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図書館員によるSTEM教育の事例集、将来の発展に期待

2024-02-04 11:42:41 | 読書ノート
Victor R. Lee, Abigail L. Phillips, eds. Reconceptualizing Libraries : Perspectives from the Information and Learning Sciences. Routledge, 2018.

  図書館員による10代を対象としたSTEM教育の実践事例集。STEMと言えないケースも少々ある。ただし当初からそう意図されて作られたというわけではなくて、序文を読むと情報科学と学習科学それぞれの成果を共有・活用することを目指していたことがわかる。だが、編者らが図書館関係者に執筆を呼び掛けた(?)結果そうなったのだろう、集まった論文からは「科学」の印象はない。ただし、これは新しい試みであり、2017年に創刊されたというInformation and Learning Scienceなる学術誌を通してその発展が期待されている。

  どのような事例が挙げられているのか。メイカースペース、照明を備えた壁画のデザイン、プログラミング教育、代替現実ゲーム(ARG)、VRを取り入れた学習、図書館員のメンターシップ、地方の小図書館での青少年利用の促進、ケーススタディを挙げての学校司書の役割論などである。14の論文のうち、12章だけが因果関係を科学的に検討している。といってもレビューであり、ハッティ著『教育の効果』の効果などを参照しながら、図書館員が10代の子どもたちを相手にどうSTEM教育に取り組んでいけばよいかについて検討している。

  個々の事例自体は興味深く、それなりに参考になる。インターネット検索を用いる事例では、米国だと子どもの親や教育団体を意識せざるをえないことがわかる。また、子どもの側も大人が入ってくることに警戒感があるそうで。そういうわけなのか、SNSを用いる事例はない。なお執筆者は米国人(米国在住者?)しかいないのに、出版社は英国である。
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