起こる。
 感激して「おめでとうございます」と祝福すると、「ありがとう」と笑顔で温かい握手をしてくれた。私は超人からパワーをもらい、60㍍走は10秒台でトップ。100㍍走は16秒台で2位に入り、良い日になった。
  出水市 清田文雄 2014/11/25 毎日新聞鹿児島版掲載

退山式

2014-11-24 15:18:06 | はがき随筆
 台風一過秋晴れの土曜日。お寺の退山式に出席した。住職を副住職(ご子息)に引き継がれるための儀式で、参列者の椅子は満席だった。
 柔和なご住職も心なしか、感慨深そうである。入寺されて45年目の退山だそうだ。
 髪をそられた新住職の頭は青く光り、真新しい法衣に袈裟がいっそう輝いて見えた。京都大本山の管長ほか、十数人の和尚たちの読経が厳粛に本堂に響き渡り、身の引き締まる思いで合掌する。式が終わり、にこやかに出てこられた前住職は、いつもの口調で笑いをまかれ、その様子に安堵の表情を感じた。
  鹿児島市 竹之内美知子 2014/11/24 毎日新聞鹿児島版掲載

落語ざんまい

2014-11-24 15:05:07 | はがき随筆
 「博多天神落語まつり」を3日間楽しんだ。今年は事前に案内が届き、優先予約ができたので、花禄、小朝、文枝、文珍、円楽出演の6公演を選んだ。2時間半で、5人から7人が次々噺をするので、どうしてもおなじみの短めに演目になってしまう。最終日、昼席のトリは志の輔師匠。「そらい豆腐」を1時間以上みっちり語った。聴くのは2回目だが、涙をこらえきれずハンカチで何度も拭った。夜のトリ、円楽師匠も左甚五郎にまつわる「ねずみ」を予定時刻過ぎても語り続けた。この2席で得した気分になり、大満足で帰りの新幹線に乗った。
  鹿児島市 本山るみ子 2014/11/23 毎日新聞鹿児島版掲載

デラックス弁当

2014-11-24 14:59:38 | はがき随筆
 毎日の弁当作りの大変さを十分承知している私は、息子の結婚が決まった時、弁当当番を申し出た。
 それ以来、火木土は隣に住む息子の弁当作りを楽しんでいる。出勤時間の変更や出張もあるので、メールで確認する。先日も「明日はいつも通りですか?」に「デラックス弁当でお願いします」との返信メール。
 翌日の弁当は、白ご飯の上に黒ごまでデラックスと書いた。昼過ぎ、「デラックス弁当をおいしくいただきました」と、ごく普通の反応。ユーモアはユーモアで返してほしいとお嫁さんと笑い合った。
  垂水市 竹之内政子 2014/11/22 毎日新聞鹿児島版掲載