はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

ヘルメットで安全に

2016-07-30 13:16:43 | 岩国エッセイサロンより
2016年7月30日 (土)
   岩国市   会 員   片山清勝

 近くの小学校の学校便りに、「児童が自転車を運転するとき、ヘルメットの着用を義務化します」というお知らせが載っていた。
 指導の成果だろう、近くで見掛ける児童らは着用している。色彩も形も豊富なヘルメットを見ながら、児童はどんな気持ちだろうかと思っていた。
 その答えが、「けが防ぐヘルメット」として25日付のヤングスポットに載っていた。
  「ヘルメットをかぷっていると、事故にあっても、少しのけがですむかもしれません。安全のため、面倒くさがらず、年齢に関係なくかぷりましょう」と呼び掛けていた。
 ヘルメットは、保安帽や安全帽と呼び、保護具として重要な役目を担っている。現役の頃、これを着用していてけがにならなかった経験がある。
 今は夏休み。子どもらの行動範囲は広がり、自転車に乗る機会も増えよう。万一のときに、頭部を守ってくれるヘルメットをきちっと着用して、楽しく自転車に乗ってほしい。

    (2016.07.30 中国新聞「広場」掲載)

ユーモア

2016-07-30 13:03:50 | はがき随筆
 「市中引き回しの代わりにワイドショー」。柳名忘れた人?の川柳があったが、これぞエスプリの利いた句である。
 ここ1年ほど仲畑流に投稿するも没が続いて、これこそ梅雨の気分である。性格的にはユーモアセンスは乏しいと思うが、妻からはブラックユーモアは日常的に言われていると反論される。これを川柳に生かせないものかと思案している。
 一日指定席、ましてや招待席は夢のまた夢。まず一句採用されたら川柳の名人と自負しよう。柳名は「破天幸」と決まっているが、肝心の句が浮かばない。
  鹿児島市 下内幸一 2016/7/30 毎日新聞鹿児島版掲載


せせらぎの如

2016-07-30 13:03:01 | はがき随筆

 夏の山道を急ぐ。汗びっしょりだ。ようやく目的の場所に着く。静かな樹陰に目を閉じてじっと聞き耳を立てる。せせらぎの音――見えない流れが見えるようだ。やがてせせらぎは胸の底を流れ始める。陶然となる。
 庭の雑木に四季折々の野鳥が訪れる。りんごの木のてっぺんにホオジロ、ツバキにメジロ、杉にアカショウビン、エゴノキにシジュウカラ、アオジ……。
 ベランダのロッキングチェアにひっくり返り、鳥たちの声を聞いて眠る。今春、近くにヒバリが営巣した。日々高いさえずりを聞く。じっと聴き入る。調べに酔う――。せせらぎの如。
  出水市 中島征士 2016/7/29 毎日新聞鹿児島版掲載

金次郎さん

2016-07-30 12:04:20 | はがき随筆
img src="http://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5c/35/047481963a4ae99355328dbbbeef2fb6.jpg" border="0">

 FMかのやで、鹿屋市立西俣小学校裏の「考える森」の存在を知り、行ってみた。東京在住で西俣出身の渋谷よし子さんが、大東亜戦争戦没者、西俣出身者の碑に自分の父親の名前を発見。その後、整備し「考える森」と命名されたとか。 
 碑のすぐそばに、今では見かけなくなった二宮金次郎の銅像があった。私は思わず「金次郎さんだ」とかけ寄った。渋谷よし子さんは、二宮金次郎の銅像に導かれるように、その先に、父親の名前が刻まれた碑の存在を知った、と後日、聞いた。
 思いがけない出会いにほっこり。
  垂水市 竹之内政子 2016/7/28 毎日新聞鹿児島版掲載

黒の編み上げ靴

2016-07-30 11:57:46 | はがき随筆
梅雨の晴れ間に靴箱の掃除と靴の手入れをする。娘の黒の短靴を磨きながら亡き母の話を思い出した。
 大正時代後半、母は女学生。父親から土産にもらった黒の編み上げ靴をはいて、駅までの半里の道を歩くのだが、はかまの裾から見える靴がカラスの姿に見えたのか、わんぱく坊主たちに「カラス、カラス」とからかわれた。母は恥ずかしくてせっかくのハイカラな靴を大阪にいたお姉さんにあげたところ、大喜びされたという。
 大正浪漫を形作った時代だが、都会と山口の片田舎ではことほど開きがあったのだ。
  鹿児島市 内山陽子 2016/7/27 毎日新聞鹿児島版掲載

