はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

ももちゃん

2008-01-31 21:53:39 | アカショウビンのつぶやき




 隣の姪っ子がかわいいペットと一緒に帰ってきた。
 今までも度々写メールで見たのだが、<可愛いうさぎ>と説明されても、どこが顔やらなにがなにやら判別できず、失礼ながら「へんてこりんなうさぎ」にしか見えなかった。
 やっとお目通りが叶って、目の前にいる、ローランド・ホップ、みみたれうさぎの「ももちゃん」は、なかなかのイケメン。
 最初は慣れない部屋に戸惑って、固まってしまったようだが、部屋中を跳びはねて元気いっぱい。だっこすると腕の中でうとうと…。おでこを撫でて貰うのが大好きで、やめると「もっともっと」とおでこを押しつけてくる甘えん坊。
 最初は本当にうさぎがペットになるの? と半信半疑だったが、たちまち、その愛らしさに魅了されてしまった。
 ジジ・ババは足元を走り回る「ももちゃん」が孫みたいだと目を細めている…。

 もう明日は関東にお帰りです。ケージに入って3時間、ママと別れて飛んでいきます。また元気に帰っておいで、ももちゃん!
 

球春

2008-01-31 20:24:50 | かごんま便り
 「春はセンバツから」という言葉がある。
 80回の節目を迎える選抜高校野球大会。野球シーズンの幕開けを告げる(近年はプロ野球が先に開幕することもあるが)行事であり、ちょうど桜前線が日本列島を北上する時期にも重なる。「春は~」は通常、そうした意味合いで受け止められているようだ。さらに言えば、出場決定の知らせは、選ばれた学校とその地元にとっては間違いなく、一足早く届けられる春の便りとなる。
 出場36校を決める選考委員会が開かれた25日。「篤姫」で年が明けた鹿児島は、春の予感にはほど遠い厳しい冷え込みとなったが、鹿児島工センバツ初出場のニュースが〝春〟を運んでくれた。
 選考委員会から出場校への連絡は北から順に午後3時ごろから。鹿児島工が決まった場合、吉報は午後4時前後。所用で出水に赴いた私が新幹線で戻ってくる真っ最中である。トンネルの多い新幹線は携帯電話がつながりにくい。昨秋の戦いぶりから出場を確信していたが、なかなか連絡が来ない。ようやく取材中のO記者から「出場決定」のメールが届いたのは、鹿児島中央駅のホームに降り立った直後だった。
 タクシーを飛ばして鹿児島工へ。大勢の報道陣に囲まれて喜びを爆発させている選手たちを横目に、さっそく瀬田豊文校長にあいさつし、お祝いを述べた。瀬田校長は母校の鹿児島玉龍で、選手として、さらに指導者としても甲子園の土を踏んでおられる。それでも校長として迎える最後の春に、加えて創立100周年の記念すべき年にセンバツ初出場。感慨ひとしおであろう。
 鹿児島工は夏の大会初出場となった一昨年、ベスト4に進出して甲子園に旋風を巻き起こした。今回も必ずや南国・鹿児島から全国に、さわやかな春風を届けてくれるに違いない。
 3月22日の開幕が待ち遠しい。

鹿児島支局長 平山千里
2008/1/28 毎日新聞鹿児島版掲載

新年の誓い

2008-01-31 12:57:00 | はがき随筆
 今年が子年で年女だ、とはっきり気づいたのは、年賀状を書きはじめた暮れの30日だった。まったく! 自分のことは何でも分かっていたつもりなのに。
 年頭にあたり、何か一つ改めようと決めた。
 そうだ、言葉の使い方だ。私はパートから帰ってくるなり「疲れた、疲れた」を連発する。晩酌をする夫から「焼酎がまずくなる」と意見されたこともあった。だが「働いたうえに家事もするから疲れるのは当たり前」と聞く耳を持たなかった。
 これからは「疲れた」をできるだけ封印し、自分に「頑張ったね」とこっそり言おう。
   薩摩川内市 奥吉志代子(59) 2008/1/31 毎日新聞鹿児島版掲載

正月の同窓会

2008-01-31 12:51:36 | はがき随筆
 長い空白を埋めてくれる、20年ぶりに会えた同窓会だった。
 正月2日、卒業生17人の、小規模校の教科担任だった私も、会に招待された。出席者は女6人、男4人の計10人。
 私には「先生の前歯の金歯が光っていた」とか、お互いの失敗談をおかずにして、皆、ビールがうまそうだった。懐かしさがこみ上げ、舞台は20年前にさかのぼった。しかし……。
 女とは反対に男は4人ともまだ独身。居所さえ不明という、欠席のT君も気になる。悪質金融業者などにだまされたりしていなければいいが……。私の余計なお世話は、今も直らない。
   出水市大野原町 小村 忍(64) 2008/1/30 毎日新聞鹿児島版掲載

