はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

陽ちゃん桜

2007-05-31 11:36:37 | はがき随筆
 今年も陽ちゃん桜が見事に咲いた。高校3年生の甥っ子の小学校入学記念に植えた桜の木。陽ちゃん桜と呼んでいる。どっしりと大地に根をおろし、四方に枝を広げ、天を目指して真っすくに伸びている。晴れた日の朝に眺める陽ちゃん桜が、特に奇麗だ。太陽の光を浴びて、薄桃色の花がきらきら輝いている。あまりの美しさに、小鳥や蜂も集まって来て、何やらお話をしている。時折、花びらが風に舞う。春の風は桜色。優しさをいっぱい運んでくる。陽ちゃん、これからも桜の木と共に明るく強くたくましく成長してね。楽しみにしているよ。
   出水市 山岡淳子(48) 2007/5/31 毎日新聞鹿児島版掲載

梅干しおにぎり

2007-05-30 12:53:48 | はがき随筆
 新緑に真っ青な梅の実を見つけた。梅の実を眺めると、なぜか亡き母の作ってくれた「梅干しのおにぎり」を思い出す。生活が豊かでなかった我が家のおやつは、母のささくれ立った手指で握られたおにぎりであった。塩の効いたシンプルなものから昆布、高菜、梅干しのおにぎりと、母はいろいろと工夫して握ってくれた。
 今でも梅干しは私の好物だ。梅干しに母の手の温もりや生まれ育った田舎の風景が重なってくる。空きっ腹を我慢して母の手作りおにぎりにかぶりついた。あの日の少年は今、我が娘におにぎりを握っている。
   鹿児島市 吉松幸夫(49) 2007/5/30 毎日新聞鹿児島版掲載

I LOVE YOU

2007-05-29 16:37:54 | アカショウビンのつぶやき




 ムツゴロウさんこと畑正憲さんの講演会がありました。
会場には動物大好きな子供達が目を輝かせて集まっています。
開場のベルが鳴る前に、ちょっと客席を覗いたムツゴロウさん、
背をかがめて最前列に陣取った子供達の席に近づき、あの人懐こい、いやいや人間だけでなく、すべての生き物に向けられる、あの優しい笑顔で、子供達とお喋りが始まってしまいました。
 開始時間となり、司会者に呼び戻されたムツゴロウさん
「あの子たちの引力に引かれてしまいました…」と。
「動物たちの思いが分かる人になりたかった」と言うムツゴロウさんは、さまざまな動物たちの言葉(鳴き声)を紹介しながら、熊や象とも心を通わせた愉快な体験を話され時間のたつのも忘れてしまいました。講演の後は質問が続き、最後に質問した男の子が「ムツゴロウさんはライオンに指を咬まれたのですか」と聞くと、「前に出ておいで」と差し出した右手は中指の先がないのです、びっくりしました。
 咬まれても蹴られても、静かに「I love you」と声をかけながら、動物たちに近づいていくムツゴロウさん、感動の2時間でした。

コウノトリだよ

2007-05-29 09:17:57 | はがき随筆
 忘れもしない。6年生の時だ。きっかけは覚えていないが、赤ちゃんはどこから産まれてくるのかの論争が起こった。私は母から聞かされていたので確信を持って、「母親のお腹を割くんだ。母の腹にはその傷跡が残っている」と言った。間髪を入れず、いつもはおとなしいS君が「それは違う。隣のおばさんは病院への途中、リヤカーの上で生んだ」と反論した。目撃者にはかなわない。涙が出そうになった。悔しさのあまりか、その結論は覚えていない。そう言えば、コウノトリが絶滅の危機に瀕しているそうだ。これで少子化もうなずけるというものだ。
   肝付町 吉井三男(65) 2007/5/29 毎日新聞鹿児島版掲載