はがき随筆6月度

2016-07-30 11:50:03 | はがき随筆
はがき随筆6月度月間賞は次の皆さんです。

 【優秀作】2日「大人の階段」西野奈緒=兵庫県篠山市
 【佳作】3日「家庭訪問雑感」中島征士=出水市武本
▽5日「天道虫」宮路量温=出水中央町


 「大人の階段」
は、30代になって、大げさにいえば世界認識が変わってきたという内容です。食べ物の嗜好も、季節の推移への感受も、娘から母親へも、すべてが時々刻々新しい体験であることが、新鮮な感想として描かれています。みずみずしい30代の感覚を感じさせる文章です。
 「家庭訪問雑感」 かつての中学校の家庭訪問は、茶碗酒が出されたり、小ウサギや小猫や生ダコまでももらったりと、大らかであった。消極的なのを恥じている娘と母親に「君のままでいいよ」と励ますと、それ以後、自信をもったのか、力強い何かを抱えた印象を与えるようになったという内容です。教育は知識の付与だけでなく、教師にしか実感できない、心と心の触れ合いがあることが醍醐味ですね。
 「天道虫」は、孫の相手が楽しくてならないという内容です。お孫さんの、蝶への興味、天道虫が飛び立つことへの好奇心など、一挙手一投足が詳細に描写されていて、読んでいて、情景が眼前に浮かぶ文章です。
 この他に3編を紹介します。
 塩田きぬ子さんの「告白」は、小学3年のお孫さんが、祖父母の結婚の経緯を生意気にも聞いてきた。とりあえず「じいちゃん」が「告白」したと答えておいた。そのとき自分の結婚生活を回想してみたが、40年間の怒涛の一瞬としか言いようのないという内容です。過去が気になる年齢になりました。
 外薗恒子さんの「『母の日』に思う」 父に続いて母が亡くなって、母の手のことを思い出した。農作業に荒れた手で背中を掻いてくれた心地よさなどを思い出すと、今度は自分が母の手を一本一本なでてあげたくなった。
 的場豊子さんの「ウソッ」は、手の指が太くなったために結婚指輪が入らなくなったという内容です。娘さんが借りにきてはめるとすんなり入った。自分の指も昔は細かったのかと、感ひとしお。それをきっかけに新婚の頃を思い出し、夫君に対して少し優しくなりたいと思った。「できるか疑問。たぶん無理」という結びです。
  鹿児島大学名誉教授 石田忠彦

囲碁の文化

2016-07-30 11:15:28 | はがき随筆
 小生、囲碁の依存症に陥り、連日ザル碁に興じている。先だっては世界最強の棋士をコンピューターが降したと新聞などが報じていた。プロの棋士にとっては面白くないことであろう。
 しかし囲碁は勝負だけではない。長い歴史と豊かな文化を持っている。別称だけでも、烏鷺の争い、手談、爛柯橘中の楽しみなど多々ある。中国らしい故事に由来し、調べると興趣は尽きない。また豊臣秀吉は碁友の武将たちを仲間に引き入れて天下を取ったとも伝えられている
 小生、碁は下手でもその奥深い文化を楽しもうと思っている。碁友たちにも勧めたい。
  鹿児島市 野崎正昭 2016/7/25 毎日新聞鹿児島版掲載

でも心配よ

2016-07-29 06:38:36 | はがき随筆
 この春、結婚したばかりの次男がヨルダンに転勤になった。
 双方の親の心配を尻目に、若夫婦は意気揚々と空港のゲートをくぐって行った。「3年後の任期明けには子どもを連れて帰国します」と嫁は手を振った。
 そんな嫁から「妊娠した」とメールがきた。驚いて「まだ言葉も通じないのに不安だね」と返すと、病院には息子が時間休を取って付き添ってくれているという。少し安心した。
 不慣れな土地で夫婦の力だけで3人家族になるのもいい経験だろう。ヨルダンの人だって出産はするのだから。心配ないだろうと思うのだけど………。
  出水市 清水昌子 2016/7/26 毎日新聞鹿児島版掲載

みんな友達です

2016-07-29 06:31:55 | はがき随筆
 あなたはあの日レストランに入ったときに、どうして1分間でも中に居る日本人たちの声を聞かなかったのですか?
 そうすれば、言葉は分からないまでも明るい声が聞こえたはずですよ。そう、みんなあなたたちと同じなんですよ。一緒に笑って食事をするのです。
 あなたたちが静かに入っていけば喜んで手を差し伸べた事でしょう。友達なんですよ、どうして引き金を引けましょうか。立ち止まって息を吸ってごらんなさい。世の中が変わってきますよ。世界は広いのです。大勢の人たちが手を取り合っていかなければならないのです。
  鹿児島市 高野幸祐 2016/7/24
毎日新聞鹿児島版掲載

