はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

「受ける勇気」

2010-10-31 16:32:13 | 岩国エッセイサロンより
2010年10月31日 (日)

岩国市  会 員   中村 美奈恵

 先日、乳がん検診に行った。マンモグラフィー検査は乳房を2枚の板で挟んで押しつぶし、エックス線撮影をする。涙が出るほど痛く嫌だった。

数日後、乳がんの発見が遅く、若くして亡くなられた方の番組を見た。花嫁姿が愛らしく、無念さが伝わった。私の友人も数年前、生死の境をさまよった。無事を祈り、退院の時には花を贈った。「ありがとう」と元気な声が美しかった。

検査の痛みは乳房のしこりをはっきり写し、早期発見のためだと思おう。自分のこれからと大切な人たちのために、検査を受ける勇気を持ちたい。
   (2010.10.31 毎日新聞「はがき随筆」掲載)
岩国エッセイサロンより転載


実りの秋

2010-10-31 14:59:14 | アカショウビンのつぶやき


 わが家自慢のフルーツ「フェイジョア」。
収穫の最盛期を迎えた。と言っても、落ちた実を箱一杯、毎朝拾うだけだが…。

10月中旬から小さい実がポツポツ落ち始め、下旬から11月始めにかけ、大きい実がいっぱい落ちる。実は熟しても鮮やかな緑色のまま。木をゆすって落ちた実が食べ頃という、不思議な果物だ。

「あの、美味しい果物だよねぇ…。名前は何だっけ…」
毎年同じ事を言いながら、皆さん楽しみに待ってて下さる。

今年は長雨と酷暑が影響したのか病気にかかり、葉の裏はカビが生えたように真っ黒、枯れるのではないかと心配した。

以前にも一度瀕死の状態になったが、その時は虫だった。今年はもうダメかと半ば諦めながら、世話を続けているうちに、少しずつ勢いを取り戻した。

実も小さいし数も少ないが、幸い台風もそれて、今年もわが家の秋の味覚を味わうことができた。

先日の義母の法事の頃は、まだ実が小さかったが、義母の大好きだったフェイジョアを、妹たちがきれいに箱詰めにして持って帰った。
箱には「フェイジョア」としっかり書いて。

夫は食べ方を得意なイラストにして、一緒に差し上げたものだったが…。 
by アカショウビン

ぬか喜び

2010-10-31 14:51:52 | はがき随筆
 出水商工会議所が、1万円で1万1500円の「元気お得商品券」を発売した。
 10万円に1500円のプレミアムがつく。これを購入して、私が1月に数え年の傘寿になり、2月には金婚式を迎えるので、自分たちに、ささやかなご褒美として、外でご飯でもたべようと、妻と2人で話し合い楽しみにしていた。
 ところが、発売3日目に友だちが売り切れそうだ、と知らせてくれたので、すでに完売していた。が職の夢も消えた。
 妻と苦笑いすることしきりだった。
  出水市 田頭行堂 2010/10/31 毎日新聞鹿児島版掲載 

第33回おかあさんコーラス合唱祭

2010-10-30 21:59:41 | アカショウビンのつぶやき

そろそろリハーサルです。メゾさんはもう一度、音の確認です。


スカーフをもう一度丁寧に結び直し、リハーサル室に移動します。


3世代で歌うグループは、お子ちゃまも元気に歌っています。


素敵なコスチュームのグループが多いのですが、シンプルなTシャツスタイルは新鮮でした。



 今年も「鹿児島県お母さんコーラス」で歌いました。
5月に練習スタートした「Ave Maria」は、鈴木憲夫作詞作曲の素晴らしい曲です。

かなり難しく、半年近くのあいだ繰り返し繰り返し練習しました。
アカペラで歌い始める怖さ…。
途中で伴奏が入ると半音から、ひどい時は1音下がっているのです。
今回は伴奏者のご都合で伴奏に合わせる練習が少なかったこともあり、下がる所は分かっているのですが、なかなか修正できません。

とうとう不安を抱えたまま本番を迎えてしまいました。

長い曲で6分以上かかります。
一番怖いところは何とかクリアしました。
思わず先生がオーケーサインを送ってくださいました。(*^_^*)
楽譜に書き込んだ沢山の注意事項を一つ一つ思い浮かべながら歌いました。
でも緊張のせいか、1カ所間違えた(>_<)
練習では問題なかったところなのに…残念!

