続・「煉瓦の活用」・・・・RC造との併用の試み-1

2007-10-01 15:57:45 | 設計法

 煉瓦という材料の耐久性・恒久性、調温・調湿性は、もっと活用されてよいと思うのだが、如何せん、構造的に弱いとされているため、その利用は極端に減っている。
 日本きっての煉瓦製造工場であった由緒ある日本煉瓦製造KKも、先年、遂に煉瓦製造をやめてしまった。町のホームセンターなどで売られている煉瓦も、外構や装飾用で、いまやほとんど国外産、正直言って質は悪い(1000度以下の低温焼成のためだろう)。

 先に、木造軸組工法との併用を紹介させていただいたが、今回はRCとの併用の試み。
 心身障害障者の更生施設の設計に際し、その試みを実施することができた。

 一般に社会福祉施設は、運営管理が一仕事である。特に、この例は、心身障害者を抱える父母が、自らの出資と各種補助金や寄付金を元手に建設を計画した施設。全国的にこういう形態の建設例が多い。というのも、公的な施設は数多くあるが、父母の願いに応じてくれる施設は少ないからだ。父母の願いとは、一言で言えば、いわば永久に父母の代役をしてくれることを保証してくれる運営がなされる施設。
 このような施設の建物は、運営管理費に限界がある。だから建物自体、その営繕に費用がかからないことが必須。つまり、内外装の修理等が起きにくく、万一行う場合も容易にできること。
 そこで、外部を煉瓦主体でつくり、内部は木造軸組工法に倣うことにした。屋根はこれも過去の設計例(1983年竣工)で耐久性が実証済のRCスラブによる切妻勾配屋根にアスファルトシングル直葺き(25年近く経った今でも無事故)。
 社会福祉施設は耐火建築が要求される。一番簡単なのはRC。しかし、内外装で苦労する。長持ちして維持が容易な仕様がなかなかないのである(過去の事例では、内装で苦労している)。

 そこで煉瓦積。外部は煉瓦積表しのままで問題ない。むしろ、煉瓦積自体に問題が起きなければ、時間が経つほど貫禄がつく。しかし、煉瓦積だけだと、現在の法令では申請は通らないから、鉄筋補強煉瓦積+RCの柱・梁の構造とする。
 煉瓦積は、内部でも場所によっては表しでよい。しかし、内部はすべてを煉瓦にはできない。部屋の使用替えなどにも対応できるようにしなければならない(特にこの種の施設では肝要)。
 そこで内部は木造軸組工法にならい、RCの柱・梁を架け渡し、柱間に間仕切りを充填する方法を採った。間仕切りの大半は、奥行を柱径の倍数にそろえ規格化した家具(煉瓦1枚半=320mmが基準寸法になっている)。

 ざっと説明した上記の方策を採ったのが上掲の写真・図の建物。

 次回はこの建物の施工図と工程を紹介。

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