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父の過剰な愛情表現はウザいものであると

2017-09-25 15:44:56 | 読書ノート
中山順司『お父さんがキモい理由を説明するね:父と娘がガチでトークしました』泰文堂, 2014.

  前回記したように「父親目線の父娘関係小説」を探している。同僚の文学研究者に尋ねたところ、島崎藤村『伸び支度』、チャンネ・リー『最後の場所で(A Gesture Life)』を挙げてもらったが、やはり数があまり無いみたいだ。受験ものだが、桜井信一『下剋上受験』も父娘小説にはいるだろう。小説ではなくノンフィクションならばチラホラは存在しており、その中でもこれは最近の話題作である。

  内容は、留学経験があって英語ペラペラの著者が、人生のあれこれについて中学生の娘と語り合うというものである。扱われているトピックは、恋愛、父がキモい理由、将来の夢、性格、勉強、留学経験、友情、いじめ、人生の意味、正しい彼氏の見つけ方などである。記述に従えば、著者は実の娘を猫かわいがりしているようで、僕から見ても確かにキモい。そうでなくとも、年頃の娘は父親に私事をあまり相談したりしないものだ。それでも、対等の立場に身を置いて娘の見解を引き出そうと努力している著者の努力はなかなか見上げたものだと思う。生硬な印象もあるが、娘もけっこう真面目に考えていたりして、参考になる(特にいじめへの対処など)。

  ただし、終盤では、妻が会話に参加したり、祖父と娘による対話となる章もある。祖父のでてくる章は、おじいちゃん側が知識を一方的に与える立場になってしまっており、対等な会話となっていない。こういうのは面白くない。妻が出てくる章も、妻自身の過去が面白すぎて娘がおいてけぼりである。このように終盤は、中山家の家族史みたいな方向に話が逸れていってしまっており、当初の狙いを外してしまっている。

  とはいえ全体の2/3は父親と娘の忌憚の無い会話が楽しめる。なお、妻が娘に説く「選んではいけない男」の四タイプとは、1)すぐに身体を求めてくる男、2)彼女を自分好みに仕立てようとする男、3)趣味や価値観を強制してくる男、4)金銭感覚がずれ過ぎている男、だそうで。理由については一読して確認を。
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