農を語る

自然にやさしい不耕起栽培

桜宮自然公園を訪れる生き物たち(第6回)

2007-02-21 11:45:26 | 多古の里山

 野鳥のこと

 狭い谷津田ではあるが、秋以降古米を水田に散布するとどこからか情報を得てカモが数十羽飛来することもある。アオサギ、シラサギ、ルリビタキ、シメ、カワセミ、セキレイ、ハクセキレイ、サシバ、オオタカなどが時期、時期に観察できる。魚類ではメダカ、ドジョウ、クチボソ、タイリクバラタナゴ、ニゴイ、両性類のカエルでは日本アカガエル、シュレーゲルアオガエル、日本アマガエル、ヒキガエル爬虫類のトカゲなど

 カブトムシ、クワガタの繁殖

 水田の休耕で20年続けた結果、湿地となりヤナギの木が10年生で20~30本あったがそのうち10本程度残しておいたがそこにカブトムシやクワガタの発生に気がついた。1年で100匹前後は発生し、子どもたちの自然観察に大切な場所になっている。暫く観察していると落ち葉を積んだ場所にコメヌカを振って土を少しかぶしておいた場所にカブトムシの幼虫が沢山生息していた。ヤナギの木があるだけではだめで、産卵できる場所も必要である。カエルについても日本アカガエルは産卵時期が2~3月でその時期に湛水状態の水田がほしい。日本アマガエルの越冬は、たまたま里山の散策道を作っていたら5匹、6匹と山のかなり上で土に潜っていた。こんなふうに生き物の生息には谷津田とその周辺の里山が関係している。部分だけを見るのではなく周辺環境全体を見ていく必要がある。桜宮の自然公園の場合、南北に谷津田が道路で切断され、排水溝はU字溝で作られているため天井田は閉鎖環境として20年間も下の環境との接触が絶たれている。そのため絶滅した生き物もある。ホタルやカワニナの生息は今のところ見られない。不耕起湛水水田では巻き貝が沢山生息しているからホタルの発生の可能性はある。


山あいの神崎・神宿の水田にも105個の日アカの卵塊

2007-02-21 11:33:03 | 日本不耕起栽培普及会

 谷津田とはっきり定義するのには平坦な場所ではあるが元神崎青年の家の山を背にする場所で日本不耕起栽培普及会で休耕水田を借り受け、一昨年から栽培をはじめる。冬期堪水で約25a湿地状態になったことで今年は105個の日本アカガエルの卵塊を2月13日確認している。2月21日づけ千葉日報の記事でも一宮町の山あいの谷津田で県のレッドデータブックの最重要保護生物に指定されている日本アカガエルの産卵が200個以上観察されるの記事が報じられている。

 ところが隣町香取市の日本不耕起栽培普及会の藤崎さんの水田では、ひらば地帯であるが五年前頃から日本アカガエルの産卵が確認され増え続け一昨年は数百を越えていたが、昨年から減り始め今年は今のところ観察できないでいる。サギやカモ類、ヒキガエルの日常の活動や、畦周辺の雑草の管理が影響していると思われるが、発生の条件は冬期の堪水だけではなさそうである。谷津田の場合、周辺の里山があって、そことの行き来が可能である。平坦な場所で天敵になるサギ類、ヒキガエルとの関係も考えられるが、これからも観察を続けたい。


刈り取り時期の水の管理について(第5回)

2007-02-13 15:54:58 | 多古の里山

 刈り取り時期の水の管理について

 この3年間は手刈りを基本にしていたが、バインダー刈りを試している。コシヒカリの場合は9月刈り入れになるが、この時期台風が大量の雨をもたらしたりして、イネの倒伏と気温の関係で穂発芽を経験して、谷津田では水が常時あるので8月上旬出穂を始める頃水を切りはじめる必要がある。多古の谷津田では暗渠施設もないので水を止めても乾くのに2週間はかかる。土が乾いて亀裂が出始めるのには3週間かかる。バインダーが入れるのにはこの固さが必要である。不耕起の場合湛水を継続することで表面のトロトロ層の下はしだいに固くなる。その後雨が降っても土はすぐには軟らかくならない。コシヒカリの場合、多古の地域では9月上中旬が刈り入れになるので、8月上旬水を切るとしても、正味水が切れるのは1ヵ月程度であるから、1年の12分の1であるから刈り入れ後直ちに湛水に戻せば、生き物への影響は少ないと考える。雑草の発芽は土が乾けば発芽しはじめるが畑雑草はその後の湛水で、枯れてしまうし、コナギの場合、カモが来て食べるようである。

 岩澤信夫さんの理論では収穫期直前まで湛水を勧めている。これは米の味が良くなるということであるが、コシヒカリの場合、多古の谷津田では太陽光線が50%に抑えられ風の影響が少ないので、草丈が130センチにもなり、倒伏の可能性がある。倒伏すれば高温時の9月であるから、水に浸かれば穂発芽をまぬがれない。そんなわけで倒伏しない手当てとして8月上旬から水を切る必要がある。ただ多古のイネの根を観察すると不耕起栽培の香取の藤崎さんのイネの根と比較すると根の量や色の点で見劣りがする。3年間の栽培を通して何故かその疑問は完全には解けていない。

 これに対して古代米はミドリマイであるが、コシヒカリと同じ田植え時期であったが、出穂が9月上旬であるから9月下旬まで湛水し、その後水を切って10月中旬イネ刈りとなる。コシヒカリと異なり倒伏の心配はないが、バインダーの利用を考えると20日程度は水を切って土を固める必要がある。

 桜宮自然公園をつくる会は平成13年11月に立ち上げ、18年で5年目になるが元々退職者を中心に設立されたものだから、しだいに高齢化の影響も避けられない。自然公園としての形もできあがり、住民憩いの場、子どもたちの学習の場、環境保護の研究の場など特徴を生かした活動をすすめるために、都市からの若い人々、団塊の世代の定年退職者を呼び込んでの活動も少しづつ始めている。谷津田の復元作業はこうした意欲のある、自然再生に理解のある人々が、現地の地権者の古老の意見を聞きながらの作業で生き生きしたものになっている。