農を語る

自然にやさしい不耕起栽培

鮭の遡上と竜宮の使者

2005-12-31 20:29:04 | 多古の里山

                              平成17年12月13

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今年の栗山川の横芝堰は魚道付きの新しい堰になり上流域のどこに鮭が多く遡上するか注目されていました。その場所は多古町南玉造にある栗山川の支流の堰に50匹前後の鮭が集まっており、それ以上進めないでいる。鮭の行く先は誰でも鮭の神を祀ってある山田町の山倉神社の方向を目ざしているように見えるという。同神社に伝わっている「竜宮の使者(鮭)」の通り道ではないかと話す人もある。

従ってこの堰で産卵させる場所ではない。山倉に行かすことが最善だとし昔話がタイムスリップしているのです。

夢とロマンが実現するのには「魚道」を作ること以外にはないとその地区の区長は語る。鮭の行先は果たしてどこになるか、この地域の関心事になっている。里山と鮭とトキ、コウノトリを夢とロマンとして持続してきた桜宮自然公園をつくる会は日頃の地域の環境を守る活動に大きな贈りものをもらったのです。それは鮭が遡上する見学ポイントを確保するとともに、日本の農村の原風景である里山を見学コースとして活用できることになりました。また成田の国際空港に近い立地を生かして日本の代表的里山と食文化を外国人に紹介できるチャンスでもあると期待している。

              桜宮自然公園をつくる会

                会長代行 所 英亮


普遍的な岩澤理論の正しさを確認

2005-12-31 17:36:38 | 全国農業教育研究会

                                   日本不耕起栽培普及会会員鳥井 報恩

 熊本県の田中之浩さんから私のところに今年の米が届けられたので礼状を書きながら今年の淡路の大会に不参加ではあるが、近況をお知らせし、レポートに替えます。

 日本不耕起栽培普及会会長岩澤信夫さんは在野の農業技術者である。74歳であるが、胃袋を切ったり、腎臓は半分しかないとかで外国には免疫力がないということで出かけられないし国内も1泊程度に制限している。普及会は現在は出入り自由な会であるが、かつてPOF(ぽふ)研究会と言っていた頃は1000名の会員がいて、この技術は利益につながるので夢中になる人は、その技術を囲い込んで他人にはできるだけ内緒にしている向きもあったという。確かに何でも新しい情報は取り込んで自分のものにしてしまうので、本当かなと首を傾げる向きもあるが、岩澤さんの行動力は全国のネットワークを通して毎月の新しい情報を会員にこまめに提供し、各地で実験をするようにと指示を与える。現在は200名前後の会員であるが、様々な地域での試みが同時に展開されるので、さらに実験の精度は高まっていく。田中之浩さんも3年前の全農研の千葉大会で岩澤さんの話を聞いてからの会員であるが、すでに2年米を作った。昨年このヒノヒカリを岩澤さんに食べてもらったところ、九州の米は美味しい米はないと言っていたが、田中さんの米は食べて美味しかったと下手褒めであった。

 田中さんの行動力には感動したが、同じ地域の農家の人々が自分もやってみたいとか、くまもと環境ネットワークの西田陽子さんがはじめるとか、幅広い活動をされていることに敬服する。

 燃料革命で油を使うようになって確立した技術、1961年農業基本法が若い研究者にバイブルのように規模の拡大、選択的拡大、機械化が近代化の3本柱として強調された。 こうした近代化の目標とは別に、古来からの土を耕す技術に反抗して、自然の生態系にそった米作りという観点でこの技術は組み立てられていった。

 自然の中の生き物を殺さないで、自然循環を正しく受け止めた形での米作りへの応用、官学では何故こうした生き物の存在を考慮した自然循環を生かせなかったのか、一昨年の夏の滋賀大会のレポートで農薬の空中散布の問題、そして昨年の夏の伊豆での総会の折り「不耕起栽培5年目の春」で指摘している減農薬で安全よりも農家の草取り労働の軽減が重視されてきた。その結果病害虫に対する考えは殺すこと、密度を減らすことでストップしてしまい、安全性は置き去りにされてきた。

 千葉・野栄町の熱田忠男さんは水俣の体験を通して30年前から無農薬に徹し技術を蓄積してきた。無農薬の技術は減農薬でなく、無農薬でこそその技術の本質は明らかになるし、細かい技術の積み重ねで変革が可能になる。

 佐原の藤崎さんも病害虫による5%のリスクと言って健康なイネの苗を育てることで病害虫や異常気象に会っても、全く動じないすずしい顔で過ごせる。特に冷害の年の方が却って多収穫であったりする。多少虫に食われても、病気にかかってもいいじゃない、人間だっていつもいつも完璧ということではない。生き物がバランスよく生きられる環境の育成こそが大事な要素である。

 熊本の田中さんの4セの水田で収量3俵強ということは、私の多古の水田を考えると驚異的である。生き物の復活もめざましい。ヤマアカガエルの繁殖、2月頃から水田に水が入ることで、どこからともなくカエルが産卵にやってくる。このことは佐原でも冬期湛水田で2年目には日本アカガルが産卵をはじめ、4年目の今年は藤崎水田の3ヘクタールの湛水田で1500個以上の卵塊を確認できた。また多古の谷津田でも8aで200個前後の卵塊で秋にはカエルだらけの状態を確認している。常駐するサギやカモの数が少ないので天敵がおらずカエルの生存率が高い。今後アメリカザリガニ、ウシガエルなどとの競合が興味あるところである。千葉の水田は元々湿田で、コサギやアオサギは今でもいるがトキの再来を考えるとイネ収穫後の水田にも水を戻し、除草剤を使わない環境保全型の稲作を期待したいところである。             2005年12月31日

 多古桜宮自然公園天井田、冬期湛水水田の生き物

 05年11月15日調査 10a当たりに換算した数

種 類

匹 数

種 類

匹 数

イトミミズ

280万

ケンミジンコ

36万

ユスリカ

48万

巻き貝

 6万

トビムシ

144万

アメリカザリガニ

 2万

ミジンコ

20万