はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

フランネルフラワー

2009-10-31 17:24:25 | アカショウビンのつぶやき




 フランネルフラワー「フェアリーホワイト」の鉢をいただいた。
 アルプスに咲くエーデルワイスを思わせる可憐な花。
花や葉が細かい毛で覆われていて触るとフランネルのような感触。花弁(実は苞葉)の先に薄緑がちょっとアクセントに入り、派手さはないが楚々とした姿がいい。
 ただし育てるのはやや難しく上級者向けと書いてある。四季咲きだそうだが立派に咲かせられるかな…。

 一方、3年目でやっと咲きそろったのが秋明菊。3本頂いてたった1本かろうじて残ったが、何度か枯れそうになりながら、やっと今年18個のつぼみをつけた。こちらは「非常に強い」と書いてあったのだが…。
 しばらくすると、白雪げしが芽をだすだろう。
 白い花はいいなあ。

義姉の良き日

2009-10-31 17:18:58 | はがき随筆
 頼りとしていた弟(私の夫)が亡くなると、姉は霧島山中の有料老人ホームヘ入所した。そんな姉を帰省の度に見舞ってくださる教え子夫婦がある。Y子さんで、中学の2年間だけを受け持たれて、その後転校されたというが、姉との交流は続き、現在に至るまで娘も及ばないような優しい気遣いをしてくださる。先日もご夫妻で帰郷された折に私を誘ってくださり、一緒に姉を見舞った。泣きごとが多い姉が今回はよほどうれしかったのか笑い、朗らかで今までになくしっかりとしていた。心のこもったベストなどのプレゼントも頂きごきげんな姉だった。
霧島市 秋峯いくよ(69) 2009/10/31 毎日新聞鹿児島版掲載

随友と共に

2009-10-30 23:08:39 | アカショウビンのつぶやき








 種子島から、お母さんコーラスに参加した随友Mさんが、はるばる鹿屋まで足をのばしてくれた。彼女は大規模な農業を営み、ご主人と二人で頑張っている。三日間が束の間の休息の時になってほしいと願い温泉に行ったりレンタカーで観光したり…。でも、チョー方向音痴の人間ナビと二人、知らない土地のレンタカー観光はかえってストレスになったかな? とちょっぴり後悔の念も。その上、大隅ブロックの随友と会食、ラジオ番組取材まで、本当にお疲れさまでした。

 鹿屋市の観光パンフを見ながら、Mさんは「鳴之尾牧場に行きたい」と。そこは高隈山の中腹にあり、舗装道路ではあるけれど、くねくね道の難所。なんで鳴之尾牧場なのよ…「バラ園もいまは見頃だよ-」と言ってみたが、やっぱり鳴之尾牧場だって…。
 
 道案内に自信のない私は市の観光振興課に彼女を連れて行きました(市役所は我が家の隣なのです)。応対した職員は親切だけれど
「観光牧場ではありませんから、何もないですよ」
「牛もいませんか」
「たぶんもう下りてるでしょう」と、あまりおすすめではない様子。それにもめげぬMさんは、曲がり角をしっかり確認してから、まだ不安そうな私に「大丈夫! さあ行くよ」と自信たっぷり。

レンタカー屋さんで、もう一度、道を確認したら
「カーナビに鳴之尾牧場が入っているかどうかわかりません」
「心配イランヨ、カーナビの操作なんて、私できんもん」と涼しい顔のMさん。そして二人の珍道中はスタートしました。

 車の離合が難しいカーブの多い道をはらはらしながら登り続け第1展望所につくと、視野がぱっと開け素晴らしい景色が広がっていました。そして牛がいっぱい。「おう、居るじゃん、やっぱり来てよかったねえ」。上り詰めた研修施設から見る景色がまた素晴らしい! 眼下に錦江湾、対岸の薩摩半島は少しかすんでいるが絶景。そこで食べたおにぎりのおいしかったこと。

 次はバラ園目指して下山。カープの真ん中で運悪く対向車…。でも「私、下手だからここで待つわ」とちっとも慌てないMさんには恐れ入りました。

 霧島ヶ丘バラ園は秋のバラが真っ盛り、鹿屋のオリジナルバラ<プリンセスかのや>の前では記念撮影。そしておいしいパラのソフトクリームを食べて一日観光終了。

 次は温泉。友人から<岩盤浴>のペアサービス券を頂いたので、好奇心旺盛な二人は、初体験の岩盤浴へ。滅多に温泉など行かない私だがとっても爽快な気分。最後は随友との会食。ここでまた、とんでもないハプニングがあったのですが、それはある人の名誉のため伏せておきましょう。こうしてMさんとの楽しい一日は終わったのでした。

