はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

2014年を振り返って…

2014-12-30 16:50:16 | アカショウビンのつぶやき
 今年もあと1日…皆様いかがお過ごしでしょうか。
この1年を振り返ると、まあ何と慌ただしい年だったことか…。

 2014年の一番大きな出来事。
それは、8年4ヶ月続けて来た、
FMかのやのボランティアパーソナリティを卒業したこと。
昨年末「あと1年!」と決めてからが、大変でした。
80歳の大台に乗った途端、次々に襲われた体の不調。

私だけでなく、編集担当のO氏も体調を崩し、
426号の作品を作り終えるまで最後の一月は波瀾万丈…。
最後の作品は、「ごきげんよう さようなら」のタイトルで、
協力頂いた数人に参加して頂き、
トーク番組に仕上げて放送しました。
「心のメモ帖」は、8年前に放送開始以来、
最後のフレーズは
「ごきげんよう さようなら」だったのです。

最後も我が家の茶の間で収録でした。鹿屋市立図書館・元館長Tさんと、Kさん。

最後の番組収録後に、有志の方々が感謝会をしてくださいました。

書家の琴美先生が書いて下さいました。


釣ったばかりのお刺身の美味しかったこと。


ラジオ番組作成なんて70代になっての初体験!
多くの方々に支えられ、ご指導頂いてここまで来ました。
感謝するのは私の方ですが、
本当に楽しい一時を過ごさせて頂きました。


額は独心先生の書です。
「閑雅」「歓」と書かれています。
素晴らしい額でした。
有り難うございました。

諦めないこと

2014-12-30 12:30:49 | ペン&ぺん

 2014年1月12日、1914(大正3)年の桜島大正噴火から100年がたち、我々は火山噴火など自然災害への備えやら心構えを新たにした。阿蘇山の活動が活発になり、御嶽山は多くの犠牲が出た。桜島の大規模噴火はすさまじい。歴史や資料がそれを物語っている。目の前には人口60万人の鹿児島市。もう一度「いざ」という時に、大惨事にならぬよう、対策を講じたい。8月の広島土砂災害も21年前の「8.6水害」を経験しているだけに、人ごとではなかったはずだ。
 14年は、テニスの錦織圭選手ら日本の若手アスリートが世界の大舞台で活躍した。私はソチ五輪の浅田真央選手の滑りを忘れることができない。ショートプログラム(SP)に精彩を欠き、メダルは遠のいたが、フリーは圧巻だった。彼女は諦めず、難度の高いジャンプで圧巻のパフォーマンスを見せてくれた。私は目頭が熱くなった。
 奄美市の大島高校も悲願のセンバツ初出場を決め、鹿児島の春を湧かせた。恵まれない練習環境でも「やればできる」「諦めなければ夢は実現できる」ことを照明した。
 更に、ノーベル賞物理学賞に県出身の赤崎勇・名城大終身教授が選ばれたのも誇らしかった。私は熊本出身だが、鹿児島がうらやましい。第二、第三“世界の赤崎”が出てきてほしい。今から待ち遠しい。教育関係者も気合いが入ったに違いない。
 来年は戦後70年。生きていれば90歳になる私の父でさえ、敗戦時は20歳だった。シベリア抑留の4年を「いつか聞こう」と思っていたら、75歳で死んだ。悔やんでも悔やみきれない。どうか戦争を体験した皆さんは戦争や平和について、自身の体験や考えを若者に伝えてほしい。
 今年は今回で終わりです。皆様も健康管理に気を付け、15年が良い年でありますよう諦めずに、共に頑張りましょう。  
  鹿児島支局長 三嶋祐一郎

赤い実

2014-12-30 12:22:13 | はがき随筆
 お正月用の花は買わなくても間に合う。松、スイセン、そしてふんだんに千両がある。
 千両は半日陰を好むらしく、庭のスモモやモミジの下などに次々に生えてくる。たんさんの友人、知人に苗木を分けてあげて喜んでもらっている。千両箱、千両役者といった縁起のいいめでたい木である。
 千両は葉の上に、万両は葉の下に赤い実がなる。千両、万両、南天と赤い実が競い合う冬の庭。ヒヨドリはまず南天の実からついばみ千両へ。万両は最後。亡夫が1.2本ずつ植えた木が今では増え続け、鳥を呼び、寂しい庭を彩ってくれる。
  霧島市 秋峯いくよ 2014/12/29 毎日新聞鹿児島版掲載

桃は冬に咲く!

