実践記録
稲不耕起栽培にかかわって5年目の春 鳥井報恩
全農研NO188の滋賀県長浜農高の清水順二先生の稲直播栽培」が目を引いた。5月17日播種、9月25日収穫で10a当たり8俵という作柄はまずまずであり、魅力的に映った。浅い代かきで生き物の生育を可能にし化学肥料も押さえN成分で4キロとかなり成果が期待できる。
ただ使用回数1回であるが除草剤の使用を認めざるを得ない。綿密に、慎重に検討され計画されたものであった。しかし私たちの生活の中で一回でも使用を許すことで喫煙と同じで一服程度はまあいいだろうということである。(むかし福島要一先生が生きている頃、同じ論争がミチューリン会のなかであり農家の生活を守っていくためには最小限の農薬、除草剤は必要であるとした。)
減農薬、エコ農産物も農協や国が許可しているから厄介である。私たち農業高校の教育の場面でもそのことを多めに許して来てしまった。農薬、除草剤の全面否定の環境設定こそが本当は必要であった。佐原の藤崎芳秀さんの場合病害虫発生は5%以内であるという前提がある。そのために払うべき手段として健康な苗を作ることに全勢力を施す。まさに苗半作であり苗八分幼少の頃の生活環境での小川やため池にはゴカイ、アカムシ、サワガニがどこでも生息していた。たまたま昨日テレビを見ていたら滋賀県の湧き水だらけで、住宅の周辺に湧き水を引き込んで野菜を洗ったり食器の洗いものをしてご飯つぶは鯉に食わせて水の浄化も合わせて考え洗剤も使わない村の取決めを行っている協同体の紹介があった。
一回でも使用を許す除草剤や農薬が国や県の免罪符となって使用することになるが、つきつめて考えるとやはり危険物質にかわりはない。除草剤や農薬が使用基準の1000倍、1万倍に薄めてあるから人間や小動物に安全であるとはだれも信じる人はいない。国の半分しか使っていないから安全だという「よりまし論」で私たちは許してきてしまったが、その場その場の人間の都合で判断してきたきらいがある。わたしは今不耕起栽培の仲間と多古町染井の「桜宮自然公園」の天井田、太陽光線が半分しか当たらない谷津田6セで昨年から米を作っている。たえず清水が湧いて深い田ということもあって機械が入らないために農家は休耕か減反の対象にしてきた。20年も栽培せず篠竹で覆われていた。5年ほど前え土の捨て場になる話で地権者が立ち上がりボランティアで公園として復元され、その一角に不耕起イネ栽培の導入を始めた。不耕起で米ヌカ2袋、棚倉のミネラル1袋だけで手植えで今年もはじめた。今のところ正確な生き物の調査は行っていないがユスリカ、イトミミズの動きが目に止まる。ただこの谷津田にはアメリカザリガニが上の溜池を中心に異常増殖しているので藻類の発生は部分的である。小動物ではメダカ、カエル(シュレーゲル、アマガエル、日本アカガエル)ウシガエル、アメンボー、最近話題になっているのはクチボソという淡水魚で希少魚類になっている魚が増えている。
幸い谷津田の特徴で湧き水が豊かなこともあって四季を通して水を保つこともできるので(不足すれば地下水をポンプで揚水できる設備もある)そのせいか水田内での雑草の心配は全くない。秋の稲刈り後できるだけ早い時期に水田に水を入れることで雑草の種子の動きを止める。不耕起栽培のマニュアルに沿って条件を設定してあげれば、時間とともに安定した環境が出来てくる。イトミミズは四季を問わず土に止まり、ユスリカやアブの幼虫は成虫になれば水田から飛び出しいく。イトミミズは糞をだし、トロトロ層を形成してイネの初期生育を助ける。以前の湛水化していない不耕起栽培ではこのトロトロ層が少ないために分けつが遅れがちであったが湛水化してイトミミズの活動が活発になることで促進された。秋のイネを刈り取った後で、イナワラを切りワラとして水田に戻し、米ぬかや、クズ米を水田に散布することでイトミミズの餌として活用される。
佐原の藤崎水田では全く悩みがなかったわけではない。一昨年イトミミズの活動にまかせていたら10a当たり1450万匹にもなり米粒の蛋白質含量が高まり食味値は逆に69とか72に低下した。食べて美味しいベロ度計でも、食味計値を高める作戦にでて、昨年は植植本数を坪あたり50株から60株に増やしイネに蛋白を多く吸わせる工夫をして81、82まで上げることができた。その結果収量も9、5俵に上がった。ただイネの姿としては「野性化したイネ」のイメージは後退した。未熟粒は減り、玄米出荷にあった米が収穫できた。
