はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

クス

2013-03-31 16:48:16 | はがき随筆
 観光鹿児島の玄関口、中央駅から伸びるナポリ通り、鹿児島大学通りなど各方面の沿道にクスの街路樹が利用され、市の緑化に広く用いられている。
 年が明ける早々、クスの枝葉が剪定されて、春には鮮やかな新緑。季節が移ろうと濃い緑がこんもりと生い茂る。
 仕事で利用した常緑高木が整然と並ぶクスの沿道は、一日の慌ただしい時間の運転を心安らぐ安全地帯にしてくれた。
 夏、クスの歩道は涼しい木陰をつくり、歩行者を南国の強い日差しから守ってくれ、緑化でけでなく安全運転の役割までも果たしてくれる。
  鹿児島市 鵜家育男 2013/3/31 毎日新聞鹿児島版掲載

絵夢の会

2013-03-30 11:56:49 | はがき随筆
 「絵夢の会」というのがあり、妻はその会員です。50歳以上の貴婦人(?)6人で構成される霧島地区の油彩画の会です。彼女たちは一昨年、東京銀座の画廊を借り切ってグループ展を催しました。妻は早くから費用を積み立ててやる気満々。長いこと会えなかった学生時代の友人たちにいそいそとインビテーションカードを送りました。茨城の孫の家にも泊めてもらいました。普段、小言でうるさい私が留守番を買って出たので、ノンビリと羽を伸ばすこともできました。「会員のみなさん、展覧会の成功、心からおめでとうございました」
  霧島市 久野茂樹 2013/3/30 毎日新聞鹿児島版掲載

のんきでいいよ

2013-03-30 11:40:34 | 女の気持ち/男の気持ち
 隣に住む小学5年生の孫娘はのんきで、母親やじじばばをハラハラさせたり、驚かせたりする。
 大事な通知表やランドセルを教室に忘れはするわ、下校中友だちと遊びに夢中になり、外した眼鏡を置き忘れるわ……。あきれることが多すぎる。特にびっくりしたのは2年生の時、水泳の後にスカートの下はノーパンで帰宅したことだ。心配したが、本人は気持良かったのか、ケロリとしていた。
 彼女は学校が大好き。7時前には家を出る。冬は懐中電灯を照らしていくので笑ってしまう。苦手な教科は算数と理科。原因の一つは居眠りらしい。そのため学校が長期休暇に入ると補習授業を受ける。
 「先生も大変だね」と皮肉ると「友達が何人も来るし、先生もうれしそうだよ」と答え、走って学校に向かう。
 絵が好きな孫はよく賞を取るが、はしゃぐことはない。温和な性格と絵の才能は9年前に亡くなった父親の遺伝子を受け継いでいるのだろう。習字も好きで、2月14日には鹿児島面の「墨跡観望」に「火の用心」が掲載された。家族は喜んだが、当人は平然としていた。
 その日はバレンタインデー。クッキーを作って友だちの家を自転車で配って回った友だち思いの孫──。
 のんきでいい。勉強はほどほどできればいい。今のやさしい心で働く母親を支え、成長してくれればうれしい。
  出水市 清田文雄 2013/3/29 毎日新聞の気持欄掲載

ホワイトデー

2013-03-30 11:27:47 | はがき随筆


 退職したら義理チョコすらも、もらえないという情けない笑い話を耳にした。
 「おじさん、これ、昨日作ったの」と、キティちゃんの柄の袋を小6の女の子が手渡した。2月15日の朝、小学校校門前での保護活動中のことである。心根のきれいなその子の行いがうれしかった。
 何物にも代えがたい、行く末が楽しみな子がまた一人増えた。早速、ホワイトデーのことを考えた。 世界中で日本にしかないこの儀式、老いても華やぐのである。商魂とはいえ日本人も粋なことを考え付いたものである。
  いちき串木野市 新川宣史  2013/3/29 毎日新聞鹿児島版掲載