さくら貝

2007-05-28 07:15:08 | はがき随筆
 5月3日、緑の木々に花が咲いて山々が一層豪華な装いをなす。日本の自然の美しさに躍動を感じる季節である。まず江口浜へ。大潮の昼は砂浜が広く海が向こうにある。小流れのあるあたりの水辺に、まず目についたもの。それは、さくら貝である。小石の間にはさまったり流れに浮かんだり。ビーチサンダルをはいているのは孫2人なので、こっちに、ほらあそこにと言いながら拾ってもらいながら時を忘れてしまう。ただでさえ壊れそうな花びらを弁当殻に入れて、名残を惜しみながら阿久根へと発つ。そうそう夫が亡くなった頃、よくこの貝を拾ったなあ。
   鹿児島市 東郷久子(72) 2007/5/28 毎日新聞鹿児島版掲載

久々の短歌

2007-05-27 07:53:32 | はがき随筆
 「大事にと妻の電話の今朝もあり若々しくに声弾みけり」と短歌を作り始める。久々の短歌作り、青年のごとくうまくいかずとも、精出していくにつれまとまった1首も出来よう。投稿することも楽しみの一つである。年重ねてくると、いかに一つでも楽しみを増やすかが、生きがいの充足に結びついていくと感ずる。凡打にしても、苦にも止めずに創作をずっと続ける。まだ20首くらいの創作。いつか「はがき随筆」に佳き作品を投稿できる日がやってくることを信じよう。三十一文字に自分の心をどれほどうたい出せるか。人生の勝負である。
   出水市 岩田昭治(67) 2007/5/27 毎日新聞鹿児島版掲載

いのり

2007-05-26 09:10:26 | アカショウビンのつぶやき




きみの おいのりに なぐさめられたよ
きみの おいのりに いやされたよ
きみの おいのりに ちからをいただいたよ

きみの おいのりが 
わたしのこころを
よろこびで みたしてくれたんだよ


なんと愛らしいのでしょう。素晴らしい贈り物が届いたのです。
思わず、ほほずりしました。スペインの名品「リヤドロ」のシリーズの中で、特に目に止まった祈りのポーズの人形です。

6年間、私も楽しみながら御奉仕した小さな小さな働きを評価してくださったのでしょうか。

はがき随筆投稿者の集い、「毎日ペンクラブ鹿児島」2007年度総会の席上、事務局長を辞する私に、立派な感謝状と共に、有志の方々から、そっと手渡されました。私の我が儘を受け入れて下さっただけでも、申し訳ないのに…。

可愛い天使は、何を祈っているのでしょう。
「毎日ペンクラブ鹿児島」の益々のご活躍を、アカショウビンと2人で祈ります、みなさまありがとう。   

ハイ・ニコ・ポン

2007-05-26 08:02:42 | はがき随筆
 中学校の教師をしていた時、いつの頃からか「一木の憲法」なるものを勝手に決め、4月の新学期最初に学級や教科担当の生徒に示し、この憲法だけは必ず守ることを約束させた。つまり、この憲法は「ハイ・ニコ・ポン」である。「ハイ」は名前を呼ばれたら大きな声で「ハイ」と言う。「ニコ」は、にっこり笑って、そして「ポン」と立つの三つである。何年生であろうと授業の始まりは起立して「一木の憲法、ハイ・ニコ・ポン」の斉唱から始まるのである。生徒達はこの憲法を笑って受け入れ、お陰で楽しく授業をすることができたことを思い出す。
   志布志市 一木法明(71) 2007/5/26 毎日新聞鹿児島版掲載

