コンクリート造の壁の真ん中に開けられた四角い開口部では、かならず、四隅に亀裂が入る。これは鉄筋で補強した鉄筋コンクリートでも同じ。いつかは亀裂が入る。開口補強筋は効いた験しがない。
ならば、基本的に、コンクリートの構築物は(鉄筋補強があろうがなかろうが)組積造として考えたらどうか、と考えて設計したのが、上の建物。正確に言うと、組積造としてのコンクリートで考え、その補強として鉄筋を使う、ということ。reinforced concreteの原義に戻ってみただけの話。そうすれば、きっと、RCの特徴(利点・欠点)が分かるのではないか。
ここで紹介するのは、1994年に竣工したM小学校の二階建部分。今回は配置図、全体平面図は省略。
屋根は、不要な荷を減らすため、ここでは木造トラスを使っている(屋根がそのまま天井)。屋根材は瓦葺き。これは、その性能と、万一破損しても交換が容易であるための採用。
1階では、基本的に、厚さ360㎜の壁で2階床を支えることとし、必要に応じて、その壁をくり抜く、という考え。アーチでくり抜くのが理想的だが、型枠の製作を考慮して、ハンチを付けた開口としている。
壁の交点には十字型の「柱状」の部分がのこる。この部分は「柱」と呼ぶのかどうか、どこまでが「柱」なんだ、そして同様に、いったいどこが「梁」なんだ、と問われるかもしれないが、そんなことはどうでもよい。
上の図版の一画に、参考として、ロマネスクの伽藍の解説図を載せた。これはアーチが直交してできる「十字型の柱」様の部分。これと同じ考え方。ちがうのは、2階床のつくり方だけ。この設計では、鉄筋補強のスラブでつくっている。2階床スラブは、1階では天井、つまり「踏み天井」。
平面図で、柱型間の網掛けをした部分が壁をくり抜いた部分。通常のRC造では梁に相当する箇所。
2階では、四周と間仕切り部分以外、RCの梁はない。
無開口の部分を全面RCの壁にするのは無駄なので、原則として、各所とも、くり抜いたハンチ付開口をつくり、その開口に、必要に応じてレンガを積むことにしている(1枚積み)。そのため、開口の高さ方向は、70㎜の倍数になるように矩計を考えている(70㎜=レンガ1枚の厚さ60mm+目地10mm)。腰壁も同じくレンガ積み(室内の支障のない部分は木製)。
ただ、今回は平面図を載せていないが、断面図の多目的ホール部分の2階ギャラリーの手すり部:腰壁はRCとしている(Ⅰ型断面の箇所)。もちろん、「耐震スリット」など設けていない!。これは、1階で邪魔になる柱を取り去るため、手すりを床を受ける架構として利用したから。これについては、次回紹介する予定。
また、この建物では、杭工事を要しているが、図で分かるように、通常の「地中梁」を設ける方法を採っていない。これについても、いずれ紹介。
図面は、実施設計図のコピーを編集。写真は竣工写真から。