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ライル・メイズ無きPMG、今そのような音でいいのだろうか

2020-04-01 10:42:12 | 音盤ノート
Pat Metheny "From This Place" Nonesuch, 2020.

  ジャズ。2月半ばに発表されたメセニーの新作で、オーケストラとの共演というのがポイント。オケ共演は”A Map Of The World” (Warner Bros, 1999.)以来かな。オケはJoel McNeely指揮のThe Hollywood Studio Symphony、その上に2016年からのメセニー四重奏団、後期PMGからの盟友ドラマーAntonio Sanchez、マレーシア出身の女性ベーシストLinda May Han Oh、英国人ピアニストのGwilym Simcockがのる。曲によってはMeshell Ndegeocelloがボーカルを聞かせる。

  爽やかさがウリのメセニーらしくない黒く竜巻をあしらったジャケットを持ち、かつHPでの本人解説でトランプ大統領を批判していたりして、何か新機軸があるのかと思いきや、聴いてみるといつものメセニー節だった。というか、かつてのPMGそのままである。Unity Bandはどうなったのか。新カルテットで新境地というような勢いはなく、ここ数年のOrchestrionとかUnity Bandの取り組みを脇におき、長年ソロやトリオやPMGでやってきたことを集大成したという内容である。水準以上ではある。ただまあ、もう少し聴き手の耳に引っかかる仕掛けみたいなものがほしいような気もする。カルテットのうち、御大とAntonio Sanchezの二人はいつもながらすごいと思わせる演奏である。だが、若手二人はあまり印象にのこらない。オケのボリュームも小さめで、一曲目だけ活躍しているものの、他の曲は活かせていない。せっかくなんだしもっと絡んできてほしいと思わせる。

  かつてUnity Band作品を褒めておきながら、頻繁に聴くのは1980年代のPMG作品という聴き手としては、複雑な心境に陥る。「新しいことに挑戦しなくなったメセニー」という戸惑いと、「またあのPMGっぽい音を聴ける」という喜びとが同時にやってくる。結局、この気持ちよさに負けてしまう。でもまあ、過去の名作を超えるほどでもない。
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