はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

しりとり

2007-03-31 10:07:13 | はがき随筆
 5歳の孫と夫が、しりとりをやっている。動物や果物、そして乗り物まで飛び出して楽しそう。難しいルールはなさそうだ。「ろ」の言葉を考えている彼が、大きな声で「ロマンチック」と澄まし顔である。意味が分かるの? どこで仕入れた言葉だろう。私は思わず吹き出してしまった。一方、夫が「く」「く」と困った振りをして腕組みすると、「く」はたくさんあるよ、と孫に押されぎみ。こうして考える事の面白さや、楽しさを実感しているようだ。人間の知能は12歳まででほぼ定着するそうだ。正しく、美しい言葉を覚えてほしいと思う。
   鹿児島市 竹之内美知子(73) 2007/3/31 掲載

沈静沈着3投手

2007-03-30 08:32:09 | はがき随筆
 今年のスポーツ界で取り分け興味深い競技は野球。あの甲子園でたもとを分かちあった伝説的英雄のハンカチ王子こと斎藤投手。神宮の森で東京六大学ファンを興奮のるつぼと化すことが出来るか。北の怪物の称号、田中投手はプロの世界で力を発揮出来るか今から興味は尽きない。
 そしてあの大リーグに破格の条件で入団した松坂投手。「僕は夢という言葉は好きでない。見ることが出来てもかなわないのが夢だから」と話す。
 子どもの頃から大リーグ選手に必ずなると自分に誓った男。どんな活躍を見せてくれるのか。楽しみでならない。
   鹿児島市 鵜家育男(61) 2007/3/30 掲載

あわいみどりいろ

2007-03-29 11:21:12 | アカショウビンのつぶやき
いつ頃から「みどりいろ」の花が作られるようになったのだろう

植物の葉っぱは、みんな「みどりいろ」なのに
花 (花でないのもあるけれど) だけは
色鮮やかに染め分けられる不思議
だからこそ人々はあえて、
「みどりいろの花」を求めたのだろうか

私も「あわいみどりいろの花」に惹かれる
ここ数年、娘から贈られる花はいつも「あわいみどりいろの花」が主役
今年は、みどり一色のアレンジだった
特に「あわいみどりのバラ」はひっそりとした雰囲気で
思わず頬を寄せたくなる

大好きな花に囲まれたアカショウビン

桜の満開を待つ

2007-03-29 10:24:03 | はがき随筆
 重富小前の大通りを自転車で鼻歌まじりで走っていると梅の花びらが微風に乗り、まるで小雪のように飛んでくる。正門を挟み両脇に11本の巨大な桜。昭和28年卒業生の記念植樹で、今年で54年になると聞く。満開になると春の陽気で心も和む。巨大な桜が春を呼んでいるようだ。もはや3年になるが、姪の案内で丸岡公園に家族で花見に行った。日曜日で客も多かった。まず、姪が座席を選んだ。座席で桜島を展望していると錦江湾や加治木町も一望できて素晴らしい光景に感動した。昼食は妻の手作り弁当を味わい、生きることの喜びを感じた。
   姶良町 谷山 潔(80) 2007/3/29 掲載

日の出

2007-03-28 10:43:29 | はがき随筆
 山の端が赤く染まり間もなく日の出である。
 「おーい、始まるぞ」。夫の声に促されて何をおいてもと、居住まいを正して待つ。
 やがて一点が眩しく光り、日の出の始まりである。
 目を閉じて眼裏に彩色を追いながらポッカリ浮かび上がるのを待つ。
 光背を煌めかせて一瞬眼に刺し入る輝き。
 今日、一日の始まりである。
 無我夢中の頃は、感じようともしなかったのに今は生かされている幸せをかみ締めながらの毎日である。
   南さつま市 寺園マツエ(85)2007/3/28 掲載

はがき随筆2月度入選

2007-03-28 10:36:15 | 受賞作品
 はがき随筆2月度の入賞作品が決まりました。
△ 出水市高尾野町、山岡淳子さん(48)の「春を待つ」(11日)
△ 鹿児島市慈眼寺町、馬渡浩子さん(59)の「お粗末話」(14日)
△ 薩摩川内市樋脇町、下市良幸さん(77)の「老人ホーム」(3日)
の3点です。

