書籍之海 漂流記

看板に掲げているのは「書籍」だけですが、実際は人間の精神の営みすべての海を航海しています。

徳齢著 実藤恵秀訳 『西太后絵巻』 上

2014年04月23日 | 文学
 原題"Imperial Incense"、1933年刊。

 訳者の「はしがき」。

  本書は、かつて西太后に侍してゐた徳齢姫が書いた自叙伝体の長篇小説の一つである。 (原文旧漢字)

 同じ訳者による『西太后秘話』は"Old Buddha"、1928年刊。上記「徳齢姫」の「姫」は、「徳齢公主」の「公主」、また英語での著者名 Princess Der Ling の "Princess"の訳であろうか。この称号の真否もしくは可否については、訳者は言及するところがない。

(大東出版社 1941年10月)

岡田英弘『岡田英弘著作集』 3 「日本とは何か」より

2014年04月23日 | 抜き書き
 国民の統合には君主の人格が最適であり、君主を失った国民の統合はつねに不安定を免れない。一人の君主の人格を、その死後も存続させるもの、それが世襲制であり、人間の考えうるもっとも安定した制度である。世襲されるものは権力ではない。人格が世襲されるのである。 (「第Ⅲ部 日本の誕生」「大嘗祭は冬至祭である」本書381頁)。

 たとえば広東語の新聞を見ると、妙な字が入っている。古文で書いてあるあいだに、広東語の助字がはさまっている。そういうところだけ飛ばして読んでも意味はわかる。つまり、吏読や〔略〕『訓民正音』の読み下し文は、それと同じようなものなのだ。広東語が漢語なら、吏読も漢語ということになる (「第Ⅴ部 発言集」「吏読から考える日本語の成立」本書521頁)

 現代日本語の成立に重要な役割を果たしたものの一つは、江戸時代に普及した漢文の訓読であろう。〔略〕その訓読の普及によって、漢語と日本語の中間的な言語がすでにできていたのだと思う。それがどうやら、現代日本語の基礎になっている。
 (「第Ⅴ部 発言集」「江戸時代の漢文の訓読が現代日本語の基礎」本書522頁)

 ところが、ここで問題になるのは、日本語の下敷きに使われたのが、言語ではなく漢文であったという点である。漢文は漢字でつづられている文章であり、漢字には品詞の区別や文法、語順というものが存在しない。このことは、漢文には論理を表現する方法がないことを意味している。 (「第Ⅴ部 発言集」「日本語が持つ歴史的弱点」本書528頁)

等々。

(藤原書店 2014年1月)

エリック・トレダノ/オリヴィエ・ナカシュ監督 『最強のふたり』(2011年)

2014年04月23日 | 映画
 面白かった。オマール・シー演じるドリスのキャラクターは最初から当て書きだったそうだが、それを抜きにしても、ほかの役者に演れるかどうか。ウィル・スミスではちょっと屈折が出てしまう気がする。若い頃のモーガン・フリーマンでも難しい。『野のユリ』のシドニー・ポワティエならあるいは。