はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

甘めの卵焼き

2013-02-28 12:31:29 | はがき随筆


 年末、息子と孫息子が帰省した。私はその頃、足首捻挫と両手のけんしょう炎の痛みで動けない状態だった。「お母さんはゆっくりしてていいよ」と息子は毎日、家事や雑用を懸命にやってくれた。朝食では甘めの卵焼きに元気をもらい、昼食はおいしいチャーハンを作ってくれた。そして血行をよくするようにと足湯も準備してくれる。バラの香りのお湯に足を入れると最高に幸せな気分。至れり尽くせりの心遣いに感謝感激の日々だった。そして正月4日、2人は早朝に上京していった。食卓には優しさがぎっしり巻かれた卵焼きが置いてあった。
  鹿児島市 竹之内美知子 2013/2/28 毎日新聞鹿児島版掲載

春を待つ

2013-02-27 22:57:26 | はがき随筆


 立春も過ぎたが寒さはまだ続く。紅梅がほころび、白梅も咲き、山陰を白く染める。早春の散歩も楽しみだ。日足が伸びたのは早起きの身にとって、うれしい。茶の間から見える白梅に毎日、メジロがつがいで来る。ミカンを輪切りにして枝に刺すと、仲むつまじくついばんでいる。その可愛い姿に見とれる。小鳥のいる風景も、またいいものである。やがて桜や桃の花も咲く。この人間の知恵ではつくれない自然の美しさ。自然を大事にし、この美しさの中で残り少ない人生を、寒の戻りに絶えて、春の来るのを待ちわびながら生きていきたい。
  出水市 橋口礼子 2013/2/27 毎日新聞鹿児島版掲載

志布志

2013-02-27 21:12:53 | はがき随筆


 朗報を聞くまで一抹の不安はあった。その霧が晴れると、疑う余地など全くなかったように思えてしまうから不思議。長い歴史の中で甲子園出場を果たせなかった大隅半島。その高校球児が夢をかなえてくれた。市民として誇りに思うし、悔いを残さない試合で甲子園を楽しんできてほしい。この温暖な地で泥だらけになって白球を追い続けた成果を遺憾なく発揮して志布志を全国に発信してくれたらと思う。いやすでに世界新記録で全国区になっている。後は納得させる球児たちの活躍を待ちたい。朗報の日、期せずして我が家の河津桜が開花した。
  志布志市 若宮庸成 2013/2/26 毎日新聞鹿児島版掲載

朝市当番楽しみ18年

2013-02-27 19:35:11 | 岩国エッセイサロンより
2013年2月27日 (水)

   岩国市   会 員   森重 和枝

早朝、霜で白く光る道を、ライトをつけて走る。今日は、ふれあい朝市の当番だ。
 寒さの厳しい日は、並ベた大根がしみるほど冷える所だが、18年もやっている。     
 毎週土日の7時半〜11時に開く。台風や、大雪の日でも、やっていて、朝取り新鮮野菜の百円市なので、リピーターも多く、開店前にはいっばいになる。
 当番は「あと5分待ってください」「籠には入れないでください」などと声掛けし、早い者勝ちにならないように、お客さんに待ってもらうのが大変なくらいだ。
 スタートから20分間は、おしゃべりする暇もない。冬野菜は大根、白菜など重たい物が多く、結構肉体労働だ。
 一段落したら、「一体みしようかね」と、手作りのぜんざいが出る。いつも持ってきてくれる人がいるので、私は朝食抜きで行く。持ち寄りのおやつを食べながら、野菜作りのこつや、新しい料理を習ったりする。月1回の当番におまけがいっばいあって、楽しんでいる。 

 (2013,02,27 中国新聞「広場」掲載)岩国エッセイサロンより転載

「冬のストレス」

2013-02-27 19:33:56 | 岩国エッセイサロンより
2013年2月26日 (火)

  岩国市  会 員   山本 一

 「あっ! また間違えた」。いらいらが頂点に違する。パソコンが思うように打てない。右手親指と人さし指の保護テープが邪魔をするのだ。寒さも本番になる師走から3月ごろまで、毎年のことである。原因は四季を問わず、毎週1回は必ず行く海釣り。釣り用の手袋は指先がない。釣った魚の処理を素手で行う。主にこの2点で手指が傷つき、あかぎれになる。
1本指でだった操作が、懸命に練習して何とか10本指でになった。また1本指に戻るのは嫌だ。さりとて10本指ではたちまち誤入力。楽しいはずのパソコンでストレスがたまる。