2014-12-30 12:07:12 | はがき随筆
 月下美人が2度咲いたり、最近の地球はおかしい、という会話を交わしたばかりの看護助手さんが、リハビリ室に入った私の顔をみるなり、「今度は近所の桃が咲きましたよ」と言った。立冬も過ぎたというのに、何と桃が咲き出したというのだ。
 その話をリハビリから帰って、庭仕事をしていたカミさんにしたら、そう言えば……と乗ってきた。「ちょっと動いたら暑くなった」と半袖なのである。
 カミさんの半袖は論外としても、これだけ気候が異常をきたせは、桃が勘違いするのも無理ないかも……と納得した次第。
  西之表市 武田静瞭 2014/12/29 毎日新聞鹿児島版掲載

小向井一成さん

2014-12-30 12:00:00 | はがき随筆
 初めて小向井夫妻にお会いできた。「妻が久野さんのファンなんですよ」。一成さんにいきなりそう言われてたじろぐ。一成さんは本紙に絵手紙を連載しておられた。その後「はがき随筆」にも度々……。すてきなカラーに彩られた大判の原画には懐かしい鹿児島の田園風景が盛りだくさんだ。人柄も実直、善良そのものとみた。私たち夫婦はいっぺんで好きになった。2日後、彼から絵手紙を頂く。はがきには前日の花壇に入選した私の「ここからは各駅停車になるといふ稲田ひろがる山裾の駅」の短歌と極上の挿絵が。一成さん、本当にありがとう!
  霧島市 久野茂樹 2014/12/26 毎日新聞鹿児島版掲載

序破急

2014-12-30 11:53:15 | はがき随筆
 憧れていた田園生活がかなって約20年。庭先で花や野菜類の自給自足が楽しい。巡る季節に応じて三つ葉、フキ、タラの芽、そして庭奥には竹の子など、庭に出ると食材にも花にも事欠かない。
 雨の日は縁側で針を取る。母や姉の残した和服のリフォームに余念がない。友人にほめられるのがうれしくてやらめられない。気が向くと、書にも手が伸びる。いま、「菜根譚」を読み、改めて処世術に心いたしている。ともすると、単調になりがちな老後の暮らし。こうしてメリハリをつけつつ、独り舞台の序破急を決める日々である。
  鹿屋市 門倉キヨ子 2014/12/27
 毎日新聞鹿児島版掲載

純粋な子供心

2014-12-30 11:45:49 | はがき随筆
 自宅の庭に弟の車が入ってきた。中から2歳半の孫が外へ出て来るなり、トラクタへ2目を向けた。さすが男の子、即乗り方を夫にせがんでいる。
 エンジンをかけると、満足気な笑顔。その後、玄関から台所へ。おやつのおねだりかと思いきや、そこにいた夫の足に抱きついている。その様子がとても可愛い。はてな、じいじと勘違いか。弟曰く「思い道理になって感謝した」と。家では孫の世話にハラハラだから危険防止の柵を作っているそうだ。
 私は手こずる子供ほど可愛いと思う。訳は、書道塾の仕事で心の純粋さを知ったからだ。
  肝付町 鳥取部京子 2014/12/25 毎日新聞鹿児島版掲載

