はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

大晦日

2010-12-31 18:38:45 | アカショウビンのつぶやき

異様に静かな朝で、大晦日と言うのにうっかり朝寝坊してしまいました。
窓を開けると外はモノクロの世界。夕べは雹が降っていたのですが、一夜で庭は真っ白…静かに雪が降り続いています。
雪の少ないこの地方ではこの歳になっても銀世界には胸が躍ります。
でもカメラを持って外に出た途端「寒いーっ」。


まだ枝にぶら下がっていた、わずかなブルーベリーの真っ赤な葉っぱも重そうです。


サザンカは雪の下で健気に咲いています。

年末年始は大荒れの様子ですが、子どもたちの帰省もどうなるのでしょう。

古い木造家屋の我が家は寒いので「東京より寒い…」と子どもたちはぼやきますが、しばしの家族の団らんのときをひたすら待っています。

今年もあっと言う間に過ぎて行きました。
今年は第九演奏会に参加したため、年明け早々から頭も体も忙しい日々でしたが、充実感も味わうことができました。

さあ新しい年はどんな年になるのでしょう…。

一年間このつたないブログにお越しくださった皆様に感謝します。
皆様どうぞよいお年をお迎えください。

by アカショウビン

冷線

2010-12-31 18:19:28 | はがき随筆
 砲撃で緊張が伝えられるソウルへの旅にためらいはあった。しかし、後戻りの出来ない性格と相まって、円高の利や食べたい物が目の前にちらつくと、矢も盾もたまらない性格は妻も同じ。予定通り出発した。空港も平穏だし、市内にも緊張感は特にない。
 買い物を楽しみ、韓国料理に舌鼓を打つぼくたちが異国からの旅人には見えないだろう。それなのに南北に別れた同胞が、会話を、食事を楽しむことがままならない。
 あの線は誰が何のために引いたんだろう。旅人の僕はそんなことを思ってしまう。
  志布志市 若宮庸成 2010/12/31 毎日新聞鹿児島版掲載

この一年

2010-12-30 18:57:14 | はがき随筆
 沖縄基地、尖閣諸島、政治の沈滞。私はどうだったかな?
 元旦、曇天で朝日は臨めなかった。その夜の満月に「怠けないことに精を出す」と誓ったが、鉢物の手入れを怠り、数鉢枯らし、折々に描いていた水彩画も、道具を買い足したのに、それらしい作品はない。例年の登山も行かず、図書館も足遠くなりファッションに疎くなった。
 昼寝したことはなくせっせと体を動かしたように思うが、あれもこれも怠けが見えた。唯一、毎朝のヨガ風体操が良かったのか。病気やけがをしなかったことが最善と、庭に飛来した冬鳥を眺めつつ今年を振り返った。
  出水市 年神貞子 2010/12/30 毎日新聞鹿児島版掲載

テレビ考

2010-12-30 18:51:30 | はがき随筆
 地デジ。デジタル放送。世の中の流れに乗りハイビジョン液晶テレビを購入した。なんと、ほっそり薄型。画面も鮮やかで、きれいに映る。BSアンテナもつけてもらい、見ることができる番組の数も増えた。
 テレビ仕組みも、よくわからないまま見ているが、開発、製造までには数々の喜び、苦しみ、試行錯誤があったことだろう。テレビの進歩、発展に拍手喝采。映像文化、テレビの影響はいろいろあろうが、生きる力や希望がわくような番組の制作放送を期待している。と、同時に、ふと童話「おじいさんのランプ」を思い出した。
  出水市 山岡淳子 2010/12/29 毎日新聞鹿児島版掲載

川を渡るな

2010-12-30 18:44:44 | はがき随筆
 幼い女の子が「この川を渡ってはいけないよ。帰りなさい」と言いながら、盛んに手を振っている。
 長女は妊娠7ヵ月で、出産は危険な状態。「親をとるか、子供をとるか」という医師の診断が出た。「子供は、また授かるから」と帝王切開に踏み切って出産した。その間、意識のない長女が見た光景が、手を振る女の子だった。
 手術が済んだのは真夜中の午前0時すぎ。生まれたその子が今年で満20歳の成人になる。今は大学2年。のびのびと成長している。幸多かれと祈っている毎日である。
  薩摩川内市 新開譲 2010/12/28 毎日新聞鹿児島版掲載