何はともあれ、終わりました。

聞くのが怖いMDでしたが…みんなで一緒に聞きました。
人数が少ない割には、良く響いていますが、やっぱり下がり気味。
でもこれが私たちの実力なんです。

さあ、気を取り直してクリスマスの賛美と、あと一月と迫った第九演奏会に向けて全力投球です。

同居者

2010-10-30 12:32:08 | 女の気持ち/男の気持ち


 面白いこともあるものだ。息子が家を離れるたびに小動物が現れる。最初は6年前だった。
 就職で彼が独り立ちした4月のある朝、入れ替わるようにツバメの若夫婦がやってきた。1人暮らしの家の玄関先だけが急ににぎやかになった。
 「新しい入居者を紹介します」
 写メールを送ると、すぐに返信があった。
 「仲良く暮らすように」
 そして今回。突然の移動で慌ただしく出発することになった前夜のこと。帰宅するなり、靴も脱がないうちに息子が弾んだ声で言った。
 「夕べ、とってもいいものに会った」
 深夜の風呂場で、小さなヤモリに遭遇したのだという。
 「どんなの」
 「灰色のかわいいやつだよ」
 何気なく視線を動かした息子が、小さいけれど、はしゃいだ声をあげた。
 「あっ、あれだ、あれだよ」
 つられて玄関の天井の隅の暗がりに目を凝らすと、小指ほどの大きさのものが逆さまになってゆっくり歩いている。
 「ヤモリがいる家に、悪いことは起きないっていうからね」
 息子は安心したように顔をほころばせた。
 うちにもちゃんといたんだね。ヤモリ君、末永くよろしくね。私も嬉しくなって、一緒に笑った。
  鹿児島市 青木千鶴 2010/10/30 毎日新聞の気持ちより 写真はフォトライブラリより

一瞬の出来事

2010-10-30 12:11:51 | はがき随筆
 和歌山から、従姉夫妻が訪れたのは、昭和51年春のころ。内之浦のロケット基地へ案内することになった。炊きたてのご飯、キビナゴ、漬物、コンロも準備し出発した。
 山間の眺めのよいところで休憩。さてと立ち上がった時、突然、霧が立ちこめる。私たち全員が視界から消える。棒立ち。乳白色の霧に包まれた感じは柔らかく、ぬくもりがあり、そして明るい。
 その時、谷底からウグイスのさえずり。矢のように一声。それに合わせて霧は、さっと消えた。不可思議な自然との遭遇に私は謙虚に生きようと思った。
  鹿屋市 小幡由美子(76) 2010/10/30 毎日新聞鹿児島版掲載

夕食の時間

2010-10-30 10:23:21 | はがき随筆
 ある日の夕食時に、夫が「ミソ汁の具の豆腐が、最近、木綿豆腐じゃない」と言った。
 私は「うん! 絹ごし豆腐の方が好きだから」と言うと、夫は少し怒ったような声で「木綿豆腐の方がいい」と言った。
 夫いわく「絹ごし豆腐は、昼食の時に食べるように」と勝手なことを言う。
 以来、夕食のミソ汁の具に絹ごし豆腐は出さなくなった。
 それから、今までは、何でも上手に出来た方の料理を夫に出していたが、それを2回に1回にして平等にした。夫は気づかないようであるが、一矢報いたような気分になった。
  鹿児島市 今釜ゆかり(46) 2010/10/29 毎日新聞鹿児島版掲載

お地蔵様のご利益

2010-10-28 22:58:40 | はがき随筆
 北九州市の従姉、和子から久しぶりの電話である。主人の一周忌法要に、いとこたちが集まり食事会をしているとのこと。その中の1人が去る5月、私が、男の気持ちに書いた「愚痴聞き地蔵」の切り抜きを持参して紹介したという。これを契機に鹿児島のいとことの疎遠が話題となり、いとこ会を計画し、今すぐ電話で賛否を確かめようとあいなったという。
 確かに父方との交際は疎遠である。いいことを話題にしてくれた。もちろん大賛成。さっそく11月に別府にて開催との通知が来た。愚痴聞き地蔵さんの御利益のたまものであった。
  志布志市志布志町 一木法明 2010/10/28 毎日新聞鹿児島版掲載

「もう一度」

2010-10-27 20:40:19 | 岩国エッセイサロンより
2010年10月26日 (火)

