はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

若水に願いを

2015-12-31 17:56:59 | 岩国エッセイサロンより
2015年12月31日 (木)
 
   岩国市  会 員   沖 義照

 仕事を辞めて十年余りが経つ。現役時代には気が張っていたせいか、大きな病気などすることなく元気に過ごしてきた。
ところがこの2年間で2度も入院手術をした。幸運にも、いずれも大事に至ることなく無事に退院することができた。
健康面で色々と思い悩むことの多かった一年に別れを告げ、新しい気持ちで元旦を迎える。
かつては過分なことを願ったこともあった神棚に若水を供える。年を重ね、なんとか病を乗り越えてきた今は違う。
10億円の宝くじよ当たってくれなど多くは望むまい。ただ元気でさえあればと。
   (2015.12.31 毎日新聞「はがき随筆」掲載)岩国エッセイサロンより転載

わあ上手

2015-12-31 17:55:27 | 岩国エッセイサロンより
2015年12月29日 (火)

    山陽小野田市  会 員  河村 仁美

 子育て中は成長を楽しむ余裕がなかったが、孫の成長は楽しくてたまらない。2歳になった孫は、お箸でご飯を食べたり、着替えもひとりでできるようになった。できるたびに「わあ上手」を連発していたら、娘は「ほめてもらえると思って何度も同じことをするのはだめよ」と孫に教えている。
 従妹が大ばあばにだっこされているのを見た孫が、ばあばに代わりにだっこするように言いだした。どうするのか見ていたら、空いた膝の上にすばやく座ると大ばあばにぎゅっと抱きついた。お兄ちゃんになったと思ったけれど、甘え方がわあ上手。
   (2015.12.29 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

犬が来た

2015-12-31 17:49:30 | 岩国エッセイサロンより
2015年12月29日 (火)

岩国市  会 員   角 智之

 平成15年1月に飼っていたハスキー犬が死んだ。
 その後ペットとは無縁だったが、最近、娘が面倒を見ている犬の飼い主が継続して飼うことができなくなり、里子に出したいとの相談を受け、ケージなどの飼育道具一式と共に、わが家へ婿入りし、2度目の犬との暮らしが始まった。フレンチブルドッグという小型犬で、黒い顔に飛び出た目、低い鼻など愛嬌満点。ムダ吠えが少なく近所迷惑にならないのがよい。
 飼い始めたら命が尽きるまで面倒を見なければならないが、まだ10カ月程度の幼犬。自分の体がそれまで持つのか、心配事が増えた。
   (2015.12.29 毎日新聞「はがき随筆」掲載)岩国エッセイサロンより転載

妻の鶏料理 毎年好評

2015-12-28 10:54:07 | 岩国エッセイサロンより


2015年12月28日 (月)

   岩国市   会 員   山本 一

 今年も妻が2羽の鶏を丸焼きにした。―羽は京都府に住む長女へ宅配便で送った。もう1羽は近くに住む次女の一家がわが家に来て一緒に食べる。わが家のクリスマスの恒例行事だ。
 私がこのローストチキンを初めて食べたのは婚約中の頃で、妻の家だった。腹に詰めたパンと砂肝が、とてもうまかった。
 以来、妻は毎年この時期にローストチキンを作る。材料は、なじみの肉店があらかじめ準備してくれる。
 嫁いでいる娘たちも妻に期待するが、いずれも夫が食べたかっていることを口実にし、なぜか直接「作ってくれ」とは言わない。
 妻の弱いところをくすぐってやらせている。妻もぶつぶつ言いながら、毎年、楽しそうに焼いている。妻と娘たちの、あうんの呼吸が面白い。
 妻の母はハワイ暮らしが長く、この料理は、母から受け継いだものだ。そして今、妻のローストチキンは娘たちにとって母の味なのだ。ふと、父親は娘たちに何を残せるのだろうと自問した。

     (2015.12.28  中国新聞「広場」掲載)岩国エッセイサロン より転載

世間遺産

2015-12-28 10:27:29 | はがき随筆


 鹿児島には自然遺産の屋久島、そして明治産業革命の構成施設としての集成館などもあり、世界に誇れるものが多い。
 都市である鹿児島市の4㌔先には世界に名だたる活火山の桜島、全国有数の名湯として知られる霧島温泉郷と桜島連山の景色。最近ではマリンポートに着岸する外国客船も多いと聞く。
 吉野千本桜に対抗して垂水千本イチョウは近年の隠れた名所になっている。港から歩いて1時間半で現地到着。入口に「世間遺産」の看板があるではないか? 景色より看板を設置した人に拍手を送りたい気持ちになった。
  鹿児島市 下内幸一 2015/12/28 毎日新聞鹿児島版掲載