日本の美

2008-01-29 21:13:27 | はがき随筆
 四大浮世絵師展に出かけた。
 女性を賛美する美人画。歯切れのよいセリフが聞こえてきそうな生き生きとした役者絵。力強く豪快な力士の絵。
 絵師の後ろに控える彫師(ほりし)と摺師(すりし)、版元がいて、浮世絵の魅力は最大限に引き出されたのだろう。
 日本の四季の風情を感性豊かに描いた北斎と広重。2人の絵は対照的に見えるが、詩情あふれる広重の作品をもっと見てみたいと思った。
 日本のわび、寂、心象風景を大切にしたいと思う。
   姶良町 中村頼子(62) 2008/1/29 毎日新聞鹿児島版掲載

旅立ち

2008-01-29 21:06:32 | はがき随筆
 毎日のように大型スーパーに行く。8㌔ほどの道筋に、葬儀場が3ヵ所ある。
 何もないときは何だかほっとするが、暮れも押し詰まった寒い日、3ヵ所とも葬儀が行われていた。いずれも享年90歳代で人生をまっとうしたと思える。縁者は別として、黒っぽい服装の人々はあわただしく暮れの街に散っていった。
 あと少しで正月、この日のお三方は、天に召される最良の日として旅立たれたのだろう。
 ああ有為転変。一日一日確かな総菜を残したいけれど今日も無為に過ごしてしまった。
   指宿市 宮田律子(73) 2008/1/28 毎日新聞鹿児島版掲載

キンカン鈴なり

2008-01-29 20:48:18 | はがき随筆
 今年はかんきつ類の当たり年らしく、我が家のキンカンも鈴なり。枝という枝が大粒な実をつけて重そうに頭を下げています。通りがかりの人も「見事ですね」と声をかけていきます。
 そのうちの一人の奥さんが、分けてくれないかと訪ねてきました。入院しているご主人が食べたいというのでスーパーで買ったところ、キンカンらしくないと残したそうです。味見してもらいました。奥さんは「酸っぱくて甘くてジューシー」と喜び「たくさんもいでいってください」とカミさんも手伝う。「うちのキンカンが人様のお役に立った」と胸を張りました。
   西之表市 武田静瞭(71)2008/1/27 毎日新聞鹿児島版掲載
写真はSUZさんからお借りしました。

毎日ペンクラブ鹿児島・北薩地区勉強会へ

2008-01-26 19:54:44 | アカショウビンのつぶやき















 毎日ペンクラブ鹿児島・北薩地区の勉強会が出水市で開催された。 
この地区は会員が一番多く、皆さん熱心で年に数回の勉強会を続けている。今回、初めて支局長も参加されるので、地区以外の会員にもお声が掛かった。
 昨日は南国鹿児島でもマイナス3度の予報(>_<)。カイロを三つも用意して、早朝6時半に出発。鹿屋から、バス→フェリー→バスと乗り継ぎ、鹿児島中央駅に着いたのが8時半。鹿児島から出水までは新幹線で27分、アッと言う間に着いちゃった。やっぱり鹿屋は陸の孤島か……。

 まず会員Kさんの案内で、ツル観察センターへ。昨日の羽数は12039羽と書かれていたが、広い場所があるのに餌の取り合いなのか、一ヵ所に集まって押し合いへし合いの様相…。優雅な姿で大空を飛ぶツルたちに、ゆっくり羽を休めさせてやりたいが、日本中に僅かに残る越冬地はどこも同じなのかなあ。この過密さで病気が発生したらと考えるとほんとうに怖い。
 先日鹿屋でもマナヅルの幼鳥が1羽観察されたが、時々迷鳥が独りぼっちなることがある。北帰行には何処かの群れに加わって無事に帰って欲しいものだ。

 ツル観察の後は、会場のホテルへ。参加者は12名。会員10名、一般2名。一般の方々がもっと参加して下さると嬉しいのだが、なかなか難しい。
 4年ぶりに会えた会員もあり、食事しながら楽しい近況報告が続く。食事の後は合評会。最初は遠慮がちだった会員もどしどし意見が出る、最後は支局長の講評をいただき内容の濃い勉強会となった。沢山学んだけれど結論は書き続けること…。私にはそれが一番難しい。