岩国市  会 員   安西 詩代

40代のある日、新宿駅の雑踏の中で「もしもし」と肩をたたかれた。見知らぬ男性に声をかけられるのは、独身時代以来のこと。一瞬、胸がときめいた。

「お茶をご一緒にいかがですか」「いえ、私には夫がいますのでお断りします」と光の速さで会話が頭の中を駆け巡った。笑顔で振り向くと彼は小声で「スカートの後ろのファスナーが開いてますよ」。

あの妄想の時の頭の回転の良さ。今のさび付いた頭にも刺激を与えると、少しは回転するのだろうか。テレビでの認知症のテストで、机の上の物4個が、3個しか思い出せない。

 (2010.10.26 毎日新聞「はがき随筆」)
岩国エッセイサロンより転載

道つくり

2010-10-27 20:21:52 | 女の気持ち/男の気持ち
 毎年秋に行う「道つくり」が、予定時間をオーバーしてやっと終わった。作業後の飲み会で、町内会長が「遅くなりました」とお詫びのあいさつをした。詫びることはない。彼が一番激しく働いたのだから。
 一昔前までの「道つくり」は楽だった。行事が近づいたら道辺りの田畑や山の所有者たちは草を刈り、木の枝を払い、道を直して待っていた。会員たちは釜や鍬を担いで歩くだけ。景色のいい所では座って雑談を楽しんだ。
 今はやぶになって通れない所がある。この10年の間に働き手の先輩たちの多くが亡くなった。順繰りだから仕方ないが、後継者が育たないのが寂しい。若者たちは米や野菜作りでは生活ができないから、農地を離れて町で働く。親たちも同じような暮らしだったが、休日には田畑を耕し道を整えた。今の若者たちにはその余力がないのが残念だ。休日には眠るか遊ぶかしている。誰も責められない。
 今年は町内会長など数名が刈払い機で作業したから、農道も山道も通れるようになった。鎌だけの手作業だったら、「年内いっぱいかかっても終わらん」と誰かが冗談交じりに本音を言う。もっともだ。
 我が町内の良き習慣はこうして継続されている。10年先もと願うが、それにはみんなの協力が要る。そのころまで私は働けるかなあ。たぶん無理だろう。せめてみんなの迷惑にならないように暮らしたい。
  山口県光市 岩城勝彦 毎日新聞の気持ち欄掲載

みんな76歳

2010-10-27 20:14:49 | はがき随筆
 3年目を迎えた市近郊一泊の学年旅行。宮崎と福岡からの参加者2人で総勢7人。昨年の十数人に比べて、この半減は。原因は「夫を1人置いては不安だから」という。
 そうなのだ。みんな76歳。個人差は少々あるものの、ほとんど、ご主人は年上とのこと。さもありなんと欠席者の近況を伝える。宿に着いて一休みすると栗拾いに出かける。きれいに刈り込んだ斜面に転々とイガらしきものがみえる。あった! 艶のある栗が点々と。
 部屋に戻って1人7個ずつ分けた。76歳の栗拾いつき一泊の旅が始まった。
  鹿児島市 東郷久子 2010/10/27 毎日新聞鹿児島版掲載

はがき随筆9月度入選

2010-10-26 15:35:15 | はがき随筆
 はがき随筆9月度の入選作品が決まりました。

▽鹿児島市城山、竹之内美知子さん(76)の「空に泳ぐあひる」(4日)
▽出水市武本、中島征士さん(65)の「待ち伏せ二つ」(30日)
▽志布志市志布志町志布志、小村豊一郎さん(84)の「夜明けの渚」(16日)

