はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

祖母とお手玉

2010-08-08 22:32:39 | はがき随筆
 押し入れを整理していると、和風柄の布生地があった。幼少時、祖母から教わったお手玉を試作する。昔を思い返し、早速畳に布を広げた。長方形に裁ち、二つ折りにする。脇の部分を運針する。頭の部分と底の部分は縁を描くように縫う。
 頭と底の糸を引き絞る。型は袋になる。中には小豆を詰める。小豆が外に出ないように細く縫うこと。祖母に教わった可愛げな、愛らしい、懐かしいお手玉が出来上がった。童心に帰った心地。祖母は穏和でお手本のような人だった。お手玉遊びをすると、祖母の笑顔が浮かんで来る。96歳の生涯を全うした。
  鹿屋市 堀美代子(65) 2010/8/8 毎日新聞鹿児島版掲載

今日も生きる

2010-08-08 22:11:35 | はがき随筆
 暑さで、へばりそうになる老体を抱えて過ごす日々。
 幼い日、父の田舎の川でおぼれかけた。川底の光る小石を拾おうと手を伸ばした途端に、ボコボコと沈んでいった。父が近くにいて助かった。
 ちょうどそのころ、友達の雪子ちゃんが病気で死んだ。おはちゃんが「雪子という名前だから暑さでとけたのだろうね。弘子ちゃんはおぼれずにほんとうに良かった。符の良か子だね」と話したのを思い出す。
 目が、腕が不自由になった今も私は生きている。弱々しながら、しぶとい。すっかり意地悪ばあさんにもなった。
  鹿児島市 馬渡浩子(62) 2010/8/7 毎日新聞鹿児島版掲載

剣岳への挑戦

2010-08-08 22:03:13 | はがき随筆


 山登りする玄人山男の中で槍ヶ岳・甲斐駒ヶ岳・剣岳は登りたい山ベストスリーであると言われる。
 このうち、剣岳は、映画のヒットで、さらにクローズアップされた感がする。自分はこの山だけ登っておらず、今回3泊4日の山旅になった。
 室堂からのスタートは天気も良く、壮大な立山三山や雪渓のスケールに感嘆の声ばかりである。剣山荘に泊まり、いざ出発であるが、雨と風速15㍍の風、そして視界10㍍の三重苦で前剣で断念。川柳駄句『登れなくて初めて知る剣の畏怖』。残念なり。
  鹿児島市 下内幸一(61) 2010/8/6 毎日新聞鹿児島版掲載
写真はフォトライブラリより