はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

笑ってね

2006-10-31 09:06:03 | はがき随筆
 「ほー」。母ちゃんが、フクロウのように、ため息をつく。
 「クッハー」。ハトのような、鳴き方もするね。
 どうして? 母ちゃん、鳴かないで。
 元気な母ちゃんが「アハハ」と、笑ってる時が好き。
 でも、母ちゃんは、今日も「クファー」と大きくため息をつく。
 わたしがおもしろいことを言っても、気づかない。
 青い小さなアメリカンブルーの花のように、ひっそりとしている。
 母ちゃん笑ってね。
 「大好きだよ」
   鹿児島市 萩原三希子(9) 2006/10/31 掲載

狂い咲き

2006-10-30 08:43:47 | はがき随筆
 野も山も、光も水も秋。朝夕は涼しくなったが、昼間はなお厳しい暑さが続く今日このごろ。桜並木の老木が季節を勘違いしたらしい。枝々にちらほら白い花が見える。まさに狂い咲きだ。地球も社会も、どこか狂っているご時世だから、桜だって狂うのが当然かも知れない。だが、花の狂い咲きはどこか切なく、情熱的でいとしい。
 そうだ、我ら老人も身体は枯れ木同然で、故障も多く動きも鈍くなったが、心を燃え立たせることはできる。人を愛し、人に恋し、心躍らせ、狂い咲きして生きるのだ。桜の老木に負けないように。
   霧島市 楠元勇一(79)2006/10/30 掲載
写真は珠樹さんさんよりお借りしました。

まむしにご用心

2006-10-29 08:27:52 | はがき随筆
 名を呼ぶとシッポを振り、甘えてクンクン鳴く愛犬テツ。
 つい先日、朝6時ごろ、散歩して帰って来るなり倒れ、苦しそうな様子。目はつむり、かすかな息だ。「まむしにやられた」と息子が言った。まあ大変だ。「最善の治療をしてあげて」。私が言った。テツを見ていると涙が流れる。早速、病院へ。優しい獣医の治療を受け、注射2本と薬を飲み、眠っている。「助かってくれよ」と祈るばかり。明くる日病院へ行くと「もう大丈夫です」と獣医の言葉に感謝の気持ちでいっぱいになった。
 犬も人も怖いまむしにご用心。
   出水市 橋口礼子(72) 2006/10/29 掲載
写真はVビジョンさんよりお借りしました。

マタタビ

2006-10-28 22:04:24 | はがき随筆
 6月、霧島に行く途中、沿道の木の枝先が白くなったものがあちこち見えた。近づいて見ると、木にはったつるの花序の葉の一部が白く変化したものだった。つるには梅花のような真っ白の花が咲き、芳香を放っていた。この清楚な花はどんな実がなるだろう。
 先日、そのことを思い出し見に行った。鮮やかな白い葉は深緑ににごり、つるには長円形の先のとがった実と、丸くてこぶを集めたような実の2種がなっていたのが不思議だった。高くはったつるを見上げた。まもなく黄葉して秋を彩るだろう。図鑑で2種の実がなるからマタタビの名のことも知った。
   出水市 年神貞子(70) 2006/10/28 掲載
写真は花調べさんよりお借りしました。

運動会の弁当

2006-10-27 17:11:59 | はがき随筆
 朝6時、ポンポンと運動会の合図。在職40年の小学校へタイムスリップ……。いつも放送係で昼休みも音楽を流し、迷子の知らせや呼び出しなどで落ち着いて弁当を味わった記憶がない。大規模校で多忙だった。思い出は遠くなった。
 知人のお孫さんの運動会で娘さんの手作りの弁当を頂いた。2段の重箱と好物の煮しめも添えた豪華なもの。思いがけなかった。「ありがたいね」と夫と感謝。「おいしい!」。今年で3年目……。
 青空にピンクの芙蓉の花が光る。
   薩摩川内市 上野昭子(77) 2006/10/27 掲載
写真はH.ozakiさんからお借りしました。

