はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

卒園式

2014-03-31 17:15:08 | アカショウビンのつぶやき
また今年も理事として関わっている、鹿屋市・信愛幼稚園の卒園式に行ってきました。

孫のない身にとっては、どの子も孫みたいに可愛い…。



在園児の拍手の中、ちょっと緊張した卒園児の入場。


園長先生は1人1人に園での思い出のひとこまをや、激励の言葉を…


園長先生のお話は、みんなが大好きなアンパンマン。


元気にお別れの歌。


卒園式も無事におわりました。全員の拍手に送られて退場です。

2014-03-31 16:43:20 | はがき随筆
 春まだ浅く吹く風も冷たかった。5歳離れた弟の手を引き、小学校に通ったある朝、「姉ちゃん、僕大丈夫」と手を振り放し離れていった時の寂しさが遠い日の記憶の中にある。
 無口で優しい弟。兄、私と家を出てしまい、両親を見る事に。その重圧からか、一気に酒量が増えた。唯一の趣味が写真を撮る事で、私にも度々送ってくれた。それはかれんな野辺の花、そこで遊ぶトントウ虫、河原のトンボであったり萌葱色の若葉など。自然の小さな命たち。なぜか心引かれ見入ってしまう。今、病に倒れた弟よ、生への息吹をもう一度と祈る。
  出水市 伊尻清子 2014/3/31 毎日新聞鹿児島版掲載

美容液パック

2014-03-31 16:37:31 | はがき随筆
 娘と温泉に出掛けた。午前中のせいか、客も少なくゆったりとした気分になれた。露天風呂入り口のドアを開けると、冷たい風に迎えられ、飛び込むように身を沈める。その何ともいえない気持ち良さ。そこは2人だけの世界だ。
 「漂白パックしようか」というと「えっ漂白するの?」と娘のにぎやかな笑い声が青空へ広がる。間違えた「美容液パック」の試供品を顔につけ、ゆっくりとマッサージをする。やがて効果の程はと鏡をのぞき込む母娘。温泉の効果もあってか、頬が緩む2人だけの喜びのひと時でもあった。
  鹿児島市 竹之内美知子 2014/3/30 毎日新聞鹿児島版掲載

2014-03-31 16:32:46 | はがき随筆
 今朝も早く目が覚めた。まだ午前4時。入院中の私は昼間も眠っていることがおおく、夢をよく見る。朝のお茶が来るのが午前8時。さて、それまでどうして過ごそうかと考える。
 昼間とは違う夢をみようと、目を閉じる。17歳の私は高2。同じクラスなのに、たったの一度も話をしたことのない男の子がいた。
 63歳の今、どんな初老の人になっているのだろうか。
 後友の1人や2人の父親になっているだろうな。
 もう1人は机を並べて座っていた男のこがある日、弁当箱に私と同じ卵焼きが入っていた。
  鹿屋市 田中京子 2014/3/29 毎日新聞鹿児島版掲載

粋な餞別

2014-03-31 16:27:19 | はがき随筆
 ホテルのフロントで「預かり物があるのですが」と、渡された現金封筒の差出人はめいになっている。その母親と義母は、いぶかりながら受け取ると、中に2通の手紙も入っている。
 ホテル当ての1通には4年前、義母と宿泊し楽しい思い出になったと感謝の言葉が。今度は義母と母が上京する事になり、宿泊先はここを薦めたという。餞別に添えた手紙には、充分楽しんで良い旅行であるようにとあり、2人の母はこのサプライズに涙したという。
 思いがけない出来事に、2人が土産選びに張り切ったのは、言うまでもない。
  伊佐市 山室浩子 2014/3/28 毎日新聞鹿児島版掲載

余録

2014-03-31 16:21:30 | はがき随筆
 本紙コラム「余録」を切り抜く。小5の孫息子に切り抜きを頼まれた時「えっ? どうしたの」と聞くと、先生が授業には使わないが「自分のために」読んでごらんと話されたという。
 私が中2の時、授業で朝日新聞の「天声人語」を読むよう薦められた。天声人語でその時々のニュースが分かるし、いろんな面で勉強になると教わった。今ではせっせと余録を読む。
 ところで君は余録に書かれていることが理解できているかと聞くと「それなりに」と。小学生にはまだ難しいと思うが、読むきっかけを作ってくださった先生の熱意に感謝している。
  鹿児島市 内山陽子 2014/3/27 毎日新聞鹿児島版掲載

はがき随筆2月度

2014-03-31 15:56:38 | 受賞作品
 はがき随筆の2月度の入賞者は次の皆さんです。(敬称略)

