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婚活0.0から1.0までの歴史、婚活2.0の話はナシ

2019-07-12 08:51:24 | 読書ノート
佐藤信『日本婚活思想史序説:戦後日本の「幸せになりたい」』東洋経済新報, 2019.

  タイトル通りの内容。婚活をめぐる思想の変化について、お見合い結婚がマイナーになった1970年代から近年までの間、書籍や雑誌記事中心かつテレビドラマ少々という材料のあんばいで整理するというもの。著者は東大の若手政治学者で、初出はペンネームで書かれた『週刊東洋経済』2014年の連載だという。

  1970年代後半に『クロワッサン』の影響でキャリア女性の一部に独身主義が浸透する。一方で、林真理子による結婚の肯定があり、その流れで『結婚潮流』というマイナー雑誌で女性が複数のパートナー候補の中から配偶者を選ぶことを勧められ、お見合い婚が再評価される。「恋愛の延長で結婚する」のではなく「結婚を前提にした恋愛をする」というのがミソのようだ。ただし、恋愛至上主義的だったバブル期にはメジャーとはならなかった。以上が「婚活0.0」である。

  時は過ぎて日本経済が凋落した2000年代、結婚相手を見つけるのが困難な時代になっていた。結婚とは男の金と女の顔の交換(小倉千加子)という認識のものと、必要なスペックと条件リストに適合するパートナーをSNS等を通じて探すという「マーケティング婚活」が主流となる。マーケティング婚活は、「白馬の王子さまがいつかやってきてくれる」という幻想をとことん廃して、女性が自分で能動的にパートナーを探し、男性側に対して掲げた条件以上の期待をしない、というものだという。以上が「婚活1.0」である。

  ここまでは良かったのだが、まとめとなるはずの章で、国家と家庭の関係と、LGBTを含めた多様な家族の形に話が飛んでしまう。トピックとしては興味があるものの、前の章までの展開と全然外れているし、深掘りされているわけでもない。「婚活1.0」まで話してくれたのだから、来るべき「婚活2.0」についての著者の見解を論じてよ、と言いたくなる。「序説」だからしようがないのか。というわけで途中までは面白かったが、最後に不満が残った。
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