はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

鹿児島赴任1カ月

2013-04-30 15:54:17 | ペン&ぺん

 鹿児島に赴任して1カ月。報道機関を大事にしてくれる土地柄なのだろう。新年度スタートということもあって、支局来訪者の多さに驚く。同時に弊社への名義後援の申請の多さにもびっくり。むろん他社にも申請されておられるが、多くの支局を渡り歩いてきた私にとっては、やはり多く感じる。他の支局では開催まで1カ月もないのに「同封した用紙に承諾か否かを丸囲みし、◎日までに返送を」といった調子で申請してくる団体・個人も。切手を貼った返信用の封筒も、ない。支局には「名義後援をいただきたいが、どのようにしたらよいでしょうか」と問い合わせの電話がある。これが当たり前だが、新鮮な気持ちになる。
 単身赴任なので仕事の合間に公共料金の手続きをし、鹿児島市役所で転入届を済ませた。森博幸市長の印が押された住民票の写しをもらい、鹿児島銀行で口座を開設。また買い物時に便利なようにとマルヤガーデンズやビッグカメラなどでカードを作った。現住所を確認できる免許証は旧住所のままだったが、市発行の住民票の写しを提示すると、全て事足りた。
 でも、ある大手スーパーは違った。「住民票の写しでは駄目」だった。「警察で免許証の裏に新住所を書いてもらって。その免許証があれば手続きができる」と。森市長の印が押された写しは通じなかった。担当者はこのように指示されているのだろう。早速、鹿児島中央署へ行くと、係の人は持参した住民票の写しを“基”に新住所を免許証に書き入れてくれた。
 転入手続きの際の市職員の対応も好印象。平川動物公園などを無料で利用できる「ウエルカムチケット」をもらった。とことん見て回りたい。よそから来た人を受け入れる土地だ。それと、この1カ月で交通死亡事故が多いのが心配だ。連休中も細心の注意で運転を。
鹿児島支局長 三嶋祐一郎

おのぼりさん

2013-04-30 15:49:40 | はがき随筆
 40年前、東京の大学を卒業し、就職は田舎と決めていたので、都会への憧れはなかったように思う。
 中学校の同窓会が大阪であり、そのついでとして久しぶりに東京見物をすることにした。東京スカイツリーをメインとして、名所旧跡を訪ねる3日間は男の一人旅で気ままであった。
 しかし、各地での人間の多さに目を回す錯覚を感じた。やはり年のせいであろう。これからは残念ながら「おのぼりさん」の感覚を持とう。
  鹿児島市 下内幸一 2013/4/30 毎日新聞鹿児島版掲載

はがき随筆3月度

2013-04-29 17:05:02 | 受賞作品
 はがき随筆3月度の入賞者は次の皆さんです。(敬称略、年齢は掲載時)
【月間賞】15日「小さな友」松尾繁(77)=出水市
【佳作】16日「教え子の夢」小村忍(69)=出水市
▽18日「こんにちは」畠中大喜(76)出水市


小さな友 書き出しの一文がいいですね。「寒風」のイメージは屋内に閉じこもるものですが、それが「野鳥」で逆に戸外へと解放してくれます。それに、小鳥の挨拶にむきになるところや、ジョウビタキの姿勢に鹿威しをみるなど、すぐれた表現が目立ちます。野鳥との交感が内容になっていますが、小鳥と人との永い永い「よしみ」を、冬の農作業で実感するところに、人も含めた自然の営みを感じさせてくれる文章です。
 教え子の夢 学校の教師は、何となく野暮ったく鈍臭い職業に思われがちですが、子どもの命や人格にかかわる仕事には、他人には分からない悩みも喜びもあります。連絡が取れなくて気がかりだった教え子が、20年ぶりに植物の新種を持って会いに来てくれた。ただそれは夢の中であった、という嬉しいような悲しいような、愛情溢れる文章です。
 こんにちは 散歩の途中で出会った、向かい風の中を自転車で帰りながら、挨拶してくれた女子高校生の爽やかさに、挨拶も忘れがちな自分を反省したという内容です。ちょっとした挨拶でも人間関係の潤滑油ですので、それが若い世代に守られていることに希望を見ることができた、心地よい文章です。
 次に記憶に残った3編を紹介します。
 中鶴裕子さんの「モンキチョウ」は、菜の花の花びらをチョウチョウとみた、3歳のお孫さんの感性の豊かさと柔らかさに、感動したという内容です。確かにこういう感性は持ち続けたいものです。年神貞子さんの「納豆」は、平安末の源義家にまつわる納豆の謂れと、ご自分の納豆製造法を並べて書いたところに、たかが納豆ですが、生活の歴史が感じられる文章になっています。武田静瞭さんの「イークンとひな人形」は、飼っている子猫の可愛さにべったりの文章です。この種の書き方は失敗すると厭味が先走りするものですが、趣味のカメラを通して愛猫をみるという視点があるので、客観的な落ち着きのある文章になっています。
(鹿児島大学名誉教授・石田忠彦)