山岡さんの「春を待つ」は、暖かく優しい日の光や沈丁花の蕾を描いた文章で、うれしいという語句が数回出てくる、題目どおりの「春を待つ」喜びをストレートに感じさせる楽しい作品です。そして2月のほとんどの文章が、内容や題目、表現法が少し違っても、すべてもうすぐ来る春を待つ気持ちを書いているのですから、何と言っても山岡さんが2月の代表選手ということですかね。
 さて馬渡さんの「お粗末話」は、馬渡さん夫婦は夕方に結婚記念日を思い出し、外出するのも面倒というわけで、ちょっとしゃれたテーブルセッティングをします。ごちそうを並べ、張り切ってみますが、気がついたらいつものテレビに夢中だった、ということ。結びの一文、「32年の時を経た夫婦の話」も、あっさりと面白い。自分を横から見るさっぱりした味がいいですね。
 この良さは、下市さんの「老人ホーム」にも。日曜日、老人ホームを訪れた下市さん、少ない職員の多忙な中を少し手伝います。以前ここに、お母さんがおられたということですから、その思い出もあってかどうか、あや、下市さんのお人柄のせいでしょう。実に快い穏やかな訪問記になっていますね。
 2月の文章は皆、暖かい春を前にして、明るさを秘めたものでした。

(日本文学協会会員、鹿児島女子短大名誉教授・吉井和子)

係から
 入選作品のうち1編は31日午前8時40分からMBC南日本放送ラジオで朗読されます。「二見いすずの土曜の朝は」のコーナー「朝のとっておき」です。

眠らない蛇

2007-03-27 18:09:07 | はがき随筆
 暖冬で熊などが冬眠しないというニュースを何度か聞いた。そんなある日、古い家に帰って、車から降りると何やら茶色の固まりが足下にあった。野良犬の糞かとしかめっ面で振り返ったら、とぐろを巻いた蛇だった。
 生きているのか死んでいるのか。くねくね物が苦手なので、用事を済ませて帰る時は助手席から乗り込んだ。
 翌週、車の中から確かめたが、見えない。しかし、庭を掃こうとしたら固い物を踏んだ。場所を変え、やはりいたのであるるじっと動かない。
 その後は消えたが、眠らない蛇のせいで眠れない日々を送ったという話し。
   鹿児島市 本山るみ子(54) 2007/3/27 掲載

HAPPY BIRTHDA! なんだけど

2007-03-26 23:54:14 | アカショウビンのつぶやき

大慈寺のIさま











 今日はコーラス、鹿屋市合唱祭で歌う曲の楽譜が配られました。
 ハ長調か…なんてたかをくくっていたら、途中どんどん転調し音取りがままならず、やれやれ。
 練習もそこそこに、次はFM番組取材のため、編集担当のO氏と志布志市へ。
 「みんなでハッピーバースデー歌おうと思ってたのに…」と言う先生の声を聞きながら「ごめんなさーい」。

 目指すは志布志市の、700年の歴史をもつ禅宗「大慈寺」。賑やかな町中に突然開ける静寂の中に立つ古いお寺でした。取材させて頂いたのは、住職のお母様、I・イツ子さん。今年80歳になられるIさんと女学校時代の親友Tさんも交えて話が弾み、あとで編集者を、悩ませるだろうなあと思いつつも楽しい会話が続きました。

 鶯の声に送られて大慈寺をおいとまし、同じ志布志市のエッセイ仲間・Y氏宅に電話を入れると、珍しくご在宅の由。
Y氏と愛猫おはなちゃんに会いに行く。最愛の奥様を亡くされ傷心のY氏だったが、素晴らしい友人に巡り合い生き生きとなさっていた。次回は、お二人へのインタビューをお願いして、次なる目的地東串良町に向かう。

 「精神障がい者就労継続支援施設・ルピナス」
 ここは、障がいをもった方々が、玄米餅の製造販売、空き缶リサイクルなどで、僅かでも収入を確保できるよう支援する施設。長年の思いがようやく叶い新しい建物が竣工しました。心を病む方々に優しい配慮がなされた素晴らしい施設です。

 西日の強い窓にカーテンを付けたいとのこと、裁縫大好きの私が引き受けましたが、カーテンレールの取り付けは無理。とうとう日曜大工の腕を買われて、私の大事なパートナー・番組編集担当・O氏の出番となり同行していただいたのです。

