はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

薬の効用

2022-01-06 17:10:18 | はがき随筆
 できることならば薬は飲みたくない。飲酒はやめた。薄味を心掛け、ラジオ体操、スイミング、筋トレを毎日励行。しかし血圧はなかなか下がらない。頑張ってるのにと不満が募る。
  ふと過去のがん手術を思い出した。死を予感した。家族にも多大な心配や迷惑をかけた。幸い再発転移もなく今は元気。早期発見、医学のおかげである。
 高血圧を放置し、万一倒れたらこれから先の人生が一変するかもしれない。まだやりたいことがある。コロナは予防とワクチンが不可欠。私も薬を追加してもいいかなと少し素直になった。今年は早めに病院に行こう。
 宮崎市 小金丸潤子(71) 2022.1.6 毎日新聞鹿児島版掲載


習慣の由来

2022-01-06 17:02:34 | はがき随筆
 訳もよくわからずに慣習に従って生活してきたが、慣習にはそれなりの理由があるようだ。
 新しい履物を午後になっておろす時、靴底に竈の煤や唾をつけた奇妙な慣習を思い出した。これは野辺送りの儀式が午後に行われ、その時新しい草履が使われたので、午後に履物をおろすのは縁起が悪いとされ、靴底を汚したのは新品ではないというアピールなのだろうと思う。
 慣習の由来を口にしても迷信だと一笑に付されそうだが、インターネットに詳細な説明がある。非科学的にも思える言い伝えが最新の情報技術で伝承されている面白い事実に気づいた。
 熊本市北区 西洋史(72) 2022.1.5 毎日新聞鹿児島版掲載

ダチュラの家

2022-01-06 16:40:13 | はがき随筆
 霧島山から流れ下る天降川。国分辺りの左岸に気色の杜があり、大隅国府跡がある。都会のオアシス的な所が気に入って居を構う。家の周囲の東西南北に庭を配置して5年も経つと、そこはかとなき風情も生まれつつある。四季折々の花の中で、主人の自慢は、西に設けた黄色いダチュラだ。冬なのに満開の花を咲かせている。100から200輪はあるだろうか。夕方になると、熱帯の植物らしく甘酸っぱく匂う。数寄屋門の外灯の下で妖しく揺れながら。もうしばらく楽しませておくれ。むつまじくダチュラと歩む夫婦。
 鹿児島県霧島市 白坂功子(63) 2022.1.4 毎日新聞鹿児島版掲載

父からの年賀状

2022-01-06 16:33:17 | はがき随筆
 父の24回目の命日がやってきた。今の私と同じ67歳で逝った父のあの日は鮮明に覚えている。家族の誰もが信じられない出来事だった。急性心筋梗塞で、あっけない旅立ち。早々に年賀式を投函し、孫たちのお年玉用新札まで用意していた。きちょうめんな人だった。
 元日に、父からの年賀状が届いた時、私は泣いた。独特の筆跡に涙があふれ、この世にいない現実が悲しく、切なかった。
 寡黙な人だったが、愛情はたくさんもらったと実感できる。
 父がいつも見守っていてくれる……。そう思うだけで、元気が湧いて明るく頑張れる。
 宮崎県延岡市 品矢洋子(67) 2022.1.3 毎日新聞鹿児島版掲載

ご挨拶

2022-01-02 22:16:01 | はがき随筆
 あけましておめでとうございます。
いつも「はがき随筆ブログ」に、お越しくださる皆さま。
一年間、有難うございました。

 ブログ開設以来、5800日を越えましたが、度々、投稿が滞り申し訳ありません。何しろ90歳目前の管理者です。いつ予告なしにブログを閉鎖という事態も……という状況です。
でも今年も頑張ってまいりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

