はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

OB会

2017-10-28 19:04:25 | はがき随筆
 60年前に6年くらい勤務していた入管OB会に出席し、同窓会のような雰囲気の中で楽しいひとときを過ごしました。戦前戦後の名ばかりの女学校を卒業し、何もできない私を一人前に育ててくれた役所です。実は婦人警官に憧れていたのですが、一次募集停止だったので、婦人警備官募集の張り紙をみて受験し運よく合格、警備官になれました。数年前からOB会に参加していますが、皆さん年をとられても話題豊富。飲み食いしながら、いろんな方向に話が飛び交い参考になります。来る時は気が進まなかったのが、来年もと思ってしまいます。
  鹿児島市 津田康子  2017/10/28  毎日新聞鹿児島版掲載

金婚式

2017-10-28 18:56:48 | はがき随筆
 2013年9月24日「日割り何十銭」が掲載された。私にとって破格の結納金を貰ったが、病気もせず元気でいるから日割り何十銭……というものだった。それからも主人はチョコチョコ病気はしたものの、2人とも元気で金婚式を迎える事ができた。主人の喜寿とゴルフ歴50年と私の古稀を小学4年の孫の進行で祝ってくれた。うれしいはずが、涙と鼻水で厚化粧もくずれた。忙しく手抜き育児だったのに、親バカだけれど立派に育ってくれ、良い連れ合い、孫がいて「この幸せもの」と声を大にしてオラビタイ。だけど、忍耐と我慢の日もあった。
  阿久根市 的場豊子 2017/10/27 毎日新聞鹿児島版掲載

再利用

2017-10-26 20:39:31 | はがき随筆
 しらすの大袋は蓋つきの平たい紙箱に入り、段ボールでくるまれて届きました。
 テープをはがして立てかけてみると、まるで三面鏡のようです。45㌢ほどの高さの紙の壁。「集中壁」と名付けてテーブルの上に置き、書いたり読んだり――。
 家人の留守に使っていますが、秘密基地のようで、結構たのしんでいます。と言いつつ、うっかり捨てそうになった先週の火曜日の朝でした。
  鹿児島市  下池かおり  2017/10/26  毎日新聞鹿児島版掲載

八十路の坂

2017-10-26 20:33:42 | はがき随筆
 風邪もひかず、胃腸も丈夫。「私、死ぬ気がしないのヨ」と娘にうそぶいていた。
 ところがどっこい、今年1月10日から降圧剤を飲むことに。それから毎日血圧計とニラメッコ。記録帳を先生に見せると、測り過ぎと笑われ「高血圧は病気ではない」とも。
 〝所見異常なし〟ではあるが、ただならぬ暑さもあり、今一つ意気が上がらなかったが、涼風が立ち始めてから元気を取り戻してきた。
 「80歳になるときつい」と皆さんおっしゃっていたが、体をいたわりながら八十路の坂を歩いています。
  鹿児島市 内山陽子  2017/10/25 毎日新聞鹿児島版掲載

メリー

2017-10-26 20:06:22 | はがき随筆


 線路わきの草むらを必死に嗅ぎまわるメリーの姿に驚き、思わず声をかけようとして、母に厳しく止められた。
 先の大戦末期、空襲が激しくなった街中では犬を飼うことが禁止された。その日私たちはメリーを預けた老夫婦宅を訪ね夢の再会を果たした帰りだった。
 子犬のときに別れたのに覚えていた。じゃれついて片時も離れない。大好きなおやつには目もくれずはしゃぎ回っていたが、帰りの列車の時刻も迫り、気付かれぬようにそっと駅に向かったのだった。
 列車の窓から小声でさよならしたメリーの思い出は切ない。
  鹿屋市  西尾フミ子  2017/10/24 毎日新聞鹿児島版掲載

事故

2017-10-26 20:00:04 | はがき随筆
 「あっ、やったか?」。叫んだ瞬間、鈍い音がしてブレーキを踏んだ。コンビニの駐車場。相手の車と私の車は互いの前方部をハの字に衝突させて停止した。お互いの体にけがのないことを確かめる。「ダメだねえ、人間年取ると。注意力が落ちて……」と私。硬い表情で降りて来た男性の様子が軟化する。原因は私の右方不注意と相手方の左方不注意。双方で修理しようという話でまとまり別れた。そして別れ際に「私がこんなこと言うのも変だけと、気をつけて帰ってくださいね」と私。若いときには言えなかった素直な言葉だった。
  霧島市  久野茂樹 2017/10/23  毎日新聞鹿児島版掲載

コスモス開花

2017-10-26 19:49:07 | はがき随筆


 おちだねのコスモスが咲いた。例年種をまいて育てるのに、あの暑さに忘れていたら10本ばかり自生したので時を待った。庭はタデのピンクとトレニアの花の紫が独占して秋への時をわたしていた。と、コスモス開花。
 揺れ咲くコスモスはやはり秋の花。流麗であり涼しい。庭はケイトウの紅の極みと、復活したナスに花と小さな実。プランターに八重咲き大輪の百日草の赤。忘れていても落ちだねのおかげで咲く花々。中秋の名月も今夜。自然に促されてゆく人の季節は感性、感受性を育ててくれる。
  鹿児島市 東郷久子  2017/10/20  毎日新聞鹿児島版掲載