マコトがいっぱい

2013-04-29 16:57:29 | はがき随筆
 私の名は誠。お向かいの女性陶芸家は本名は違うが、眞窯という窯元で通称「マコトさん」と呼ばれている。
 そこに異動で鹿児島市勤務になった娘夫婦が、住居が決まるまで我が家に同居となった。娘の配偶者の名が真人。家族の会話でも、どのマコトなのかはっきりしないことも。
 村上春樹が新作を発表したので、ネット上に彼の似顔絵を投稿した。それを見た女房が「真人君て村上春樹に似てるね」。そこで娘に「真人君をハルキと呼ぼう」と提案したが、すげなく断られた。当分紛らわしいマコトが続く。
  鹿児島市 高橋誠 2013/4/29 毎日新聞鹿児島版掲載

トンカラリ

2013-04-29 14:51:32 | はがき随筆
 母の終末期には、姉妹3人と兄嫁の4人で1カ月、医院で付き添いました。
 母の寝息を聞いていると、胎内にいるようで、心地よかったです。私を妊娠中、姉と兄は子守さんに預け、紬の機織りを楽しんでいたそうです。少し織っては出来栄えを眺め。少し織ってはおなかをさすっていたのでしょうか。
 トントン カラリ トンカラリ。
 今も耳元で聞こえるようです。私も機織りをしたくなりました。長男に話すと、「やればいいよ」と、インターネットで織物教室を探してくれました。
  阿久根市 別枝由井 2013/4/28 毎日新聞鹿児島版掲載

薬の夢

2013-04-29 14:43:44 | はがき随筆
 いつだったか私が教室で、「この薬を飲むと漢字が覚えられる。この薬を飲むとテストで100点が取れる。そんな薬があってらいいね」と話すと、子どもたちが「そんなのはつまらない。努力しないと」と言ったことがあった。
 神奈川県に住むおいっこが薬の研究をしたいと言っているという。どんな薬の研究、開発を夢見ているのだろう。小さい頃からの興味、関心が旺盛だったおいっこの笑顔が浮かぶ。夢を持って前に向かって進んでいってね。希望の春の始まり。応援しているよ。
  屋久島町 山岡淳子 2013/4/27 毎日新聞鹿児島版掲載

カモミールティ

2013-04-28 22:04:54 | アカショウビンのつぶやき

友人が、いっぱいカモミールをくださいました。

「あなたは、パソコンばっかりやってるから、気分転換に
カモミールの香りを嗅ぎながら、
お花をちぎって、カモミールティでも飲んで…」と。

ありがたく頂戴しましたが、量の多さに…。
3時間かけて、花をちぎり、窓辺に並べておきました。

部屋中にさわやかな香りが満ちています。

「わが家の晩ごはん」

2013-04-27 10:22:52 | 岩国エッセイサロンより
山陽小野田市  河村 仁美

 嫁ぐ娘に家庭の味を受け継いでもらうために、わが家は「父娘の料理教室」を開催中。娘も料理本と格闘するより習う気になってきたようで、感心、感心。

主人の教え方は、あれこれ言わず見て学べ。私みたいに口出しばかりだとやる気もうせるが、悪戦苦闘しながらも楽しくやっている。マンツーマンなので料理はおいしいし、献立を考えなくていいのでラクチンだ。
 料理というと、「母から娘へ」というイメージがあるが、「父から娘へ」もいいかもしれない。夢のような料理教室は毎晩のように続き、食を通して親子のつながりを深めている。
  (2013.04.25 毎日新聞「はがき随筆」掲載)岩国エッセイサロンより転載

「徳を積む」

2013-04-27 10:20:39 | 岩国エッセイサロンより
2013年4月27日 (土)

 岩国市  会 員   横山 恵子

以前住んでいたY町でお世話になった同級生のお母さんが、ケアハウスに入所したと聞いた。
 会いに行き近況報告の後、「ご主人、お元気」と聞かれた。「脳梗塞で足が不自由になりました」「あなたも苦労するわね。でも、定年まで勤められたんでしょう。大事にしておあげなさい。大変だろうけど、徳を積むことになるのよ」
 徳を積むって、何十年ぶりに聞く言葉だろう。夫に「徳を積むって」と聞くと、「良いことをすること」と一言。「私が父さんに徳を積んでいると思う」。冗談ぽく聞くと、夫の口元は笑った。
   (2013.04.27 毎日新聞「はがき随筆」掲載)岩国エッセイサロンより転載

車誘導方法の統一を

2013-04-26 22:29:45 | はがき随筆
 道路などの工事で走行車を誘導してくれる警備員さん、ご苦労様です。ドライバーは感謝しつつも、警備会社で誘導法が違うために戸惑うことがあります。先日も警備員さんが右側の車線に移るようなしぐさで旗を振るので、“進行”と思って進むと“停止”の指示でした。そういう経験をされた人は多いと思います。その点分かりやすいのは赤旗を胸の前に広げるポーズです。
 今月11日も阿蘇登山道の片側交互通行路で観光バス同士が正面衝突して韓国の修学旅行生や観光客26人がけがをする悲惨な事故が起きました。運転手は「みぞれで視界が悪く警備員に気付かずに進んだ。」と説明したようですが、彼だけの責任でしょうか……。天候が悪い時ほど警備員の機敏な行動が事故を防止するはずです。
 全国の警備会社にお願いです。指示の仕方など車の誘導マニュアルを統一してください。
車の安全、人命を守るために検討されることを期待します。
  出水市 清田文雄 2013/4/24 毎日新聞鹿児島版 みんなの広場欄掲載