の3点です。

 この欄を担当して初めてのことですが、9月の投稿には若い方のものが数編あり、また若者の好印象を描いたものも数編ありました。若い世代にやや失望しかけていたものにとっては、気分が少し変わりました。
 山下智恵さん(23)の「人生の夏休み」(12日)と百瀬翔一郎さん(20)の「悩んでみよう」(23日)は、大学生らしい迷いの季節が表れています。勘米良亜紀さん(35)の「うわのそら」(27日)は電話の友人のグチを聞きながら、自分の子どものころの幸せに気づく内容で、若さからのお別れのころあいです。
 福崎康代さん(47)の「地下鉄の天使」(28)は、地下鉄の階段で荷物を持ってくれた女子高生への感謝の気持ちの溢れた文章で、明るい気持ちになります。これは橋口礼子さん(76)の「感動」も同様で、山道の倒木を一人で片付けている青年の「親切、真心にふれ感動した」内容です。
 萩原裕子さん(58)の「声が聞きたい」(11日)は、脳出血での闘病中のご主人が、携帯電話で亡き母親の声が聞きたいと言われるのに、中学生の娘さんが、とっさの機転で携帯に入力してその場をおさめたという内容です。宛先は「天国」でありアドレスはなかったそうです。
 若い世代が社会の中心になりだしたようです。
 今月の優秀作を次に挙げます。
 竹之内美知子さんの「空に泳ぐあひる」は猛暑と降灰のある日、ふと空を見あげると白い雲が刻々形を変え、一時あひるに見えた。地上の酷暑と天上の自由な広がりがうまく対比されています。
 中島征士さんの「待ち伏せ二つ」は、飼いネコがニンジン畑で待ち伏せをして、虫を待ち伏せて狙う小鳥を狙ってくわえ、見せに来るという内容です。クレマチスからの命名でその名をマチスといい、15歳で急逝したとありますが、愛情溢れる追悼の文章です。
 小村豊一郎さんの「夜明けの渚」は美しい文章です。老いの早起きのせいで海岸の渚を見に行く。空のは残月。自分の人生が月のようにまた「膨らむ日」はないが、充実した日々を送りたいものだという感想です。

(鹿児島大学名誉教授・石田忠彦) 

みかえり草

2010-10-26 15:18:47 | はがき随筆






 待望のみかえり草を見に矢岳へ友人夫妻と登った。道案内はもう10回は登ったというOさん。高千穂河原から奥へ入ること50分ほど。そこから、いよいよ矢岳へ。険しい山道を2時間ほど歩き、ついに頂上へ。1137㍍とある。そこから奥へ少し入ると、みかえり草の大群落であった。なだらかな斜面を埋め尽くすうす紅色の穂状の花に息をのんだ。やがて霧が出て幻想的な光景に包まれた。以前は秘境の地だったという。
 帰りは竜王山へ向かう尾根伝い。道なき道をたどり、沢をいくつも越えた。Oさんの案内なしには行けなかったと思う。
  霧島市 秋峯いくよ 2010/10/26 毎日新聞鹿児島版掲載
写真は秋峯さん提供

デイサービス

2010-10-26 14:40:55 | はがき随筆
 「おはよう」で週1回のデイサービスが始まる。ゆっくりと静かに時は流れていく。温泉入浴、身も心も洗われる。昼の給食もすばらしい。何より心を癒してくれるのは看護師、職員の方々のかゆい所まで手の届くサービス。頭が下がる。「一人一人との触れ合いをを大事に」が徹底している。こんな世間もあるのだなあと感嘆しきり。
 3月初旬、妻が膝の手術で2ヶ月入院。民生委員が見かねてデイサービスに入ることを勧めた。最初はためらったが、今は手取り足取りのサービスで、大満足。感謝の気持ちで一日を終わる。合掌。
  薩摩川内市 新開譲 2010/1025 毎日新聞鹿児島版掲載

うりふたつ

2010-10-24 19:40:48 | アカショウビンのつぶやき
 義母の13回忌法要のため、久しぶりに夫の兄、姉、弟、妹たちが勢揃いした。
男4人女4人の8人兄弟の中で、一番若いのが63歳で亡くなった夫。
兄弟のなかで一番元気だった夫の姿がないのが本当に残念だった。

 87歳の兄を筆頭に末っ子の妹も古希間近か…。それぞれ身体機能も下り坂となり、甥っ子姪っ子たちに期待が集中する。

 それぞれ埼玉、東京、千葉、シンガポールと離れ住む弟や妹、全員集合は次第に難しくなり、これが最後かもしれないねぇ、としんみりした雰囲気になる…。

 みんなの笑顔を残しておこうとカメラを向け、ファインダーで見る妹の姿にビックリした。94歳で天寿を全うした義母に驚くほど似ている。
親子だから驚くこともないのだが、普段は気がつかない表情や仕草までそっくりなのだ。 
 父親似ではないと思っていた弟まで還暦すぎると義父に似てきたなあ…。

 両親を愛し、最期までよく世話をした夫は、若いころから父親似。
「兄貴は今も喧嘩しながら、お母ちゃんの世話してるんだろうなぁ」とつぶやく弟。

 楽しい宴は瞬く間に過ぎてしまった。    by アカショウビン