はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

「旧交を温めて」

2014-02-28 07:42:12 | 岩国エッセイサロンより
2014年2月27日 (木)

  岩国市  会員    吉岡 賢一



日本中が戦後の復興に燃え、活気あふれる昭和32年3月、282人の同級生が中学校を卒業した。

進学する人、「金の卵」と呼ばれ就職する人、それぞれの道に旅立ったあの日から、57年の歳月が流れようとしている。


 ウサギ小屋に住むエコノミックアニマルと冷やかされる一方で、昭和の高度成長期をがむしゃらに支えてきた世代だと自負している。

 仕事も精一杯やりながら、仲間が集まってワイワイ遊ぶことも忘れなかった。その最たるもが学年同窓会であったように思う。50歳は「人生の小休止」、その後「還暦」「古稀」と名目を付け、節目には必ず同窓会を開いてきた。さらに節目と節目の間にも何回か開き50歳以降だけでも6回を数えた。


「主人もこの写真で参加させてください」と会費を添え、早世した夫の無念を手紙に託して天国から出席させた奥さんもいた。こんな感動を胸に幹事団もありったけの知恵を絞り、毎回目新しいイベントに挑戦した。「おもてなし」の精神は、あの東京オリンピック招致合戦に負けてはいなかったろう。


 振り返ると、やたら腹の減る貧しい中学生活ではあったが、教師を慕い敬う気持ちは強かった。同級生相互の信頼も厚く、お互いの絆は自然に培われ、心豊かな青春だったと思う。多くの仲間が今も同窓会に集い盛り上がるのは、遠い昔の絆が今につながっているのだろう。


 さて次なる節目は77歳の喜寿。「あと5年は待てない人もおるよ」などと切迫した声を聞かされると、喜寿までに一度開くべきかな。
 仲間の数も回数も段々減っていく同窓会。声がかかったら是非出席を、ご同輩。




      2014年 2月27日 中国新聞夕刊「でるた」掲載 

いぶし銀

2014-02-27 23:31:58 | はがき随筆
 100歳のMさんを雨の日に訪ねた。「こんにちは」。返事がない。再度呼ぶと、奥の方で「はい」と声が。縁側におられ、「耳が遠くなって」と読書中だ。
 光が差し込むMさんの居場所。ほころぶ梅、ツバキと和む庭を前に本を読んだり、手芸をされる。話を始めると「嫁が強くてハハハ」と少々毒舌も。畑に目を向けると「今度は落花生をつくる」と声が弾む。
 電動カーにも乗り、周囲をハラハラさせるとの事。顔のしみを気にされ「器量はよくなかったなあハハハ」と屈託がない。幾坂越えられた事だろう。そのいぶし銀の魅力に、ただ感服。
  出水市 伊尻清子 2014/2/27 毎日新聞鹿児島版掲載

琉球ヒカンザクラ

2014-02-27 23:18:11 | はがき随筆






 南北朝時代の頃、六代時充公が城を構えたといわれる本城に通じる「勘当坂」の途中に咲く琉球ヒカンザクラが満開だ。
 この勘当坂、傾斜が30度はあろうかと思われるほど急で、その中ごろに咲いているため、眺めるには足を止め、背を伸ばし見上げなくてはならない。
 カメラを向けていたら、登ってきた若い女性が立ち止まって見上げ「見事ですね」とニッコリ。ところで島主の館は〝天守閣以前の古い城〟だったようで、城郭もなかった屋敷に居住していたとみられる。そんな種子島の歴史に思いをはせながら、琉球ヒカンザクラをめでた。 
  西之表市 武田静瞭 2014/2/26 毎日新聞鹿児島版掲載

名札無しでね!