お花見

2013-04-26 22:09:54 | はがき随筆
 今年の桜は史上2番目の早咲きとなった。好天に恵まれ、大分県の岡城址へ夫婦でお花見に行ってきた。満開の桜が、さながら薄紅色の雲海のようだ。
 この地で少年時代を過ごした滝廉太郎の「荒城の月」を聴きながら散策するのも味わいがある。高台にある城址では、ウグイスがさえずりタンポポ、スミレが咲き、土筆が頭を出し、力強い春の息吹を感じた。石段を上ると、当時の住人が突然姿を現し、タイムスリップしても不思議ではない。きっと同様の風と空気を感じていたはずだと思いを馳せ、秋には月を見に来ようと車を走らせた。
  鹿屋市 中鶴裕子 2013/4/26 毎日新聞鹿児島版掲載

チット食え

2013-04-26 22:03:54 | はがき随筆
 家庭菜園を始めて2年目に入った。ほぼ毎日、食卓に何かしらあがる。今はスナップエンドウ、タマネギなど……。真夏の炎天下での草取りや虫取りなどは、収穫の楽しみを知ってからは日焼けも勲章と思える。
 孫や友達には見栄えのいい品ばかり送り、根が何本も枝分かれした不出来のニンジン、大根もいとおしく思えるから丸ごと食べる。そこえダイエット中の私にコジュケイがチット食え、知っ食えとブレーキをかける。まったくよくできたものだ。5月の連休には孫と芋植え8月には芋掘りと夢が膨らみ、2年目も忙しくなりそうだ。
  阿久根市 的場豊子 2013/4/25 毎日新聞鹿児島版掲載

待てるだろうか

2013-04-24 23:41:35 | 女の気持ち/男の気持ち
 地方在住の次男が2年ほどの予定で東京に研修に行くことになった。次男は29歳になる。長男は就職してすぐに結婚し、かわいい孫も2人できた。幸せと安堵をたっぷり味わった私は次男にも早く結婚してほしいと願っていた。それなのに……。30歳までにはと目標を立て、息子をせき立てていた私はすっかり気落ちしてしまった。
 今、お付き合いしている方はいるらしいのだが、2年も待ってくれるのだろうか。息子に「しっかりと約束しておくように」と言うのだが、忙しさにかまけて煮え切らない。もうそんなに日数もないのに、せめて婚約のまねごとだけでもしていってくれたら安心なのにと、私はひとりやきもきするばかり。
 周囲が言うように、彼女には仕事を辞めてもらい東京について行ってもらったら、どんなにか安心かわからない。でも私は息子と同じ職業の彼女に「女だから」という理由で仕事を辞めてほしいとは思わない。私たちの頃と今は時代が違う。女も男と対等に仕事をこなしていくべきだと思うし、その環境作りに社会は尽力すべきだと思っている。孫ができたら大張り切りで手伝いたい。
 ここまで考えてきて、ふと思った。もし2年後、息子と入れ替わりに彼女に研修の辞令が出たら「私は待てばいいよ」と寛容な母親でいられるだろうか。「家庭に入ってくれる人を探したら」と言いそうで怖い。
  鹿児島県出水市 清水昌子 2013/4/23 毎日新聞の気持欄掲載

先細り老人会

2013-04-24 23:35:05 | はがき随筆
 「○○さん、総会に出席しますか」「いや足腰が痛かで、出やならん」「残念ですね」
 老人会の総会を控えて、会費徴収と総会出席を勧める。しかし、会員の中には入院、入所、自宅療養のため欠席者が多い。超高齢化した現在、入会者も少なく、先細りだ。
 健康、友愛、奉仕の三大運動が提唱されて久しい。毎月の定例会、ふれ合い活動、サロンなどに出てくる人は限られてきた。「仲良く、楽しく、元気よく」をモットーに温泉旅行などで親睦を図っている。だが会員の減少傾向は続いている。今後が心配だ。
  出水市 畠中大喜 2013/4/24 毎日新聞鹿児島版掲載

買い替えました

2013-04-24 23:26:57 | はがき随筆
 まだ8年しか使っていないのに、冷蔵庫が壊れた。一流メーカーの製品だが、5年だけの保証品。メーカーに電話してみたが、修理代も高くかかりそうだ。
 隣町の電気店でみてもらうと、心臓部が壊れているという。品番の後にこの記号があるのは……。(安かったでしょう)と言いたげだ。
 「そんな製品を作って」と、腹が立つより、粗大ゴミで日本列島が汚れるのが悲しい。
 家を新築した時に買った製品は18年たっても大丈夫だったのに。8年前に「大きいのにせよ」と亡夫が譲らず、買った冷蔵庫だった。
  霧島市 秋峯いくよ 2013/4/23 毎日新聞鹿児島版掲載