はがき随筆9月度入選

2006-10-26 17:45:13 | 受賞作品
はがき随筆9月度の入選作品が決まりました。
△薩摩川内市樋脇町、下市良幸さん(77)の「恋文」(1日)
△志布志市有明町伊崎田、西田光子さん(48)の「はずれー」(20日)
△出水市上知識町、年神貞子さん(70)の「茗荷」(7日)
の3点です。
9月は学校などの夏休みの後であり、またお墓まいりをした家庭も多いからか、家族への思いを書いたしみじみとした文章が多く出されました。下市さんの「恋文」は、喜寿を迎えての一人暮らしの中で亡妻の家事への大変な苦労が今こそよく分かると感謝して「いい連れ合いだった。明日も、大事に生きたい」と、元気に明るく結んでいます。寂しく辛い気持ちを書いて終わる人も多いと思いますが、奥さんに感謝する心を持って立派に生きていこうという明るい姿勢で結んだところ、それに「恋文」という思い切った題をつけて内容を反映させたのがよかったですね。年神さん、吉松幸夫さん、奥吉志代子さん、皆さん家族への思いをしみじみと伝えました。家族しか知らない小さいことを描いて、大きい愛情を感じさせる、それも押し付けがましくなく、というのがいいのです。
 さて、ダラダラとあるいはしっとりとして長いのが女性の文章でしたが、変わりましたねぇ。竹之内美知子さんの「戻ってきた服」、東郷久子さんの「安眠熟睡」、西田さんの「はずれー」などなど。概して皆さん、一文一文が短くユーモラス。竹之内さんのドレスを買って「鏡の前で一回転。いけるいけると、ニヤリ」と終わりました。東郷さんはよく眠った朝を書いた文の最後を「爽快。なんてこった。私にもこんな眠りをありがとう」と結びます。西田さんの「はずれー」は「うーん、外れた」空を見上げて決断。「よしっ、コインランドリーだ」コインランドリーに100円玉4枚入れて外に出た。「えっ、うそでしょう」青空が広がり始めた。……と続きます。文体は、内容を支配します。どんなことを書くのかをよく考えて内容に合った文体で書くよう努力してみましょうね。
(日本文学協会会員、鹿児島女子短大名誉教授・吉井和子)
係から
 入選作品のうち1編は28日午前8時40分からMBC南日本放送ラジオで朗読されます。「二見いすずの土曜の朝は」のコーナー「朝のとっておき」です。

吾が子飛ばしつ

2006-10-26 12:51:08 | はがき随筆
以前読んだ万葉集の山上憶良のばん歌を再読してみた。……命絶えぬれ 立ち躍り 足すり叫び 伏し仰ぎ 胸打ち嘆き 手に持てる 吾が子飛ばしつ……。病死した我が子を抱いて、憶良の悲しみはすさまじい。狂わんばかりに身体を動かしている。「吾が子飛ばしつ」を私はあの世に霊を飛ばしてしまった、すまないことをした、と受け取った。当時、異界はどのように表象されていたかは知らない。しかし、彼の情はそれを突き抜け、時代を超えて私たちに届く。ある母が我が子を邪険にして橋から突き飛ばしたという報道を見た。うそであってほしい。
   出水市 松尾 繁(71) 2006/10/26 掲載
写真はH.ozakiさんよりお借りしました。 

新聞は楽しい

2006-10-25 09:57:28 | はがき随筆
 私の最近の楽しみの一つは「西遊記」を読むことである。ヨン様もかなわぬほどの端正な面立ちの上品この上ない三蔵お師匠様と悟空の息のあったやり取りを、二度三度と読み返すこともある。休刊の日は寂しい。10月5日の紙面で毎日国際交流賞受賞記念講演会の記事があり、西垣敬子さんのお写真を見て、その力強い上品さにうっとりし、その活動の内容を読んで脱帽しました。山下惣一さんの「売らない百姓が一番幸せです」という言葉、いいですね。いかにして反収を上げるかということに汲々としている百姓としては夢のまた夢。
   中種子町 美園春子(69) 2006/10/25 掲載
写真はさすけさんよりお借りしました。

喜寿むなし

2006-10-24 08:12:42 | はがき随筆
 10月はじめ喜寿を迎えた。
 仏壇に灯明をあげて、一人でサバの刺し身と、焼酎で乾杯する。
 戦争の恐ろしさも体験した。戦後、不治と言われた病も得たが助かった。
 よく生きのびてきたものだ。
 戦死した友の顔や闘病の果てに逝った友を思うと、なぜかむなしくなる。
 窓際で鳴いていたちちろが、はたとやみ宅急便が来た。娘からだ。包みを開くと、エッセー教室に通うのに、欲しいと思っていた黒いカバンだ。
 子供一同とある。あいつら父がいることを忘れてはいなかったらしい。
 喜寿むなし一人の宴にちちろ鳴き
   鹿児島市 福元啓刀(77) 2006/10/24 掲載

私の宝物

2006-10-23 08:16:42 | はがき随筆
 「あなたの宝物は?」と問われても即答ができない。ときに「何かなあ」と思うが、これというものがない。ところが、ふとしたことから「私の宝物」を発見した。
 仕事に追われて、肉親から届いた手紙も用件だけ読んで片付け、いつかゆっくり読もうと思っていたが、何時の間にかすっかり忘れ、どこかへ押し込んでそのままだった。八十路を過ぎ、身辺の整理をと思い立った。押入の奥から手紙の束が出てきたので見ると、亡き兄弟姉妹の懐かしい筆跡、情愛にあふれた文面に涙を覚え「これこそ私の宝物」と、また文箱に収めた。
   肝付町 竹之井 敏(81) 2006/10/23 掲載