【月間賞】11日「魚が陸へ上がる」高橋宏明(70)=日置伊集院町飯牟礼
【佳作】▽7日「楽しいいきさつ」秋峯いくよ(73)=霧島市溝辺町崎森
    ▽23日「早春賦」若宮庸成(74)=志布志市有明町野井倉


 魚が陸へ上がる 30年前の出来事ですが、小魚が多数浜へ上がると聞いて、それを拾いに行った思い出です。随筆の出来は一つは素材の珍しさにあります。珍しい話題にはつい引き込まれます。しかし、それだけではなく、この現象の理由を種明かし風に説明し、最後に現在の海洋汚濁に思いを馳せたところが、優れた文章になりました。
 楽しいいきさつ 贈り物合戦とでもいった文章です。合計5回の贈答が、その1つ1つに、事情というか真心というか、いわば生活の綾がついているのが興味を惹きます。文化人類学という学問分野に、人間の文化の根底には、贈答や交換があるという考えがあります。それを思い出しました。
 早春賦 庭に小鳥のための餌台を作り、そこに来る小鳥を、双眼鏡と野鳥図鑑とで調べて、楽しんでいるという内容です。窓辺の老夫婦のたたずまいが、目に見えるような文章です。確かに人生の愉しみ方は、人それぞれで、このように静かな時間が穏やかに流れていくのは、かえって羨ましくも感じます。
 この他の優れたものを紹介します。
 一木法明さんの「死をみつめて」は、がん転移で余命を宣告された方に、『歎異抄』からの法話を行っているという内容です。僧籍にあるのだから当たり前だと言ってしまえば、身も蓋もありませんが、他人の運命と共通感覚をもつのは、重たく、容易なことではありません。
 伊尻清子さんの「いぶし銀」は、100歳の知人がとかくお元気で、読書に手芸に畑仕事に、それに電動カー、という屈託のない生活を紹介した文章です。地味でも鈍く光っている生き方に感服された様子がよく分かります。
 堀美代子さんの「桜島噴火100周年」は、大噴火の記念写真展を見に行った時の感想です。着の身着のままで逃げ惑う人々に同情されたようですが、都市近郊の活火山は確かに微妙な存在です。しかし、爆発しようが降灰に悩まされようが、鹿児島のひとは桜島が好きなのも不思議です。
 (鹿児島大学名誉教授 石田忠彦)

鹿児島人の名字

2014-03-31 15:51:48 | はがき随筆
 鹿児島に越して来て、1年がたち、知り合いも増えてきた。
 そこで気になったのが、鹿児島の人の名字。子供友達にも「内大久保さん」、「上林山さん」がいる。
 また、名字の種類も多いように感じた。以前住んでいた愛媛県今治市には、やたらと「越智さん」が多かったから、余計にそう感じてしまう。
 ネットで調べてみると「武士の多い土地だったため、名字の種類を増やす必要があった」との記述があった。なるほど。
 ところで、私の名字「津島」が「対馬」に間違われるのも、こちらに来て初めての体験だ。
  鹿児島市 津島友子 2014/3/26 毎日新聞鹿児島版掲載

この先 大丈夫?

2014-03-27 23:13:15 | 岩国エッセイサロンより
2014年3月25日 (火)

岩国市  会 員   安西 詩代

友人が「私、近ごろおかしいのよ。同じ物を何度も買ってくるの」と言う。「あるある! 私もゴマが3袋もたまっているよ」とお互いの失敗を話す。
 先日、その友人と広島にバスで行くことにしていたが、乗り遅れて車で行った。楽しく買い物をしてバスの時刻を調べ、まだ時間があるのでコーヒーを飲んでいた。ふと「今日はバスの往復券を買ったかしら? アッ」。2人ともバスで帰るつもりになっていた。

「危なかった! 乗る前に気がついて良かったね」と笑いながらも、2人の心の中に、モヤモヤ霧が立ちこめた。  

  (2014.03.25 毎日新聞「はがき随筆」掲載)岩国エッセイサロンより転載 

ノロ休養日

2014-03-25 11:06:46 | はがき随筆
 よく考えると身近な事なのに遠くに感じてたノロウイルス。いつも健康に自信がある私だが、夜、胸のつかえに「食べ過ぎた」と反省。熱があるのに気付かず、布団を蹴飛ばした。
 「夕べはとげんもなかったけ」の電話で感染を知った。感染者多数。病院にかかるも軽かったが、しばし〝糞闘〟となった。
 人との接触を避けるためやむなく自宅待機。仕事ばかりで家事が疎かになっているのに気付いた。ガラスの汚れ、部屋の隅のほこり。きれいになった部屋に春が来た。時には病気もいいもんだ!
 いいノロ休養日となった。
  阿久根市 的場豊子 2014/3/25 毎日新聞鹿児島版掲載

