農を語る

自然にやさしい不耕起栽培

谷津田は人の手によって維持されてきた

2007-01-22 10:54:11 | 多古の里山

 桜宮自然公園をつくる会は平成16年環境省の里地・里山30選に選ばれ、県の「里山条例」に認定されたが、この認定は農地法に関係する谷津田の部分は対象とせず、里山の部分だけが対象となる法律で散策道の整備、山の下草刈りなどの施策、補助金の対象になるが、谷津田の道路、畦の補修といった部分には予算がつかない。今回農水省企画の田園都市再生コンクールで8部門の受賞のうちのひとつの対象になったが、折角県の里山条例がありながら縦割り行政で水田を対象としないといった歪んだ行政が行われている。

 環境保全型の対象となる谷津田を含む里地・里山の維持管理を発展させるためには、谷津田が経営的には採算の合わない場所であるが、不耕起・湛水の栽培をすることで、特に古代米の導入で安定した栽培が可能であり、希少生物の復元、サギ、カモ、コウノトリ、トキ、サシバ、カワセミ、オオタカなどの夢とロマンの持てる環境づくりにつながっていく。湧き水豊かな谷津田で、慣行栽培では畑地化を進めてきたが、湛水化にすることで美味しい米、無農薬の米が可能になる。もちろん次世代にこの田園的環境を残していきたい。

 遊休地の復元のポイント

 ヨシ・ガマの除去には重機ブルトーザーによる根の除去を考えるのが普通であるが、まず6~8月のヨシ・ガマの生育の旺盛な時期に刈り払い機で刈り取ることで生育を大幅にダウンさせることが出来る。これは竹林での竹を抑える場合と共通している。その後11月にもう一度地表面すれすれで雑草を刈り払い、直後に湛水することで、より不耕起栽培を可能にする。その後5月の田植えまでにヨシ・ガマの根を掘り起こし地表面をトンビで平らにして田植えとなる。


谷津田の管理には畦作りが大切

2007-01-22 10:35:52 | 多古の里山

Midorimaisuidenn  06年12月14日昨年復元し、手前がミドリマイの水田、後方がコシヒカリだった水田(緑の2番穂)この通り雑草は生えていない。堪水化で田面には入り込めない。湧き水と適度の雨で水の心配もない。

Tennjyoudaaze_1 右の奥は溜め池として利用を考えている。里山保全活動として周辺の環境を整備したいが、ある程度の資金と手間が必要とする。


多古桜自然公園の活動(その2)

2007-01-18 21:06:24 | 多古の里山

平成16年からは天井田の丸ごとビオトープに手をつける。これまでは湿地・湛水化のみを進めてきたが、水田に手をつけ、不耕起栽培・湛水化を導入した。千葉県香取市で指導する岩澤信夫氏の指導する日本不耕起栽培普及会に所属するメンバーの協力で吉井光と私、鳥井報恩が協力することになり、今年で3年目になる。約10aからはじめすこしづつ休耕地の復元をはじめる。昨年平成17年にはその復元田に古代米ミドリマイを作付けしたがそのミドリマイは順調に育ち日照時間で50%程度の谷津田の不利な条件でもイネは倒れることもなく分けつも確保できコシヒカリとは全く異なっていた。2000年という歴史のなかで培われた遺伝子は遺憾なくその特徴が生かされていると感じた。戦後の50年コシヒカリ系が大勢を占めているとしても、それ以前の歴史の方がはるかに重みを感じる。多古の谷津田に適応して、天候不順のなかで不安なく生育するミドリマイの生育には驚いた。

 復元にあたっては普及会の会員たちの何人かの若者や早期退職者など意欲のある人たちの協力を得てすすめている。

 地元の古老というか経験豊かな知恵袋と奇抜なアイデアマンの岩澤信夫さんの知恵を生かして不耕起栽培は順調にいっている。谷津田の特徴を生かして湧き水が豊かでその水をイネ刈り後直ちに貯めることで畑雑草は抑えられる。藻類の発生については2年間の経験で、これまで発生が認められなかったのでその理由について考えていた。信州大繊維学部の中本信忠教授の緩速濾過装置の「藻類(メロシラ)の発生はゆっくりとした流速が必要」からヒントを得て水田の上にある溜め池からの水を波板で抑え畦をつくり迂回するように下から水田内に水が入るようにしたら、2~3週間後には藻類が発生しはじめた。

 藻類が多く発生すれば植物性・動物性のプランクトンが活動しイトミミズやユスリカも日常化してトロトロ層の形成が促進され、不耕起栽培であっても、イネの生育は初期分けつを可能にする。

 肥料としては米ぬか10aあたり50キロ程度で足りる。これも肥料というよりも藻類の発生を促し、イトミミズ、ユスリカの養殖という感覚で施している。

 病害虫についてはもちろん無農薬であるが、稚苗の機械植えでなく成苗で4.5~5.5葉植えをすることで、健康な生育がはかられ病害虫にも5%レベルで小動物の餌として与える。それぐらいの太っ腹でいけば、多少やられても気にしなくなる。

 里山に囲まれた水田は害虫の発生も多くイネの葉も食われるが、その分天敵になるクモ類やカエル、カマキリなどの活動も活発であり、全体としてはバランスのとれた関係が生まれる。


桜宮自然公園内天井田の様子

2007-01-18 20:58:37 | 多古の里山

Takosuidenn3Takosuidennt5  左は不耕起・堪水田3年目、右は1年目の水田

12月21日撮影だが今年の冬は暖かで2番穂がまだ枯れないで緑が残っている。古米や米ぬかを振り夜にはカモが来ており、特に左の水田は遊び場にしている。雑草はいずれの水田にも水田内はほとんどはえない。畦にはミゾソバが生える。谷津田には湧き水が豊かで今年の冬は水の心配は全くない。


多古桜宮自然公園の活動(その1)

2007-01-17 17:25:50 | 多古の里山

Sakuramiya

 桜宮自然公園での活動について07、1、12

 桜宮自然公園をつくる会は平成13年11月で5年前になる。定年退職者が中心に取り組まれた。月1回の作業日を決め、公園維持管理を行ってきた。会長の所英亮さんとしては公園の直ぐ脇に計画されている産廃中間処理場ができないための運動は、極めて一過性で時間が経てば住民たちは忘れてしまう。誘致企業はそのあたりをよく知っていて3年目に密かに県に申請を出しなおす。県の産廃課もそのあたりを心得ていて3ヵ月後には許可を出すというのが一般的である。

 月1回でも定期的に公園づくり、散策道づくりをしていれば、いざ鎌倉と必要な時に力が出せると5年間もこの運動を続けてきた。公園としては恵まれた景観を持っており2年目にはサシバが観察でき、ハクセキレイ、カワセミが日常的に観察でき、平成16年には環境省・読売新聞主催の「里地・里山30選」に選ばれ、成田の国際空港にも20分という地の利を生かして、外国からの環境派の視察を受けている。ドイツの人は日本人は「公園の中で生活しているのかと」といった話しも聞かれた。

 自然保護や雁を呼ぶ会の人々、研究者も関心を寄せて見学に訪れた。自然の実態調査や小動物の写真や発見される貴重な植物の写真なども撮影され、それらのデータがデージタルですべて保存されている。千葉中央博物館、我孫子鳥博物館、淡水面魚類研究所、栗山川漁業協同組合などの研究者が協力してくれた。