母校

2007-05-25 17:09:27 | はがき随筆
 昭和13年、海辺の細長い小さな町の中学校に入学。雄大な桜島、波静かな錦江湾。そして甘い香りの酢壺が並ぶ。山の斜面はミカンがたわわに実り、四季を通じて自然がいっぱい。国道を挟んで牧ノ原の台地。牧ノ原学校との交流。懐かしく思い出される。寮(寄宿舎)が七つ。中国、韓国からの留学生も。自然環境に恵まれた教育の場だった。先輩、同級生を先の大戦で多くを失った。彼らは故郷、母校の平和を信じながら前線へ。学校は無くなったが、母校は私の心の中にいつも新鮮によみがえる。私たちを慈しみ育ててくれた母校。心の中の母校。永遠に。
   薩摩川内市 新開譲(81) 2007/5/25 毎日新聞鹿児島版掲載

オナラと団子

2007-05-24 06:49:15 | はがき随筆
 プウーッとオナラが出てしまった。くじで当たった遺跡発掘の時、2人で狭い穴を掘っていた時のことである。しまった、と思った時には遅かった。「私を女とおもっていないね!」と、強い叱責が隣の里さんから飛んできた。
 慌てて「生理現象だから。どんな人の前でも出るものは出す」と必死に弁解。昨夏の仕事は、やがて終了した。
 数ヶ月後、団子作りが好きな里さんに音楽会の電話をすると、「団子が出来たから取りにおいで」と言われる。
 音楽会にも来ていただいた。オナラを許し、出会いのか細い糸を紡ぎ続けてもらえる里さん、ありがとう。
   出水市 小村 忍(64) 2007/5/24 毎日新聞鹿児島版掲載

毎日ペンクラブ鹿児島・2007年度総会と年間賞表彰式

2007-05-23 22:09:28 | 毎日ペンクラブ鹿児島



小村忍さんの受賞挨拶


行く春や 鳥啼き 魚の目に泪 
古典に造詣の深い支局長のお話を、もう少し聞きたかったなぁ




蔵書コーナーには他県のグループから贈られた自主出版本や会報などが並んでいます


ブロック交流会


 はがき随筆06年間賞表彰式が、5月13日、鹿児島市中央町の鹿児島市勤労者交流センターであり、出水市大野原町、小村忍さんに、竹本啓自・毎日新聞鹿児島支局長より、トロフィが贈られた。受賞作は「埴生の宿」。今は廃屋となった少年時代に過ごした母屋から、家族の思い出を懐古する内容。受賞後、小村さんが朗読すると、会場から拍手が起きた。選者の吉井和子・鹿児島女子大名誉教授は、家庭崩壊が叫ばれる現代社会には、こうした作品が必要だと感じた。と話された。
 小村さんは、6月10日に北九州市で開催される、毎日新聞西部本社主催の、大賞表彰式に鹿児島県代表として参加することとなった。大いに期待しよう。
表彰式後、竹本啓自支局長の講演があり、重要なポイントを示して話された。
<要旨> 
不特定多数の人に読んでもらうには、独りよがりをさけ、具体的に描写することが大切。書くことは確認することであり、資料を持たぬ物書きは落第生! 辞書は必携です。そして決まり文句は抜きなさい…と。
   むずかしいなあ。

 午後は毎日ペンクラブ鹿児島・2007年度総会と、ブロックごとの交流会で仲間たちと親睦を深め、秋の研修会での再会を約して散会した。

はがき随筆4月度入選

2007-05-23 19:39:24 | 受賞作品
 はがき随筆4月度の入選作品が決まりました。
△ 鹿屋市打馬、伊地知咲子さん(70)の「おまけ」(9日)
△ 出水市緑町、道田道範さん(57)の「銀鱗踊る」(7日)
△ 薩摩川内市高江町、上野昭子さん(78)の「失敗に悔いなし」(30日)
の3点です。

