はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

百ます計算

2006-03-31 12:36:39 | はがき随筆
 近ごろ、ど忘れが重なり落ち込むことがよくある。ある日、8歳の孫が「ばあちゃん、百ます計算をしよう」と言った。早速「しようか」と始めた。縦横に並んだ、一桁の数字をたしていく。「よーい、どん」の合図で孫が始める。計算している時の目の輝き、もう一心不乱だ。終わった時、「やった」と言った。その時の満面の笑み。2分5秒だった。次は私だ。「よーい、どん」の合図に胸の鼓動の高まりを感じる。久しぶりの緊張感だ。孫のタイムに1分も遅れてゴール。孫に拍手を送った。七十路の脳細胞の衰えを感じながら又、挑戦してみたい。
   出水市上鯖渕 橋口礼子(72) 2006.3.31日掲載

レンゲの花

2006-03-30 13:09:49 | はがき随筆
 風邪をひき、咳(せき)がひどく声も出なくなった。首も痛くて思うように後ろに傾けることが苦痛で65%程度のうがいしかできずにイライラしていた。
 ウォーキングに出かけた夫がレンゲの花を摘んできてくれた。季節を感じる心の余裕さえ失っていた私は、この愛らしい春の花に癒された。
 洗面台にしっかりつかまって、上体を思いっきりのけ反らせて、あの荒川静香選手のイナバウアーのポーズをまねて、うがいしてみた。100%のうがいに成功した。 
   鹿児島市慈眼寺町 馬渡浩子(58) 2006.3.30日掲載 (写真は蝶の図鑑より) 

ふるさとの言葉

2006-03-29 08:30:58 | はがき随筆
 幼いころ、田舎に帰ると叔母たちの間で交わされる川内弁とでも言うのだろうかリズム感のあるやりとりを聞くのが好きだった。
 高校生のころ、ラジオから「こら、鉄矢なんばしょっとかいな」と突然始まる歌にバスの中は乗客の笑いに包まれ、笑顔があふれた。
 そして、今の私は木曜日の夕方、ラジオの鹿児島弁コーナーを楽しみにしている。
 とりわけ女性の話す、優しくおっとりした「あらよぉ!」に魅せられている。
   鹿児島市川上町 川崎泰子(50)   2006.3.29日掲載

初午祭

2006-03-28 13:41:13 | はがき随筆
 ヨイヤサー。ヨイヤサー。鹿児島神宮への参道はシャンシャン馬に踊り子たちが練り歩く。にぎやかな歌声に三味線の音。参道は人人人の波だ。今年還暦を迎える隼人中学校卒業生が80人そろっての馬踊り。真っ赤な法被に化粧顔。男性は鼻を真っ白に塗る。ほっぺたにクルクルパーや×印。ハートマークもあった。37年ぶりの馬踊りにワクワク。ぶっつけ本番の踊りだ。中学卒業後、45年の空白が一瞬に埋まるのが不思議。私は、膝関節症で不可能と思っていた馬踊りができて感激。後押ししてくれた級友に心から感謝。また、会いたいな。
   山口県光市 中田テル子(59) 2006.3.28日掲載

お腹召しませ

2006-03-27 18:52:23 | はがき随筆
 古今東西責任次第では、お腹召しませと、かまびすしいが、私などでは健康増進のため、大腸ポリープの切除である。次兄は30年程前、手術で大腸ポリープを切除した事を覚えているが、現在では細い内視鏡で切除できる。私もこのほど切除したのだった。今日このごろの食生活のなせる業か、大腸ポリープ温存の人が多いらしい。どこの病院でも行列である。
 私もこれで一安心。元気を取り戻し、多くの方々に受けたご恩を少しでもお返ししよう。私も現役を続けているので、いつまでやれるか分からないが頑張ろう。
   大口市小木原 宮園 続(75) はがき随筆特集版-6 (2006.3.27掲載)

妹よ

2006-03-27 18:39:32 | はがき随筆
 久しぶりに妹に電話をした。「しっとりとして奥ゆかしい。姉御とは大違い」と、賞賛されてきた。たつきの業にも優れている。新聞は隅から隅まで読んで、社会情勢に精通し、政治意識も強い。
 憲法9条関連、皇室関連、国保税、消費税問題などについて、政府をこっぴどく批判し、結びがふるっている。
 「わたし、いま、独りで不買運動をしているの。草ばっかり食べてるもんね」
あっぱれ、愛する妹よ。土手の野びるが、おいしそうに手招きしている。さあ、摘みに行こう。
   鹿屋市打馬 伊地知咲子(69) はがき随筆特集版-5 (2006.3.27掲載)

お手玉の会

2006-03-27 18:33:44 | はがき随筆
 生涯学習課でお手玉の会を催すという。初めてのことである。さて今時、どんな人が集まるのか郷愁も手伝って取りあえず参加を申し込む。リードをしてくださる人が男性なのに先ず驚いたが、小学生の女の子が3人加わっていたのにうれしい驚き、おばあちゃんに連れられてとか。熟女らしい女性群もいて何とも楽しい雰囲気に包まれた集まりであった。こんな遊びもあったのかと目に鱗であったが、何より認知症の予防や治療に役立つとの事。明るい先が見える心地がして次の会を楽しみにしている。
   南さつま市加世田村原 寺園マツエ(84) はがき随筆特集版-4(2006.3.27掲載)