美しい涙

2009-10-30 21:40:43 | はがき随筆
 彼女は泣いている。「悔しい」と。英語弁論大会の代表。彼女は1学期が始まるとすぐ「出場したい!」とやって来た。驚いた。今まで誘ったことはあっても自ら名乗り出た生徒はいなかったから。悩んで決めたテーマは「環境問題」。彼女は毎日、時間を見つけては練習に来、ALTにも教えを請い、原稿は赤ペンだらけ、紙もボロボロ。「まちがえました」と大粒の涙を流す彼女。この涙は何て美しい涙だろう。精いっぱい努力した者だけが流せる涙。「私はこんな涙を流したことはあるか?」。私は彼女の背中をそっとなでることしかできなかった。
  霧島市 福崎康代(46) 2009/10/30 毎日新聞鹿児島版掲載


実りの秋

2009-10-29 21:48:57 | アカショウビンのつぶやき




 去年から、野菜作りの楽しみを知った私…プランター栽培だが一人暮らしの食卓をまかなうほどの野菜は作れるようになった。
 春に採取し、大事に冷凍庫で保管していた種を蒔いたら、小松菜は三日で芽をだし、ぐんぐん成長、今は害虫も少ないので、柔らかな葉っぱを私一人でいただける幸せを味わっている。
 モロヘイヤ、ヒユナ、空芯菜は面白い花が咲き、種が大きく成長している。

 でもプランター、土、軽石すべてを園芸店で購入しないとならない。園芸店に行くにも足がない。行きはバスでも帰りはタクシー…。やっぱり私の農業はコストが高くつくなぁ。しかし、あの新鮮な味、成長の楽しみは何ものにも代え難く、どんどんプランターが増えていくのです。
 

恩返し

2009-10-29 21:06:02 | はがき随筆
 40年前、料理の修業で大阪の小さな旅館にいた。毎日仕事に追い回され必死に働いていた。自分の成人式などとっくに忘れていた正月の朝、たまたま宿泊されていた淡島千景さんに呼ばれた。さては料理のことで何か不手際でもと恐る恐る訪ねるとにこやかな顔で「おめでとさん!!」とご祝儀を頂いた。あの時のうれしさは一生忘れることは出来ない。この仕事をして良かったと思いながら着物姿の淡島さんが光り輝いて見えた。若き日の一番の思い出。どんなに励まされたことか。還暦を迎えた今あの恩を誰かに返したかなと反省する今日このごろです。
指宿市 有村好一(60) 2009/10/29 毎日新聞鹿児島版掲載


はがき随筆9月度月間賞

2009-10-28 15:23:11 | 受賞作品
 はがき随筆9月度の入選作品が決まりました。
▽鹿屋市寿5、田中京子さん(58)の「ほめ言葉」(30日)
▽指宿市山川岡児ヶ水、宮田律子さん(75)の「エアメール」(27日)
▽出水市明神町、清水昌子さん(56)の「風をかわして」(24日)
の三点です。

 9月は「風」の特集があり、たくさんの投稿を読ませていただきました。また最近、西部版の「男の気持ち・女の気持ち」の欄でも鹿児島の方の投稿を見かけます。みなさんのご活躍を喜ばしく思います。
 田中さんの「ほめ言葉」は、入院中の病室へ、ご主人と見舞いに来てくれる「愛犬ひかり」に、携帯でほめてあげたら、しっぽを振って反応したという、ほほ笑ましい文章です。何よりもケータイと犬との取り合わせが奇抜です。
 宮田さんの「エアメール」は、ユングフラウの絶景に「神々の存在」を感じ、その感激を絵ハガキで、自分あてに投かんしたという内容です。ところが帰宅すると相変わらずの日常。この両者の対比に人生を考えさせられます。
 清水さんの「風をかわして」には、八代市に墓参りに行って無事帰ってきた。ところが、その直後の高速道路で死亡事故があったことを新聞で知り驚いていると、熊本県警から問い合わせの電話がかかるというオマケまでついた。「まがまがしい風」をかわしてほっとしたという内容です。豊富な内容がよくまとめられています。
 以上が優秀作です。他にも優れたものがたくさんありましたので数編を紹介します。
 年神貞子さんの「バームクーヘン」(14日)は野外活動の時、このお菓子を竹に巻いて焼いて作ったという、ワイルドな驚きの体験談です。本山るみ子さんの「せみしぐれ」(1日)は、老母の見舞いとその死、葬儀、そして十三回忌と、それらの記憶がせみしぐれとともによみがえってくるという内容です。西尾フミ子さんの「私の秋」(20目)は、42年前の9月12日に男の子を出産した。その時、エアコンもない病室に一陣の秋の涼風が吹きこみ、元気な産声を聞いた。私だけの秋、がいいですね。戸高昭子さんの「風は私の絵本」(21日)は、自分の生活の中に、いろいろの風が懐かしい絵本のように訪れてくれるという詩的な文章です。

