書籍之海 漂流記

看板に掲げているのは「書籍」だけですが、実際は人間の精神の営みすべての海を航海しています。

藪内清 「李朝学者の地転説」

2014年11月29日 | 地域研究
 『朝鮮学報』49、1968年10月所収、同誌427-434頁。

 洪大容の地転説について、燕行使として清に趣く機会のあった洪が、そこでイエズス会士から聞いた可能性があるとして、その起源を西洋学術に見ている。

 それを聞き知った朴趾源が特にこれを洪大容の創始として強調したように思わわれて〔ママ〕ならない。 (433頁)

 洪大容にはじまり朴趾源によってその創始が強調された地転説は、単に地球自転にふれるだけで、コペルニクスの地動説に比べてきわめて単純なものであった。このような説が十八世紀になってはじめて唱えられたということは、朝鮮が中国を経て間接的に西洋を知るほかなかったことに原因するするもので、むしろ朝鮮にとって不幸なできごとであったとさえ思われる。 (432-433頁)