書籍之海 漂流記

看板に掲げているのは「書籍」だけですが、実際は人間の精神の営みすべての海を航海しています。

屋良勝彦・写真 高良倉吉/宮城篤正/又吉盛清・文 『写真集 中国・進貢使路の旅』

2011年06月15日 | 東洋史
 市立図書館経由で国会図書館から借りて、館内閲覧。
 1980年代初めの福州の琉球館(柔遠駅)と琉球人墓の記録として、非常に貴重なものではないか。および歴代の進貢使がたどった当時の福州―杭州―蘇州―天津―北京のルートに沿った当時の中国各地の土地と人も、ふんだんにカメラに収められている(福州に隣接する泉州および広州、蘇州に隣接する南京の風景も)。
 琉球館は現在、琉球人墓とともに改修・整備されているらしいが、著者たち訪問団が訪れたときは、敷地あとはまだそれまでどおり「湖月亭」というスイッチ工場であった(外部と内部の写真あり)。琉球人墓のほうは手入れされることもなくかなり荒れていたようだ。
 高良氏の文章(「進貢使路の再発見 沖縄と中国の交流史のために」)に、中山王察度の入貢以後、明・清の冊封体制に組み込まれた琉球王朝において、中国皇帝の冊封をうけなかった王がいると書かれているのだが、いったい誰だろう。

 追記。ああそうか、察度は朝貢はしたものの彼一代のあいだは中国から冊封されなかったといわれている。こういうところで生半可な知識のボロが出る。ほかにも同様の例があるだろう。

(ヤラフォトサービス 1981年8月)