 ちょうどその日は、センバツ高校野球、出場校発表と重なり、有力候補の鹿児島工業高校の発表を待つ支局長は会員とゆっくり歓談ができず、お詫びの言葉を残してとんぼ返り。

 私は、出水まで来てタダで帰る手はないと、FMラジオのインタビューをさせていただいた。お二人が快く出演してくださり、はるばる鹿屋から駆けつけて下さった、番組編集長O氏の協力で収録させていただく。
 我が家に帰ったのは午後7時すぎ、やっぱり疲れました。

粋な計らい

2008-01-26 18:05:21 | はがき随筆
 賀状が時に、粋な計らいをすることがある。
 昨年の暮れ突然、故郷の知覧から1本の電話があった。幼いころ姉妹のように遊んだ仲のふたいとこからだった。旧姓で名前を言って「亡父の賀状を整理していたら、あなたの賀状があったから電話した」とのこと。 
 彼女とは10歳のころまでのおつき合いでその後、親の転勤や私の高校受験などで双方とも音信もなく、ほぼ半世紀もたって声の交信ができた。彼女は夫の定年退職で知覧に帰り、改めて私の存在を1枚の過去の賀状で知ったのだ。賀状は50年ぶりの出会いも1月に実現させた。
   鹿児島市 吉利万里子(61) 2008/1/26 毎日新聞鹿児島版掲載

健康第一

2008-01-26 17:59:05 | はがき随筆
 孫たちと関西で楽しいお正月を過ごすはずであった。ところが年末から風邪で寝込んでしまい寝正月。点滴を受け薬を飲んでも熱が下がらない。疲れもたまっていたのか眠りに眠った。娘に手厚く看病されてもなかなか微熱が取れない。
 年末に屋根瓦と壁を塗装して貰った。約束の支払日が近づく。娘たちには熱も下がったと言いつくろい、やっと12日に帰鹿できた。支払いも済ませ20日ぶりに母にも会い、一安心するも午後からの微熱は続く。再受診すると、灰もきれいで徐々によくなるだろうとのこと。健康に留意して生きゆかむかな。
   霧島市 秋峯いくよ(67) 2008/1/25 毎日新聞鹿児島版掲載

生きる

2008-01-25 20:32:42 | かごんま便り
 「成人の日」の14日、熊本支局のHデスクから電話があった。「堀実可ちゃんって覚えてる?」
 一瞬、沈黙したが、すぐに思い出した。昭和最後の夏となった88年7月、熊本支局の駆け出し記者だった私は、肝臓移植に希望をつないで旅立つ実可ちゃん親子を熊本空港で見届けたのだった。
 1万人に1人の割合で発症する先天性胆道閉鎖症。3歳まで生きられないと診断された。海外で移植手術を受ければ助かる可能性があるが、ばく大な費用がかかる。報道で窮状を知った全国の人たちから続々と善意の募金が寄せられた。
 渡航の日。空港ロビーで激励の千羽鶴を手渡され、精いっぱいの笑顔で応える母君代さん。腕に抱かれた当時10カ月の実可ちゃんの顔は黄だんのため黄土色。周囲に懸命に手を振る様子が痛々しい。助かってほしいと祈りつつ夢中でシャッターを切った。やがて渡豪、手術は無事成功した。
 大学2年になった彼女は熊本市の新成人の作文コンクールで最優秀賞に輝き、晴れの成人式で作文を朗読したニュースが15日朝刊の社会面を飾った。感謝の気持ちと人生の希望を力強く語った彼女は将来、移植を受ける人、受けた人の心のケアをしたいという。
 近く帰郷する鹿児島市の岩下遙香ちゃん(4)も重い心臓病のため、米国で移植手術を受けた。全国から寄せられた浄財の中には、同じく米国での手術を目指しながら亡くなった群馬県の男の子を「救う会」が集めた募金も含まれている。
 実可ちゃんも遙香ちゃんも、ご両親や医療スタッフ、募金にかかわった人々、臓器提供者……たくさんの人々に支えられ命をつないだ。だが程度の差こそあれ、多くの人々に支えられて生きているのは我々も同じ。大病や大災害・事故に巡り合わないと気づかないだけだ。生きることの重さを改めて彼女らに教えられた気がしている。
鹿児島支局長 平山千里
2008/1/21毎日新聞鹿児島版掲載

