書籍之海 漂流記

看板に掲げているのは「書籍」だけですが、実際は人間の精神の営みすべての海を航海しています。

D.ベーレントほか著 『世界の教科書=歴史』 「019-023 ドイツ民主共和国」 全5巻

2010年07月19日 | 西洋史
 木谷勤編訳、井上浩一ほか訳。
 ドイツ民主共和国(DDR)=東ドイツの歴史教科書。1969-1979年にかけて刊行されたものの翻訳。大体わが国でいうところの中等教育から高等教育課程にかけて使用される教科書。すでに消滅した国の教科書を目にするのは奇妙な感じである。そして結局現代世界についてゆけずに自滅した国家を、「マルクス・レーニン主義によれば」と注意深く自己の責任を回避しながら、「現代世界はまさに(略)社会主義への移行期にあり,ソ連邦をはじめとする世界の社会主義諸国は人類の進歩の先頭を切っている」(8頁)と手放しで礼賛している編訳者の序文を読むのもまたしかり。

(ほるぷ出版 1985年4月初版第2刷)

「チベット学者が日本人記者の質問に回答 (3)」 から

2010年07月19日 | 抜き書き
▲「人民網日本語版」13:06 Jul 19 2010、編集NA。(部分)
 〈http://j1.peopledaily.com.cn/94474/7071255.html

 ダライ・ラマのいわゆる「大チベット区」は、他民族を追い出そうとするものだ。他の民族にとってこれは受け入れられないし、一般市民の怒りを招くものだ。

 1. ダライ・ラマ(14世。以下同じ)は「大チベット区」なる主張をしていない。すくなくとも、ダライ・ラマを指導者とするチベット亡命政府のこの問題に関する現時点での公式見解を著した「全チベット民族が名実共に自治を享受するための草案 ダライ・ラマ法王特使による中国統一戦線工作部提出資料」においては、「大チベット(区)」という語は一度も使われていない。
 2. さらに、この「全チベット民族が名実共に自治を享受するための草案 ダライ・ラマ法王特使による中国統一戦線工作部提出資料」には、「他民族を追い出そうとする」などとも、どこにも書かれていない。1.もそうだが、これらの発言の根拠はどこにあるのか。
 3. 「一般市民」とは一体何、いや誰のことであるか。

 こんないい加減でデタラメなことを平気で口にするから、中国の対外宣伝(とくに敵に対するそれ)は、かえって自国の信用と立場を損じることになるのである。

小林正樹監督 『切腹』

2010年07月19日 | 映画
 仲代達矢・三國連太郎・丹波哲郎の共演にヒロインは岩下志麻という豪華さ。それだけでなく、作品の全編をつうじて解けない緊張感(すなわち映画としての完成度)がすごい。
 これを観たあとで黒澤明監督の『赤ひげ』(1965年)を観たら、だらけているとはいわないが、画面のぬるさにびっくりした。はじめのほうの加山雄三さんの演技のぎこちなさはなんであろう。これでよく本番OKを出したなと驚くほど。

(松竹 1962年)

「建国宣言、静かなる革命」

2010年07月19日 | 思考の断片
▲「AC通信」 No.325(2010/07/18)、Andy Chang [AC論説] No.325。(部分)
 〈http://www.melma.com/backnumber_53999

 私の提案した建国宣言計画はいろいろな理由をつけられ、半年以上も遅れたのである。同志か、スパイかと考えたらもう許す許さないの問題ではない。警戒心を高めて対するだけである。
 この考えを私の尊敬する友人と相談した結果、次のような結論が出たので読者諸氏の参考に書いておくことにしたい。

(1)赦すのは神の仕事、人間の仕事ではない。
(2)赦しても決して忘れるな(You can forgive, but never forget)
(3)いつも用心して、安易に人を信用せず無防備になるな。
(4)立ち止まって相手に「隠された目的」があるか考えろ。
(5)喋るより聞く方に回れ。雄弁は銀、沈黙は金なり。

 著者のような特殊な事情においてだけではなく、一般の人間関係、普通に日々生きて行く際にも十分に通用する教訓であると思うから、書き写す。
 ただ、その場合、すこしく修正が必要かもしれない。
 例えば(4)については、自分に「隠された目的」があることに気付いていない場合がある。つまり己個人の事情や利益による脱落者・裏切り者であるが、おのれの良心の呵責に耐えかねて、自分を免罪するのである。あるいは、日頃「死ねばいい」と思っている相手を、ことある毎にいじめたり侮辱したりして追いつめておいて、ところがいざその相手が自殺でもすると、自分としては心から驚いて、「そんなつもりはなかったのに」などと言ったりする手合いである。そんな類の人間の愚かさをしも赦すべきかという難しい問題が、時に生じたりする。
 さらに、私個人的には、(1)を、「復讐するは我にあり、我これを報いん」と、読みかえたい。こうでないと(2)には到底従いかねるゆえに。

Marshall T. Poe 『A People Born to Slavery』

2010年07月19日 | 西洋史
 副題「Russia in Early Modern European Ethnography, 1476-1748」。

 当時のロシアはたしかに西欧よりも専制的だったろうが、「専制国家の君主と臣民」という枠組みだけで見れば、記録者の記録には臣民の体制に対する服従場面ばかりがしるされることになるだろう。それ以外の公権力のおよばない側面――人々の家庭生活や日常の近所づきあいなど――は切りすてられてしまう。ヘルベルシュタイン(Siegmund (Sigismund) Freiherr von Herberstein。1486年-1566年)の『モスクワ事情(Rerum Moscoviticarum Commentarii)』(1549年出版)などは、あきらかにその傾きがある(ロシア語訳(前半部のみの翻訳)を読んだだけの感想だが)。記録されないことと存在しないこととは違う。

(Cornell University Press, Ithaca N.Y., January 2001)

ロシア連邦バシコルトスタン共和国(バシキーリア)の国会はクリルタイというそうな

2010年07月19日 | 抜き書き
▲「ИТАР-ТАСС」19.07.2010, 08.36「Рустэм Хамитов наделен полномочиями главы Башкирии」(部分)
 〈http://www.itar-tass.com/level2.html?NewsID=15328581&PageNum=0

 「クリルタイ」は、この国の法律で定められた正式名称である。この記事の内容は、クリルタイがルステム・ハミトフという人物を4名の候補者から選出したという報道である。ただしその得票数には事前のロシア大統領による支持の意思表明が影響したらしい。

  15 июля Указом Дмитрия Медведева Рустэм Хамитов был назначен временно исполняющим обязанности президента Башкирии "на период до вступления в должность лица, наделенного полномочиями президента" этой республики.