「来年はいい年かも」

2010-12-29 20:17:17 | 女の気持ち/男の気持ち
2010年12月29日 (水)
岩国市  会 員   貝 良枝

 朝9時、ゴミ出しをしていないことに気づく。徒歩1分のゴミ集積所だけど、ゴミ袋を車に積み込む。もうこの時間では、収集車が来た後かもしれない。そうなるとゴミ袋を持ち帰らなくてはいけない。それを見られるのはカッコ悪いから車で運ぶ。
 「エコじゃないよなぁ」と独り言を言いながら集積所に行くと、まだ収集車は来ていなかった。安心したら、ラジオからギターの音色とほんわかした歌声で「トイレには、それはそれは、べっぴんさんの……」と歌っている。ひょっとしてこれは「トイレの神様」?
 車を止めて聴き入った。目の前の田舎の風景に溶け込むような穏やかな歌だった。前から気になっていた歌で、聴いてみたいと思っていたからちょっとうれしかった。
 空は晴れ。ゴミ出しは間に合った。気になっていた歌も聴けた。今日はいい日かも。
 それから1カ月後、ボランティアの集会があった。その集会で「この歌を聴いてください」と「トイレの神様」がかかった。
 「おばあちゃん、ありがとう ホンマにありがとう」まで聴いたら涙があふれてきた。ふと見ると、周りの人も涙している。みんな同じ気持ちだったんだ。優しい歌にまた出合えた。優しい人たちと同じ場所にいられた。今日はいい日だ。
 大晦日の紅白歌合戦でこの歌がまた最後まで聴けるらしい。来年はいい年かも。
  (2010.12.29  毎日新聞「女の気持ち」掲載)岩国エッセイサロンより転載




クリスマス祝会

2010-12-27 19:45:59 | アカショウビンのつぶやき
鹿屋キリスト教会では、24日のクリスマスイブに、クリスマス祝会を行います。
今年も多くの方々をお招きして神様の御子イエス様のお誕生をお祝いしました。

まず牧師先生のクリスマスメッセージです。
クリスマスの本当の意味をお話下さいました。すべての人々の救いのために人となって来られたイエス様の誕生を共に喜び感謝しましょう。そしてプレゼントを期待する日でなく、与え合い、分かち合う日にしましょう。

そしてお楽しみの会が始まります。まず、男性の会、ヨセフ会の賛美です。ヨセフ会は営繕関連で奉仕を続けて下さいました。





高3のSさんはヴァイオリンの演奏をお母様のピアノに合わせて演奏してくださいました。
来年は大学生になるSさんは音楽の道に進みます。



続いて、ハンドベルリンガーズとコーラスのコラボです。クリスマス物語「ベツレヘムの夜」シナリオはY先生の書き下ろしです。



ベルを持って20年以上のベテラン、KさんとNさんの演奏はさすがです。
15箇のベルを巧みに扱う素晴らしい演奏でした。



続いて去年から始めた私たちも…。小さなミスはありましたが、3曲演奏しました。



そろそろ小さいお客様は…
そこで信愛幼稚園の先生方が楽しい指遊びで子どもたちと一緒に遊んでくださいました。
ありがとう。

最後はキャンドルサービス。幻想的なロウソクの光の中で、クリスマスの賛美歌を歌いクリスマスイブは静かに更けていきました。

まず玄関

2010-12-27 17:56:23 | はがき随筆
 グラウンドゴルフの休憩時間に先輩が「掃除を始めましたか? 私は、仏様はきれいに済ませました」と促される。
 1人には残りすぎる家に、あれこれ集まるので、年末は捨て方に苦労する。夏休み明けの学校区の廃品回収が雨で中止となり、ためた新聞紙の山が邪魔で、月曜日にカートで4回分くらい出した。すると、廃品回収を土曜日に実行するとの回覧が回ってきた。私は玄関からホコリを払い、雑然と置いた花の種子殻や置物を動かし、捨てるものを仕分けた。はたきをかけ、午後の陽が入ると、あたり一面が輝いてみえた。次は風呂場?
  鹿児島市 東郷久子 2010/12/27 毎日新聞鹿児島版掲載

甘く切ない記憶

2010-12-27 16:36:50 | はがき随筆
 師走は普段しないところも思い切って片づける。そうしたら引き出しの中からオレンジ色をした1本の香水の瓶が出てきた。
 13年前の夏、私はある香水と出合った。それまで香水にはまったく興味のなかった私だが、その香りは決して強くなく、甘くてすてきなものだった。欲しいなあと思ったが、自営業を始めたばかりの我が家には、買うようなゆとりはなかった。
 その香水との出合いを「女の気持ち」の投稿したら掲載された。題は「忘れられない香り」だった。
 その年のクリスマスに夫と外出した。目的があったわけではない。ウインドーショッピングを楽しんだり、本屋に寄ったりして、華やいだ師走の街をふたりで気ままに歩いた。
 偶然だったと私は思っているのだが、デパートの化粧品売り場の前を通りかかったその時、夫が「あの香水買ってもいいよ」と言った。うれししかった。新聞に載って5ヵ月もたっていたのに、夫は覚えていてくれたのだ。香水は夫からの数少ないプレゼントの一つとなった。
 そして今、夫は入院している。若年性アルツハイマー病の彼の記憶から、私は消えようとしている。
 出てきた香水を、トイレのタオルにシューッとひと吹きした。
 トイレに入るたび、覚えていてくれたというあの日の喜びの記憶が、甘く切なく私を包む。
  山口県下関市 本島由紀子 2010/12/25 毎日新聞の気持ち欄掲載

