はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

盛大な喜寿の会企画

2017-07-08 00:19:17 | 岩国エッセイサロンより
2017年6月26日 (月)
   岩国市   会 員   片山清勝

 40歳を過ぎた頃から、毎年続く高3の時の級友との飲み会。昨年「来年は喜寿を盛大にやろう」という乾杯でお開きにした。
 仰せつかった幹事の役目として、まず電話で出欠確認する。「おお待つとった」と気持ち良い返事につい長話になる。関東、関西からの参加もあり盛会になりそうだ。
 退職して時が過ぎ、なじみの店も少なくなった。最近は、後輩がおかみをしている店で開く。先輩風は吹かしてはいないが、心遣いがうれしい。
 毎回、飲み放題だが、酒量も減り料理の残りが増えてきたのは年相応かと感じる。しかし、話し方は青春時代のままだ。ただ、話の内容は経験した病気や健康への取り組み方などが増えた。
 皆に楽しんでもらえるための趣向を練っている。喜寿は紫色で祝うという。宴席の座布団の色は紫で頼もう。
 喜寿まで元気にこられたことに感謝し、さらに級友との絆を強めよう、などと思いながら名簿を作っている。 

     (2017.06.26 中国新聞「広場」掲載)

「勉強遅くない」亡き父のおかげ

2017-07-08 00:17:46 | 岩国エッセイサロンより
2017年6月27日 (火)
岩国市  会 員   樽本 久美

父が4月29日に85歳で亡くなった。私は父に怒られた記憶がなく、本当に優しい人だったという思いしかない。我が家は浄土真宗なので、父の法名が「釋浄楽」であった。今回、浄土真宗の法名に釋がつくことを知ったり、お寺からいただいた「作法の本」で通夜から葬儀までの作法を学んだりした。
 父が亡くなったことで、お寺とのご縁をいただくようにもなった。この年にして何も知らない自分だったが、今から勉強しても遅くはないはず。
これからは疑問があれば自分で調べたり、知っている人に聞いたりしようと決めた。そう誓えるようになったのも全て父のおかげだと思う。
   (2017.06.27 読売新聞「気流」掲載)

雨に咲く

2017-07-08 00:14:59 | 岩国エッセイサロンより
2017年7月 4日 (火)
   岩国市   会 員   片山清勝

 家の前は裏通りの小さな四つ角。三方から来た集団登校の児童らはあいさつしながら合流し表通りへ向かう。           
 そんな通りが華やぐのは雨の朝。登校する短い時間だが赤、桃、黄、青などの傘の花。3人が横並びできない狭い通りいっぱいに咲く。その傘花は自由気ままに揺れていて、雨に打たれる紫陽花のようだ。
 私の子供の頃は麻木色の油紙を竹骨に張った番傘。小柄な私には重たかった。また長靴は黒一色たった。
 今は傘も雨靴も色とりどり。若いお母さんが「両方とも子供らにはファッションです」と教えてくれた。

    (2017.07.04 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

初夏の手仕事

2017-07-07 12:03:47 | はがき随筆


 5月の中ごろ、友人の誘いでいちご狩りに。かごにいっぱい摘んで早速ジャム作り。自然の真っ赤な色が見事だ。
 次にらっきょうが手に入ったので、いつものみそ漬け。一年間楽しめる。
 今年はビワの大豊作わが家の老木もたわわでジャムを作ってみる。独特の味がする。
 梅は塩漬け、梅みそ、そしてさしす梅。これはすし酢として使えるので重宝する。
 6月はしその葉の塩漬け。おにぎりを包んだり、刻んでまぶしたり。こんな季節のおくりもので普通に作れることがうれしい。
  薩摩川内市 馬場園征子 2017/7/7 毎日新聞鹿児島版掲載

2人でお食事

2017-07-07 11:58:13 | はがき随筆
 昨年、自分の病と長男の結婚を「はがき随筆」に書いた。それを読んで「大変でしたね。よかったですね。お茶でも飲みましょう」と手紙を下さった。また今年の賀状には食事のお誘いが。男性なので夫の了解を得て連絡をとり昼食を共にした。
 会うのは8年ぶり、一人暮らしも10年以上かしら。背筋は真っすぐ伸び、足早に歩かれる。
「高校の同窓会を卒寿で解散するべく幹事をまかされて日々頭を悩ませています」「84歳には見えないでしょう」と自らのたもう。若くはつらつとしてお手本になる。別勘定で食事処を出る際みかんを頂く。恐縮でした。
  いちき串木野市 奥吉志代子 2017/7/6 毎日新聞鹿児島版掲載