あっぱれな歌声

2017-10-26 19:42:04 | はがき随筆
 息子の結婚式に出席した。母は初孫の祝いに鹿児島民謡を歌うらしく張り切っていた。
 手書きの歌詞も用意周到。宴もたけなわ、留袖姿に薄化粧の母は、背筋を伸ばしさっそうとステージへ上がる。
 三十数年前、カラオケもない頃だった。大丈夫かなと私の心配をよそに、母はアカペラで「串木野さのさ」を熱唱した。
 声量があり、透き通る歌声は場内に響き、どよめきと共に割れんばかりの拍手が起こった。そのとき80歳の母は最高の笑顔だった。
  鹿児島市 竹之内美知子  2017/10/22

吹っ飛んだ

2017-10-26 17:28:08 | はがき随筆
 楽しみにしていた敬老祝賀会が台風で吹っ飛んだ。集落でやらなくなって、老人会自身での敬老会も6年目を迎えていた。外部の素人演劇団を頼み、余興、ゲームなどと祝宴で盛り上げる予定だった。ところが台風来襲と重なって早々に中止と決めた。
 当日は演劇団とカラオケ、クイズ、抽選など計画し、豪華で格安の折詰めと芋焼酎や飲み物などたっぷり準備していた。会場いっぱいの笑顔とパワーで盛り上がったのに残念の一言だった。翌日は台風一過、透き通る秋空で、きのうの悪天候がうそのようでまぶしかった。
  出水市 畠中大喜  2017/10/20 毎日新聞鹿児島版掲載

笑う少女

2017-10-26 17:20:58 | はがき随筆
 友5人、観光バスで一泊二日の雲仙の旅に出掛けた。喧騒な市内を抜け、静かな北村西望記念館に寄った。彫刻、絵、書の展示で「笑う少女」の前に立ったとき、つい私はフフッと顔がゆるんだ。口元に手を当て、おかしさが我慢できずに笑う童女の像、つい見ているものの顔もゆるんでくる。しばらく立ち止まった。西望の長崎平和記念像を思い出したが、館内には縮小した原形が展示されていた。生家が記念館になって、200年を経た柱や梁の見事さにも圧倒された。「笑う少女」を思い出しては穏やかな気分になる。芸術の素晴らしさを思った。
  出水市 年神貞子 2017/10/19 毎日新聞鹿児島版掲載

台風トラウマ

2017-10-26 17:12:00 | はがき随筆
 台風のシーズンになると何となく気分が落ち着かない。あばら屋に住んでいるのでその被害も気になるが、素人考えだがどうもそれだけではなさそうである。幼少の頃かやぶきの家だったのだろう、風で屋根が飛ばされぽっかり穴があき空が見えたのを覚えている。びっくりして大声で泣き出したそうである。以来外に遊びに行っていて風が吹き出すと、妹の手を引いて大急ぎで帰ったそうである。
 それからこの年になるまで風による被害もケガもないのであるが、台風情報に一喜一憂する。これをトラウマと言うのだろうか。
  鹿児島市 野崎正昭  2017/10/18  毎日新聞鹿児島版掲載

やったね88歳

2017-10-26 14:15:23 | 岩国エッセイサロンより
2017年10月16日 (月)
山陽小野田市  会 員   河村 仁美

 市では時計が午後6時を指すと「ふるさと」のメロディーが流れる。聞きながら愛媛に1人で暮らす父に思いをはせる。
 耳が遠くなり電話で父の声を聞くことができないので帰省した。10年くらい肺気腫を患っていたが、今では見違えるほど元気になりデイサービスに週3日通っていると弟が言う。お墓参りで、弟に手を引かれながらも一生懸命に坂道を上る姿を見てまだまだ元気と安心した。
 昨年の数え年での米寿のお祝いの席で「健康長寿」と力強く願いごとを書いた父がまもなく満88歳を迎える。
 父さん、誕生日おめでとう。
  (2017.10.16 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

孫の運動会

2017-10-17 17:13:13 | はがき随筆
 

小4の孫は運動会の練習の事を時々話す。
 「かけっこは何番?」「3番」「何人で走るの?」「3人」
 本番ではあせってスタートで前のめりになり、一瞬止まり、堂々の3番だった。
 学年の全員リレー、トップで走ってきてかろうじてそのままバトンタッチ、ほっとする。
 応援団ではのびのびと歌い踊っていた。
 私はその朝3時に起きて、子どもたちの好きな空揚げ、トンカツを2㌔近い量作った。
 うすら寒い午前中だったが、午後からは晴れ間も見えて、運動会日和だった。
  薩摩川内市 馬場園征子  2017/10/17  毎日新聞鹿児島版掲載

やったね88歳

2017-10-16 12:27:48 | 岩国エッセイサロンより
2017年10月16日 (月)
山陽小野田市  会 員   河村 仁美

 市では時計が午後6時を指すと「ふるさと」のメロディーが流れる。聞きながら愛媛に1人で暮らす父に思いをはせる。
 耳が遠くなり電話で父の声を聞くことができないので帰省した。10年くらい肺気腫を患っていたが、今では見違えるほど元気になりデイサービスに週3日通っていると弟が言う。お墓参りで、弟に手を引かれながらも一生懸命に坂道を上る姿を見てまだまだ元気と安心した。
 昨年の数え年での米寿のお祝いの席で「健康長寿」と力強く願いごとを書いた父がまもなく満88歳を迎える。
 父さん、誕生日おめでとう。
  (2017.10.16 毎日新聞「はがき随筆」掲載)