旅の抄その1

2010-12-27 16:30:49 | はがき随筆
 エジプト6日間、駆け足の旅を振り返っている。
 エジプトの3000年にわたる繁栄。それは、ファラオ(王様)の絶大な権力によってのみ、もたらされたものではなかったのだと知った。
 およそ5000年前、上エジプトと下エジプトを統一して以来、ファラオは上と下との和の象徴として二重冠をつけることになったという。和の心とナイル川の恵みが繁栄の基礎になったと私は理解する。
 新しい年に向かい、人の和と自然を大切にする心を深めていきたい。そう改めて思うことである。
  鹿屋市 伊地知咲子 2010/12/26 毎日新聞鹿児島版掲載

スンガマ

2010-12-27 16:23:50 | はがき随筆
 小向井一成さんのハガキ絵「スンガマ」(9日掲載)で、幼いころの出来事を思い出した。初めてのお泊まりが、おじさんの炭焼き小屋だった。人里離れた山奥。昼間、拾った椎の美を食べた。香ばしくて甘かった。
 小さなラジオで歌を聞き、昔話を聞き、ムササビの鳴き声やタヌキの姿に怖い思いをした。ひたすら夜明けを待った。あの時の山は姿を変え、うっそうとした杉林になっている。顔中を真っ黒にして働いていたおじさんも、もういない。
 二度と帰ることのない私の思い出。それが小向井さんの絵の中に、しっかりとよみがえる。
  指宿市 有村好一 2010/12/25 毎日新聞鹿児島版掲載

車椅子

2010-12-27 16:17:58 | はがき随筆
 うれしくて、押してみたかった車椅子の同窓生Yさんを、少し速く押してしまった。
 隣にいた友人に「乗っている人が安心するように押しなさい……」とたしなめられた。
 Yさんは、せっかくの芦北の澄んだ不知火海を見ても、心は晴れなかったかも知れない。
 注意された後、ふと、亡き母の寂しそうな顔が浮かんだ。当時、終末医療中の母。教職だった私は多忙で、母を看護師さん任せにした。ただの一度も母の車椅子を押さなかったのだ。
 親不孝の後悔は増すばかり。
 これから、車椅子を見るたびに胸が痛むことだろう。
  出水市 小村忍 2010/12/24 毎日新聞鹿児島版掲載

一人に耐えて

2010-12-27 16:11:25 | はがき随筆
 日暮れが早くなってきた。診療時間は5時半までだが、そのころになると、もうあたりは暗くなる。仕事が終わって誰も居ない暗い家に帰るのは一層わびしいので、前もって灯りをつけておくことにしている。たいしたことではないのだが、当人にとっては重要なことである。
 1人暮らしというのは、経験した人でないとわからない寂しさがあるから。そして今が一番寂しい季節なのかも知れない。しかし、すべては宿命としか言いようがない。もう長くもない人生ではあるが、運命に耐えて力強く生きてゆきたいと思っているこのごろである。
  志布志市 小村豊一郎 2010/12/23 毎日新聞鹿児島版掲載

検定準備で故郷学ぶ

2010-12-26 18:07:18 | 岩国エッセイサロンより
2010年12月22日 (水)
 岩国市   会 員   片山 清勝

 「故郷の歴史や文化を多くの市内外の人に知ってもらい、それをご当地検定に膨らませよう」とことし1月、12人の有志で「岩国検定実行委員会」を立ち上げた。

 準備すること約1年。11月末に第1回岩国検定を実施した。19歳から90 歳までの百余人、県内はもちろん、北陸は石川県からも応募があり会員みんなで喜んだ。無事検定を終え、合格認定証を発送、ほっとしている。

 岩国市は1940年の発足から数度合併し、市域は県で2番目の広さ。この広い地域の何をどれだけ知っているのか、と問われたら、答えるのに窮する。そんな不安を抱きながらも、会の魅力にひかれ、仲間入りした。

 資料を読んだり、調べたり、問題を考えたりする中で多くのことを教わった。それらは歴史や文化に産業など広範で、故郷を再認識するというより、初めての学習に似ていた。

 会では今回作成した資料を集大成し、次回検定の参考本の編集を話し合っている。市民の目線から見た故郷の力、それを織り込めたらこの上ない喜びになる。

  (2010.12.22 中国新聞「広場」掲載)岩国エッセイサロンより転載

「ピコピコキュ」

2010-12-26 18:04:38 | 岩国エッセイサロンより
2010年12月21日 (火)
山陽小野田市 会 員   河村 仁美

 シャンプーを始めた美容師さんの手が一瞬止まった。「奥さんの地肌、硬すぎです。地肌が硬いと老けて見えますよ」の声に大ショック。白髪のない黒髪が唯一の取りえだったのに。

 それから会う人に「ねえ、地肌って動く?」の質問攻め。みんなの地肌は頭の上でピコピコ、耳の上でキュッと面白いくらいよく動く。えっ、私だけ?

 妻の一大事に、老けてもらっては困ると思った主人。せめて現状維持をと、無精な妻に代わって地肌をピコピコキュと優しくマッサージ。きれいになるのは無理だけど、地肌の効果は期待して大丈夫だよね。
 (2010.12.21 毎日新聞「はがき随筆」掲載)岩国エッセイサロンより転載