はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

母の味付け

2019-10-25 19:21:13 | 岩国エッセイサロンより
2019年10月25日 (金)
   岩国市   会 員   片山清勝
 父は長男、その弟妹は何人だったか、それが盆と正月には子連れで来る。その賄いで母は忙しい。賄いの一つに、1段30個で5段重ねの押しずしを作る。母が準備したネタを父はすし桶に重ねるだけ。客らは「兄さんのすしは日本一」と褒める。
 父が逝って私は結婚、母と同居した。「すし作りの支度は私一人でしたが、おいしいすしとは一言も言わなかった」。我が家の古い話の中で、母は笑いながら妻にこぼしたという。
 父は家長然とし、客に笑顔で「たくさん食べろ」と勧めていた。母の味付けを認めながら口にしなかったのは父らしい。
     (2019.10.25 毎日新聞「はがき随筆」掲載)




彼岸花

2019-10-25 19:20:10 | 岩国エッセイサロンより
2019年10月24日 (木)
   岩国市   会 員   片山清勝
 彼岸花はいつの間にか咲き、いつの間にか消えているといわれる。大きな花は1本茎の頂端で外側に反り返って咲く。花と葉を人に例えて「一生涯会うことがない」といい、だからこそ 「葉は花を、花は葉を思う」とされる。「相思花」とも呼ばれるゆえんだ。
 数年前、そんな彼岸花がどういうわけか、わが家の庭にやってきた。茎が地面からのぞくと、すーっと一気に伸びて花が咲いた。
 その翌年、子どもの頃にした夏休みの自由研究のごとく伸び方を観察した。
 1日目8㌢、次は14㌢、そして18㌢、8㌢と伸び、5日目の4㌢で伸びは止まり、6日目に開花が始まった。毎日、朝7時半と夕方に計測をした。
 そして茎はおよそ7割、夕方から朝までの陽光のない時間帯に伸びるのだと分かった。「知らぬ間に咲いていた」といわれるのは、人目のつかない夜に成長するからだと確信した。
 以前、彼岸花で有名な中国山地の公園を訪ねたことがある。一本一本の樹木の根元にびっしり敷き詰められたように咲いていた。まるで赤じゅうたんの座敷だった。こぼれ日に輝く赤色に不思議な感覚を覚えた。 
 彼岸花には毒がある。子ども時分、「触るな」と教わった。その毒がモグラから稲田を守ったという。
 今は庭でも咲く花。赤、白、黄などがあり、きれいに咲きそろう花壇が近所にもある。
 彼岸花は別名も多く不思議な花のようだ。その謎深いところがまた趣深い。
     (2019.10.24 中国新聞セレクト「ひといき」掲載)




就職活動

2019-10-25 19:08:08 | はがき随筆
 今や「就活」と略されて軽い印象だが、苦い思い出かいくつもある。
 「御社を見学させいいただきたく参りました」と勢いよく名乗った。広々とした事務所。じろとと見上げた30名。その中の一人が向こうを指さし「トナリの会社」。真っ赤な顔で「し、失礼しました」と90度のお辞儀。またある銀行の面接では「金融業では自分を信用させなければ」などと小ざかしいことを言った瞬間「ほぉー、それじゃ信用ってのを今この場でみせてもらおうか」とドスのきいた声。恐怖で言葉が出ない初めての経験だった。
 鹿児島県出水市 山下秀雄(50) 2019/10/24 毎日新聞鹿児島版掲載

鹿児島弁検定

2019-10-25 18:59:28 | はがき随筆
 近年方言が見直されているようだ。戦中戦後「方言をつかわないようにしましょう」と、標準語を強要された世代。従って鹿児島弁への愛着心は人一倍だ。
 〝かごっま弁検定〟のことを知り、中級に挑戦し合格したのが昨年のこと。今年も9月1日実施の報告を受け上級に挑戦した。
 大河ドラマ「西郷どん」で、かごっま弁の認知度も全国的に高いようでうれしい。「アシタッゴアンソ」「マタッゴアンソ」は標準語の「では明日」や「またお会い致しましょう」にあたり、優しい響きを感じる好きな言葉でよく使います。
 鹿児島県鹿屋市 門倉キヨ子(83) 2019/10/24 毎日新聞鹿児島版掲載