今年新たに私の住む近所の農家にお願いして不耕起の湛水のできる栽培を6セほどで始めたが6月田植えも終わり分けつをはじめる頃ジャンボタニシ(スクミリンゴガイ)の発生に気づいた。道路側の側壁に密生する赤い卵を1回かきとったり、味噌あえにして食べてみたが、普通のたにしのように美味しいものではなかった。鹿児島では温暖化で東南アジアから上陸した強力なミズスマシがこのスクミリンゴガイを捕食して数を減らしているそうだが、温暖化の実態におどろいた。
水田の水を一時的に落として水のある方向へ移動するのを確認して手で拾い集めることで密度を減らし、壁に産みつける卵は見つけ次第かきおとすことしかない。
藤崎さんの水田に発生するイネミズゾウムシは例年発生する場所が決まっているので、田植え後の水田の畦はんから5列の周辺部を観察し、1株当たり3匹以上いたら捕獲する。範囲が広い場合は、水口から食用のてんぷら油を少量流すことで被害を抑えられる。
いずれにしても、簡単な実験を繰り返して、イネの生育との関係、生き物との関わりを観察しながら、対応していくことが必要なのだと考えている。
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勤務先・所属等
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領 収 証
様 年 月 日
金 円也
年会費および研究誌代
全国農業教育研究会 ?
全農研のあゆみ
1971(昭和46)年 全国教研東京集会に参加
した農業教員24人の発議により、農業高校連
絡会として発足。会員数64人。
1974年 全国農業教育研究会と改め、日本民間
教育団体連絡会に加盟。
1977年千葉、1978年新潟の大会で、農業教育
と地域との結びつきが運動の柱の一つとなる。
1980(昭和55)年 「農業教育の国民的課題」
の追究を全農研運動の課題とする。
1984年 京都美山で地域団体との共催を実現。
1985年 世界環境教育会議の事務局に参画。
1988年長野大会から、農民運動全国連合会との
交流が始まる。
1990(平成2)年 大阪大会において「小・中
・高一貫の農業教育」を提起。
1994年 「農業についての正しい認識を育てる
こと」を目標として明示。
2003(平成15)年 「食と農と環境」のテーマ
を提示。 現在会員数約200人。
運営委員会委員長 内山雄平(新潟)
〔事 務 局〕
東京都立川市若葉町1-13-2
けやき台14-508 (?190-0001)相原昭夫方
?・fax:042-536-8763
たべもの、農業、環境、
そして、子どもたちの
豊かな未来を全国農業教育研究会
全国農業教育研究会への入会申し込みを考えている方は参考にしてください。
パンフレットから写真部分は入りませんでした。
里山の谷津田を育む不耕起イネ栽培2005,10,3
16年度から多古町染井の桜宮自然公園の天井田で不耕起のイネ栽に取り組んでおります。南北に林があって日当たりが悪く、湧き水が絶えず流れており機械が沈んでしまうので普通の農家の人は手をださない。休耕や減反の対象にしてきた。水田は荒れ、残土の恰好の捨て場になろうとしていた。
佐原の岩澤信夫さんの指導で藤崎芳秀さんの水田で不耕起栽培の技術を学び、生き物(クモ)の研究家の吉井光さんと多古町の桜宮自然公園を作る会の所英亮さんの口聞きで始まった。県の里山条例は平成13年スタートし、堂本知事の目玉として里山センターの活動が、この桜宮自然公園の設立と歩みをともにした。
県の緑推進課のアドバイスをうけながら、地権者の土地を借りて、住民の参加を得てこの4年間で延べ250人のボランテアで公園作りを行ってきた。昨年環境省・読売新聞社主催の「里地里山保全コンクール30選」に入選する評価を受けており、成田空港に近くて里山を簡単に案内できる場所としてドイツ、ノールウエイ、韓国からの来園も受けております。
また最近では10月22日にはJALのヤングリボランティア研修会の会場として80人規模の里山体験の企画、同じ10月22日から11月6日まで多古町コミュニテープラザで「よみがえる里山」をテーマにこの4年間の活動を写真展で紹介する活動も企画しております。
こうした活動には常々里山センターのアドバイスを受けて、地域のボランテアとして住民参加型の里山活動を展開してきました。