皆様のご健康とご多幸をお祈り申し上げます。
 by アカショウビン


年の初めに

2022-01-02 22:09:47 | はがき随筆
 平凡な昨日の続きなのだが、お正月の朝は何となく普段と違う厳かな気分になる。子供の頃は心底そう思ったものだ。
 昨日とは全く違う時間にワクワクしたし、太陽までも輝いて見えた。歳を重ねた今、何思うや。一番は健康かな。
 元気そうに見えても、意外と多くの人は何かしらの病を抱えている。私は現状維持に心がけよう。そして、ぼけないように刺激をいただこう。
 アンテナを伸ばして外へ出たい。自転車での移動で足に少し自信がついたが、転ばないようにしないといけない。足先を上げてゆっくりと。
 熊本県八代市 鍬本恵子(76) 2022.1.1 毎日新聞鹿児島版掲載

母の旅立ち

2022-01-02 22:03:40 | はがき随筆
 2年前の暮れに母が亡くなった。葬儀会社と葬儀の打ち合わせをしている時、中国で新しい感染症が見つかったというニュースがテレビから流れてきた。そして、瞬く間にその感染症は全世界に拡散してしまった。
 遠くに住んでいる幼い孫とはスマホの画面越しに会っているが、母が生きていればこの方法でひ孫に合わせられたのに、と思うと切なくなる。母が旅立ったのは悲しい。しかし、病気で寝たきりだった高齢の母が新型コロナウイルスに感染する心配をせずに済んでよかった、と思うことがある。こんな考えは間違っているのだろうか。
 鹿児島県志布志市 藤森利一(72) 2021.12.31 毎日新聞鹿児島版掲載

喪中はがき

2022-01-02 21:56:47 | はがき随筆
 11月になると知人、友人から喪中はがきが届く。数年前から徐々に増えてきたのは、年齢的に親の死を迎える時期にきたからだろう。
 私も母が亡くなった時、「100歳近くまでよく長生きしたね」という感謝を込めて母の年齢を明記した。今年、特に気になったのは、亡くなられた方の年齢で、90代が過半数だった。その喪中はがきに記された年齢が、年が明けると70歳になる私を「90過ぎまで生きなさい」と励ましているような気がした。
 自分の喪中はがきは書けない。年賀状を書いて「元気で生きている」と伝えよう。
 宮崎県串間市 岩下龍吉(69) 2021.12.30 毎日新聞鹿児島版掲載

折り鶴

2022-01-02 21:47:49 | はがき随筆
 農家だった亡父は手が器用で、わらでしめ縄を作っていたが、自分は不器用で木工品の製作なども苦手である。介護施設で働いている妻が、自宅で広告のチラシの折り紙でゴミ箱を作っていた。自分も見よう見まねでやってみると、3時間あまりでどうにかできた。
 手の運動は認知症予防に効果があるというので折り鶴にも挑戦した。しかし、これは難しく妻のアドバイスをもらいながら10時間以上かけて不完全ながらも出来た。うれしく、達成感があった。満点の折り鶴を目指して頑張ろう毎日1羽、千羽鶴を追ってみたい。
 鹿児島市 下内幸一(72) 2021.12.28 毎日新聞鹿児島版掲載

もう一つの日記帳

2022-01-02 21:15:49 | はがき随筆
 私は学生時代からテーマを決めて書く自由日記と、もう一つの日記帳を持っている。亡き母のメモ日記を引き継いだ3年または5年日記である。今年で5冊目が終わるが、これまでの日々の出来事がよく分かる。
 最近は、妻の介護で孫たちとの旅行もできず、行動範囲が狭くなった。さらに、妻に代わって食事の準備と妻の介護、家事全般でますます生活は単調になっている。その中で生きる希望を求めていきたい。
 今回、6冊目の5年日記帳を購入した。これから何が起こるか分からない不安と期待を抱えての年末である。
 熊本県大津町 小堀徳廣(73) 2021.12.29 毎日新聞鹿児島版掲載 