 ようやくルピナスの用事も終わり、大きな太陽が山の端にかくれる頃、ルピナスのボランティアスタッフ・Hさんから電話。
「お二人にお礼を申し上げたいので、一緒にレストラン・Koo's へ来て」。固辞するO氏を説得してステキなレストランへ向かいました。

 久方ぶりのご馳走に幸せいっぱいのアカショウビン、その時突然ライトが…どうしたの…故障?
 突然流れてきた曲は、あれっ、スティーヴィー・ワンダーの「Happy Birthday」 じゃないかしら? エエーッ ケーキとキャンドルがテーブルに運ばれ、お客様、お店のスタッフの皆様から、一斉に「おめでとう」の拍手をいただきました。70ウン歳にして初めての晴れがましい誕生日! Hさん素晴らしいプレゼントをありがとう!
 終日走り回ってくたびれましたが、生涯忘れられない誕生日となりました。家に帰ると娘からお花、息子からはプレゼントならぬ、栄転辞令のメールが届いていました。

今日も幸せを感謝しつつ おやすみなさい。アカショウビン
 

今年の桜

2007-03-26 22:31:04 | はがき随筆
 東京都心部に続いて福岡市でも(ソメイヨシノ)が開花した。例年なら南から咲き、開花が北上してゆくのだが、今年は違う。福岡管区気象台の開花予想では、九州南部での開花が本州や九州北部よりも遅く、鹿児島の開花は31日になっている。平年より5日、昨年より11日も遅い。
 桜がもてはやされ出したのは平安時代ごろからだそうだ。それまでは桜より梅の方に人気があり万葉集には桜より梅を詠み込んだ歌が多い。これが、桜の花びらの潔い散りように関心が集まり、台頭してきた武士にも好まれるようになったらしい。
 桜が大好きでたまらない人が「平家物語」に登場している。桜町の中納言成範卿(しげのりのきょう)。「桜町の」が名の前に付くところからして面白い。ことのほか風流を好み、吉野山をあこがれて付近に桜を植え並べ、その中に家を建てたという。そこで一帯を「桜町」と言うようになった。
 さらに「桜は咲いて7日目には散ってしまうが、成範卿が名残を惜しんで天照大神に祈ったところ21日間も咲いていた。当時の帝が賢君でもあったので、神も恵みを発揮して、桜花にも心があったのだろう」とある。
 また、平清盛の末弟、薩摩守忠度(さつまのかみただのり)。無賃乗車の事を「さつまのかみ」と言うのは、この名前に由来しているとか。本人も、このような形で後世に名前が使われていると知ったら残念であろう。
 平家物語では武士と言うより、歌人として印象深く描かれている。都落ちの際に残した歌の一つ、「さざ波や志賀の都はあれにしを 昔ながらの山ざくらかな」を紹介している。やはり桜を歌い込んでいる。
 時代は下って江戸時代の浄瑠璃、仮名手本忠臣蔵で、武士の由良助が商人の義の厚さに平伏して「花は桜木、人は武士と申せども、いっかないっかな武士も及ばぬ御所存」と述べる場面がある。武士は体面ばかりを取りつくろうようになり、桜の清らかさ潔さには到底及ばないと批判していると受け取れる。
 さて今年の桜。ナントカ還元水の大臣も花見はするのだろうか。「花は桜木。いっかないっかな政治家も及ばぬ御所存」。そろそろ潔さを見せてほしい。
 支局近くの甲突き川沿いの桜は日々、蕾が大きくなっている。どんな風情を見せてくれるのか楽しみだ。
   毎日新聞鹿児島支局長 竹本啓自 2007/3/26 毎日新聞鹿児島県版掲載

いじめ

2007-03-26 22:04:17 | はがき随筆
 古稀の祝賀会があった。小学校卒業以来の面々の変わり様。抱き合って歓喜する者、感涙する者、感激の渦に包まれた。宴の最中、K君が私にぽつりと「あんとき、お前に言われた言葉が今でも思い出されて悔しい」と語り始めた。私は全く記憶していなかったが、衝撃を受けた。昭和17年ごろは私達にとっては野、山、川、畑がグラウンドであり、最高のおやつの収穫場所であった。がき大将の私はよく喧嘩をしたが、その場限りで仲直りするのも早かった。しかし、私の無意識な思慮のない発言が、彼の心に長年わだかまっている事を知り、胸中が重くなった。
   鹿児島市 春田和美(71) 2007/3/26 掲載

