3日連続の「長崎春のハギ祭り」。最後は、スズキ目・ニザダイ科・クロハギ属のヒラニザをご紹介。このヒラニザも、ここ二日で紹介したように長崎で水揚げされた個体で、たくじーさん(闇の中に潜んで生きている方のようなので、本名や勤務先は伏せさせていただきます)より届いたもの。3日間楽しませていただき、ありがとうございました。
さて、ヒラニザは前にご紹介したゴマテングハギモドキおよびマサカリテングハギとは異なる亜科(Acanthurinae)に含まれる種類。この亜科にはクロハギやニセカンランハギなど、大きくなる食用種が含まれるほか、ナンヨウハギ、ニジハギ、キイロハギなど美しい色彩の魚が多数含まれており、観賞魚として人気があるものも多い。共通の特徴として尾柄に棘があること。これに刺されると痛い目を見る。死んだ個体でも要注意だ。私もニセカンランハギにスパッとやられたことがあるのだ。鱗の様子も、テングハギとはちょっと違う感じでしょ?
体には青い縦縞模様がある。サザナミハギと似ているが、体が丸みを帯びていてやや長いので区別可能。なお体側に白い横帯があるようにも見えるがこれは傷のような感じで、模様ではない。なおもっと詳しく見たい方は歯をみればよい。歯の形がブラシのような変わった形をしているのがサザナミハギ。ヒラニザの場合幅広い形をしている。サザナミハギは以前記事で歯の写真を掲載しているのでそれを見て頂ければと思う。5年も前にミトさんに送っていただいた写真だ。
顔つきがユニーク。ヒラニザの場合、眼の周りが黄色になっていて、なかなか美しい。ただし眼の周辺が黄色くなっているニザダイはほかにもニセカンランハギなど何種かいるため、同定のポイントには使いにくい。
テングハギの仲間(Nasinae)とは尾柄のようすのほかにも変わっているところがある。腹鰭だ。腹鰭は1棘5軟条であり、1棘3軟条のテングハギ属のものと区別できる。ただしクロハギ属と同じAcanthurinaeの一員であるナンヨウハギは1棘3軟条なので注意する必要がある。
今回のヒラニザはカルパッチョにして食べてみた。これは美味しい。ニザダイの仲間はやや臭みがあるといわれるが、ちゃんと処理したものの多くは臭みがなくおいしいものである。別にカルパッチョにしなくてもよかった。好みの問題。
ヒラニザは南アフリカのナタールから中央太平洋のマルケサス諸島、トゥアモトゥ諸島に至るインド—中央太平洋に分布する(ただし、ハワイ諸島やイースター島には生息していない)。もちろん日本にも見られ、琉球列島や伊豆-小笠原諸島で見られるほかに千葉県以南の太平洋岸で幼魚や若魚を見ることができる。サンゴ礁域や岩礁に群れで生息しているが、浅海だけでなく、水深100m前後のやや深い海でも採集されている。
沖縄では食用になっている。一方観賞魚としても販売されているが、ニザダイの仲間はいずれも大きくなり遊泳性も強いので大きな水槽でないとうまく飼育することができない。同様のことはほかのニザダイの仲間にも言える。少なくともこの仲間を飼育するなら120cm、欲をいえば150cmの水槽が欲しいところである。
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