ハーモニー

2006-10-22 22:31:13 | アカショウビンのつぶやき
 第29回鹿児島県お母さんコーラスが鹿児島市宝山ホールで開催されました。
結果はともあれ楽しく歌ってきました。
参加した57グループの発表を一日で終えようと言うのですから、リハーサルもなし、分刻みの進行でも、終わったのが18時。少々疲れましたが、初めて参加した私には、多くのグループのコーラスを聴くことがとても良い学びでした。衣装も選曲もさまざま、ご高齢の方が素敵なドレスで、椅子に座ってお孫さんと一緒にハモル…素晴らしいシーンもありました。

 初心者の私にとって英語で歌うアカペラの黒人霊歌は、大きなチャレンジでした。本番で音がずれたらどうしよう…、ハーモニーと美しい響きが出せるだろうか…と。

 然し本番は練習以上に歌えたような気がしました。各グループの方々が書いて下さる、メッセージカードでも、お褒めの言葉をいただき感動。
 初心者の私を辛抱強く指導して下さったY先生、いつも足を引っ張る私を励ましてくださったアルトパートの皆さんにも感謝です。歌声のハーモニーだけでなく、お互いの心も響き合う楽しいコーラスのひとときに魅せられてまた来年にむけて頑張ろうと思っています。
一緒に歌おうね! と約束しながらご主人の転勤で鹿児島市内に引っ越してしまったKさんは、サンドイッチと飲物を差し入れてくださり、帰りのフェリーの中で美味しく頂きました。春にはまた2人の団員との別れがありそう…。離れてもいつまでも歌い続けようね。 アカショウビン

別れのとき

2006-10-22 21:39:14 | はがき随筆
 夫が急性心不全であの世に旅立って、25年目に入った。
 まだ帰ってくるような気がして、遺品の多くが手付かずになっている。
 3人の子どもたちが、
 「そろそろ片付けようかねえ」と、口をそろえて言った。
 この本は見ないだろうか。ピアノは捨てがたいなあ。家具は要らないかな。この家には誰かが入らないだろうか。
 子どもたちと相談をしながら始めるが、はかどらない。
 「思い切らないと大変だよ」
 思い出の品々との別れは、風に傷められたコスモスを見る思いがする。
   阿久根市 別枝由井(54) 2006/10/22 掲載

彼岸花と祖母

2006-10-21 08:07:02 | はがき随筆
 「ばあちゃん、彼岸花で首飾りを作ったよ。つけてあげるね」。その時、小学生の私は二つ違いの弟と、燃えるように咲いていた彼岸花を摘んで遊んでいた。夕暮れ時になると、心配して待っている祖母の所に走り、彼岸花で作った首飾りをプレゼントした。祖母は、そんな私と弟をいつもしっかりと抱いてくれて、「ありがとうね。うれしいよ」と、まあるいお月さまのような笑顔で言った。彼岸花の首飾りをつけたばあちゃんは、本当にに可愛くてステキだった。彼岸花が咲くころになると、そのシーンを懐かしく思い出す。彼岸花は私の大切な思い出の秋の花である。
   鹿児島市 萩原裕子(54) 2006/10/21 掲載
写真はバセさんからお借りしました。

3年生全員応援

2006-10-20 18:26:15 | はがき随筆
 「66×49㌢のダンボールがある? 体育祭に必要だから、明日持って行きたいんだけど」と長男が言う。
 「いつも切羽詰まってからなんだから!」「こんな広いサイズ簡単に見つからないよ」と内心ブツブツ言いながら準備した。
 後日何に使ったのか尋ねると「内証。当日のお楽しみに」ともったいぶる。
 9月6日体育祭、学年対抗応援合戦。3年生全員、白と青の例のサイズの紙を各自持つ。合図とともに浮き上がる文字。何が始まるのかと固唾をのんで見つめていた観客は拍手大喝さい。お見事。私も一役買えてよかった。
   薩摩川内市 横山由美子(46) 2006/10/20
写真はOYAMAMAさんよりお借りしました。

お隣の国へ

2006-10-19 06:33:43 | アカショウビンのつぶやき












 日韓両国のクリスチャンが共同開催する初めての国際大会、「第53回こころの友伝道国際大会」に参加するため、韓国に行って来ました。
 最近のギクシャクした日韓関係を案じながら参りましたが、キリスト教国・韓国の人々は、おおらかで、温かいと言うのが第一印象でした。お年寄りを大切にする若い人々のさりげない優しさは、儒教の影響なのでしょうか。
 戦時中に日本軍が行った蛮行の数々にも「日本人を許します」と言われる韓国クリスチャンの言葉にキリストの愛を見る思いでした。

今回の大会テーマは「歴史の主による和解の福音」。この地球に生きる者すべてが平和を求め続けながらも、民族間の更に宗教間の争いは絶えません。
「政治家によっては和解はできません。和解の為に奉仕する任務が、私たちに委ねられているのです」と言われた一言を心に重く受け止めて帰って来ました。
 半日観光で「景福宮」に行き、守門将交代儀式を見ました。1395年頃に建設された朝鮮王朝の正宮ですが、1910年に日本に国権を奪われた際、大部分が破壊され、今も復元が続いており、素晴らしい文化財でした。   アカショウビン