幸せは身近に

2007-03-25 15:02:38 | はがき随筆
 夫の早朝ウォーキングに合わせて、すっかり早起きが習慣付いて、朝食までの1人の時間を楽しむ様になって久しい。締め切り間際の「かな書道」の清書に集中したり、熱いお茶を入れ、黒砂糖で一服しながら、テレビの「日本の話芸」癒され、夫の帰宅を待つ至福のひととき。
 日本茶をしみじみ味わえる年齢になり、在りし日の亡父の面影が浮かぶ。三十数年前、急逝した母の墓前に毎朝熱いお茶を供え、お祈りしていた老父の姿は、娘には切ないものがあった。
 「二人でお茶を」。さりげない幸せを大事にして生きたい。
   鹿屋市 神田橋弘子(69) 2007/3/25 掲載

花水木の下で

2007-03-24 10:09:49 | はがき随筆
 背高のっぽの花水木の下に立ち、上を見上げて白や薄いピンクの花の間から、始まったばかりの夏の優しい青色の空を見るのが好きだ。じっと見ていると、今、生かされている事への感謝の気持ちがわいてくる。
 そして、私のしてきた悪事(?)も、すべて許される気持ちになる。夫とつまらない事で言い合ったり、10歳の娘にきつい言葉を投げかけたり。そんな事はすべて私が悪かったのだと素直に思う。謝りたいと思う。
 初夏の水色の風に揺れる花水木の下で、いつまでも子どものように空を見上げているおばさんがいたら私です。
   鹿児島市 萩原裕子(54) 2007/2/24 掲載

写真はバセさんからお借りしました。

畑さん、よろしく

2007-03-23 12:10:51 | はがき随筆
 冬の雑草は霜で土が浮くのを防ぐから、野菜の中は取らないでよいと聞いて伸び放題。しかし、今年は出水で霜を見たのは2、3度。野菜は随時収穫したが、この暖かさで畑は見事な草の花園となった。るり色のオオイヌフグリは、空を仰いで一面に咲いて美しい。鮮やかなピンク色のホトケノザ、純白のハコベ、ナズナの花など一生懸命に咲いて美しい。春の種蒔き準備に済まないと思いつつ抜いた。鍬で土を起こす。オッスとミミズがのろり、掘り返した表紙にカブト虫の幼虫、ごめんねと土をかぶせた。ちょっと早かったかな。今年も菜園で楽しみます。
   出水市 年神貞子(70) 2007/3/23 掲載

写真はkunikoさんからお借りしました。

春の香り

2007-03-22 08:56:24 | はがき随筆
 「少し風が暖かくなってきたね」
 「日も長くなってきたよ」
 「おや、土筆の坊やも顔を出し始めたね」
 「たくさんの兄弟たち、そろそろ僕たちも花を咲かせようか」
 「そうしよう、そうしう。春を知らせよう。喜んでくれる人がいるよ」
 紅色の小さなつぼみが一つ、また一つと開き、白色の小さな手まりのような花を咲かせた庭の沈丁花。
 「行ってきます」
 朝、戸を開けると、沈丁花の何とも言えない春の香りが漂ってくる。じっと見つめ、思わずにっこり。心が和む。
   出水市 山岡淳子(48) 2007/3/22 掲載

写真はバセさんからお借りしました。

アルピニスト

2007-03-21 11:44:10 | はがき随筆
 「野口健には負けるが、26歳の時に富士登山をした」と、60歳手前の友人に話した。友人曰く、「初夏になったら霧島連山に登ろう」と、やる気満々。山歩きの魅力は自分の脚力に応じた山を選べること、素晴らしい景色との出会いにある。登山途中で目にする樹木や草花、渓谷、草原などの美しさは言葉にできない。そして何よりも、山頂にたどり着いて眼下を眺め、自分の足で歩いてきた距離への驚きと、ささやかな喜びを感じられることだ。これからの山は春を迎え、美しく色づき始め、山歩きに適した時季になる。もうすぐ50歳。挑戦してみるか。
   鹿児島市 吉松幸夫(48) 2007/3/21 掲載