気まぐれ散歩

2014-03-24 22:43:29 | はがき随筆
 おいちゃんが家から出てきた。道ばたで遊んでいるボクに「ロイ行くよ」と声を掛ける。散歩のお誘いだ。犬じゃないのに。気まぐれな猫だぞボクは。何の因果で人間と一緒に歩くの。と、最初は素知らぬ顔をしいてた。
 でも飼い主への義理もあり、おいちゃんの楽しみに付き合いだした。ボクが他の事に目を奪われていないかと、彼は振り返りつつ前を歩く。この町内の新参者のボクとしては、古株の猫の気配を感じれば、にらみ合いも必要だ。草のおいしそうな香りがすれば、試食もする。「ロイこっちだよ」。また呼んでいる。はいはい、お供しますよ。
 鹿児島市 高橋誠 2014/3/24 毎日新聞鹿児島版掲載

春を送る

2014-03-23 18:10:07 | はがき随筆


 芽吹きの時になり、日差しのぬくもりは増し、暖かさに誘われ庭に立つ機会も多くなる。晩秋から彩りを添えていた山茶花や詫助も色あせて、椿の出番になり、河津桜の花弁が舞う。餌台に来ていたウグイスも藪に入りさえずりを始めた。その声を聞きながら一雨ごとに膨らむ木の芽を見て回る。そんな移ろいが楽しめるこの季節が好きだ。このぬくもりを娘たちに送ろうと思いついたのは妻で、内之浦産のタンカンを送る。娘たちからは「大雪で野菜が高騰する折、ビタミンが有り難い」という言葉。そうだ、新緑は心のビタミンかもしれない。
  志布志市 若宮庸成 2014/3/23 毎日新聞鹿児島版掲載

啓蟄から春へ

2014-03-22 15:21:14 | はがき随筆
 右脚を切って捨てたいと思った激痛で、早く退職してから、早いものでもう4年たとうとしています。その当時、痛み軽減にと思い、室内運動器具や体にいいと思われたイタリア製背もたれ椅子も購入しました。
 健康雑誌も買って健康体操にも努めました。健康補助食品もいいと思ったものは何でも試してみました。ワニ動作は効果があったようです。スッポン球も痛みが和らぎ、休みなしで400㍍歩けるようなりました。今も横断歩道での立哨は続けています。まだ痛みは完全に取れませんが、子供たちから元気をもらっている毎日です。
  いちき串木野市 新川宣史 2014/3/22 毎日新聞鹿児島版掲載

あの日の桜

2014-03-22 15:10:14 | はがき随筆
 40歳過ぎだろうと、実らずに別れが来ると分かっていても、恋に落ちるのは理屈じゃない。
 たまに残業の後、コーヒーを飲んだり、近所の定食屋に行くだけで充分だったあの頃。
 彼の転勤が決まり、辞令交付前夜は、私が家まで送り、翌朝早起きして迎えに。要望に応え、グレーのスーツに私が送ったネクタイを締めている。前の夜はおしゃべりな私だったが、これが最後と思うと寡黙になる。
 峠の途中、崖から突き出た1本の桜は満開で花びらが舞い、私の目からは涙がはらはらと。桜の老木は今はもう無いけれど、あの光景は決して忘れない。
  鹿児島市 本山るみ子 2014/3/21 毎日新聞鹿児島版掲載

春の味

2014-03-22 14:59:47 | はがき随筆
 橋さんの家に3人で行く途中、海岸沿いを通る時、運転の友から浜に下りようと誘われた。襟を立てて浜に立つと、黄褐色のワカメが幾重にもなり浜に打ち上げられていた。「昨夜風が強かったからね」と友が言う。ゆらゆらなぎさに打ち寄せるワカメ、見渡す茶色の海面に驚く。ビニール袋にワカメを詰めて橋さんの家に着く。早速湯を沸かし、庭のダイダイで酢じょうゆを作った。熱湯にワカメを通した途端、鮮やかな緑色になり、その美しいこと。ワカメしゃぶしゃぶで食した。春の海の味を満喫。海の幸に感謝した。この海が永遠にあることを祈る。
  出水市 年神貞子 2014/3/19 毎日新聞鹿児島版掲載