2014-02-27 23:11:55 | はがき随筆
 先日、昔の乙女たち10人で昼食を共にする機会があった。
 三十数年前、M市の地域活動で縁のあった仲間たち。
 私は包丁で指を切り、温水器のお湯を出なくしたりの失敗をやらかし、気持ちが凹んでいた。二度あることは三度という。雨の山道の運転は特に注意と、気を引き締めて出発した。到着すると弾けるような笑顔で迎えられ、気分は一気に上昇。
 おいしいランチをいただき、特産の大イチゴと手作りのブローチの差し入れも。楽しい時間は瞬く間に過ぎ、この次は名札を付けなくても分かるうちに会おうねと言い合って別れた。
 伊佐市 山室浩子 2014/2/25 毎日新聞鹿児島版掲載

感動

2014-02-27 23:05:09 | はがき随筆
 ソチ五輪から毎日、日本選手の活躍が報じられている。中でもフィギュアスケート男子フリーで羽生結弦選手(19)が男子フリーで280.19で初の金メダルに輝いた。涙がこみ上げてきそうな感動を覚えた。
 人生とは試練と忍耐の連続だが、羽生選手は東日本大震災を受け、避難所暮らしを経験して「やめよう」とさえ思ったという。だが、次第に「スケートで元気な姿を見せることで、被災地の皆さんを励ましたい」と。
 表彰台に上がった時、「日本や世界中で応援してくださった皆さんの思いを背負って演技できた」との感想に拍手した。
  出水市 橋口礼子 2014/2/24 毎日新聞鹿児島版掲載

早春賦

2014-02-27 22:42:13 | はがき随筆
 立春を迎えた今、わが家の庭では梅が満開となり、遅れていた河津桜もやっと咲き始めた。そんな庭に手作りの餌台を置いた。穀物の箱の下の段には半分に切った果物、一番下には水飲み場を設けた。現在、9種類の野鳥が飛来する。野鳥図鑑と双眼鏡を手元に置き、暖かい窓辺で妻とふたり、渋茶を飲みながら楽しんでいる。
 争いもあるが、先客がいて餌場に寄りつけず、枝先で待つ姿などいろいろ見せてくれる。旅に出て初めて見る世界に感動するのもいいが、人生の楽しみ方もいろいろ。ふたりの前を穏やかな楽しみが流れてゆく。
  志布志市 若宮庸成 2014/2/23 毎日新聞鹿児島版掲載

はがき随筆1月度

2014-02-27 18:32:11 | 受賞作品
 はがき随筆の1月度の入賞者は次の皆さんです。(敬称略)
 
月間賞】14日「巡る1年」年神貞子(77)=出水市上知識
【佳作】1日「サザンカの花」竹之内美知子(79)=鹿児島市城山
▽25日「密航船」森孝子(71)=薩摩川内市祁答院下手


 巡る1年 新年とともに期待される草木の香りを列挙した、匂いづくしとでも名づけられる、華やかな文章です。何なにづくしという文章の書き方は、『枕草子』以来の伝統で、簡単に見えて意外と難しいものです。それは豊かな語彙が要求されるからです。本誌の「余録」欄に、匂いのする小説家のことに触れていましたが、匂い豊かな文章になりました。
 サザンカの花 山茶花の花咲く季節になり、かつての子息の選定の失敗に対する、亡き夫君の反応を思い出したという内容です。夫君の寛大さを、ほほ笑むように咲いている山茶花の印象に重ねたところに、あたたかい雰囲気が流れて、いい感じの文章になりました。
 密航船 奄美復帰60年で思い出すのは、小学6年の時のみんなの喜びと、子どもたちのために密航してまで、教科書を持ち帰ろうとした教師たちが居たということ。一言でいえば密航船で済まされますが、その持っている歴史的な意味の重さを考えさせる文章です。
 3編を紹介します。
 馬渡浩子さんの「夫、耳を負傷す」は、夫婦間の感情の機微に触れた文章です。ご主人が耳を5針も縫うけがをしたら、その直前の自分の物言いが悪く、それがけがの原因ではないかと気になったという内容です。これも夫婦の絆でしょう。
 畠中大喜さんの「1本のツバキ」は、子供の頃住んでいた屋敷跡を訪れてみると、既に荒涼としていて、1本の椿の木だけが残っていた。そこいらで遊んだ子供の時を知る唯一の生き証人のその椿の幹をそっとなでて帰ってきた、という内容です。過ぎ去る時間のもつある種の感慨を感じさせてくれる文章です。
 若宮庸成さんの「我が家の元旦」は、夫婦2人だけで過ごしたことが淡々と語られています。おそらく2人だけの元旦という方は、かなりの数に上ることでしょう。元旦の行事(?)として、お年玉と奥さまの日常を記した日記帳とを手渡したというのは、素晴らしいことだと感じました。
  (鹿児島大学名誉教授 石田忠彦)

