「五十年のあゆみ」という母校の記念誌がある。初めて手にしたのは30年近く前。私が勤め先で高校新卒の採用担当として各地の高校を訪問した頃だ。
ある年、母校で新卒採用の打ち合わせを済ませると、世間話になった。私は「ここの卒業生です」と話した。すると目の前の教諭が「そうでしたか」と1冊の本を取り出し「どうぞ」とくださった。50年史だった。
年度別に沿革を見たら、見覚えのある学校新聞の一部が紹介されていた。見出しは「盛大だった記念式典 創立20周年」。昭和33(1958)年度で、私は新聞部の部長を務めていた。
当時のことは、よく覚えている。校長室で「新聞部として20周年式典を記録してほしい」と要請された。それで全力を挙げて取材、発行。校長から「いい記念と記録になります」と感想をもらい、部員全員で喜んだ。
50年史を読み進めると、新聞創刊号には創立10周年記念行事が載っていると分かった。20周年は第24号、50周年は第162号で、学校の記録を残すという使命が脈々と続いていることに感動した。
私が関係した第24号はモノクロ印刷。当時は印刷物が唯一、後世に残る記録だった。懐かしいと同時に、パソコンで記録する今との隔世を感じる。
歩けば、廊下はきしみ、窓枠が揺れた。記念誌のページを繰りながら、風が吹き込む木造2階建て校舎が目に浮かぶ。
小さな学校新聞にも使命がある。高校時代よりも今の方が余計にそう感じている。
岩国市 片山清勝(81) ひといき欄掲載 岩国エッセイサロンより