はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

にんまり

2016-10-27 11:21:31 | 岩国エッセイサロンより
2016年10月27日 (木)
      岩国市  会 員   森重 和枝

 今年の里芋畑は今も葉が茂り株も太い。掘ってみた。姑から引き継いだ芋作りも10年余りになる。なかなか姑のようにはいかず、毎年がっかりする。
 姑の作る芋は株元から約30センチの所へ四方から鍬を入れ、やっと掘り上げる。子芋、孫芋がたくさん付いていた。例年のつもりでスコップを入れる。びくともしない。四方から入れ、力の限り持ち上げた。孫芋は少ないが、子芋が何個も付いている。7株掘っただけで15キロあった。
 早速、小粒を衣かつきにしてみる。掘りたての芋は粘りがあり柔らかくうまい! 姑にやっと追いつけた気がして嬉しい。
    (2016.10.27 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

大らかな国

2016-10-27 11:20:07 | はがき随筆


 カナダ帰りの人の家に大角を持った鹿の首の剥製が飾ってあって、それを見た少女の日以来カナダは憧れの地であった。
 この夏ついに高1の孫と2人でツアー旅に行ってきた。90カ国の人々が暮らすという国は空も大地も広大だった。誇らかに、またようこそと言うように至る所に国旗が掲げられ、はためいているのが印象深かった。迫力あるナイアガラの滝。カナディアンロッキーの森といくつもの湖。溶けだす水をすくって飲んだ氷河。足元まで寄って来たシマリスや、バンクーバー島で餌をやったゴマフアザラシ。思い出してはうっとりしている。
  霧島市 秋峯いくよ 2016/10/27 毎日新聞鹿児島版掲載

からいも神様

2016-10-27 11:13:12 | はがき随筆
 指宿山川の徳光神社に詣でた。ここには400年くらい前に琉球から甘藷を持ち帰り、藩内に広めた前田利右衛門を「からいも神様」として祭ってある。当時日本列島は飢饉に苦しめられていたが、薩摩藩から餓死者は出なかったという。その後、江戸の青木昆陽は甘藷を入手し、将軍吉宗は栽培を全国に奨励して人々を飢餓から救った。昆陽も千葉の昆陽神社に「いも神様」として祭られている。
 私たちは日ごろ「からいも」に多大の恩恵を被っている。2人の神様はもちろんのこと「からいも」そのものにも感謝の念を禁じ得ない。
  鹿児島市 野崎正昭 2016/10/26 毎日新聞鹿児島版掲載

別姓夫婦です

2016-10-27 11:05:58 | はがき随筆
 昨年12月から私は怒っている。選択的夫婦別姓について最高裁が判断を国会に投げたからだ。私たちが結婚した二十数年前、この法案が国会に提出されそうな機運があり、私たちはお互いの人生を尊重したかったので別姓を選ぼうと思っていた。選択制ということは同性でも別姓でもふたりの合意で自由に選べるとしうことだ。しかし頭の固いオジサン議員だけでなく、一部の女性議員たちも反対し続けているのにはがっかりだ。
 人生の終末期に向かって、現行の法律ではいろいろと不利益を被ってしまう。そろそろ入籍を考えねばなるまい。
  鹿児島市 種子田真理 2016/10/24 毎日新聞鹿児島版掲載

田舎暮らし

2016-10-27 10:59:45 | はがき随筆
 子供(9歳)のとき父を亡くした。長男のため家を守る義務があり、憧れの都会に出られず農業の田舎暮らしとなった。
 夏から秋は田畑の仕事が多い。山間部のため動物が多く、農作業の前後、イノシシが湿田に生息する沢ガニを食べにあぜや水路を荒らした跡が見つかる。狩猟マニアに通報すると、喜んで「ありがとう、誰にもいっかせやんな(教えるな)ー」と言う。
 今まで便利な都市生活と比べて田舎暮らしといわれた農山村も、貴重な自然に恵まれ資源の中に生活しているんだなあと、その実感がわいてきた。
湧水町 本村守 2016/10/25 毎日新聞鹿児島版掲載