そんな折りトーホークリーンが多古工場、産業廃棄物処理施設、1日20時間操業年間300日、30メートルの高い煙突の計画が日刊建設新聞で紹介され産業廃棄物課で縦覧され、10月17日までに意見書の提出が求められている。
こうした縦覧はごく形式的で、これから処理場の建設を阻止することは難しいだろうと言われている。
しかし環境保全を力説して当選している堂本知事が、里山条例を作り里山センターを立ち上げ、そこで里山の自然が大切だと住民の声を、なんとか形のあるものとして実現しかけている多古の桜宮自然公園を見殺しにすることはできないでしょう。
計画書では「汚水を流さない」と書いてあるが、多古町の水源は豊かな地下水をくみ上げ山の上にある多古高等学校の近くまで引き上げてそこから各家庭に配っている。その水源地は、予定地から直線で300メートル前後の下にある。文面では「汚水は流さない」、と表示すれば流さないのかということで済ませる。しかし私たちは5年、10年のあるいは次世代の汚染までも想定して多古町に住む人々の将来も考えて決断すべきことである。
道路についても成田空港に直結する迂回路として車の通行は現在においてもかなり便利で通行量も多いし、スピードで走っている。産廃処理場ができることになればダンプカーで一杯になり便利がいいので周辺の山林は恰好の捨て場となる。地域住民の安全という点でもおびやかされることになる。
私たち不耕起栽培を提唱して生き物一杯の自然の復活を賭けて活動する一員としても、この2年間の水田づくりを通してみても、地権者から谷津田をお借りして休耕や減反で荒らしておくよりは里山の再生、希少植物、希少動物の復活には極めて有効である。メダカやクチボソの増殖、ヤマアカガエル、シュネーゲル、ウシガエル、アメリカザリガニ(必ずしも歓迎する種ではないが)などはいつでも観察できる。豊かな湧き水は絶えることがなく、不耕起湛水を可能にしているので、無農薬、無除草剤は簡単に実現する。こうした小中の総合学習の場としての利用、森林セラピーの市民の活用の場としても理想的な資源である。この公園のすぐ脇に産廃の施設を計画するなんて、まさか県知事はじめ、県の役職の方々も考えてはいないことを期待する。
これまで夏に開催していましたが、兵庫県で開催を予定することになって、
夏の休みは生徒の家畜などの体験学習が忙しく冬の1月に時期をずらして
ほしいとの要望が出され、今回は1月6日からとなりました。まだお屠蘇
気分が抜けない時期ではありますが、兵庫の意気込みをご理解ください。
皆さんの参加をお待ちしております。なお次年度の大会は8月山形を予定
しております。
第35回大会要項
基本テーマ 今日における農業教育とは何かを改めて明らかにしよう。
期日 2006年1月6日(金)午後2時から1月8日(日)正午
会場 いこいの宿 淡路島「津名ハイツ」
郵便656ー2131
兵庫県津名郡志筑162 電話0799ー62ー1561
参加経費 参加費4000円 宿泊費2泊5食24000円合計28000円
参加申込み 10月会報に同封する郵便振替用紙で参加費4000円を前払
会員でない方は以下の事務局へ申し込んでください。
全農研事務局 相原昭夫 方
郵便190ー0001東京都立川市若葉町1ー13ー2
けやき台14ー508電話042ー536ー8763
大会実行委員会事務局 藤原和正 方
郵便669ー3632 兵庫県丹波市氷上町井中776
電話0795ー82ー4737
分科会
第1分科会 農業教育 教科、生徒指導、農場、教育課程
第2分科会 総合学科 現状と悩み、普通教科での取り組み
第3分科会 農と食 小中や養護での取り組み
第4分科会 農と環境 小や養護での取り組み、環境科学基礎での取り組み
第5分科会 地域と学校 教育課程、学校作り、養護の取り組み、農民や消費者の
教育、地域連携
1月6日(金)13時 受付
14時 開会集会
15時 淡路の紹介
15時30分シンポジュウム 18時30分まで
今日における農業教育とは
20時 情報交換 21時30分まで
1月7日(土)9時から 分科会(1)
13時30分 分科会(2)
15時30分から 総括討論 17時30分まで
18時30分から 懇親会 20時30分まで
1月8日(日)8時30分 閉会集会
9時30分 現地見学 中岡農場、景観園芸学校
11時30分 解散
解散後時間に余裕のある方には淡路震災記念館をご案内します。