はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

ヘイ、ブル娘

2010-08-03 19:01:04 | はがき随筆
 鹿児島の家は長女に任せていました。彼女の一家がモロッコ(マラケシュ)に引き揚げる時のことです。
 家のすべてを処分していいとは言ったものの、行ってみて驚きました。
 「家財道具はトラックで処分場に運んだよ。家は不動産屋さんと交渉中よ」
 「はあ……」。よくも1人で出来たものだと絶句。ブルドーザーのような娘です。
その彼女が夏休みに帰省します。さあ、片付けなくちゃ。「おばあちゃん、捨てられないように、ベッドにしっかりしがみついているのよ」
  阿久根市 別枝 由井(68) 2010/7/3 毎日新聞鹿児島版掲載

ネコ派文士百間

2010-08-03 07:54:57 | はがき随筆
 内田百は、明治、大正、昭和を思いのままに生きた。
 好きな鉄道の旅なら借金もする。「阿房列車」では、一等車に乗るとすこぶる機嫌が良い。目的のないぶらり旅だが、旅先での対話や光景の描写で、旅の楽しさや意味を教えてくれる。
 百は頑固だが優しい。飼い猫ノラが帰らないと、何も手につかず狂い死にそう。ノラ探しのビラは英文も含めて4回。1年余り待つのだが……。「ノラや」や<わかれ霜 猫連れ立ちて 通りけ里>の句には泣かされた。
 百は芸術院への推薦を「イヤダカラ、イヤダ」と拒んだ。その反骨精神にしびれる。
  出水市 清田文雄(71) 2010/7/2 毎日新聞鹿児島版掲載