(2013.02.26 毎日新聞「はがき随筆」掲載)岩国エッセイサロンより転載

思い出の2.14

2013-02-25 16:46:11 | はがき随筆


 私は、先天的に心臓に障害を持ち生まれた。30代に入ると危険性が伴うということで、27歳の時に手術を受けた。死を覚悟の上で手術に望んだその日は、昭和50年2月14日のバレンタインデーだった。
 8時間以上かかった大手術が終わり、麻酔から目覚めると、看護師さんがやって来て「手術成功してよかったですね。今日はバレンタインデーです。チョコレートをどうぞ」とプレゼントしてくれた。生きたという喜び、看護師さんからの心温まるプレゼント。あの日、あの時のバレンタインデーの思い出は脳裏を離れることはない。
  鹿児島市 川端清一郎 2013/2/25 毎日新聞鹿児島版掲載

恋文

2013-02-25 16:20:51 | はがき随筆


 今ごろどうしているのでしょうか。私は梅の香り漂う庭で寄り添って咲く水仙や、葉陰に見える赤いツバキの花を眺め思いにふけっています。静かな雨の朝、あなたは一人旅立ってしまいました。あまりに性急に。あれから2年がたつのですね。大病で4年間、試練に二人で立ち向かいました。病に屈せず弱音も吐かないあなたの強さを知りました。絆を深め夫婦相和して生きたと思っています。早世は無念の極み。移ろう季節の中、よみがえる日々は懐かしく、いとおしく思えてなりません。今でもいちずに慕っています。もう一度巡り合いたくて……。
  出水市 井尻清子 2013/2/24 毎日新聞鹿児島版掲載

「見えないこと」

2013-02-23 19:35:04 | 岩国エッセイサロンより
2013年2月22日 (金)

岩国市  会 員   片山 清勝

偶然出会った知り合いの男3人。近況を語る中、「Oからの賀状が来ない」と心配する思いが、なぜか共通していた。Oは80歳代の女性。Oと3人それぞれの関わりに共通性はない。3人の中で一番若いYが、Oに連絡を取ることを決めた。
 ところがその日、Yが電話する前にOから「ふせていたが元気になりました」と掛かってきた。その驚きがメールで届いた。読む私も驚く。まるで3人の会話が聞こえたかのようなタイミング。言葉では表しきれない、心を伝える不思議な媒介が科学を超えて存在した。その謎は誰も明かせない。

 (2013.02.22 毎日新聞「はがき随筆」掲載)岩国エッセイサロンより転載

僕は野良猫

2013-02-23 17:21:28 | はがき随筆


 「僕は野良猫よ。腹がへったけど食べ物がないの」。孤独で寂しい日々。「飼い猫が羨ましい」。ねぐらもなく、山や庭を恐怖心でさまよう。早朝、ある家のベランダを通ると、奥さんが雨戸を開けている。目線が合い顔色をうかがう。
 すると「怖がらないで」と優しい声。人の心が身にしみる。そして僕を見て一言。「随筆に書くよ」とちゃかす。「逃げろ」。道路へ出ると急速する車。幼子から「危ない」と大声で注意され「危ないのはあんただ」。「ソレー」。横断成功。さて、芝生で昼寝でもするか。ごろりと横に転がる。気分最高。
  肝付町 鳥取部京子 2013/2/23 毎日新聞鹿児島版掲載

春よ、来い

2013-02-23 17:10:26 | はがき随筆


 2月に入ると3月上旬の暖かさ。梅もちらほら咲き始めた。沖縄ではヒカンザクラが満開らしい。春は南からゆっくりとして足取りでやってくる。1月上旬はこの冬最高の寒さだったのだ。ヒヨドリのいたずらに主人は嘆いた。種子からまいて育てた白菜、ブロッコリー、ホウレンソウが食べられて全滅。レタスだけは無視され不思議。キンカンも一粒残らずやられた。私はキンカン漬けも残念ながら諦めた。
 1週間前は肌を突き刺すような冷たい風に身の縮まる思いがした。午後は垂水の温泉につかり至福の時を過ごした。
  鹿屋市 田中京子 2013/2/22 毎日新聞鹿児島版掲載

地鎮祭

2013-02-21 16:15:52 | アカショウビンのつぶやき






鹿屋市で介護保険事業や助け合い、障害者支援などを行っている、
NPO法人隣の会
20年以上前からお世話になっていますが、
当時は助け合い事業所として数人のボランティアの方々で立ち上げた、
小さな助け合い組織でした。

