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著作権最新事情の入門の入門

2020-04-13 17:50:00 | 読書ノート
福井建策『著作権とは何か:文化と創造のゆくえ / 改訂版』(集英社新書), 集英社, 2020.

  著作権入門。2005年に初版が発行されているが、保護期間が延長されたことをきかっけに改訂したとのこと。 貸与権やらの支分権や著作隣接権などの詳細には立ち入らず、著作権というコンセプトについて大づかみしようという構成になっている。

  論点の一つに「著作権は表現を保護しアイデアは保護しないというが、では表現とアイデアの境界はどこにあるか」というものがある。現代アートなどでは、その境界は微妙とのこと。一般論として「作風」は保護されないが「キャラクター」は保護されるという。

  もう一つの論点は引用やパロディあるいは類似表現について。どこまでが正当でどこから剽窃となるのか、裁判例を元に論じられている。引用については、日本の最高裁が示した①明瞭区別性、②主従関係という条件を満たすことが必要だとのこと。パロディや類似表現については、日米で判断に違いがみられるという。

  このほか、期間延長によってややこしくなっている保護期間と、反著作権運動についても言及がある。個々の権利や例外規定についてはまた別の著作を読む必要があるが、著作権の入り口に立つ本としてはかなりわかりやすく、また深みのある内容である。
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