農を語る

自然にやさしい不耕起栽培

森重之さんの乳苗農家見学記其の2

2010-01-04 20:10:06 | 日本不耕起栽培普及会

課題-

1.  森重之さんは秋からの耕運を3回、ドライブハローで1回と代かきを入れて4回耕しているが、これを不耕起で湛水化も加えて出来ないか。

2.  6月末の中干し移行の作業を考えて、稚苗を使った稲作りと乳苗を使った稲作りは、ほとんど差がない、田植えのための苗作りだけが異なる。それでいて乳苗は味が良いとか、収量も0.5/10a増収する。このことをあらためて検証する。

3.  不耕起栽培は湛水化して生き物豊かが売りになっているが中干しをしないで、その後、湛水化を維持できるか、すなわち6月末の中干しを8月初旬まで遅らせる。

4.  8月上旬から水田の水切りを実施する。き裂ができるほどの間断潅水を導入してみる。

5.  施肥の仕方

側条、元肥方式、無肥料(米ヌカ程度)、秋からの冬期湛水の継続でイトミミズの活動が田植えまで続けば無肥料が可能になる、そこから乳苗を導入しSRIの考えは8月初旬から応用する。

これらの比較、無肥料など比較してみる。

(参考資料)

60/坪 30cm×18cm / 50/坪 30cm×22cm

45/坪 30cm×24cm 45株×2本植え=90/坪 (300坪)27,000/10a

            45株×3本植え=135/坪 (300坪)40,500/10a

70g/ 2,0002,500本 150g/ 5,000

140g/ 4,000本→728,000本~1040,000

森さんは1213箱準備している。

37/坪 30cm×30cm 37株×2本植え=74/坪 (300坪)22,200/10a

            37株×3本植え=111/坪 (300坪)33,300/10a

140g/ 4,000本→624,000本~832,000

課題-2009.12.25.スリランカにて)

不耕起栽培・湛水化の技術は生き物との共生、そして無農薬で安全な農法として最高の農法として認定されつつある。その時期にあって同じ岩澤信夫が農薬、特に除草剤を使うとか、化学肥料を使う農法に戻ってしまえば社会的評価が地に落ちてしまう。

ただ、東大柏キャンパスで山路教授のSRIと言っている-今になって思えば森重之さんの乳苗を見学し、検証した技術を応用して実験しているに過ぎないとわかったが-その苗の生育状態を見て岩澤はSRI農法の苗は、不耕起栽培の苗の育ち方と同じであり、これが1トン採りにつながっていけば面白いということである。

千葉ではこれまでコシヒカリでは、せいぜい9俵、10俵の世界であり、その時のコシヒカリは草丈が120cmにもなり倒れてしまう。倒れれば機械での作業性が落ちる。コシヒカリの枠で考えると1株当たり1520本、せいぜい110cm止まりのコシヒカリの姿が千葉県では目標の姿となる。長野・高山村ではコシヒカリで今年も720kg-12俵の実績がある。これは登熟期間が長くなり、収穫期が千葉より1ヶ月前後長くなるためである。千葉で長野のように収穫時期を遅らせれば早く分げつした穂の米は胴割れで品質が落ちる。

たまたま市原の森重之さんの所では、ハイブリッド米でミツヒカリ2005200310年前導入し、10月中・下旬の刈り入れで、多収穫750kg-12.5/10aを可能にしている話である。このミツヒカリ2005はコシヒカリと同等の味で多収穫品種でありながら味も良い。これなら千葉でもSRIの技術を確かめるのに実験品種として使ってみたい。いずれにしても不耕起・無農薬・無除草剤の技術との正合性をきずつけない夢のある物語をこわさないSRI農法の導入であって欲しい。

課題-

スリランカの水田で直播のイネをみたが、乳苗と直播の育ち方にどのような差があるかを比較検討してみたい。

コロンボ周辺の農家に飛び込みで見てきたが、丁度4葉前後のイネに尿素を散布しているのを見た。雑草もなく密植のイネ、おそらくインディカ種だと思うが、生き物の姿はなかった。側溝に流れる水はきれいだった。コロンボは人工的な湖があちこち作られ、水の都という感じで水の心配はないようであった。


森重之さんの訪問記其の1

2010-01-03 10:06:13 | 日本不耕起栽培普及会

乳苗の森重之さん見学記

乳苗農家・森重之さん(72才)千葉県市原市久保 TEL0436-98-0699

20091219 根岸清、今井孝、斉藤正貴、横川良雄、上原奈都美、鳥井報恩

平成4年から地元4、5軒の農家で始める。はじめた人は82才の人もいるが、いずれもやめないで続けている。播種して8日目の田植えだから見学者は、ものめずらしく車は渋滞するほどで多くいるが、地域でやりだす人はいない。田植後の水の管理も、それほど神経質にならなくても良い、陽気が良くなればイネはすぐ伸びてくる。深水になった所は茎が太くなり分げつが抑えられる、収量は8.5俵平均とれ、稚苗より多少収量が多い。森さんは田植えを請負も入れて5町歩、刈り取りは4町歩やっている。

味の点でも千葉県では長柄米(ながさまい)、多古米と続くが多古米の上を行く粘土質で良食味である。米屋も農協よりこちらを買ってくれる。減農薬、エコ扱いで売っている。

息子さんは農協へ勤めているが72才に自分はなるが、まだ農協はやめないでくれと言っている。春秋の作業の時は手伝ってくれる。やる気になれば機械だから簡単にできるからということです。

 米の他に丹波黒大豆とギンナンを台地で栽培している。しかし、ギンナンも有名な愛知の産地でも景気が悪くなって世の中が冷えて食べなくても良いと言う事で、市場から相手にされなくなっている。平成5年に1kg5,0006,000円だったものが、今は1kg400円で、これでも声がかからなくなっていると言う話である。