共働きの我が家では、時々高齢の義母のお世話をお願いすることからおつきあいが始まり、
18年前、末期がんの夫を我が家で看取ったときは、
ターミナルの援助もお願いしました。
そしていよいよ、私自身がご厄介になる年齢に…。

現在は、大きな組織に成長し、NPO法人となり、
介護保険事業、障害者支援、助け合い事業と活動も多岐にわたり、
困ったときはお互い様、助け合ったり、助けたり」
を実践しています。

今回、住宅型の老人ホームの建設に取りかかり、
5月オープンに向けて関係者が集まり地鎮祭が行われました。
大規模な施設ではありませんが、
利用者と介護者がいつも近くにいることが
安心につながるように思います。

隣の会さん どうぞよろしくお願いします。

アップが遅れましたが

2013-02-21 13:40:39 | アカショウビンのつぶやき

錦江町で行われた書き初め展の撤去作業に行ってきました。
最後まで残ってくださった方々で記念の1枚です。


独心先生もホッと…






Kさんは70歳の記念に、ユニークな書を書いてくださいました。






子供達も、最後までお手伝いです。
寒い中で頑張りました。暖かいカルピス美味しかったね。
お疲れ様

コーラスのお汁粉会でした

2013-02-21 13:17:01 | アカショウビンのつぶやき


アップするのが遅れましたが、信愛コーラスのお汁粉会でした。
毎年この日は、鹿屋市コーラスフェスタと
鹿児島市で開催される、お母さんコーラス合唱祭で
歌う曲の選曲をします。

さて、今年はどんな曲かなぁ…
毎年悩むのは、歌いたい曲と実力の乖離…
ソプラノがちょっと弱い私たち、
Aのフェルマータには、びびっちゃいます。

「大丈夫、第九ではBまで出せたでしょう」と。
先生の指導力には頭が下がります。
もうダメだ…と思っても、
いつの間にか歌えるようになるんですから。

こうして決まりました。
曲は、寺島陸也
詩が、川崎 洋
「風になりたい」
もう一曲は
「モノクローム」こちらはショパンの前奏曲のアレンジです。



いよいよ、お汁粉会、皆さんの持ち寄りで、美味しく頂きました。


 
お休みが多くて、勢揃いとまではいきませんが、
今年も心を一つにして頑張ります。

「祝97歳 ケーキに笑顔」

2013-02-21 13:15:54 | 岩国エッセイサロンより
2013年2月20日 (水)

岩国市  会 員   森重 和枝 

 姑が97歳の誕生日を迎え、自宅でお祝いをすることにした。11年前に脳梗塞で倒れてから車椅子生活となり、耳も遠くなった姑は、1年前から自宅を離れ、近くの老人保健施設で暮らしている。家族皆で姑を元気づけたくて、施設から一時帰宅の許可をもらった。
 せっかくなら盛大にやろうと、近所の菓子店で生クリームたっぷりのホールケーキを特注した。ケーキの上にはイチゴをたくさん載せ、「祝九十七歳」のメッセージを添えた板チョコもあしらってもらった。

そして当日。帰宅した姑はケーキを見て大はしゃぎ。「百に近いのう」と笑顔で、切り分けられたケーキを□いっぱいにほおぱり「おいしい」を連発した。   

こんなに喜んでもらえるなんて、誕生会を開いて本当によかった。来年はもっと大きなケーキにしたい。

  (2013.02.20 朝日新聞「私の日記から」掲載)岩国エッセイサロンより転載

「ま、いいか」

2013-02-21 13:13:12 | 岩国エッセイサロンより
2013年2月19日 (火)

岩国市  会 員   吉岡 賢一

 「流し台前のマットを剥がしたら床がこんなに汚れている。どうしたらいい」 めったによこさない息子からたまに入るメールは、うす汚れた床の写真付。
「どうせこんなことよ」と愚痴の一つもこぼしながら、「重曹水をタオルにしませてね、ああしてね、こうしてね」。電話で丁寧な解説が続く。
 所帯を持ってはいても、まだまだ未熟な若夫婦にとって、母親とは生活百科事典のように頼りにされ、重宝される存在のようだ。
それよりも、もっと幅広い知識の「生き字引」を自称する父親には、なかなか声もかからん。

(2013.02.19 毎日新聞「はがき随筆」掲載)岩国エッセイサロンより転載