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恋愛と結婚の自由の結果として、強いられた孤独が拡大している

2020-12-21 19:59:29 | 読書ノート
小林盾, 川端健嗣編『変貌する恋愛と結婚:データで読む』(平成成蹊大学アジア太平洋研究センター叢書), 新曜社, 2019.

  家族社会学。現代の日本では恋愛、結婚、出産は一続きのステップとなっており、それぞれの動向を把握するという内容。2015年の1万2000人から回答を得たアンケート調査データと、18年の1100人の面接調査データを元にしている。図表は多いが、細かい統計処理の説明は端折っており、いちおう一般向けの書籍である。執筆者の総勢は17人で、各章の充実度は玉石混交である。

  で、おもしろかった知見は二つ。「恋愛は必ずしも結婚に結実しなくてもいいが結婚には必ず恋愛感情を伴うべき、と近年の若年層は考えている」(3章)。「未婚者は他人をあまり信頼しない。理由として、パートナーとの協力経験がないことと、機会の不平等を認識するようになることが考えられる」(8章)。このほかは、予想の範囲内ではあるがきちんと数値で裏付けられたという知見か、または他の論文のデータでも見たことのある結果である。「若年男性は草食化している」「高学歴女性は相手の学歴を気にする」「非正規雇用の男性は結婚しにくい」「未婚男性の幸福感はかなり低い」「経済力があれば子どもを持つ」などなど。「再婚者の社会経済的地位は必ずしも高くない」(9章)という予想に反する結果も出ているが、検証方法に不満が残る(離婚経験者の間で男女別に比較するべきという気がする)。全体のトーンとしては「家族の自由な形が称揚されるものの、選択できないまま独身を強いられている人が増えている」という傾向が強調されている。

  ちょっと残念だったのは、調査についての説明によれば「回答者のルックスとコミュニケーション力も評価した」(p.33)とのことなのに、関連する分析の章がないことである。別の機会に公表してくれるのだろうか。なお、あくまでも平均的な傾向を調べた内容なので、婚活中の男女に役に立つというものではない。通して読んでみても、結婚したいなら男は安定した雇用をゲットせよ、ぐらいの月並みなアドバイスしか思い浮かばないな。
コメント
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