浸種10℃以下20日間

催芽(ハト胸)→2昼夜30℃、最初32℃でやっていたが高温すぎてクモの巣病で真っ白にカビが広がった(酢、焼酎で散布したがうまくいかなかった)。30℃に下げたらおさまった。

1cm伸びる→棚に移して2日間27

いずれも育苗器を使い暗期状態でやる。

その後、薄いブルーシート(200300円)、緑化台に移し34日で田植え、胚乳がまだ半分は残っている時期に移植するのがコツ。

育苗器の穴のあいたもので最初、新聞紙を使ったが下の穴までつき抜け3枚下まで根が伸びたり、最上段は根上りを押さえるため空箱で押さえてももち上げ、多少まがったり、はじの部分はゆがんだりするが、あまり気にしなくて良い。

・1箱当たりの播種量は催芽モミで180g、乾いたので150g

・1株植付けは、23本で良い、10a当たりで1213

・1坪当たり45株植え

播種後8日目(67日、10日以内)が移植の適期であるが、2週間以上置く農家もあるが、90%胚芽の力が衰える。茎が伸びて分げつ力が落ちてくる。田植機は丸づめから今は平づめ、3年前クボタの5条植えで1ヶ所23本植えにしている。(田植えは4月25日)

除草剤を使うのが一般的であるが森さんは代かきで上手に防いでいる。(ヒエだけは発生したら除草剤を使うがいつもではない)乳苗の長さはタバコの長さで89cm、隣の人は金をかけないことに徹していて、今でも歩行用でまにあわせている。

森さんは除草剤を使わない主義で、堆肥と少量の化学肥料でやっている。今年は雨が多かったので施していない例年デカチパの食品残渣と木くずとを混合し堆肥化したものを施していたが、おととしまで、2トン/10a施していた。食味検査でN過剰と出て施用を中止している。切りワラは毎年水田に返している。化学肥料は側条施肥でやり、早期の分げつを確保している。田植えをたのまれている農家から施肥も頼まれたので今年は森さんの所も農協から出している楽子(らくこ)という化成肥料を半分使ったらNが多くて食味が落ちた。エコをやって自分で米を売っているので入れすぎが心配である。肥料は側条以外の実肥、穂肥は入れないことにしている。液肥もでているが森さんは粒状で簡単にすませている。

6月末、田植後1ヶ月したら、茎数がほぼ20本に近く中干しをして、それ以上の茎数が増えないようにする。収量予想で8.5俵である。9俵とれると倒伏があぶない。草丈が1m止まりで、それ以上伸びすぎ110120cmではあぶない。倒れる心配がでてくる。株元を明るくして太陽光が届くようにしておかないと病気も心配である。特にコシヒカリでは89月が登熟期になり、登熟を延ばすと早く分げつし結実した実は胴割れする可能性がでてくるので、早期分げつで1520/株を心がける必要がある。それは丁度、8.5/10aの収量となる。収穫期は慣行より田植えが1週間遅れた分だけ刈り取りが1週間遅れる。

作業のサイクル上、稚苗と乳苗を同時にやれば稚苗-乳苗の順でやりやすくなる。

ハイブリッド米の導入、10年ほど前から冷害対策をきっかけにしてはじめられた。ミツヒカリ2005(コシヒカリの血が入って味がよい)、ミツヒカリ2003、味はさほどではないが長粒で精米歩どまりが良く、量販店向けに栽培がはじまった。森さんはエコとして自分で販売している。収穫期が10月下旬~11月で登熟期が涼しくなってからなので、多収穫がのぞめる。平均750kg/10aとれる。ただハイブリッドの種子は毎年買わなければならない。自分で採種してみたら8月上旬実るのもあるし、遅れて分げつするのもあり、バラツキが多すぎてだめだった。

ミツヒカリ2005年は、コシヒカリ、ミルキークイーンと味覚の比較ではコシヒカリと差がなかった。

最近、茂原の東庄加工でハイブリッド系の草丈が短い種で売り出されているが、食味がまずかった。茨城で入手できるが1kg単位で6,000円、6kg以上だと4,000/kgであった。多収を目的の場合にはコシヒカリではなくハイブリッドの晩生種をえらぶ必要がある。

[乳苗を導入して、やめない理由]

     早く植えて失敗した場合に、8日で苗作りが可能なので安心である。

     連休中に勤め人と同じに休日がとれて出かけられる。

     収量が乳苗の根は白く旺盛で稚苗より0.5/10aであるが多収となる。

     1ヶ月過ぎれば稚苗よりも苗が逆転し活力を感じる。

     苗箱数が稚苗で23枚必要なのに1213/10aと少なくてすみ、労働力や経費が安くすむ。

     育苗箱の改良

ロックウールを広く利用しているが水田に残るので、改良を考えている。滋賀県のヨシの雑草を固めたものを5年前から山梨の電気のガイシを作る会社で作らせていたが、クンタン+アサで固めたものを試作してもらい、特許申請中で結果が期待できそう。安全性にも合格している。


新年おめでとう

2010-01-02 11:37:57 | 日本不耕起栽培普及会

賀正 二〇一〇 元旦

 多古桜宮公園での米づくりも八年目に入りカワセミの動きも捉えることが出来るようになりました。今年は不耕起・湛水に加えてSRI乳苗の技術も加わり苗作りが簡略化できそうです。家庭菜園作りが若い人の中でもブームになって学生が塾に仲間入りしています。最近の変化です。皆さんも元気に新しい年を迎えてください。

09318kawasemi