ひらめき

2017-07-07 11:49:33 | はがき随筆
 中3の孫娘が真っ白な夏服に大きな墨のしみをつけて帰ってきた。洗剤で洗ったり漂白剤につけたりしても、しみは真っ黒のままでびくともしない。クリーニング店でもきれいには落ちないかもということで、しかたなく家に持ち帰った。
 あきらめかけたとき、なぜか炊飯器のご飯が頭をよぎった。米粒を塗りつけ、こすってみた。すると黒い汁が出た。しめた、なんとかなるかも。薄れる墨に夢中で何回も塗り、洗った。「やったー」。ついに墨は消えてしまった。ばあちゃんのひらめきも捨てたものではないなと、とてもうれしくなった。
  出水市 塩田きぬ子 2017/7/5 毎日新聞鹿児島版掲載

波の高さ8㍍

2017-07-07 11:42:02 | はがき随筆
 今から20年ほど前のことである。今は亡き兄と2人で長崎の瀬渡しで磯釣りを楽しんでいた。高さ6㍍ほどの岩場であった。釣り糸をたれてタバコを一服していた。ウキの揺れ動く眼下の海水が引いて底の岩が姿を現した。変な波の動きだなあと思った。その時である。山のような大波がこちらに向かって来ている。「逃げろ」と兄貴が叫んだ。磯に居た私は後ろの斜面を必死で登った。駆け登った足元を見ると、白い波の牙が岩場を砕く勢いで襲っていた。兄貴の叫びで命拾いをした。一発大波の怖さを肌で感じたイサキ釣りであった。
  福岡市 小森開 2017/7/4 毎日新聞鹿児島版掲載

教育に専念

2017-07-07 11:31:38 | はがき随筆
 私の父は男5人、女2人の末っ子として誕生した。年齢を聞かれると「1905年生まれ」と人を惑わし、学校では級長に。すると「級長は先生の小使い」なんて冗談を。
 父親に宮司と田畑の仕事があり、手伝いは当然。将来を案じて18歳のとき、勉強好きな伯父宅に下宿した。読書にふける一方、医者の子弟を教え、小中学校を転勤した。結婚し、6人の子育てと教育に専念した。勤続38年で退職し、高校講師数年後、母の介護も及ばず、87歳で他界した。父への感謝で私の心はみなぎっている。
  肝付町 鳥取部京子 2017/7/3 毎日新聞鹿児島版掲載

会いたかった~

2017-07-07 11:24:07 | はがき随筆
 買い物から帰宅すると「Tクンが来て、子供の頃の面影がなくビックリした」と夫。2人でコーヒーを飲みながら近況を語ったらしい。会えなかった私は悔いることしきり。ウオーキングを兼ねてわざわざ遠くのスーパーにでかけたことを……。
 Tクンは、お父さんの仕事の関係で小学校高学年を垂水で過ごした。息子と同学年で、共に剣道少年だった。長身でスポーツマン。将来、好青年に成長するだろうと深く印象に残っていた。現在、肝付町の中高一貫教育校で教諭をしているとのこと。40代のTクンに会いたかった~。
  垂水市 竹之内政子 2017/7/2 毎日新聞鹿児島版掲載

悼む

2017-07-07 11:13:00 | はがき随筆
 おめでたい記事が一面に載った日の社会面にあった老俳優の訃報。浅利慶太らと劇団四季を創設した日下武史氏享年86。
 出演した舞台を幾つ見ただろう。オンディーヌ、エクウス、Mバタフライ、ブレイキング・ザ・コード、美女と野獣……。
 「から騒ぎ」のベネディクト、「赤毛のアン」の慈愛あふれる養父マシュー、「ベニスの商人」の醜悪際まるシャイロック。指折り数えたらきりがない。
 日生劇場のロビーに腰掛けていた還暦頃のダンディーな姿。熊本の街角で出会い、劇場まで一緒に歩かせてもらったことは大切な思い出になった。
  鹿児島市 本山るみ子 2017/7/1 毎日新聞鹿児島版掲載

