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書籍之海 漂流記

看板に掲げているのは「書籍」だけですが、実際は人間の精神の営みすべての海を航海しています。

大竹博吉監修 『ウィッテ伯回想記 日露戦争と露西亜革命』(下)

2009年02月21日 | 西洋史
 セルゲイ・ユリエヴィッチ・ヴィッテ著。
 ヴィッテは、先に仕えたアレクサンドル3世について、教養や才質は平凡だがそれらを超えたところの人格・威厳において無比、これぞまことの専制君主と、非常に評価がたかく、その一方で、アレクサンドル3世の死後仕えたニコライ2世については、教養あり才能にもめぐまれ、じつに寛仁でもあったが優柔不断、父君たるアレクサンドル3世の急死によってあわただしく即位したため君主教育が欠如していたと、かなり点が辛い。だが帝王学を受けなかったのはアレクサンドル3世も同じであろう。アレクサンドル3世は父親のアレクサンドル2世が暗殺されたために予想より早く即位せざるを得なかった。しかも彼は次男で、兄が夭折しなければ皇位継承者になるはずのなかった存在だった。だから最初から軍人たるべく育てられて、皇太子としての教育は受けていない。ヴィッテは、普段は冷遇しながら困ったときにだけ呼び出して後始末をつけさせる、自分をまるで便利屋扱いした後者を批判するために、ことさら前者を持ち上げたのかどうか。ここには、勝海舟の徳川家茂と慶喜に対する、感情の温度差に似た消息が感じられる。

(原書房 1972年10月第1刷 1980年9月第2刷)

スーザン L. シャーク著 徳川家広訳 『中国 危うい超大国』

2009年02月21日 | 政治
 “中華6,000年”のおらが国が兎に角一番よという夜郎自大意識と“余所者を見たら泥棒と思え”の原始的な土俗感情を野放しにしてそのうえ助長までした江沢民時代の負の遺産に苦しめられる胡錦濤という見方。これはまあそのとおりなのだろう。

(日本放送出版協会 2008年3月第1刷2008年4月第2刷)

山本有造編 『帝国の研究 原理・類型・関係』

2009年02月21日 | 世界史
 帝国とはなにか。「異質(ヘテロ)なエスノ・ナショナルの行政的・領域的組織を、宗主国と植民地、中心と周辺、中央と辺境という関係を基盤として、厳格な中央集権権力の下に統合する政治システム」(Moskovskogo kommercheskogo universiteta [1993] p. 119)。 (山本有造 「第Ⅰ部第1章 『帝国』とはなにか」 本書10頁)

 してみると、旧ソ連はもとより現ロシアも、米国も、そして中国も「帝国」であろう。公式帝国(領土併合)か非公式帝国(従属地・保護国設置)かという精密な分類や、さらには後者の定義に関する議論(覇権行使国や影響行使国までを広義の非公式帝国として含めるか)については、いましばらく措くとして。

(名古屋大学出版会  2003年11月)

「Politkovskaya defendants acquitted」 から

2009年02月20日 | 抜き書き
▲「Al Jazeera English」Friday, February 20, 2009 05:38 Mecca time, 02:38 GMT、Agencies. (部分)
 〈http://english.aljazeera.net/news/europe/2009/02/200921913943140575.html

 A court in Moscow has found three men not guilty in connection with the murder of journalist Anna Politkovskaya two years ago.
 A fourth man, Pavel Ryaguzov, a former agent of the FSB security service, was cleared of extortion in connection with the case.

  Что это случилось?

「Russia and Japan discuss island row 」 から

2009年02月20日 | 抜き書き
▲「Al Jazeera English」Thursday, February 19, 2009 09:55 Mecca time, 06:55 GMT、Agencies.  (部分)
 〈http://english.aljazeera.net/news/europe/2009/02/2009218142752996115.html

 Russia ceded half of Sakhalin to Japan after the war between the countries in 1905, with Moscow taking back the whole of the island in 1945.