 爽やかな5月ですね。「おまけ」によれば、ある朝、目覚まし時計に起こされた伊地知さんは、用事を思いついてさっと起きます。小さいながらこんな選択を繰り返しながら生きるのだと思いついた彼女は、これが毎日を意識して生きる一つの例だと考えます。すると平凡な毎日がキラキラ輝きはじめたと言います。立派。立派ですよねえ。
 道田さんの「銀鱗踊る」は、自宅近くの川で、2000匹以上のハヤの大群を見つけて釣った時の話。餌を投入すると道糸がピンと張り、抜くと銀鱗が跳ねて踊るとか。看護の多いスピーディーな文体から、道田さんの破裂寸前の心臓の鼓動も伝わる、内容豊かな文章ですね。上野さんの「失敗に悔いなし」は、書についてです。上野さんは、自分の書の額装についてじっくり考えました。薄墨を含む大筆を紙に突き進め、結果の良否にとらわれず穏やかに書を楽しもうと、言います。「無我の境地」。この言葉が、いいですね。この言葉にこめられた、深い思いが読み取れます。
 4月に出された文章は、皆さんの奥深い思いがこめられたものでした。じっくりと文章を書き進めることがどれほど人の精神を鍛えるか、感じさせました。吉井三男さんの「負けてなるか」や、別枝由井さんの「反抗期?」、新開譲さんの「眼瞼下垂」などは、大変おもしろい。いずれも、短くて気の利いた、しゃれたもの。暮らしの中での思いをピリッと表現して、すっきりすることは気分のいいものでしょう。必要なことですよね。さて、さわやかな5月を、皆さんはどう過ごしますか。幽玄の人生、楽しく、明るく、人に喜ばれましょうよ。皆さんの文章を読みそんなことを思いました。
(日本文学協会会員、鹿児島女子短大名誉教授・吉井和子)

係から
 入選作品のうち1編は26日午前8時40分からMBC南日本放送ラジオで朗読されます。「二見いすずの土曜の朝は」のコーナー「朝のとっておき」です。

性格は?

2007-05-22 07:56:36 | はがき随筆
 「おっとりした性格でしょう」。よくそう言われる。とんでもない。私はどうしようもないぐらいせっかちだ。今日もみそ汁を作るのに、お湯が沸かないうちから花かつおを握っていた。そんな私のどこがおっとり見えるのだろうか? 私ははたと気がついた。私もこうやって、人を外見で判断してはいないか? 人の真実は、その人と本気で向き合っていかなければわからないのに。焦げた匂いに、はっとする。みそ汁が吹きこぼれている。一体、私はせっかちなんだろうか、ぼんやりしているだけなのか?
   喜界町 福崎康代(44) 2007/5/22 毎日新聞鹿児島版掲載

これ何だっけ…

2007-05-21 20:01:15 | アカショウビンのつぶやき



花びらはマシュマロのような感じです


すっかり食べられちゃった


「私は南米原産のフェィジョアです」

毎年、聞かれるのは
「これ、何だっけ」
市場に出回る果実ではないし、
樹形もパッとしないから、庭木には向かないし
フェィジョアの魅力を知らない人が多いのも無理ないか。

一度は助からないかと心配したこともあったけれど、
見事に復活して今年もいっぱい花をつけました。
11月頃、収穫する果実は勿論のこと
肉厚の花びらも、甘い香りがして、とっても美味しいんです。
今日も摘花した花をもりもり…。
適当に摘花しないと実が大きくならないので、
お花を食べる小鳥さんになって、
毎日いただきまーす。

I LOVE 数独

2007-05-21 19:22:57 | はがき随筆
 英会話教室では授業の始めに「週末は何をしたか」と、まず聞かれる。
 新聞で知った数独のとりこになり、無謀にも上級編を買って来て、今週末は悪戦苦闘していた。
 私の英語力では「パズルをしました。とても難しかったです」が精いっぱい。
 どんなパズルかと聞かれて「日本語で数独と言うのですが、私には英語で説明できません」。
 するとカナダ人の若い先生は「数独知ってます。私の母も大好きで、よくやってます」。えーっ、数独って世界に通じるのかと嬉しくなった。
   出水市 清水昌子(54) 2007/5/21 毎日新聞鹿児島版掲載