はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

クワガタ君

2010-08-22 18:12:35 | はがき随筆
 深夜3時、なんとなく物の動く音に目覚め、灯をともすと、部屋の隅の木彫り道具のあたりからこげ茶色の虫が──。もしやゴキブリかと見定めるが、逃げ足が遅い。やがてのっそりゴソゴソとお出まし。すばやく捕らえると、なんと小クワガタがツノを広げ、まるで捕まるのはイヤダ、イヤダとしている。
 いつ、どこから入って来たものか。昨日、あまりのぬくさに入り込んだか。それとも幼虫時代を私の木彫材の中で過ごし、たまたま生まれたのか。孫へ見せよう。ラジオは「いつまでもいつまでも」の曲が流れ、クワガタと友に聞いている。
  鹿児島市 東郷久子(76) 2010/8/22 毎日新聞鹿児島版掲載

惜別の命

2010-08-22 18:01:18 | はがき随筆
 「ペットたちの盆供養を行いたいので是非ご協力いただきたい」というペット霊園からの丁重な連絡であった。盆前の午後であったので快諾した。
 参列して驚いた。霊園のホールは、亡くなった犬猫たち約50匹のそれぞれの家族でいっぱいであった。読経に続いて法話を頼まれていたので、私は16年間一緒に暮らした愛猫「チー」との思い出を話した。子どもたちは次々に巣立ち、残された夫婦の生活にどれほど潤いを与えてくれたことでうろうかと。わが子を虐待する事件が多発する昨今。物言わぬいのちを惜しむ人たちの集まりであった。
  志布志市 一木法明(74) 2010/8/21 毎日新聞鹿児島版掲載 写真はフォトライブラリより