電子レンジ

2014-12-30 10:33:24 | はがき随筆
 寒くなると、ゆっくりとした朝食が始まる。電子レンジの、<温めスタート>を押す。
 「あれ? おかしいなあ」。
ドアハンドルを開け、再度挑戦する。あちこちのボタンを押しまくるが反応なし。
 コンセントを確認してみるが以上はなく、突然の不具合に戸惑った。製造年から10年以上もたっている。「寿命かな」と、しぶしぶ納得する。
 結局、ご飯は具だくさんのおじやに変身し、1時間遅れの朝食となった。便利さに慣れてしまうと、後戻りはできない。予期せぬ出費だが「チン」の存在は大きい。
  鹿児島市 竹之内美知子 2014/12/24 毎日新聞鹿児島版掲載

ゆく年くる年

2014-12-30 10:25:38 | はがき随筆
 今年も残すところ僅か。振り返れば良い年だったと思う。特別なことはないが、妻と2人健やかに暮らせたことが一番だ。何をするのも一緒で、大した旅もせず、のんびり過ごしたが、思い出作りには事欠かない。来る年も健やかを願うのは変わらないが、やりたいことは山ほどある。北海道へ行きたい、大リーグや大相撲の観戦をもう一度という妻の夢もかなえてやりたいが、ぼくにも夢がある。夢を語り合うのも楽しみの一つで、そんな1年がまた始まる。ただ一つ決まっているのが11月のゴルフ観戦で、ホテルも決めてある。
  志布志市 若宮庸成 2014/12/24 特集版-師走編-6

ダイヤモンド賞

2014-12-30 10:10:34 | はがき随筆
 耳にばい菌が入り、補聴器も使えず無音状態の夫。すぐ治るつもりがゆっくり治療をと。不安やいら立ちをジェスチャーと筆談に頼るが、切れかかった電池のように接触不良を起こす。さつま川内市長杯G・G大会に参加した夫はダイヤモンド賞を取ってきた。8回中1打で3回輪っかに入れることを自慢しつつ、聞こえない恥ずかしさと惨めさを味わったという。その後は心機一転。子供のメールに涙し焼酎も絶ち、約1ヶ月治療に専念している。あいさつは耳をさす仕草から。今朝はテレビの声が少し聞こえるとほほ笑んだ。
  薩摩川内市 田中由利子 2014/12/24 特集版-師走編-5

鹿児島弁検定

2014-12-30 10:02:47 | はがき随筆
 中央駅前広場でイベントを手伝った。「鹿児島弁で語いやはんか」と、過去島弁劇団の人とテントの中から声をかける。お茶を差し出し、鹿児島弁で話しかけると、通行人が珍しそうに集まり、人だかりができた。
 さつま狂句を作っているので、鹿児島弁の方言研究会に入り、今秋、鹿児島弁検定(中級)を受験した。劇団の寸劇を見ながら共通語にする出題もあり、容易に問題に取り組めた。鹿児島弁には面白いことわざが多く、更に方言の語源を知ると、その奥深さを理解できて、勉強が楽しくなる。2015年は上級の受験を目指したい。
  鹿児島市 田中健一郎 2014/12/24 特集版 師走編-5

私の今昔物語

2014-12-29 21:55:41 | はがき随筆
 「ダメよ~ダメダメ」という言葉がはやっている。善しあしをはっきりせずに人を笑わせるおもしろさが、世相に受けている。
 しかし、私は最初この言葉を耳にした時、「あれっ」と思った。どこかで聞いた覚えがあるのだ。それもずっと以前。そうだ、あの「嫌嫌嫌よと首をふる」の歌と似ていたのだ。当時、私たちは東京オリンピック景気で歌って踊ったものだった。
 それにしても今度も6年後、東京オリンピックが控えているではないか。五輪にはこんな力もあるのか。私は手放しで笑っていてはおれないと少し心配になった。
  鹿児島市 野幸祐 2014/12/24 特集版-3

