アリアケギバチ Pseudobagrus aurantiacus (Temminck and Schlegel)
今日の魚は、九州北部の河川に分布する珍しいギギ科の魚種「アリアケギバチ」です。本種は九州北部・西部の河川に生息する、日本固有種です。
●記載
本種は日本産魚種の多くを記載したテンミンクとシュレーゲルにより原記載されました。しかしその後、関東でも本種と似た魚がみつかり、それにギバチと名づけられました。
今から10年ぐらい前になると、本種と関東産の近縁種は別種とわかり、本種には「アリアケギバチ」と、東日本に生息する類似種は「ギバチ」と呼ぶことになりました。しかし海外のサイトでは「ギバチ」の学名に今もPseudobagrus aurantiacusを採用していることもあるそうです。本種は分類では「ナマズ目 ギギ科」に属します。ギギ科はアジア・アフリカの淡水域に多く生息し、日本では1属4種(中坊編、2000)が知られています。
●分布
先述したように、九州北部・西部と長崎県壱岐に分布する日本固有種です。しかし残念ながら壱岐からは近年記録されていません。絶滅した可能性もあります。本種によく似たギバチは関東平野・北陸地方以北の本種に分布し、この種も日本固有のものです。
九州にはもう1種、同属のギギがいますが、ギギは九州北東部の河川に分布しています。
●形態的特徴
背鰭棘の長さで見分けられます。背鰭基底長の1.3倍以下なのがギバチ、1.4倍以上のものがアリアケギバチとされています。九州に生息するもう1種のギギは、尾鰭がよく切れ込むことで区別できます。
●生態
河川中流域に生息します。流れのゆるい場所を好み、岩陰や流木、ヨシなどの葉影に隠れていますが、空き缶や空き瓶、ごみの中にも隠れています。産卵期は初夏で、盛夏には全長1cm前後のかわいらしいサイズが採集できます。夜行性で貪欲、特に甲殻類が好物ですのでエビ類と一緒には飼育できません。
●注意
背鰭・胸鰭の棘は有毒といわれます。刺されると本当に痛いです。
1cmほどの稚魚を採集して1年でコレだけの大きさになりました。どれだけ大きくなるか。
これで約5cmといったところ。
別の水槽で飼育していたアリアケギバチ。
鰭の齧りあいをするので複数飼育は注意が必要です。
参考書籍・サイト
中坊徹次編 日本産魚類検索 第二版(東海大学出版会 2000)
WEB魚図鑑 http://fishing-forum.org/zukan/index.htm