クリスマスツリー

2015-12-27 16:42:16 | はがき随筆
 幼い娘がたっぷり楽しんだお下がりのツリーを窓辺に置いた。点滅する光に浮かび上がる雪や星を闇に透かしてベツレヘムの馬舎を思い浮かべていた。ところが、数年前硬派で整理魔の神父が焼いてしまった。
 今年もやって来た神父に「ツリー買おうかな」と言ったら「だめっ」。堅物には太刀打ちできない。「心に飾るか」と言ったとたんに気がついた。待降節に入り心にほんのり明りがともっていたことに。イエスを待つ喜びはどこからともなく沸いてくる。ツリーの助けを借りる必要はなかったようだ。
 新婦の意図はこれだったか。
  鹿屋市 伊地知咲子 2015/12/27 毎日新聞鹿児島版掲載

タブレット

2015-12-27 16:41:41 | はがき随筆
 タブレットPCに指で触れると、社会の情報が画面に表れる。有益なものから無駄なものまで。書き込みもできる。
 小中学生の頃、板塀で囲まれた場所が多かった。そこに貼られたポスターやビラ。映画ポスター、店の売り出し、求人、商品宣伝、犯人捜査から政治主張、迷い犬捜しもあった。サイズも色合いも不統一のまま並び、白墨のいたずら書きも。大人の社会への好奇心をかきたてるものもあった。近所のおばさんに変な目で見られないように、足早にその前を過ぎた。子供時代の板塀は、アナログタブレットだったかもしれない。
  鹿児島市 高橋誠 2015/12/26 毎日新聞鹿児島版掲載

予知能力猫?

2015-12-27 16:25:47 | はがき随筆
 3歳になった猫のイー君は予知能力を身につけたのかも。これまでは雨の日も外で用を足し、前足を泥だらけにして帰ってきていたのだが、朝から雨の日のこと、家の中のトイレで大きい方を済ましたのに、外に出ると騒ぎ出したのだ。取りあえずは出してやったのだが、正午近くになったらなんと晴れてきたのである。
 そういえば、先日家で寝ていたので珍しいことがあるものだとみていたら、そのうちに雨が降り出したことがあった。降っていても出たらやみ、出なかったら降り出す……。イークンは予知能力猫になった!
  西之表市 武田静瞭 2015/12/25 毎日新聞鹿児島版掲載

登校の児童から元気

2015-12-25 07:25:34 | はがき随筆
2015年12月21日 (月)

    岩国市   会 員   片山清勝

 朝7時を少し過ぎると、登校する児童らの元気な話し声が裏通りにも響きはじめ、活気が漂う。
 最低気温が5度を下回った朝なのに、白い運動着の半袖と半ズボンの姿で登校する児童が大半だ。でも、寒そうな様子は少しも見せない。
 近所で誘い合う申し合わせなのか、上級生、下級生の混在したグループで登校する。そのまとまった様子に何か安心感を覚える。
  「おはようございます」。どの子も語尾まではっきりした、あいさつをしてくれる。一日の始まりの元気を児童からもらう。
 ほとんどの子が、ランドセルのほかに大きな袋や用具を提げている。水筒も持参していて、1年生には少し重そうに見える。 
 下校時も、元気な話し声は朝と同じ。疲れた様子は見せない。時には道草を楽しんでいる。子どもらしい姿にほっとする。
 年末年始、けがをせずに過ごし、年明けに、少したくましくなった姿を見せてほしい。   

      (2015.12.21 中国新聞「広場」掲載)岩国エッセイサロンより転載

はがき随筆11月度

2015-12-25 07:21:11 | 受賞作品
はがき随筆11月度月間賞は次の皆さんです。(敬称略)

【優秀賞】10日「トゲ」伊尻清子=出水市武本
【佳作】1日「悩み事」古井みきえ=札幌市東区
    3日「民具」下内幸一=鹿児島市紫原

 「トゲ」は、トゲの使い方が効果的です。亡くなった夫君は、たくましく荒仕事をこなす頼もしい働き手。それなのに、小さなとげが刺さっただけで、痛がって気弱な表情になる。それを針で取りだしてあげたりしたが、その夫婦の交情が未練として残り、今は心のトゲになっているという内容です。心温まると同時に、読んでいる方の心にもとげが刺さります。夫婦の情愛は不思議なものですね。
 「悩み事」は、1羽で飛来した鶴への感想です。鶴は家族で行動すると聞いていたのに、なぜ1羽できたのか。連れが事故にあったのか、家族をシベリアに残してきたのか、心配でならない。早く家族が後続することを祈るばかりという、優しさのあふれた文章です。偵察に来たのではないでしょうか。
 「民具」は、食生活から消えていく民具についての講演を聴いて驚いた。かつて使っていた道具が、ほとんど民具といわれたからだ。とくに亡き父の編んでいたようなムシロが、民具といわれたのには感無量であった。たしかに民具といわれると。歴史性を感じてしまいます。
 この他に3編を紹介します。
 若宮庸成さんの「昭和史に添えて」は、世代的には戦災のただ中に育ったのだが、幸か不幸か空襲の惨状は経験していない。その後の不戦の歴史が今やキナ臭くなってきた。平成史が昭和史同様にならないことを切望するという、共感できる内容です。
 竹之内美知子さんの「思いやりの心を」は、スーパーで高齢を見かねて、優しく荷物を運んでくれた女性がいた一方では、カートをぶつけても知らない顔の男性もいた。それぞれとはいえ、やはり思いやりの心はほしい。ほんのちょっとしたことですが……。
 馬渡浩子さんの「内省」は、新しくアイロンを買ったのに古いのばかり使っている。この癖、子どものときからで、父にケチと言われた事があった。金子みすゞの詩句「みんなちがって みんないい」を思い出し、自ら慰めているという内容です。
  鹿児島大学名誉教授 石田忠彦