コゲラとの遭遇

2013-03-30 11:14:58 | はがき随筆


 コゲラを初めて間近に見たのは、平等院から宇治神社へ行く途中の宇治川の中州。5年前の雪のちらつく寒い日のことで、数羽のコゲラがしきりに木をつつく音が辺りに響いていた。旅の思い出の一コマだ。先日、近所の医院に検診に出かけた。川沿いの道を歩いていると、まだ固いつぼみの桜の枝をつついている1羽の小鳥に気付いた。「えっ、まさか」コゲラがうちの近所にいるとは。興奮を胸に収めて検診を受け、家に戻るや図鑑を引っ張り出す。全国の広葉樹林に生息とある。近くの山にもいたということかと驚き、うれしくなった。
  出水市 清水昌子 2013/3/28 毎日新聞鹿児島版掲載

遠い私

2013-03-30 11:02:57 | はがき随筆
 「お母ちゃん、どこ?」「ここだよ」「もっと近くに来て」。私はベッドの中のお父ちゃんにぐっと顔を近づけた。「これでいい?」「いや、まだ遠い気がするよ」。私はお父ちゃんの肩をぐっと抱きしめた。「でも、まだ遠い気がするよ……」。6年前に脳出血で倒れ、重度の半身まひ、2年前には脳梗塞で再び倒れ、右半身も一時的にまひし、胃ろうもつけるようになった夫が、そう言った。元気な自分が申し訳なく思った。その日は、ずっと手を握ってなるべく側にいた。遠い私がお父ちゃんのすぐそばに帰ってくるように祈って。
  鹿児島市 萩原裕子 2013/3/27 毎日新聞鹿児島版掲載

寒稽古

2013-03-30 10:45:49 | はがき随筆


 何十年も前、中学校で寒稽古大会があり、自分は柔道を選択して1勝2敗に終わり、残念な記憶がある。
 1月の大寒の頃、通学路の田んぼは霜が降り、真っ白な景色の中、一層肩をすぼめながら歩いたものだった。
 その気分を味わおうと、山仲間たちとテント泊まりの登山を企画した。
 テントを担いで出かけた高隅山系の山中では、大寒波と重なり、明け方は眠れないほどであった。
 久しぶりに5㌢ほどの霜柱を見て、寒稽古の頃を懐かしく思い出した。
  鹿児島市 下内幸一 2013/3/26 毎日新聞鹿児島版掲載

イークンとひな人形

2013-03-29 14:47:31 | はがき随筆






 イークンは1歳5ヶ月の雄猫。私たち老夫婦と暮らしている。私はカメラいじりが好きで、イークンの動きにも常に目を光らせている。カミさんがひな壇を飾り付けた。初めて見るイークンは興味津々、人形にちょっかいを出したり、ひな壇の前で寝転がってみたり、男の子だというのにうれしそう。
 隣の部屋のテーブルには、招き猫の置物が二つ置いてあるが、その後ろでもポーズを取る。それを見て大急ぎ手カメラを取ってきた。「イークン、これいい写真だろう」。プリントした写真を見せてみたが、分かったかな?
  西之表市 武田静瞭 2013/3/24 毎日新聞鹿児島版掲載

写真は武田さん提供

誕生日

2013-03-26 12:42:54 | アカショウビンのつぶやき


とうとう70代最後の誕生日…。
いつものように、お世話になってるガス屋さんが可愛いお花を届けてくださいました。
ネームプレートがないので、名前が分かりませんが、びっしりとお花がついています。

娘はアレンジを送ってくれましたが、日にち指定を忘れ、半月前に届いてしまいました。
謝る娘に「お楽しみは早いほうがいいよ」と慰めましたが…もう枯れました。

このガス屋さんは、宿根草の鉢をくださるので、毎年楽しめます。
5年目のガーベラも健在です。
手入れが下手なアカショウビンでも育てられるような、元気なお花なのが嬉しい。

JR時刻表

2013-03-26 12:24:52 | アカショウビンのつぶやき



かつての大隅線が、載ってました。
鹿屋駅が懐かしい。
1987年に廃線となってしまいました。


さく子さんは多くの趣味を楽しみ、
特に革細工は指導もされています。
手作りのバッグの中には、かわいい小物がいっぱい入ってました。



時刻表を手にしたのは何年振りだろう…。
最近はネットでチケットを手配するため、
あの分厚い時刻表を手にすることはなかった。

今日は私がボランティアパーソナリティーとして関わっている
コミュニティエフエムのミニ番組「心のメモ帖」の取材のため
旅が大好きな、さく子さんに来ていただいた。

番組のタイトルは
「私の楽しみ 青春18きっぷ」

取材後も旅の話で盛り上がりました。
そして、青春18きっぷが、誰でも使えるきっぷだったとは…
驚きました。


尚志館高校 初勝利!