高速道路

2019-10-25 18:51:36 | はがき随筆
 私は高速道路が苦手だ。スピードを出すのが怖い。台風が近づく中、仕事で日之影に行くことになった。一般道路は道が狭い上にカーブが多い。迷ったあげく、高速を通ることにした。
 雨が激しく降り、対向車線のトラックの水しぶきが、中央の壁を越えてフロントガラスに降り注ぐ。一瞬、前が見えなくなる。昼間ではあるがライトをつけて走る。前の車のテールライトを頼りに祈りながら走り、なんとか目的地に着いた。帰りも結局高速に乗った。トンネルが多い分、雨を避けられると思ったのだ。無事帰り着き、心からホットした。
 宮崎県延岡市 渡辺比呂美(62) 2019/10/24 毎日新聞鹿児島版

万有共有語

2019-10-25 18:41:42 | はがき随筆
 満々と枝葉は語り、風と木は語る。鳥と虫は語り、空と風も語り合う。庭を眺めながら天空風水土木(万有)の間には共有語があると思う。そのように枝葉伸び、そのように風も水も動いている。何者かを感知し、存在の必然を汲み、常理を読む。
 人体も臓器は語り合うそうな。私も万物共有語を聞き取りたいが、木の剪定も草むしりも捕虫殺も人為淘汰。自然の空気を乱す所業に過ぎない。
 きっと生物のささやかな声を聞き取ることができる人々は太古の森の住人くらいか。嗚呼、だがアマゾンの森をのこせるのかな、人間は……。
 熊本県阿蘇市 北窓和代(64) 2019/10/24 毎日新聞鹿児島版

年寄りの知恵

2019-10-25 18:35:25 | はがき随筆
 ある若者の次のような会話が某紙で紹介されていた。
 「電車の中でお年寄りに席を譲ったら、すぐに降りるから結構ですと断られた。あれってすごく恥ずかしいよな」「あるある。もう二度と親切にしようとは思わないよな」。若者の短い会話ではあるけれど、なぜか年寄りとして身につまされる思いがした。もしこの年寄りがすぐに降りたとしても、素直に席を譲ってもらったら、その場がどんなに和んだことか。また若者がどんなにうれしかったことか。「ありがとう」と周りに甘えて生きるのも年寄りの知恵として大切ではないだろうか。
 鹿児島県志布志市 一木法明(84) 2019/10/24 毎日新聞鹿児島版

よかバス

2019-10-25 18:27:34 | はがき随筆
 眼底検査に行った。診察後、運転はしないようにと言われた。コミュニティバス「よかバス」に初めて乗ることにした。
 鯛取行きが2時間は待つので串間駅前行きに乗り駅で降り、買い物をした。それでも時間を持て余しバス停の椅子に座り、通りを眺め、母の姿が浮かんだ。
 母は病院通いや買い物にとよかバスを大いに利用した。リハビリにも通った。時々駅前にいる母から電話をもらった。行くと椅子に座り待っていた。
 普段通らない道を走るからか、車窓を眺める軒並みや田園風景が新鮮に映った。免許返納しても楽しいのではと思う。
 宮崎県串間市 武田ゆきえ(65) 2019/10/24 毎日新聞鹿児島版

地球温暖化危惧

2019-10-25 18:20:43 | はがき随筆
 「暑さ寒さも彼岸まで」。昔から聞きなれた言葉だが、実際にその時期が衣替えの基準となっていた。だが、近年は春は早く、秋は遅く、地球温暖化をつくづく感じる。世界中でも異変の報道を見聞きし不安は募るのみ。科学の進歩は著しいが、対策はあるのだろうか。
 冷暖房の利く部屋で生活できるなんて、昔の人は考えも及ばなかったと思う。私たちは本当に幸せと思うが、このままの状態が進行していった時、次世代の子供たちはどうなることかと心配は取り越し苦労か。個人の力では微々たるものだが、少しでも温暖化対策に協力したい。
 熊本市中央区 原田初枝(89) 2019/10/24 毎日新聞鹿児島版