文化祭

2015-12-24 22:57:56 | はがき随筆
 加治木町錦江地区の第8回文化祭が開催された。書道、絵画、手芸、工作、陶芸……。臨書「花は霧島、たばこは国分、燃えて上がるはおはらはあ桜島」。92歳の作品には感銘を受けた。高齢者の作品は年輪が加わり、神様のたまもの。小中学生の小論文も絵画も、手芸、縫物も丹精込めた
傑作だ。
 私も「はがき随筆」を展示した。地区長から「文化祭の模様を公開してください」と依頼された。地区の皆さんはベテランぞろいで日常の暮らしで熱心な方ばかりのよう。地区の宣伝と区民の健康、繁栄を祈り「はがき随筆」投稿もよろしく!
  加治木町 堀美代子 2015/12/24 毎日新聞鹿児島版掲載

携帯電話

2015-12-24 22:49:10 | はがき随筆
 携帯(ガラケー)スマホ、今では必需品となっています。私も70歳を過ぎて、必要にせまられもつようになり、離れて暮らす子や孫たちとメールするようになりました。現在3台目ですが、買える度に性能もよくなり、生来不器用ときているのでいつもあたふた。販売店に聞くのも面倒で説明書を読むのですが、肝心なところを見つけ出すのに苦労しています。小学生が簡単に使っているのに、年だけ重ねて現代社会についていけず、残念です。説明書は丁寧に書いたのでしょうが、大概電気製品の説明書を読み
こなすのが、老人には難しいです。
  鹿児島市 津田康子 2015/12/22 毎日新聞鹿児島版掲載

錦繡の秋

2015-12-24 22:36:13 | はがき随筆


 晴天が続き、観光バスで九重の大吊橋に行った。車窓から沿道の紅葉に感嘆の声をあげ、遠く涅槃像の阿蘇の五岳、綿毛になったススキの草原は、普段家の中ばかりの私には感動の連続だった。大吊橋が紅葉の中に銀色に光って見えたとき、一枚の絵になって脳裏に残った。高さ173㍍、長さ390㍍の日本一の橋、渓谷を挟んだ山は赤、黄、緑に彩られ、遠くまで続いた。渡る橋の揺れを忘れるほどの美しさ。眼下は紅葉した葉が日を受けて更にその色を増した。人は大吊橋を「天の散歩道」と言う。錦繡に輝いた山、素晴らしい秋の一日だった。
  出水市 年神貞子 2015/12/21 毎日新聞鹿児島版掲載

孫の努力

2015-12-24 22:23:46 | はがき随筆
 小学2年生の孫が自転車に乗れないと知った。練習しない理由を聞くと、転ぶのが怖い、ママの後ろに乗れる、と意に介さない。末っ子の性分と思いつつ「小さい子も乗れるのに、じいじは悔しい」と諭す。すると「手を離さないでよ」と孫は条件をつけ、やる気になった。
 中学校の校庭で実技。ゆっくりでも、バランスがとれると倒れないと手本を見せる。特訓開始。何回も倒れ、転び、泣きべそをかく姿に私の心が折れそうで、中止しようと思ったとき、手を離した。すいすい前進した。乗れた。汗で汚れた笑顔が誇らしく、思わず抱きしめた。
  出水市 宮路量温 2015/12/20 毎日新聞鹿児島版掲載

耐えるしかない

2015-12-24 22:17:11 | はがき随筆
 2日続きのゴルフコンペを5日後に控えて、ひどい腰痛に襲われた。家内は辞退しろと言うが、諦めるわけにはいかない。すがる思いで病院へ行く。医師に事情を訴え懇願するしかない。生まれて初めて腰に注射をされた。シップとの相乗効果もあったのか、翌朝は痛みが半減。家内を安心させるべく早朝散歩へ。そして、好天に恵まれた晩秋の2日間、心ゆくまでゴルフを楽しむ。しかし今度は、右ひじに激痛が走る。箸を口に運ぶのもままならず、歯磨き、ひげそり、ボタン掛けなど苦痛で顔がゆがむ。だが、この顔を家内に見せるわけにはいかない。
  志布志市 若宮庸成 2015/12/19 毎日新聞鹿児島版掲載