藤原てい氏

2017-07-07 11:03:41 | はがき随筆
 35年くらい前、作家の藤原てい氏の講話を聴いた。旧満州から3人の子……男児6歳、3歳と乳飲み子の女児と引き揚げた語り部。乳のみ子を背負いお乳など出ない。大豆を口で細かく砕いて口移しに与えた。子を厳しく叱咤し、自分の気を高揚させて前進のみ。飢えと寒さ、病気に耐えた。その情景は想像を絶した。
 静かな会場に涙が光った。生きるか死ぬかの瀬戸際に危険な橋を渡る。「引き揚げた自分のは責任がかかっている」。現在の難民像が重なり、悲惨、過酷さが身に染みる。藤原てい氏は昨年逝去された。
  姶良市 堀美代子 2017/6/30 毎日新聞鹿児島版掲載

こいのぼり

2017-07-07 10:53:35 | はがき随筆
 早支度のこいのぼりを見ながら妻と散歩。若かりし頃、仕事帰りの私を妻が娘2人と待っていた田園の小道を歩く。
 あのとき、ぺんぺん草を持っていた娘はこいのぼりがほしいとせがんだ。妹もおなじようにせがむ。「五月は男のお祭り。3月にひな祭りをした」と教えるが「お父さんと猫の佐助は男だよ」と催促する。困った私は、あぜ道のぺんぺん草を取って娘の耳もとで回す。ぺんぺんとなる音に喜ぶ娘。家路に向かう四つの影が夕日に揺れていた。
 翌日妻は、小さなこいのぼりを買って来た。以来毎年、わが家の玄関にこいのぼりが泳ぐ。
 出水市 宮路量温 2017/6/29 毎日新聞鹿児島版掲載

宮沢賢治と詩

2017-07-07 10:45:05 | はがき随筆
 私には雲の上のような人。
 宮沢賢治に縁のある人の話を聞く機会に恵まれた。
 日本詩人クラブの鹿児島大会が5月31日、鹿児島市で開かれた。賢治の弟の孫という方が賢治の話をされた。賢治は岩手の痩せた土に苦しむ農民のために力を尽くした、という。音楽も好きで、特にベートーベンを尊敬していたらしい。
 「雨ニモマケズ…」の詩を、たまたま高村光太郎が目にしたことで、宮沢賢治の名が人に知られるようになったらしい。
 私もなんだが、詩を書いてみたくなった。雲の上まではしごを掛け、言葉を探したい。
  出水市 小村忍  2017/6/28 毎日新聞鹿児島版掲載

ぬか炊き

2017-07-07 10:32:39 | はがき随筆
梅雨の時期になると思い出す食べ物に、イワシのぬか床と一緒に炊いた「ぬか炊き」がある。ぬかが青魚の防腐、召集の役割もしてくれる。北九州の下町のソウルフード。イワシの旬のころは、家では週一くらい食卓に上った。肉よりも魚派の私の好物の一つだった。
 先日、北九州のJR駅のお土産売り場で買い求めた。帰宅するなりパックを開けると、ぬかが魚の表面でけにしか付いてなかった。我が家では、イワシがぬか床の海を泳いているように、ぬかの量がたっぷりだった。少しがっかりしながらも、故郷の味覚を焼酎のあてにした。
  鹿児島市 高橋誠 2017/6/27 毎日新聞鹿児島版掲載

小さい鉄道の旅

2017-07-07 10:19:12 | はがき随筆


 紙面を開くとおれんじ鉄道、全線300円にひかれて上川内駅から列車に乗った。ガタコトと揺れる車内から外を眺めていると、すぐ近くでお年寄り3人が楽しそうに方言でカタッているのが聞こえてきた。しばらくすると、途中駅から若い家族連れが乗り込んできて、こちらも楽しそうに唐芋普通語でしゃべり始めた。窓の外は青々とした東シナ海と段々畑、車内はかごっま弁が飛び交い心が和む。
 自然と人との調和にローカル鉄道の旅もいいものだと思っているうちに、いつの間にかうとうととネブイガヒッチて夢の中。
  さつま町 小向井一成 2017/6/25 毎日新聞鹿児島版掲載