旅立ち

2008-01-24 11:56:50 | はがき随筆
 夫の好きな冬コスモス、オンシジウムは何ごともなかったように美しい。
 12月の再手術後、予定より2日早く20日に退院。夫は待ちきれない表情で喜び、医師たちにあいさつした。新しい暖房器具を求めたり、珍しく外食に誘ったり、すべての事を終え帰宅したのは夕方近くだった。
 退院の荷物は玄関に置き、夕食は久しぶりに落ち着いて満足の様子だった。ベッドに入り「暖かい、気持ちいいなー」。その声が最後だった。
 30分後、夫は救急車も間に合わず、黄泉の国へ旅立った。
   薩摩川内市 上野昭子(79) 2008/1/24 毎日新聞鹿児島版掲載

はがき随筆12月度入選

2008-01-24 11:41:35 | 受賞作品
 はがき随筆12月度の入選作品が決まりました。
△出水市大野原町、小村忍さん(64)の「川内川物語」(25日)
△志布志市有明町野井倉、若宮庸成さん(68)の「千代美と遼太郎」(7日)
△鹿児島市真砂本町、萩原裕子さん(55)の「娘の成長に感謝」(22日)
の3点です。

 年も明けました。
 小村さんは川内川を13年間にわたって調査し「川内川物語」という本にまとめました。書き出しの<なぜか、川内川は元気をくれた>にひかれます。調査から出版までの努力がにじみ出ています。<本は今年の大きな思い出になった>という文章のまとめの言葉もいいですね。
 若宮さんは、猫の千代美と犬の遼太郎と楽しく暮らしてきました。特に奥さんの姿がよく描かれて楽しい風景が目に浮かびます。「千代美と遼太郎」はどこの家庭でも見かける猫、犬が家族として書かれていますが、楽しいですね。
 萩原さんの「娘の成長に感謝」は、娘さんの成長ぶりを心から感謝する筆者の広く素直な書きぶりに感動しました。娘さんの言葉もたいしたものですね。
小野美能留さんの「寝床から」(24日)は、9年にわたる病院生活をたのしく明るく過ごしている様子を描いています。雑俳と称している句も、読む人に心境が伝わってジンとしますね。「ありがたい」(9日)は、山岡淳子さんが電気炊飯器を新しく購入したことをきっかけに、母親との対話が弾みます。末尾に、筆者自身の言葉で<古い炊飯器さん、今までありがとう。……>とあり、温かい表現がいいですね。
 小村豊一郎さんの「冬の落日」(18日)は、心境をストレートに表現しています。題目どおりしみじみとした文章ですが、生命力を感じさせられました。生命力を感じさせられました。上野昭子さんの「ブルーの海」(6日)のスタートは幻想的な情景を描いています。現実は、手術により不自由な体となっても有意義な人生を過ごそうと意欲をかきたてます。
 12月度は自分を見つめる文章が多く寄せられました。12月は自分を振り返ることが多いのでしょうか。
(日本文学協会会員、鹿児島女子短大名誉教授・吉井和子)
 係から 入選作品のうち1編は26日午前8時20分からMBC南日本放送ラジオで朗読されます。「二見いすずの土曜の朝は」のコーナー「朝のとっておき」です。
 

山芋を掘る

2008-01-24 11:14:54 | はがき随筆
 山芋堀に樋之谷へ。この時期の山芋のつるは30㌢ほどの間隔で、枯れてばらばらに落下している。
 Yさんは「ここにつる端が落ちてると次のつるはこの辺にありそうなものじゃが。隠れていないで返事しろ。全く苦労かけやがっておれの息子みたいじゃな。うん、根元を見つけたぞ。ひょっとしておれって天才かも」と30分もこの調子である。
 焼酎を飲み、どうでもいいことでくだくだと他人に絡む飲んべえを鹿児島では「山芋を掘る」と言う。Yさんに同行して、そのいわれに納得。彼は、山の芋は掘るが、山芋は掘らない。
   出水市 道田道範(58) 2008/1/23 毎日新聞鹿児島版掲載

初日の出

2008-01-24 11:06:46 | はがき随筆
 薄暗い都井岬灯台。満員の中に、しばらくすると日の出方向に波が輝き、周りがざわめく。カメラ、ビデオが動く。薄い雲を押し開くように円形の黄金色が輝き、日の出が始まり、光が帯のように走る。一瞬、息をのむ静けさの後、新春の喜び声がどよめく。この感動は人々に強い心象風景として長くとどまり生き続ける。偶然か、左側より色鮮やかな船体の「さんふらわあ」が日の出の中に白跡を残しながら進んでいる。この光景に新しい歓声が。隣の若いお母さんのみどりごが驚き、瞳を開けニコッとほほ笑む。妻が「可愛い。良かったネ」と優しい声。
   鹿屋市 小幡晋一郎(75) 2008/1/22 毎日新聞鹿児島版掲載