入学式の話題を耳にする度に思い出すことがある。もう70年前のことだ。
6年生になった直後の授業開始前の教室。輪になってワイワイ話している。そこに入ってきた一人が私に「先生が職員室に来いと言っている。何か悪いことをしたんか」と心配そうに言う。職員室へ呼ばれる時は「叱られる」と思うのが普通だった。心当たりはないが職員室へ向かった。
担任からいきなり「今日は入学式だ。在校生代表であいさつをしてもらう」と小さな紙切れを渡された。内容は思い出せないが、数行の文が書かれていたように思う。
教室へ戻ると、呼び出しを伝えた級友が「なんじゃったんか」と心配そうに待っていた仲間を代表して聞いてきた。呼ばれた訳を話すと、良かったと空気が和んだ。
この日、妹が入学するので母も式に来ることは知っていた。母は「あいさつするのは、うちの子によう似とるが」と思ったという。式の直前に決まったと話すと、母は記念になったと喜んだ。
このことを思い出す度に忘れなれない嬉しさがある。それは職員室へ呼ばれた私を何人もの級友が気遣い、心配し、私が教室へ戻ってくるのを待っていてくれたことだ。
今、あの時の級友たちとは音信が途絶えた。しかし、当時のクラスの集合写真を見ると、人を思いやる五十数人の素晴らしいクラスだったとの思いがこみ上げてくる。
山口県岩国市 片山清勝(81) 毎日新聞男の気持ち欄掲載
いつも転載して頂き有難うございます。
歳を重ねると思い出の題材がふえます。コロナ自粛が定着したのかもしれませんが・・・。
一月以上も一緒に投稿して、お読みくださる方も大変でしょうね。
入学式の誇らしい思い出、楽しく読ませていただきました。
思いでいっぱい書いてくださいね。
待ってます。