2007年から桜宮自然公園の駐車場側の三本入の最後の水田5セを借りていて湛水不耕起栽培を続けている。南北を杉林に囲まれ日当たりが3割は抑えられる。昨年は10aあたりで5俵程度の収量であった。3年目あたりからヘイケ蛍も飛来するようになった。ただ道路で谷津が切断され山からの湧き水が遮断されまた下の河川(栗山川)との生物の行き来も無い状態でダイナミックな変化は期待できない。それでも秋から水田に水が入ると2,3月にはニホンアカガエル、シュレーゲルアオガエルが産卵する。その数が半端でない。周辺に水場がないということで500,600といった卵塊である。そのことも関係があると思うがそれまで雑草に覆われ深い田んぼというイメージで前作者が明け渡したのにもかかわらず、以後しだいに岩澤信夫さんが言うように冬期湛水不耕起栽培のモデル水田となっている。ここに来ての変化は昨秋からモミガラ堆肥を光合成細菌で発酵させ散布したせいかアカウキクサが広がってきたことである。これまで藤崎さんの苗を使ったこともたびたびであったがアカウキクサが入り込むことは無かったのに大きな変化である。また田植え機やバインダーなどの機械が入るのにも下が柔らかであったが前日まで水を入れておいても大丈夫という不耕起のメリットも発揮できるようになっている。雑草としては6月以降に発生するコナギと冬にも繁殖するキシュウスズメノヒエ(ヤベイズル)、オモダカはほとんどなくなった。
藤枝の松下明弘さんの所に岩澤信夫さんと見学に出かけ乳酸菌除草ということであったが、実際には乳酸菌を播くことで雑草が発芽し、それを表層耕起することで雑草の種を減らすというのが事実であった。表層には好気性菌の働きで、松下流ではフワトロ層といい軟らかい層が形成される。私も神崎の事務所前水田で体験し、20日に1回程度牛乳から培養した乳酸菌を散布を続けることで水田の土の状況は変化したように感じた。
いわゆる慣行水田では農薬、除草剤が散布されるために意識的に改善の手を加えないと安定した微生物の世界は再現できないのかもしれない。畑の場合も全く同じで有機物に含ませた微生物の添加が必要な状況である。その際乳酸菌は他の菌に先立ち菌の世界を整える大切な役割を果たしている。岩澤信夫さんは有機農法で堆肥をわざわざ作っていれるのは金がかかるので全面的には進められないという考えであった。また畜糞の安全性の問題も壁となっていた。そこではいかに安く資材を提供できるか、地元の使われていない廃棄物でかつ安全が保証されたものを活用することを考える。そこで登場するのが佐倉和田地区の斉藤和さんの所に顔をだす吉田弘幸さんでコーンスターチをベースに自在に廃棄された有機物の再利用をすすめている。農家のためになる安くて安全、そして健康な野菜作りを目指している。
もともと農家のプロではない私は大學の頃も農学系よりも生態学に関心が高く岩澤信夫さんの不耕起栽培にはすんなり理解できる状態であった。畑の管理についても同じ発想で取り組んできた。最近分かったことは水田では岩澤さんが耕さず、何も施さないで米が取れるという記述があるが収量の問題もある。1反歩(10a)5俵とるか8俵とるか10俵とるかである。わたしが取り組んでいる多古のT-S水田では5俵である。また神崎の水田では8俵はとれる。その5と8の差は水が関係している。もちろん土もあるかもしれない。多古の場合里山で日当たりが悪いこともあるが湧き水とポンプで地下水を使っている。水にN成分が含まれていないということである。一方神崎の場合利根川の末端で農業用水をじゃ口からひねればでてくる。神崎の界隈ではわずか米糠50k程度であとは用水を使えばほどほど取れるということである。これは藤枝の松下さんが120キロのボカシ肥を施して7俵が基準であるという、それぞれの条件で決まるものである。