かわいいサンタさん

2022-01-02 21:09:33 | はがき随筆
 クリスマスがやってきた。子どもが小さい頃は、ツリーを飾りイルミネーションを付け、クリスマスケーキを皆で食べた。プレゼントも何がいいのかずっと前から考えて、家には煙突がないのでベランダに置き、「サンタさんが届けてくれたね」と言って喜ぶその笑顔は私がもらう幸せのプレゼントだった。
 老夫婦2人の生活になり、クリスマスは質素になり、影を潜めていたが、孫の誕生で一変。またにぎやかなクリスマスが戻ってきた。孫のためと2人で手作りしたサンタや装飾品を所狭しと飾っている。我が家にかわいいサンタさんが戻ってきた。
 宮崎市 高木真弓(67) 2021.12.24 毎日新聞鹿児島版掲載

孫息子のつぶやき

2022-01-02 21:02:45 | はがき随筆
 お母さんが夜勤の夜、1年生の孫娘と2人のババ抜きは最後の2枚。婆のカードは傷があって見分けやすいので、両手で後ろに隠して「上下どっち?」と聞く。上のカードを選んだ孫娘が勝って大喜び。
 そばで宿題をしながら見ていた5年生の孫息子が「おじいちゃんの今のカードの入れ替えは、ズルではなくて優しさだったのかな」とつぶやいた。
 孫娘の引きたいカードを選んだ直後、私が上下のカードをひそかに入れ替えたのをしっかり見ていたようだ。少しずつ反抗期の兆しを見せる孫息子の思い掛けないうれしい一面だった。
 宮崎市 杉田茂延(70) 2021.12.21 毎日新聞鹿児島版掲載

ドジな朝

2022-01-02 20:56:06 | はがき随筆
 一気に冬の到来を思わせた11月初旬、エアコンの出番となった。居間に暖房を入れ、急いで朝の片付けを済ます。部屋に入った途端、冷蔵庫を開けたような冷気にやられた。「あれ?」とリモコンを見ると、何と冷房にセットされたままだ。早速、冷気の中で切り替えをする。動作も鈍くもたもたしながらのドジな朝となった。
 今冬は老体に追い打ちをかけるように、ラニーニャ現象の発生で気温が低い傾向にあると本紙の記事にあった。異常気象であれば仕方ないだろう。冬ごもりしながら拙文でもひねってみることにしよう。
 鹿児島市 竹之内美知子(89) 2021.12.22 毎日新聞鹿児島版掲載

つる草のリース

2022-01-02 20:49:47 | はがき随筆
 「わぁ、うれしい」。思いがけなくお隣のお嬢ちゃん手作りのクリスマスリースをいただいた。華やかすぎず、シックな色味でとても可愛い。うちの垣根にからまっていたつる草の黄色い実も使ってある。好きなデザインにうれしさ倍増です。
 この1年わが家は、いろいろと厳しいことが続いて、「長生きはきついなあ」とため息も出たけれど、たくさんのうれしさにも出会えた。
 力をふりしぼって草を抜き、たまりにたまった枯れ葉を掃き寄せる。何かいいことありそうな、そんな気もする年の暮れ。
 メリークリスマス。
 熊本市東区 黒田あや子(89) 2021.12.23 毎日新聞鹿児島版掲載

恥ずかしい瞬間

2022-01-02 20:42:43 | はがき随筆
 食品売り場の4カ所のレジにカートを押している人がずらりと並び、通路をふさいでいる。
 どのレジがいいかうろうろするうち、すぐ前にペットボトルだけ握っている男性を見つける。この人の後ろに並ぼう。
 ところが2人前の高齢女性が山ほど品物が入ったかごを下ろした。店員が、精算を終えた品物を横の台に運び、続きを打ち始めた。「え? まだあると」。待つのは長いもの。
 女性は後ろを振り向き「すみません」と頭を下げた。「いいんですよ。大丈夫ですか」。なんと優しい男性。イラッとした自分が恥ずかしい。
 宮崎県延岡市 川並ハツ子(77) 2021.12.27 毎日新聞鹿児島版掲載