モズの鳴き声

2019-10-25 18:03:10 | はがき随筆


 10月になって、毎日のようにキィーキィーとモズの高鳴きが聞こえる。秋の訪れを季ィ季ィと知らせ、速贄がうまくいって喜ィ喜ィと喜んでいるのか。
 近くの雑木林がここ数年ですっかりなくなり、スーパーが建った。春を告げるウグイスの声はパッタリ聞かれなくなり、冬庭木の枝に差したミカンを啄みに来ていたメジロも、姿を見せなくなった。
 例年になく激しく鳴くモズ。何かを訴えているようだ。
 「緑が少なくなると温暖化が進み、人も住みにくくなるんだ。危ィ機ィ、危ィ機ィ」そう言っているのかもしれない。
 宮崎市 四位久美子(70) 2019/10/24 毎日新聞鹿児島版掲載

ごめんなさい

2019-10-25 17:56:05 | はがき随筆
 目と耳を塞ぎたくなるようなニュースが流れる。同じくらいの孫がいる私は、かわいそうでかわいそうで涙があふれる。4歳の女の子が夜の道を一人で徘徊。なんと悲惨な光景だろうか。小さな心はどんなにか悲しくつらく苦しく寂しかっただろう。どうして誰かの胸にしっかりと抱きしめられなかったのだろう。
 おせっかいでも間違いでもいい、自分の子や孫と思い積極的に行動し、国の未来を担う子供たちを皆で守り育てたいものだ。私たちはあなたの尊い命を守ってあげられなくてごめんなさい。ほんとうにごめんなさい。
 鹿児島県出水市 塩田きぬ子(69) 2019/10/22 毎日新聞鹿児島版掲載

混迷のオリンピック

2019-10-25 16:55:51 | はがき随筆
 かつてオリンピックはアマチュアリズムの権化だったが、いつの頃からかプロ参入が認められ商業主義が入り込んできた。
 8月開催を前提としたオリンピックは、酷暑の東京に不向きなことは分かっていた。今になってマラソンと競歩を北海道でと提案されても出発点から間違っていたのだと思う。
 先の東京オリンピックは秋に行われた。「世界中の青空を全部東京に持ってきてしまったような秋日和」とアナウンスされた開会式。その10月10日は体育の日として語り継がれてきた。
 アスリートファーストの精神に立ち返ることを望んでいる。
 熊本市北区 西洋史(70) 2019/10/23 毎日新聞鹿児島版掲載

鶏からのプレゼント

2019-10-25 16:38:07 | はがき随筆


 子供が幼い頃、ヒヨコから育てた、大きく真っ白で羽を広げトコトコついて来る鶏がいた。
 ある朝、イタチに襲われ死んだ鶏を畑の隅に埋めた。
 随分月日もたった頃、さやを付けた太い茎が1本にょっきり立っている。「何これ!」。隣のおばちゃんに聞くと「小豆よ。何か埋めたの」。鶏の事を話すと「小豆を食べてたんだ」と言われ、そんな事があるのかと驚いた。
 毎日熟れたサヤを習った通りザルに取り、天日干し。鶏から両手いっぱい、小豆のプレゼントをもらった。
 宮崎県串間市 安山らく(68) 2019/10/21 毎日新聞鹿児島版掲載

2日で半月分走行

2019-10-25 16:28:01 | はがき随筆
 マイカーの走行は月に500から700㌔。多良木町で発見された秀吉関連の古文書展示との記事を読み、早速出掛ける。
 片道100㌔を超すハンドルは久しぶり。不安はなかったと言えばうそになるが、道の駅などで小憩を挟み、往復240㌔を無事走破。翌日は山鹿市鹿北町往復で120㌔。たった2日で1カ月の半分を少しオーバーするドライブとなった。
 高齢者は何かにつけて運転免許返上を呼びかけられるが、安全運転に徹すればまだいける。若さを保つためにも続ける、と意を新たにした。他人様は無謀とあきれるかもしれぬが……。
 熊本市東区 中村弘之(83) 2019/10/20 毎日新聞鹿児島版掲載

毎日ペンクラブ 大隅地区勉強会

2019-10-20 16:47:31 | はがき随筆



今回は、新しい方をお迎えして
和やかな勉強会となりました。
こうして、新しいお仲間がお一人でも加わってくださると
少し希望が見えて嬉しいことでした。
遠くは、薩摩半島の姶良市からも参加してくださいました。
作品を持ち寄って、お互いに
感じたことを話し合い、
良き学びの時となりました。

秋の研修会には、
元鹿児島支局長・平山千里氏が
講師としてお出で下さることになりました。
懐かしい、千里氏です。
みんなで、研修会に行けるといいね!
と話し合うことでした。