(日本近代文学会評議員、
鹿児島大名誉教授・石田忠彦)

落葉1枚

2009-10-28 15:22:57 | はがき随筆
 毎朝、目覚ましに庭を掃く。動いていると自然に意識が澄んでくる。今朝も掃いていると柿の葉が1枚落ちて来た。取って見ると熟柿の色より濃い赤の中に、鮮やかな黄色の葉脈が広がり、あちこちに深い緑がある。虫穴もある。が、見飽きない。
 ずっと見入っていると、なぜか懐かしい郷愁のようなものがわいてきて、いつか紫式部の時代のことを思い起こしていた。
 ちょうど出て来た妻に渡して「銀行に持っていくとお金に換えてくれるかもよ」と言うと、しばらく眺めてから「これは何物にも代え難いものよ」と妻。いやあ、まいったなあ。
 出水市 中島征士(64) 2009.10.28 毎日新聞鹿児島版掲載

 「老けた代役」

2009-10-27 11:24:50 | 女の気持ち/男の気持ち
 夕方、散歩して家の近くまで帰ってきたとき、男の子がグラブを持ってコンクリートの壁に向かってボールを投げているのに出会った。この子とは数ヶ月前に1度キャッチボールをしたことがある。「キャッチボールやろうか」、「はい」。話はすぐに決まった。
 サラリーマン時代の昼休み、毎日ソフトボールをやっていた。28年前に買ったグラブを家から持ち出しキャッチボールを始めた。
この子には祖父はいるがお父さんがいない。6年生というが、まだ幼さが残るかわいい顔だ。
 「スポーツは?」「水泳を習っています」。野球はあまりやっていないようだ。ボールの投げ方を見ても体を正面に向けてぎこちなく投げる。「体は横に向けて、こうやって投げるんだよ」と、にわかコーチをする。
 「ボールを捕る時には、高いボールはグローブをこう向けて、低いボールはこう向けて捕る」と、キャッチングの基本も教える。何とか投げて捕る格好がつくようになった。
 私がこのグラブを買ったのは、息子が10歳と5歳の時。休日にはよくキャッチボールをして遊んでやった。男の子とキャッチボールをしながら、自分の息子と遊んでいたころを懐かしんでいた。ちょうどその時、男の子の祖父が自転車で通りかかった。「遊んでもろうとるんか、ええのう」。少年が少し恥ずかしそうな顔をして私を見た。
  山口県岩国市 沖 義照(67)
(2009.10.27 毎日新聞「の気持ち」掲載) 写真も沖さん提供

真夜中の声

2009-10-27 11:16:43 | はがき随筆
 9時に消灯になった。薄明かりの中で本日4度目の点滴が済み、目を閉じると隣の病室からその声が聞こえた。「ヨシ子~、ヨシ子~」。絞り出すように糸引く声。まんじりともせず、私は見えない天井を見つめていた。翌朝、看護師さんが教えてくれた。「おばあちゃんに先立たれた、I人暮らしの83歳のおじいちゃんです。農作業の途中、胸が苦しくなって診察に来ました。突然の入院なので自分が今どこにいるのか分からず、娘さんの名前を呼んでいます」。無性に悲しくなった。正しい老い方など無いのだろう。生と死は今日も繰り返されている。
  霧島市 久野茂樹(60) 2009/10/27 毎日新聞鹿児島版掲載