2013-03-25 22:10:54 | アカショウビンのつぶやき
鹿児島県の陸の孤島と言われる、大隅半島から
選抜高校野球に初出場した、志布志市の尚志館高校。

なんと、なんと、
初回に1点先取されながら、9回で逆転

残念ながら、日曜日の第一試合…。
テレビ観戦はできなかったのですが、

尚志館 劇的初陣飾る

踊る活字に、一日遅れで勝利の興奮を味わっています。

よく頑張ったね

やんやの喝采

2013-03-25 22:10:07 | はがき随筆
 「ん、誰だ? 臭うぞ。春杜かな」。パパがにやにやしながら、こたつを挟んで4歳に聞く。瞬間、幼い顔に緊張が走り反撃の一言が放たれる。「失礼って言ったじゃん」「失礼って言った!」。4歳は全身の針を逆立てた。まなじりを決したその勢いに大の大人がおじけづくほどだ。どうやら娘家族の中では、つい人前でオナラが出てしまった場合は「失礼」と口にするルールができているらしい。「僕はちゃんとした」。じいちゃんばあちゃんという身内ではあるが、人前で面目を潰されて怒る4歳に、私は内心「やんやの喝采」を送るのであった。
  霧島市 久野茂樹 2013/3/25 毎日新聞鹿児島版掲載

モンキチョウ

2013-03-25 00:26:51 | はがき随筆
 3歳になる孫娘が遊びに来た。私におんぶされ、畑に咲いていた色鮮やかな黄色の菜の花を指さし「チョウチョ、チョウチョ」と言うので「これは菜の花よ」と教えた。どこに飛んでいるのかと思いつつ、花に顔を近づけて見ると、花弁がちょうど、モンキチョウが羽を広げたような形状に似ている。これを理解するまでに時間を要した。透き通った濁りのないつぶらな瞳は、つい見落としがちなささいな部分をも認識していて驚かされた。ともすると、感動することに鈍感になりがち。常にアンテナを張り巡らし、感性豊かなバーバでいたい。
  鹿屋市 中鶴裕子 2013/3/23 毎日新聞鹿児島版掲載

行ってきました

2013-03-25 00:21:48 | はがき随筆
 自分で行動できるうちに、クルーズの旅をしたいと思っていたら、タイミングよく台湾・シンガポール・マレーシア旅行の新聞広告を見つけた。すぐに申し込み、パスポート申請などして主人と慌ただしく出発。
 大型客船ではこの世の騒がしさから外れ、揺れも感じなかった。しかし、私の携帯電話は海外対応ではなく、腕時計が止まった。さらに気候に合わない服を持ってきていた。旅慣れない私たち2人にとって失敗ばかりだったが、同行者に恵まれ、楽しめたクルーズ。主人との思い出ができた。また一働きして行きたい。
  阿久根市 的場豊子 2013/3/22 毎日新聞鹿児島版掲載

読む楽しみ

2013-03-25 00:14:40 | はがき随筆
 朝、何を差し置いても新聞をゆっくり読むのが楽しみで、幸せな一時だ。意外に熱心にチェックするのは、紙面下段の新刊書の広告文。
 今朝も曽野綾子著「不幸は人の財産」が目に留った。「もっとも必要なことは、常に楽しい老人になれ」という一文が添えられている。早く読んでみたいものだ。
 私はやや辛口の曽野さんの描くものが好きなのだ。夫が逝った時、さびしくて苦しくて泣きたい夜々に、繰り返し読んだのは「失敗という人生はない」(新潮文庫)だった。どれほど慰められ、力付けられたか。
  霧島市 秋峯いくよ 2013/3/21 毎日新聞鹿児島版掲載