南天

2014-12-29 21:36:02 | はがき随筆
 退院の度に優しさが増し、寄り添う心も深く強くなった。庭木の花を愛し、梅、ツバキ、ツツジなど、果ては着生ラン、千両、万両と庭造りに余年がなかった。こつこつと築いた石垣には、夫の姿が彷彿とする。ある時、生け垣にと、南天を植え付けた。それが繁茂し、やぶとなり厄介だという私の意向に、夫は苦笑しながらモダンなフェンスに替えてくれた。
 隅に追いやられた南天が近年、赤い実をたわわに付け、濃緑の葉に映え、美しさが際立つ。正月用にと生けてみる。「きれいねえ」。きっと、照れて笑うあなたに、また会いたくなった。
  出水市 伊尻清子 2014/12/24特集版-2

10年日記

2014-12-29 21:26:20 | はがき随筆
 1年前、本欄で随友のKさんが10年日記のことを書かれたのが心に残っている。先日、リクエストして娘から10年日記を送ってもらった。10年後の2024年暮れには私は84歳7ヶ月。生きているだろうか。幸いに、今はとても元気だが、確実に年々からだが硬くなってきている。今年は膝痛に悩まされたので、特にそう感じるのかもしれない。頭の方も少しずつ衰えてきていると感じる時がある。しかし、案じても仕方がない。生き死にも定命というものがあるだろう。思いがけない喜びや悲しみにも出会うだろう。1日1日を大切に日記に刻もう!
  霧島市 秋峯いくよ 2014/12/24 特集版-1

はがき随筆 11月度

2014-12-29 20:13:35 | 受賞作品
 はがき随筆11月度の入賞者は次の皆さんです。(敬称略)

【月間賞】16日「釣り銭」門倉キヨ子(78)=鹿屋市串良町下小原
【佳作】2日「心コロコロ」伊地知咲子(78)=鹿屋市打馬
【佳作】21日「覚悟を決めて!」奥村美枝(54)=鹿児島市桜ヶ丘


 釣り銭 キャッシュレスばかりだが、たまたま現金での支払いをしたら、車までの数十秒、ポケットの中の釣り銭のざらつく音が新鮮で、楽しかったという内容です。普通なら気づかない微かな響きに、心地よさを感じたという感受と、それを文章にしたところに感心しました。
 心コロコロ 子どもの頃気台風到来が楽しかったのに、大人になると迷惑する。ところが台風通過の後、隼人瓜を拾えたので、また歓迎するように心変わりしたという、楽しい文章です。九州は特に台風文化だともいわれてきましたが、大災害を引き起こす台風にも、心の持ち様次第という生き方はいいですね。
 覚悟を決めて! 父親の認知症、ご子息の大手術、夫君の大病と悪いこと続きで、自分のことは後回しになってしまった。加えて、お茶の約束をしていた友人2人まで急死した。ここまで続くと「笑ってしまいそうになる」お気持ちよく分かります。それに「やりたいことは即実行」という覚悟も理解できます。時間をうまく使ってください。
 他に3編を紹介します。
 若宮庸成さんの「ぼくの昭和史1」は、戦時中に応召中の父親を盛岡の連隊に面会に行った記憶と、空襲中の灯火管制や防空頭巾を被っての避難が、戦争の記憶として思い出されています。戦争を体験したおそらく最後ぐらいの年齢だと思います。戦争を知らない世代が政治家になるのは仕方がないとしても、戦争に対する想像力の貧弱さには危惧を感じます。
 口町円子さんの「出来事」は、つい化粧を疎かにして買い物に行ったら、店員に病後と間違われた。これからは用心という自戒の文章です。ご自分を客観的に観察し、それをやや戯画化された文章です。
 竹之内美知子さんの「退山式」は、住職の世代交代の儀式に参列したという珍しい内容の文章です。新旧2人の住職の様子が、その人柄まで鮮やかに描かれています。仏教がこのような形で、生活の中に息づいていることに興味を持ちました。
 (鹿児島大学名誉教授 石田忠彦)