子育てフォーラム

2014-02-27 18:24:28 | はがき随筆
 娘の小学校のPTA活動で2月1日、サンエールフェスタ内のフォーラム「守ろう育てよう地域の宝」を聴講した。
 情報化の進展で大人の目の届かない所で、犯罪の被害者、加害者になるかもしれない現代の子供たち。ネットなど情報システムの仕組みを、大人がもっと知る努力をし、地域が協力して子供を見守り、育てる必要性を訴えていた。
 中でも「固定電話がなく、携帯電話のみの家庭が増え、名前のやり取りなど、基本的な電話応対の仕方を知らない若者が増えている」との話には、我が家も気を付けなければと思った。
  鹿児島市 津島友子 2014/2/22 毎日新聞鹿児島版掲載

虫の知らせ

2014-02-27 18:20:20 | はがき随筆
 母が死んだ時がそうだった。父と弟が死んだ時もそんなことがあった。死に目に会ってないから、後から振り返って考えるとその時のあれがそうだったのかと思い当たることがある。
 叔父には年が明けてから、松の間に会いに行った。訪ねた前日にその里のおねっこは済んでいた。その時の叔父の顔に穏やかさを見たのは、思い込みだったのだろうか。はがき随筆の「鬼火たき」に気付いたのは、掲載日の16時34分ごろだった。虫の知らせだったのだろう。夜分、同地のいとこから叔父の旅立ちの電話があった。当日の毎日は今、叔父の霊前に供えてある。
  いちき串木野市 新川宣史 2014/2/21 毎日新聞鹿児島版掲載

劇団四季と私

2014-02-27 18:18:25 | はがき随筆
 昨年、劇団四季は創立60周年を迎えた。私が観劇にはまったきっかけが「四季」だった。
 高校生の時、同級生に誘われ「野生の女」という芝居を見た。伝説の女優の華やかさ、共演のハンサム俳優に見とれた。大学では「から騒ぎ」が気に入り、熊本市と宇土市と2回見た。
 日下武史さんにくっついて劇場まで歩いたり、青山弥生さんとレストランで出会い、一緒に写真を撮ったこともある。
 「ライオンキング」は4都市で計9回、「キャッツ」「コーラスライン」も複数回見ている。
 ミュージカル以外の演目も数多く見てきた45年である。
  鹿児島市 本山るみ子 2014/2/20 毎日新聞鹿児島版掲載

万歳三唱

2014-02-27 18:12:24 | はがき随筆
 叔母宅で転んだ母が、担がれて帰って来た。右足、右腕、胸のレントゲンは異常なしで、ひとまずは胸をなで下ろした。
 1日目はうなり声を上げて立つも歩くこともできない。近所のMさんが、96歳で骨折して寝たきりになり、あっけなく旅立たれた。不吉な事ばかりが頭を巡る。
 3日目の朝、足を引きずって母が歩いて来た。「歩けるの?」「歩けるとも」
 母の最悪の事態を想像して、重苦しくのしかかった暗雲が、一気に晴れ渡った。今夜は、母の好物を作ってお祝いだ。「母さん、万歳三唱だ」
  出水市 道田道範 2014/2/19 毎日新聞鹿児島版掲載

背中ぼっこ

2014-02-27 17:57:57 | はがき随筆
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 甲羅干しをしている亀を幼い日の長男が「背中ぼっこの亀ちゃん」と呼んだ時から、我が家では背中に日光を浴びることを「背中ぼっこ」と言っている。
 寒い日に窓から差し込む柔らかい光がありがたい。
 背中ぼっこしながら新聞を読み始めた。
 体がほんのり温まっていく。
 氷が解けていくように、体かほぐれて心も和やかになる。
 あーいい気持ち!
 いつの間にかうつら、うつら………。
 自然の光は体内の汚れやサビも落としてくれ、調子のよい一日を過ごせた。
  鹿児島市 馬渡浩子 2014/2/18 毎日新聞鹿児島版掲載