アラレちゃん

2016-07-29 06:24:35 | はがき随筆
 回覧板に挟まれた「小学校だより」を見ていたら、懐かしい名前が目に入った。
 次男が谷山地区の小学校2年生のとき、新採用の女の先生が担任になり、その面影から親たちはアラレちゃんという愛称をつけた。1年生のときはベテランの先生で、クラスがまとまり親たちも団結したが、アラレちゃんはうっかりが多く、同じ親たちから不満が出ることもあった。しかしだれでも始めは失敗はあるものと、皆で見守ることにした。
 あれから四半世紀余り。小学校を訪ねてみると、ベテランになったアラレちゃんがいた。
  鹿児島市 齊藤三千代 2016/7/23 毎日新聞鹿児島版掲載

思わぬ収穫

2016-07-29 06:18:06 | はがき随筆
1四半期が終わろうとしているが、この時期の仕事が山場を越えたことで気持ちが軽くなった週末のこと。両親の通院帰りに母と入ったスーパーでカマスを買い求め、開きを作った。
 梅雨に入り、雨の合間に外干しした後、エアコンと扇風機で乾かしていたらリビングは鮮魚店のような海の匂いが充満して、妻から退場を宣告される羽目に。それでも、食する場面になれば、焼ける匂いとこんがりふっくら、程よい塩加減の干物に家族の食欲は全開になった。
 自分の気持ちが安らぎ、家族も喜んで、一石二鳥以上の収穫があった開きづくりだった。
  垂水市 川畑千歳 2016/7/22 毎日新聞鹿児島版掲載

36年ぶり

2016-07-29 06:11:38 | はがき随筆
 ついに36年ぶりに大人の修学旅行が実現した。羽田空港で、手作りの還暦祝いの横断幕で教え子たちの出迎えを受け、マイクロバスで日光へと向かう。運転するのはN君。いろは坂を越え、華厳の滝を眺め、散策しながら記憶の曖昧さに笑い合う。宿泊先は36年前と同じ旅館。後から駆けつけてくれた教え子も加わり、にぎやかに還暦祝いの宴が始まった。小学校時代の思い出話は尽きない。その広間も当時の食事の会場だった。
 翌日、日光東照宮の同じ場所で記念写真。空港では搭乗手続きもしてくれた。修学旅行の再現。みんな本当にありがとう。
  鹿児島市 天野芳子 2016/7/21 毎日新聞鹿児島版掲載

思い出と走る

2016-07-29 06:05:38 | はがき随筆
 4時に起きてスロージョギングに出るのは5時。走るのは6キロ、10年以上続いている。特に最近はそうなのだが、思い出を追っていることが多い。青春時代に出あった人たちがよく思い浮かぶ。今朝は武女という純日本型の美人が幻影となり離れない。和装が見たいと思った人で発言も楽しかった。
 忘れられない自己紹介がある。「……姉はまみといいます。私はむめです。妹はいません」。一瞬きょとんとしたが、座は笑顔になった。素顔美人がみられなくなった時代の郷愁だろうか。一緒に走っている妻は何を思い描いているのかしら。
 志布志市 若宮庸成 2016/7/20 毎日新聞鹿児島版掲載

猫は考える

2016-07-29 05:43:01 | はがき随筆

 我が家のデカ猫イークン、雨天でも大騒ぎして外出したときはトイレを我慢していたのは確かだ。沖縄の梅雨が明けたばかりのころだが、雨がやんだ途端に出た。だがすぐ帰ってきて家の中のトイレに駆け込み、用を足してまだ出て行った。彼は外で用を足そうと思ったとき、帰るとカミサンに抑えこまれ、汚れた手足を拭かれたことをに気がついたに違いない。このイークンの行動を見て、猫はこれまでの体験を生かしてその後の行動を改める。賢い生き物であることを知ったのだった。
  西之表市 武田静瞭 2016/7/18 毎日新聞鹿児島版掲載

枯れないで

2016-07-29 05:37:32 | はがき随筆
 今年1月24日に積もった大雪と、未明に氷点下まで冷え込んだ影響か、サワーポメロ、小ミカンなど数本が枯れた。
 例年なら今ごろ、枝もたわわに庭先に生えるスモモも枯れてきた。一部のみ生きていて、数えるほどの実しかなっていない。7月に入ると収穫と子供たちへの発送、友人、知人へのお裾分けと大忙しだった去年までのことがうそのようだ。30年前の新築祝いにいとこからもらった大切な木が枯れて行くのは、身を切られるようにつらい。枯れ枝を切ってもらい、根元の花なども除き、肥料をやれば再生してくれるか。祈るばかりだ。
 霧島市 秋峯いくよ 2016/7/17 毎日新聞鹿児島版掲載