こだわり

2009-10-27 11:13:36 | はがき随筆
 「ああちゃん」と甘えていた娘が、ある日突然「おかあさん」と言った。
 「『お』はいらないのよ」と言い聞かせた。
 「先輩奥さんをまねて『とうちゃん』って呼んでみたら『咲子の父親だが、君の父親ではない』って。だから『敬三さん』にもどしたの」と母が笑ったのを思い出した。
 「かあさん」と娘に呼ばせたこだわりは、父親ゆずりらしいと、いま思う。
 戦死して、写真でしか知らない父が、ふとしたときにたまらなく恋しくなる。
  鹿屋市 伊地知咲子(72) 2009/10/26 毎日新聞鹿児島版掲載

メタボちゃん

2009-10-25 19:52:58 | はがき随筆
 2歳になる孫娘のおなかが、まん丸く膨らんでいる。おむつが今にもずれ落ちそうである。娘に「おい、大丈夫か」と尋ねると、健康診断では何も言われなかったとのこと。乳離れしてから、よく食が進むらしい。
 その不格好な姿に、さっそく「メタボちゃん」というあだ名が付いた。純真な心の持ち主は疑うことを知らない。あだ名で呼ばれてもにっこり笑って、トコトコと駆け寄ってくる。
 ああ、このあどけなさを何としよう。ここ半年ばかり、私は病気に苦しみあくせく過ごしたからであろうか。無邪気な幼子の笑顔がことさらまぶしい。
  伊佐市 山室恒人(62) 09/10/25 毎日新聞鹿児島版掲載 

鹿児島県お母さんコーラス

2009-10-24 21:12:37 | アカショウビンのつぶやき
第32回合唱祭











お母さんコーラスが終わったー(*^_^*)

参加団体54、県内の女声コーラスのほとんどが参加する、一大イベント。
それぞれの団体が趣向を凝らし、耳だけでなく眼も楽しませてくれる。

素敵なコスチューム、もんぺに下駄履きスタイル、赤ちゃんをだっこして歌うヤングまま。猫のマスクをつけ「猫の二重唱」を歌ったグループなどなど…。

そしてそして私たちは、まずアカペラで童謡「とんぼのめがね」。
2曲目は難易度の高い、サトー八チローの詩に信長貴富さんが曲をつけた「私は歌に思い出をたどる」。

すばらしい詩とメロディーなのに、なかなか歌の気持ちを出せなくて苦労したが、本番はまあまあだったかな。

直前に主要メンバー三人が欠けた今回のステージは、一人一人の力を出し切って頑張るしかない…と悲壮な覚悟で臨んだ私たち…。
少し悔いも残るけれど、まあまあのできってことにしよう。
来年こそは、自信を持って歌えるようにしたいなぁ! 
確か、そのセリフは去年も言ったような…。

レベルの高いグループの発表を聴ける機会はそう多くはない、今年も良い勉強をさせていただきました。感謝!



約束のジュース

2009-10-24 09:52:12 | はがき随筆
 「おいしい?」。濃摩でまろやかな酸味の、夫の好みのジュースを手に夫に語りかける。
 22年前のハワイでクルーズのフラダンスを楽しみ、夕焼けの空を眺めながら飲んだ美味な生ジュースは最高だった。
 後年、グァバの苗木が育ち、赤い実を付けたが、気付くのはいつも落果の後。来年は作ると約束するが駄目で、夫に笑われていた。     
 今年こそと早朝に実を取りジューサーを使用。三温糖を入れ加熱。2日かけて完成。やっと約束を果たした。体調の悪さも暫時忘れる程うれしかった。
  薩摩川内市 上野昭子(80) 2009.10.24 毎日新聞鹿児島版掲載

母ちゃん床屋

2009-10-24 09:36:32 | はがき随筆
 退職してから理髪店に行ったことがない。妻が散髪してくれるからだ。妻は子供たちが小さいころ、電気バリカンとハサミを購入し散髪してくれていた。見よう見まねで覚えたらしい。
 私が退職すると「散髪代もばかにならない。私が散髪してみようか」と言い出した。私はそう言う妻に不安を覚えながらも、失敗したら坊主頭にするだけと腹をくくり臨むことにした。はげて毛の少ない頭は約30分で終了。恐る恐る鏡に向うと、なかなかの出来である。
 私の気性からして、短時間で仕上がるのがよい。かあちゃん、これからもよろしくな。
  鹿児島市 川端清一郎(62) 2009/10/23 毎日新聞鹿児島版掲載