 条約を結んで割譲されるのと武力で占拠するのと同列に並べるのか。

「アマゾン、消された書評 著者・水村さん『公正さ疑う』」 から

2009年02月20日 | 抜き書き
▲「asahi.com」2009年2月17日、都築和人、小山内伸。 (部分)
 〈http://www.asahi.com/shopping/news/TKY200902160432.html

 筑摩書房が削除理由について問い合わせたところアマゾン側から、六つのうち一つは「原因不明」、五つは「800字以上の長文のためガイドライン上不掲載処理した」と回答があったという。
 著者らは「800字をはるかに超えたレビューにも消えていないものがある」として、再度回答を求めている。

 “原因不明”がとりわけ笑える。

「New Tibetan Protests Erupt」

2009年02月20日 | 思考の断片
▲「RFA Home」2009-02-18。 (部分)
 〈http://www.rfa.org/english/news/tibet/protests-02182009113026.html

 New protests have erupted in a Tibetan-populated region of China, with armed police using force to disperse demonstrators and detaining at least 13 people, according to Tibetan activists and exiles.

 取り締まる側(現場から中間管理職あたりまで)の理屈としては、俺ら漢族にも許されないものが半分畜生のようなお前らに許されるわけがないだろうというところだろう、多分。

 そもそも法(礼)の下の不平等を前提とする文化に、人権問題など発生するわけがない。人権などはなからないのであるから。差別も虐待も、上位の者が下位の者をどう扱おうとそれは当然のことだから、誰もそれを差別だの虐待だのと思わない。される側のほうの意識も大方はそうだろう。されて当たり前だと思っているはずだ。ただし中国にはときに陳勝・呉広のような者(あるいは後世において彼らを意識的に模倣する者)が出て、ときに大反乱を起こして、自分たちをそれまで塵芥のように見なして踏みつけにしてきた奴らを根絶やしにしようとする。この情況をして天命――討つほうにも討たれるほうにも――と言うらしい。そして大抵の場合、取って代わったところで今度は下の者を差別・虐待し始めることになるようだ。

村上春樹「エルサレム賞受賞スピーチ」 から

2009年02月17日 | 抜き書き
▲「The Jerusalem Post」Feb 15, 2009 23:57 | Updated Feb 16, 2009 3:48、SHAYA LYON LONEY 「Murakami, in trademark obscurity, explains why he accepted Jerusalem award」
 〈http://www.jpost.com/servlet/Satellite?cid=1233304788868&pagename=JPost/JPArticle/ShowFull

 If there is a hard, high wall and an egg that breaks against it, no matter how right the wall or how wrong the egg, I will stand on the side of the egg.

 私は村上氏のファンではなく、文体に限って言えば、どちらかと嫌いなほうである。だがこのスピーチには心より賛同する。そして村上氏に敬意を払う。

 I have only one purpose in writing novels, that is to draw out the unique divinity of the individual. To gratify uniqueness. To keep the system from tangling us. So - I write stories of life, love. Make people laugh and cry.

 これを分かろうとするな、我が国周辺諸国の愛国者たち。近代や前近代の人間には無理だ。

参照:「池田信夫 blog」2009-02-16、「壁と卵」
 〈http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/26ca7359e6d2d15ba74bcdf9989bee56

「【今日のブログ】日本政府は中国人民に謝罪すべき」 から

2009年02月17日 | 抜き書き
▲「Searchina 中国情報局」 2009/02/17(火) 10:22、(出典:許君一的BLOG意訳編集) (部分)
 〈http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2009&d=0217&f=column_0217_002.shtml

  日本政府は中国人民に対して過去を懺悔しなければならない。日本政府は今日に至るまで、過去の罪悪に対して誠意のある謝罪を行っておらず、これは中国人民にとって受け入れることの出来ないことである。

 原文。「日本政府到今天没有真诚忏悔自己过去的罪恶,这个是让中国人民难于容忍的。」

 枕詞? 本気で言っているのなら物知らずかただの馬鹿であろう。事実に反する。

 日本は資本主義及び帝国主義となってからすでに長いが、今日に至るまで「勇気」が足りない。これは本当に遺憾なことである。

 原文。「日本已经进入资本主义和帝国主义有很长时间了,但到现在还是缺乏勇气,真是遗憾的事情。」

 日本はいまでも帝国主義?! これはよほどの物知らずだ。そして“但”(「長いが」の「が」)は、いったいどういう意味か? やはり馬鹿だろう。
 どこの国にでもいるただの馬鹿の書くブログをわざわざ訳出して外つ国の普通人に紹介する意義はいずくにありや。