思い出交差点

2006-03-27 18:26:43 | はがき随筆
 かつて大型トレーラーバスが走っていたこの街は、私にとってあこがれのスタート地点だった。初めてサーカスのゾウを見て、初めてミルクセーキを食べ、大志を抱き勉学にもまれる高校時代を過ごした。そして、病気休学。大阪の高校へ転校と夢と挫折の交差点でもあった。
 20年後の街は歩行者天国でにぎわい、映画館が四つもあり、子どもたちの歓声があふれていた。今、この町は市街地の再開発や空中給油機問題で大きく揺れている。この街が終のすみかとなろう私は、人生の素晴らしいゴール地点にしたい。
   鹿屋市札元 上村 泉 はがき随筆特集版-3 (2006.3.27掲載)

一期一会

2006-03-27 18:19:35 | はがき随筆
 私の前を歩いていたお年寄りがしゃがみ込んだ。気分でも悪くなったのではと思い歩み寄った。すると、指でつまんだ吸い殻を見せながら「若者(わけもん)の世話になっちょっで、ちったあ世間の役にならんとなあ」と笑った。よく見ると、お年寄りの左手には吸い殻の入ったレジ袋が握られていた。その小柄な後ろ姿からは精いっぱい生きて、自分以外の人たちに出来るだけの事をしたいという気持ちが伝わってきた。「今日は幸福な1日になりそうだ」と私はつぶやいた。二度と巡り会う事が無いかもしれない素晴らしい人に出会えたのだから。
   鹿児島市山田町 吉松幸夫(47) はがき随筆特集版-2 (2006.3.27掲載)

にわか農作業

2006-03-27 18:12:36 | はがき随筆
 大阪から移り住んで、はや1年5カ月になる。夫婦で毎日散歩するようになり、見知らぬ人たちとも顔なじみとなり、あいさつを交わし立ち話をするのが楽しくなってきた。「近くに畑があるから一緒に野菜を作らない?」と思わぬ声を掛けていただいた。早速、耕し石灰をまき、腐葉土を入れてサンド豆、スイカ、トウモロコシなどの種をまき収穫を夢に見る。しかし、いずれも実は付かなかった。いい経験をさせていただいた。今年は同じ失敗を繰り返さないためにも、地元の農家の人に良きアドバイスをしてもらい、今度こそと夢みている。
   蒲生町久末 三宅英代(54) はがき随筆特集版-1(2006.3.27掲載) (写真提供おたくさ日記より)

Happy Birthday

2006-03-26 22:29:16 | アカショウビンのつぶやき
3月26日
自分に自分からおめでとう!
 年に一度しか来ない私の誕生日…なのに…なのに。今日はペンクラブの役員会で早朝からのお出かけ、帰っても何だかくたびれちゃって。
娘から届いた花を愛でつつ、冷蔵庫の残り物でささやかな誕生日の食卓となりました。楽しいテーブルは明日にお預けにしましょ。 
 独りで迎える誕生日も11回目。夫からのプレゼント、モーツアルトのシンフォニー40番を無性に聞きたくなりました。

とてもとても

2006-03-26 18:06:39 | はがき随筆
 妻との会話にも聞き返すことが多くなり、「もういい」と切り捨てられることがしばしばだ。遊びに来た子供らが、テレビの音の大きさにまるて映画館みたいだと耳をふさぐ。
 数人居合わすとなかなかはっはきりと会話の中身を聞き分けることができなくなってきた。
 「無料 耳の相談」のチラシに飛びつき耳の検査を受けてみたら、右耳が中度の難聴の域に突入していると言われた。肝心の補聴器の値段を聞くや、な、なんと32万円なりの返事。あたふたと会場から逃げ帰ったのは言うまでもなかろう。
   肝付町前田 吉井三男(64) 2006.3.26掲載

花便りが元気の源

2006-03-25 13:23:39 | はがき随筆
 友からクリスマスローズの「花便り」がナンバー付きで2通届いた。カラフルなこの便りをみると、とても元気になる。クリスマスローズ、別名〝冬の貴婦人〟と称されるこの花のとりこになった。今はパソコンで色彩もそのまま、写真構成も大小どのようにもデザインできる。彼女もとても上手に写真の下にそれぞれ、一番花です。もうすぐ咲きます。―─などとコメントを入れている。次のには満開になった様が、そして蕾の姿が、更に別種のクリスマスローズの花。どんなに彼女が丹精凝らして育てているのかが分かる。この花便りをいただく私は幸せだ。
   鹿児島市小原町 吉利万里子(59) 2006.3.25掲載
(画像は管理人宅の庭に咲いてる、たった1輪のクリスマスローズです。万里子さんごめんね)

イラク派遣

2006-03-24 12:50:04 | はがき随筆
 陸上自衛隊の第8次復興支援群として昨年10月、イラクへ熊本空港を出発した義弟が、2月に無事帰国した。
 電話での帰国報告に、派遣の期間中無事を願い大好きな踊りを絶ち、願掛けしていた義母は「おかえり」と一言答えるのが精いっぱい。姉である私の妻も台所で目を赤くしてる。
 イラク派遣では、高校の同級生が第1次の責任者を務めた。イラク戦争の正当性や自衛隊の派遣には賛否両論あるものの、彼らがイラクの復興に貢献したことは事実であり、心からその労をねぎらいたい。子供には、現地での体験を聞かせてやるつもりだ。
   垂水市本城 川畑千歳(48) 2006.3.24 掲載