愉快なふたり

2014-02-19 02:23:41 | アカショウビンのつぶやき

私が関わっている、コミュニティFMのラジオ番組
「心のメモ帖」に、初のドイツ人ご夫妻の登場です。

何回かこの番組に出演された、てるよさんの紹介です。
「おはようござーいまーす」
と、ひとなつこい笑顔の、
フランクさんと奥さまのともこさんは来られました。

番組のテーマは「ドイツからみた日本」です。
シリーズで4作品を作らせて頂きました。
鋭い目で日本の?? と思われるところを
率直にお話くださいました。

ドイツ人ですが、まず英語で話し、
それをともこ夫人が日本語に訳して…と言う形になりました。

私も編集のO氏も、英語は苦手…

編集は大変でした。


片言の日本語も交えて、パソコンの画面を見ながら
O氏と相談するフランクさん。

4作品ができあがったときは、とうとう嬉しくてダンスが…
番組の中に収録したリクエスト曲にあわせて、実に楽しそうに



本当に陽気なフランクさんご夫妻でした。
初めの計画では、日本語バージョンとドイツ語バージョンを作りたい
とのご希望でしたが、外国語が苦手なアカショウビンとO氏には
ちょっと無理。
残念ですが日本語バージョンだけを完成させることにしました。

時間があれば、続編も考えましたが、
3月には福岡に移転するフランクさん
「番組を作りにまた来ますよ」と明るく手を振り、お帰りになりました。

ボランティアパーソナリティを初めて9年。
こんな楽しい取材は初めてでした。
有難うフランクさん。

10代に見習う

2014-02-19 01:49:47 | ペン&ぺん


 ソチ五輪で、連日深夜までテレビ観戦し寝不足の方が多いのでは。私もその一人。今まで男子のフィギュアスケートに関心はなかったが、やはり羽生結弦選手(19)らが気になり、夜更かしが続く。団体戦ではロシアの〝皇帝〟エフゲニー・プルシェンコ選手(31)を上回る圧巻の滑り。個人戦のショートプログラム(SP)でも素晴らしいパフォーマンスを見せ、ついに今五輪で日本に初の金メダルをもたらしてくれた。
 スノーボード男子ハーフパイプでも銀メダルの平野歩夢が15歳、銅メダルの平岡卓が18歳。両選手はあんなに高く舞い上がり、怖くないのか。しかも空中で体を左右にひねって、回転。厳しい条件の技をクリアしなければならぬ。着地に失敗したら、大けがもありえる。あの度胸と平衡感覚は感心するばかり。次の冬期五輪がとても楽しみだ。惰眠をむさぼる私の2人の娘(高2、中2)はどう感じているのか。
 さて3月21日、第86回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高野連主催)が開幕する。県内からは上村学園と大島の2高が出場、当然部員も在校生も10代。選手たちは大舞台に向けていっそう気を引き締め、アルプススタンドから見守る応援団やブラスバンドの練習にもいっそう力が入る。
 センバツ担当の土田暁彦記者(29)によると、両高の部員や監督らも快く対応してくれ、元気をもらっている。土田記者も元高校球児だから、練習で手を抜けば見抜く。私も小中高校と柔道漬けで大きな大会にも出た。だから世界のトップ選手でも五輪という大舞台にのまれ、実力を出し切れないのは分かる気がする。ソチ五輪でもそんなシーンが幾つもあった。
 球児たちは学校や郷土の期待を一身に受け、重圧もあるだろうが、思いっきりプレーしてきてほしい。きつい練習は、大舞台でうそをつかない。
  鹿児島支局長 三嶋祐一郎 2014/2/17 毎日新聞鹿児島版掲載

死をみつめて

2014-02-19 01:42:45 | はがき随筆
 Mさんが友人に誘われて拙寺で毎週早朝に行われている「土曜礼拝」に来るようになってから、間もなく1年になる。でも、50半ばのMさんが、がんを患って余命幾ばくもないことを知ったのはつい最近のことで、既に肺に転移しているとのこと。
 一緒に読経した後、私は「歎異抄」を題材に約50分の法話をしているが、彼女は食い入るように聴聞する。そして明るく「寺に来ると心が落ち着きます」と言う。死は人生の終焉ではない。「ただ念仏して、弥陀に助けられまいらすべし」という、親鸞の言葉をかみ締めて、彼女の最期を共有したい。
  志布志市 一木法明 2014/2/17 毎日新聞鹿児島版掲載